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「……ん……」

 肌寒さを感じて目を覚ました私が重い瞼を開けると、

「……ここ……は?」

 辺り一面、緑に覆われていた。

 どうやらここは森の中の様で、周りには木々が沢山あり、木々が風に揺れている。

 記憶を失う前、私は確かに室内にいた筈なのだが、何故か森の中に身を置いている状況だった。

「何で……」

 自分の置かれている状況がよく理解出来ず、半ばパニック状態。

 それに薄暗い事を考えると、もうすぐ陽が暮れるという事。

 こんな森の中にいつまでも居ては風邪をひくどころか命の危険すらあるだろう。

「とにかく、ここから出ないと……」

 立ち上がった私は森を抜ける為一歩踏み出すも、

「……って、どっちに進めばいいのよ」

 道の真ん中辺りに倒れていた私は前方後方どちらに進めばいいのか分からず途方に暮れていた。

 そんな時、

「こんな所で何してる?」

 後方から声を掛けられ振り返ると、そこには三人の男性が立っていた。

「あ、えっと……」

 薄暗い森の中、訳の分からないこの状況下に突如現れた三人の男性。

 正直恐怖でしかないけれど他に頼れる人は居らず、ひとまずここが何処なのかを確認する事にした。

「その……どうやら、道に迷ってしまったようで」

 見たところ、男の人たちは自分と同じ歳くらい。

 一見優しそうな風貌ではあるが、何というか、違和感を感じる。

 何が原因かと思えば、瞳や髪の色だという事に気付く。

「道に迷った? っていうか、こんな森の中で何をしてたの?」
「怪しい奴だ」
「確かにな。ここに来る奴なんて、滅多にいない」

 私の言葉に三人は眉根を寄せて怪しみ、口々に言う。

「すみません、それが、よく分からなくて……」

 これ以上怪しまれても困るので、私は藁をもすがる思いで記憶を失い目を覚ましたら森の中に倒れていた事を掻い摘んで説明してみた。

「突然森の中に飛ばされたとか、そんな摩訶不思議な事、起こるはずないだろう」
「気を失った訳だし、誰かに連れ去られたとかじゃない? 最近は物騒な世の中になったし」
「そうだな」
「何にしても、こんな得体の知れない奴と関わるのは勘弁だな」

 怪しまれない為に事実を話した筈が余計怪しまれてしまった様で、更に警戒されてしまう。

「あの! 本当なんです! 気付いたらここに居て……私、どうすればいいのか分からなくて……」

 何にしても、今この人たちに見捨てられる訳にもいかず、必死に訴え続けていると

「……まぁ、とりあえずもう日が暮れるし、ひとまず俺らの屋敷に案内しようか」
「そうだな。女一人ここへ置いていく訳にもいかないし」
「……ッチ。何でもいいけど、俺は関わり合いになりたくねぇからな」
「はいはい。分かってるって。キミ……とりあえず俺たちに付いておいでよ」

 半ば仕方なくといった感じではあったものの、三人の住まいへと連れて行って貰える事に。

 この森から出られる事になった私はひとまず安堵した。

 勿論、見ず知らずの人の家に行くなんて普通じゃ考えられないけれど、こんな森の中で一人夜を過ごすのはもっと耐えられない。

「お、お願いします……」

 それにこの状況を整理する為にも、もっと詳しく話を聞くのが一番良いと判断し、私は彼らについて行く事を決めた。

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