修行
ー数日後ー
新しい鎧に身を包んだエッザールが、いつにもなく爽やかな顔をして外で剣を振るっていた。
そう、新たにラウリスタの称号を継いだナウヴェルが造ってくれた装備、第一号だ。
「不思議です……以前使っていた剣と同様に刀身はそれなりに厚いのに、手にするとまるで自分の手の一部にでもなったかのように、全然重さを感じないんです」
そして、胸元を覆う鎧に細長い盾と。細身のエッザールのシルエットに合わせて、面白いほどぴったりに作られている。いつあいつは採寸したんだ? なんて思ってしまうくらいに。
一振りすると、鞭のようにブン! と空気が切り裂かれる。エッザールの感嘆のため息とともに。
ナウヴェルの業物の特徴はそれだけじゃなかった。
前にあいつが話していた「斬ろうと思うものだけを斬る、持ち手の意思に応える斬れ味」。
それもあるが、最大の特徴は、研がずとも斬れは衰えることなく、そして刃こぼれ一つしない……どうなってんだこれ?
「それが本来の、星の純鉱の力なのです。けど普通の人には到底鍛えることは不可能……師であるラウリスタだけが唯一扱えることができるのです」なあんて剣を持ってきたガンデは自慢気に話してくれてたっけ。
ンでもってその隣じゃ、同様にふた振りの短剣を手にしたイーグが、子供のようにはしゃいでいる。
「うっひょー! マジこれ最高!」って、ブンブン振り回すな、俺とエッザールまで斬り殺されそうだ。
「そーいやラッシュ、お前の斧はどーなんだ?」
「あ、と……それに関しては」イーグの怪訝そうな問いかけにガンデは言葉を濁す。
実はそれが問題。俺ですらちょっと驚いちまったんだけど。
前の日の晩、ナウヴェルはこう言ったんだ。
「ラッシュ、お前自身が星鉱を見つけるんだ」って。
そりゃ面食らったさ、化け物退治に使った棍棒を溶かして鍛え直して、それがいまエッザール達が手にしている武器だということは教えてもらった。けど……
「え、俺の分ないの?」
ナウヴェルは申し訳なさそうな顔で「すまん、チャチャの鍛え直しで予想以上に……」と。
まあ俺に関してはいちばん最後でも構わなかった、急ぐモンでもなかったし。それにあいつが言うには「ワグネルの奴が作った武器……つまり人獣たちが持っていたあれは、混じり物が多すぎる。要は使い物にならぬ」んだと。
「けど、その方がお前にとってはいい機会かも知れない」
「どういうこった? まさか俺が素材を山ん中からコツコツ掘り出してこいとか言うんじゃねえだろうな?」
「いや、そのまさかをやるんだ、お前の手でな」
これも一つの修行だ。自身の手で見つけた星鉱。それこそが己の愛する武器となる……ってナウヴェルは笑みを浮かべて言ってくれたんだが、なんか、こう……俺だけが苦労しなきゃいけないってのが不公平すぎねえか?
「ということでラッシュさん、私と一緒に明日から採掘しましょう!」
ツルハシとノミを手にしたガンデが、笑顔で俺に迫ってきた。
「おとうたん……石けずるの?」
「チビくんも手伝いたいそうです!」
まておいコラ! こんな話聞いてねえぞ!!!