1.響き渡る宣言
「マクシミリアン公爵家嫡男、エドガー・マクシミリアンとヴィヴィアン侯爵家令嬢、キャロル・ヴィヴィアンの婚約を、今この場を持って破棄とする!!!」
瀟洒な空間に響くエドガーの宣言に、場は静まり返った。誰一人として声を上げる者はいない。声どころか吐息すら聞こえてこない。
「…それは本気ですか? エドガー様?」
ようやく聞こえたのは血も凍るほどの冷たさを持った女性の声だった。彼女の視線の先にいるのはエドガーだ。だが、その声に混じった殺意は間違いなく私に対してだろう。
無理もない。声の主である彼女こそ、先程エドガーに婚約破棄を言い渡されたキャロル・ヴィヴィアンであるのだから。
「本気だよ、キャロル。私は君との婚約を解消し、ここにいるオーレリア伯爵令嬢を新たな婚約者とする!」
そう言ってエドガーが強く握りしめたのはそう、理解できない、否、理解したくないのだが、この私の、オーレリア・フィリアスの両手だった。
周囲の視線が一気に集まるのを感じ、目眩と頭痛に襲われながら私は目を閉じた。
本当に、一体どうしてこんなことになってしまったのか。