2.武芸大会への参加
「武芸大会?」
父に呼ばれた書斎にて、それは唐突に告げられた。
「そうだ。今度マクシミリアン公爵家が主催の武芸大会が行われる。お前も参加しないか?」
「是非! と言いたいですけど」
私はいつもと変わらない厳格な顔をした父に近寄った。
「でも急にどうしたのですかお父様? 私が剣術にのめり込むのをあんなに嫌がっていたいたでは有りませんか?」
「その通りだ。今も良くは思っていない。だが、私やオリヴィアがどれだけ言ってもお前は縁談や社交界に興味を持とうとしなかった」
父の言葉に背中に嫌な汗が伝う。これは久しぶりのお説教だな。
「正直、興味のあるなしは仕方ないとは思っていた。誰にでも好き嫌い、向き不向きがある。だがお前には立場というものがある。フィリアス伯爵令嬢という立場が」
そこで父は口を噤んだ。
「話はわかりました、お父様。つまり、いつもの如くいい加減、家のために身を固める覚悟をしろ、ということでしょう?」
「そうだ、と言いたいところだが今回は違う」
「違う?」
「お前に家を出る権利を与える」
「えっ!? 本当!?」
「ただし条件付きだ」
喜びを隠せない私を静止するように強い口調で父が言った。
「…条件?」
「そうだ」
「どんな条件かお聞きしても?」
「条件はただ一つ。マクシミリアン公爵家の武芸大会で優勝しろ。それが果たせたのなら、私はもうお前の人生についてとやかく言わない。望むのなら働き先も見つけてやる」
私は思わず笑ってしまった。
「へぇ〜、そういうこと。でも納得。お父様が私に武芸大会の話をしてくるなんておかしいと思った」
「言っておくが、優勝できなかった場合は…」
「大丈夫ですよ、お父様。わかってます。優勝できなかった際は結婚でもなんでもいたしますよ」
私に話を遮られ、何とも言えない表情をしている父に向かって私は笑顔で告げた。
「今のうちに私が優勝したときのお祝い、考えといてくださいね。お父様」