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第3章の第110話 どうしようもない問題37 双子消失



☆彡
――クリスティさんは、こう語る。
「――さて、ここまでくれば、随分と物分かりが見えてくるはずよ」
「……!」
「みんなには、答えから先に教えたわ。
もちろん、他のポイントも、まだまだ、明かしていないところもあるけど……。
それは、また、併せて伏線回収をしていけばいいわ」
次いで、サファイアリーさんは。
「カジノ話は、ちょうど、ミシマさんに関わった年ぐらいにあたるからね。
当然、他の人達はみーんな知らなかった訳よ!? いいようにして、バカみたいに外れっぱなしだったんだから。
それは、月見エビバーガーオーロラソース社が、その内情をひた隠しにして、その責任問題の結びつきの話を、
何がなんでも、ヨーシキワーカさん1人のせいにして、仕向けて周っていたからね!
これには、いいようにして、やられた人達は、ハッキング伝いで、文字編集をしてこう書き換えたそうよ。
『お世話用としてね』
――実にふざけるなよ!? って話よね?」
うんうん
と頷き得る一同。
次いで、エメラルティさんが。
「そろそろ、いい加減にして、カジノの話に戻りましょうか?」

――とその時だった。
「――皆様、少し間食してはいかがでしょうか?」
その声の主は、ホテリエのリョータさんだった。
「ほう! お主!」
「人数分お持ちしました。よろしければ、小腹の足しにでもしてくださいませ」
そう言うとリョータさんは、掛けてあった布を取り、そのデザートとドリンクがあらわになるのだった。
「バニラ、ストロベリー、チョコアイスに、添え物としてバナナを。
王女様や大人の皆さま方には、『リンゴ酒』の氷割を、子供達には、『サイダー』をと!」
「うわぁ! ありがとう! ちょうど喉が渇いていたのよ!」
「喋りっぱなしだったからね、あたし達!」
「ねーっ!」
エメラルティさんが、サファイアリーさんはが、クリスティさんが、続々とその手を出していく。
「頂きます」
とアユミちゃんが取り、ついでにスバル君の分も取って、手渡すのだった。
とそこへ、クリスティさんが。
「あっそうだわ! あっねぇ、ちょっといいかしら?」
「はい、何でしょうか? 地球の奇麗な人」
「まぁ、お世辞でもうれしい。物は相談なんだけど、チョコレートの液体はあるかしら?」
「液体ですか? ありますよ、あなた達風でいえば、マシュマロに上に塗るものが」
「いえいえ、そんな大量じゃなくていいのよ?」
「はい?」
「パンに塗る程度のものがあるでしょう?」
「ああ、あれ」
――で、それがクリスティさんの手に渡り。
「――うん、ありがとね」
「では、わたしはこれで、グッバ~イ!」
とリョータさんは、別れていったのだった。
「さて、簡単に、これでSEXを作りましょうか!」
「SEX?」
「うん! これをこのアイスの上に、SEXとラテン語のように垂らしてと……。はい、できました」
それは、バニラ、ストロベリー、チョコの上に垂らされたSEXのラテン文字だった。
「さっきのヨーシキワーカさんの話じゃね。
サイダーは『リンゴ酒』とも『シードル』ともいうのよ!」
「リンゴ酒?」
「シードル?」
「シードルは、リンゴ果汁を自然発酵や酵母発酵させたもので、お酒なのよ。
語源は、ラテン語で、果実を発酵させてできたお酒。
Cicera(シセラ)とも言うわね。
で、このシセラには、『聖書』があってね。
旧約聖書の『土師記』には、シセラという人物が登場していてね。まぁ、大事なものに絞っていけば……。
そのシセラもそのシセラの母親も、ヤイルに殺害されているのよ。
この時、『土師記』の『土』がポイントでね。
ラテンでは、蝙蝠は幸福を差し、サソリは夜空を見上げるもの
この時、蝙蝠は地を差し、サソリは天を差す。
アユミちゃん、試しに、その『サイダーの氷割』を、このSEXの前に持ってきてくれる?」
「?」
いったい、何が起こるんだろうか。
「……」
あたしは、言われるがまま、それを持っていくと。
「あっ……」
「はい、氷割の中に、SEXが映り込んだでしょ!? そして、こっちのアイスを差すサジを、この氷割の中に入れて……と。
はい、イルミナティカードのSEXの出来上がりよ!
どう? Hぃでしょ? うふっ」
「……どーゆうこと?」
「これが、蝙蝠と猫を解くカギになるのよ」
「蝙蝠と猫を解くカギ……!?」
「20は1つの『区切り』で、16は『信者たちの一文字のコードナンバー』なのよ。
この時、地図上には、『Latere』(ラテレ)。潜む、隠された、秘密の在処があるの。
は~い! ヒントおしまい!」
「……???」
訳が分かりませんって……。
「クスッ。これにはさすがのヨーシキワーカさんも、解読に結構苦労したそうよ。
ラテン語は話せないし、読めないしね……。
だから、自分の有利な土俵に持ってきて、無理やり、力技で推理したんだからね!」
う~ん……
と悩む一同。
とその時、シャルロットさんが。
「もしかして……サソリ、『夜空』を見上げる……。だ……ダーク!」
「あっ!」
「正解!」
「ちょっと、照明を落としてください」
パッ
真っ暗闇になる。
「『ポース』!」
それは、光、ライト魔法だった。
光に照らされ、SEXの文字が光り、サイダーの氷割に写り込む。
シュワシュワ、と気泡が上がっていく。
「――読めました! なぜ、蝙蝠と猫のクロスSEXだったのかが……すべての謎が解けました!」

パッ
と証明が照らされる。
「何てことはないですよ。答えは、もう既に、すべて出揃っているんですからね」
フッ
と笑み浮かべるシャルロットさん。
そして、こう告げる。
「『さそり座の20時南中』と『しし座の黄道12星座』ですか……。だから、結びつきになっていて……。
怪物ですよ……このヨーシキワーカさんって人……。
1人で、これを解いたんでしょう?」
「ええ、そうよ」
――万に1つの失敗の可能性。
(――……底が知れない……)
畏怖と恐怖を覚える。
(だけど、もしも、ここで仮に、ハッキングができる人伝いで、もしも、仮にその事が、周りに知れ伝わり、世界中に漏れ出して行ったら……。
なるほど、確かに、すべての計画は、御破綻し、水泡と帰す……。
ハッキングができる人達伝いで、何らかの組織に通じていて、
それがもしも仮に、事後報告となって、国際警察の方や集団の力に賭けられないなら、
未曽有の大災害になる危険性が、極めて高い……!
人の中には、先に手柄を上げようとして、失敗しちゃう人達が稀にいるから……!
良かった、その人がなんだか秘密主義者の人で、マウスだって、ハッキングを受けたまま、そこに書くだなんて考えられないしね???)
フッ
と笑みを浮かべるクリスティさん。
エメラルティさんは、こう語る。
「フッ、みんなは、きっと色々と見えてきちゃうはずよ?
その時のトヨボシさんのものの視点の視方がね!?」
「……」
いよいよだ。
――エメラルティさん(彼女)は、こう語り継ぐ。
「――かのアストル選手の発言により、火種がその時、持ち込まれたの!
それは、イチハ様達のグループ内に亀裂が生じ、ヨーシキワーカさんの立ち位置が、何だか怪しくなってしまったほどだった……!
この時、中立に立っていたのは、サクヤさんとアサヒさんの2人。
イチハ様は、その頂点に立たれる御方だから、身内引いきはできなかったのよ!?
トヨボシ選手は、初めから、何かわかっているようで、ヨーシキワーカさん側に立っていたわ。救わないといけないと……!」
「……」
「……でも、今になっても思い返してみると、あのトヨボシ選手は、なんかおかしいのよねぇ……――」
フムゥ……
と考え加減になるエメラルティさんが、そこにいたのだった――


★彡
【カジノ】
【損失額、周りの会社の者同士の協力関係、職業訓練校等の仲介の協力、騙しの講義、責任のなすりつけ、借金漬け兼低沈金労働者の構図】
アストル選手などを介し、紳士淑女の方は、こう物語った。
『――それがお金に結びつく話、損失額だと言われています』
『……』
未来のスバル(トヨボシ)達は、その話を聞き入るのだった。
次いで、別の紳士淑女の方が、こう語る。
『これは『上手い話』だとばかり、周りにいた人達は、その目を輝かせ、そうした声に相乗りし、便乗していったわけです!
実際にそれで、私共にもいくらか『お金を包んでくれる』からです!
実際、ありがたい話です! そのお金の使い道は自由……!
うちの社員さんと共に社員旅行に行く『タシ』に使ったり、日帰り旅行や、酒の飲み会などに『消費』されています。
何かしらの娯楽が『必要』なのです。
私共は、これを『必要経費』として割り切っています!
世の中の常識ですよね!?
そうした社会性の実情もあり、うちの『優秀』な社員さんを引き留めるためにも、また一役買って、必要なのです!』
とこれには、イチハ様も内心。
(ホントに、必要なんかそれ……!?)
とそこへ、サクヤさんが。
『……では、その『優秀』な社員さんが、他に流れて、売り上げ利益が落ち込んだ場合は……!?』
『引き留めることができないのであれば……、……そうした問題に頼らざるを得ない場面があります……!
そうした事があって、誰か1人が犠牲になる事で、他、多くの社員さんたちが助かるのであれば、
その本人にとっても、満更ではないでしょう?!』
まぁ!?
信じらない!?
と貴婦人たちの悲鳴の声が上がる挙がる。
『……では、なんですが……あなた方はどうなのですか!?』
『!?』
『私共としても、心苦しい限りですが……致し方がない実情が見え隠れしているのです……。
会社を興した以上、会社を引き継いだ以上、私共はそうした代表者様なのです!』
『……』
『それが『資本主義者社会』であり、輸出と出荷、買取を経て、『世界経済を回している』のです!
金がなければ何もできません……!!
そうした従業員を雇う事も、また月払いで支払う事さえできません。
我々はそうした人達の、人生さえ預かっている身の上なのです!
言ってみれば、そうしたご家族の方の子供さえ、私共次第で、その人生が大きく揺らいでしまう……!
誰か1人でも、そうしたご家族の方の大黒柱の方が大怪我すれば、そのご家族の方に面目が立ちません……!
労災事故を起こした日には、それこそ……!!
人の人生を預かる、今後の将来性を預かる、それが『悲しい経営者の性(さが)』なのです……!!
そうした危険性が、いつも隣り合わせなのですよ……!?』
そこへ、頭を下げてきたのは、人の上に立つ立場のイチハ様だった。
『……そう、どこも同じなのね……。……ごめんなさい』
『いえいえ……。……あなたも!?』
『ええ、実はそうなのですよ!?』
『まぁ!?』
『実は私共の会社も同じなのですよ!?』
『そうなんですか!?』
『ええ、実はそうなのです』
声が所々から上がる、紳士淑女の皆様方。
(何だこれは……!? もしかしてここにいるのは……そうした会社の代表者たちか!? その親近者か……!?)
(あぁ、これはあれやなぁ……。重役の出勤のケースやわぁ……。病院長が朝ぱったからパチンコにいる、ケースもあるやろうしなぁ……!?)
そう、心の中で読み解いていく、アサヒさんにイチハさん。
次いで、サクヤさんがこうした声を上げるのだった。
『雇用している従業員の数が特に多い企業は、それ以上に稼がないといけないから、何らかの措置が必要になってくる……って事ですか!?』
『『『『『!?』』』』』
『そうした社員さん達を引き留めるためにも……!?』
『『『『『……』』』』』
黙る一同。その中には、頷き得る少数の方がいて、それは肯定の意思表示だ。
――そこへ、アストル選手が。
『――そうだ!』
振り返るサクヤさん。
『だから、ドクターイリヤマ氏は、あの電話の話を『真に受けて(?)』、一度、その本人の反応を買おうとした事があるんだ!』
そこへサクヤさんが。
『その話、詳しく聞かせてくれる!?』
『……いいだろう』
アストル選手は、その配管実習場後の話を、物語るのだった――


★彡
【職業訓練校時代、7月】
【ドクターイリヤマの後戻り不可能地点。その運命の分かれ道、前】
カッカッ
廊下を闊歩する白衣姿の爺さん。
その道なりには、少なかれ生徒さんたちの姿があった。
『うわっ……いかつい顔……!』
『恐ッ……誰あれ……!?』
『医学講師(ドクター)でしょう!? 何でこっちの職業訓練校に……!? 受け持っているのは別の姉妹校側でしょう!?』
ヒソヒソ、ヒソヒソ
『……』
【――そんな声が上がっていたが、俺は関わる気がなかった】
【ここで騒ぎを起こしても、自分のメンツが悪くなるだけだ。それではいけない……】
『……ッ』
【だから、敢えて俺は、ここで無視することにしたんだ】
【彼等彼女等には、何ら落ち度がないからだ】
【ここに着ている自分が悪い……】
『……』
【顔を上げて、前を見据える俺、設備管理科の教室が見えてきた】
【ここには確認の意味の為に着ていた】
【俺は、医学講師という立場でありながら、生徒を受け持つ教師である以上、そいつの今後の人生を左右できるほどの大きな力を有していた】
【医学講師という名目は、伊達じゃない】
【だが、そんな俺でも、1つ確認のために、そいつに問い質す必要があった】
(……これで気づかないようであれば、あいつはダメだ……)
シュイーン
とその教室の自動扉が音を立てて開いていく。

ナレーションはところ変わって、クリスティさんが、こう語る。
【――ドクターイリヤマ(俺)は医者でありながら、設備管理課の教室の戸を開けて、恐い顔で入ってきたそうよ】
【そして、その人物のすぐ横で、こう言ったの……】

『……』
目線の先、そのヨーシキワーカは1人で、勉強をしていた。
その手には色ペンを持っている。
(女みたいな奴め……)
率直に言うとそんな感想だ。
男らしくない。硬派なら、黒と赤のペンで十分だ。
一歩を踏み出すドクターイリヤマ(俺)。
ツカツカ
とその音が反響す、それは、ここ設備管理科の教室内からの反響した音だった。
段々と、俺とあいつとの距離が縮まっていく。3m、2m、1m。
そして、俺は、そいつの隣に立って、こう声を荒げて物事を言ったんだ。
『オイッ!!! ヨーシキワーカッ!!!』
『!?』
ビクッ
とすヨーシキワーカ。そいつは、俺に横から、こんな至近距離から、いきなり声を掛けられたことで、大層ビックリしたようだった。
その顔を上げて、俺の顔を見てくる。
その顔には、恐れおののいた顔があった。
フンッ、腰抜けめ。
『……』
ヨーシキワーカ(私)は、思わず自分の名前を怒鳴られたことで、その人物を見上げた姿勢を取ったんだ。
(あれ……!? 誰だこいつ……!?)
それは白衣姿の厳つい顔をした爺さんで、受け持っている所が違う、医者の講師だった。
えーと……名前は確か……。
『……』
ドクターイリヤマ(俺)は、威圧感たっぷりにこう脅す。
『いったいいつの間に、そこまでの免許を手に入れていた!? 言えっ!! いったいどうやってやった!!?』
『……ッ!?』
(いったい何なんだ!?)
俺の目の前で縮こまるヨーシキワーカ。その様を見たドクターイリヤマ(俺)は。
(フンッ!! ノロマな亀みたいな奴め!! お前はずっとそうしていろ!!)
『……』
(お前には、せいぜい、その姿がお似合いだ)
俺は、畳み掛けるようにこう脅す。
『何も言わないつもりか……!? それならこっちにも考えがあるんだからなァ~~!!?』
ググゥと俺は、この厳つい顔を近づけて、そいつを必要以上に脅す。
そうまるで、どこぞの犯罪組織の組合員たっぷりの、恐い顔面を近づけて、そう脅したのだ。
だが、その時、声がかかってきたのは、完全に誤算だった。
『うわっ!! 初めて見た!!』
『俺も!!』
『ッ!?』
振り返るドクターイリヤマ(俺)、そこにたのは、後ろの席で、勉強中だった別の生徒さん達だった。
しまった、こいつ等がこんな反応をしてくるとは、完全に誤算だった。
『先生が生徒にあんな態度取るところ、俺初めて見た!』
『ここの先生って、生徒にあんな風に脅すだな……へぇ~初めてみたわ!!』
『こんな人に教わっていただなんてなぁ~!?』
『……チッ』
立場が悪くなった俺は、こう言い返す。
それは、今この場にいるヨーシキワーカに対してのものだった。
『お前そんなに頭がいいなら、もっと周りに勉強を教えろッ!! ったく!!』
(こうなってしまったのは、完全にお前1人のせいだからなッ!!)
場が悪くなった俺は、一目散にその場を退散していく。
(時と間が悪過ぎた……ッ!!)
ちょっとだけ、その顔を振り向きざま、後ろの方にいた生徒さん達に向けるドクターイリヤマ(俺)
(まさか、出来のいい他の生徒さんがいたとは……!? 完全に誤算だ……ッ!! 視野が狭まっていたか……!?)
シュイーン
とドクターイリヤマ(俺)は慌てて、その教室の自動ドアの前に立ち、ドアが開いた瞬間を見計らって、この体をねじり込むようにして、慌てて出て行ったのだった。
廊下の前に立った俺は。
『フ――ッ……』
(危ない危ない……)
チラッ
とその自動ドアの小さな窓から見える景色を見て、その生徒さん達の動向をチラッと伺う。
(……また別の日に回すか……?)
【そう考えた俺は、踵を返して、やってきた道に引き返していったんだった――】
――その頃、残された教室の現場では。
『――大丈夫? ヨーシキワーカさん?』
『うん……』
『今日はもう帰ったら? ……タイミングを見計らってさ』
『……うん……』
となぜだかよくわからないが、何の理由で自分が怒られたのかわからない。それが素直な感想だ。
『……』
物思いに更けたヨーシキワーカ(私)は、ここから見える、あの自動扉の向こうを見やるのだった。
(……あの人は、いったい誰なんだろう……?)
上がる声は、後ろの方にいる別の生徒さん達のものだった。
『――あいつ誰なんだろうな……!?』
『さあ!?』
『ちょっと気になるし、その人の素性、後で調べてみようぜ!?』
そんな後ろの方にいる生徒達から、そんな声が上がるのだった。


☆彡
――過去から現在に返り、クリスティさんは、こう語る。
「――その人の素性がわかるのは、もう少し先の話だったそうよ!?」
次いで、サファイアリーさんが。
「兎にも角にも、ヨーシキワーカさんとドクターイリヤマたちの接触は、そうした出来事があっていたって経緯(わけ)!」
次いで、エメラルティさんさんが。
「うん! そうして、こういった出来事や行為は、ヨーシキワーカさんの身の周りで、度々、幾度かあってたそうよ!?」
そこには不憫に思うエメラルティ(あたし)がいたものだわ。
それは、もう感傷の思いで。
「きっとその頃から、眼をつけられていたんでしょうね……」


★彡
【職業訓練校時代、7月】
【上り階段にて、その足を止めるヨーシキワーカ】
『――オイッ!! まだ行っていないのか!?』
『!?』
(えっ!? 何っ!? 何かした!? えっ……!?)
私は、その医学講師(人)に再び声をかけられた事で、その足を止めたのだった。
しかも、何だかあの人は怒った感じでいて。
(私は何かやったのだろうか……!?)
『……』
ギロリ
とその厳つそうな恐い顔で見上げてくるドクターイリヤマの姿があった。
これには、ヨーシキワーカも。
『うっ……』
(一方的に責められるってのもなぁ……)
これには、ほとほと困ってしまう……。


☆彡
【月見エビバーガーオーロラソース社が、その時、大ベテランの助けを望んでいた理由と経緯】
過去から現座に返り、クリスティさんは、こう語る。
「さしものヨーシキワーカさんも、この階段下からのドクターイリヤマの声もあって、心中穏やかじゃなかったそうよ……?
でもね、この時は、その昔の会社からというのは何となくわかっていても、
そこからの連絡が、一切、着ていなかったのよ!
それは、お父さんの方も知らないし、お母さんの方も知らない。弟君だって、その話は全然着ていなかったから、何も知らなかったようなものよ!」
そこへ、サファイアリーさんが。
「あくまで、連絡を受け取っていたのは、そのドクターイリヤマとドクターライセンの2人だけだからね。
この時から、『共謀』を図っていた訳よ!
表向きには、ヨーシキワーカさんを試すような素振りをしつつ、
実際には、ヨーシキワーカさんご本人には、『一切連絡を取り次がないような制限』を設けていた。
知っているのは自分達だけで、ヨーシキワーカさんを除く、その時、その当時の設備管理の人達の間だけで、連絡網が回っていた訳よ!
たった1人だけ除け者にしてね」
そこへ、エメラルティさんが。
「イリヤマ先生達は、この時、月見エビバーガーオーロラソース社からのお願いを取り下げてまで、
自分たちの判断材料で、『先にそれを取り調べ』ようとしていた訳よ!
ポイントは、ヨーシキワーカさんと月見エビバーガーオーロラソース社の一部の人達は、グループ繋がりで、それを知っていても、
イリヤマ先生達と他の周りの生徒さん同士は、グループ繋がりで、それを知らないグループだから、
時にそれが、『思わぬ事態』を引き起こしていたしまっていたわけよ! 『自分中心の金盗り主義のわがまま』ってやつね!」
とそこへアヤネさんが。
「どーゆう事!? ちゃんと説明して!? 何でその昔の会社の人は、その人を呼び戻そうとしたの!? その動機は!?」
そう、動機が必要だった。
「ポイントは3つ!
1つは、人が入ってきても、すぐに辞めていくから……。
1つは、以前のような売り上げ利益に戻らず、ドンドン抜けていっちゃうから。
1つは、そう1週間のうちに1回行われる掃除が原因だったのよ。これは、後に2週間に1回とあるわ」
これには、アヤネさん、ミノルさん、アユミちゃん、スバル君が、口々にそう漏らしていって。
「そ、掃除……えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
えっ……
と呆けてしまうのだった。
「そう、掃除なのよぉ……。あの日は、さっき言ったように、2人しかいなかったからねぇ……。
当然、夕方5時上りだから、仕事が間に合わなくなって……」
「あぁ……」
もうなんとなくわかる。答えがわかってるから。
フゥ……
とエメラルティさんは、その頬に手を当てて、乙女のような仕草を取るのだった。
彼女は、こう続ける。
「さっきの話を思い出してね。
そのアンスタッカーにまつわる話で、例えば、ローラーベルト下に堆積物……そう、ゴミの塊のようなものがあったらどうなる?
当然、接触抵抗が起きてしまい、ローラーベルトの嚙み合わせが悪くなってしまい、
ガタッゴトッ、ガタッゴトッとすぐに停止しては動きを繰り返すから、機械の故障の原因となってしまっていたのよ。
特に、あれは雨の日に異常が多いからね」
とこれには、シャルロットさんも。
「なぜ、気づかないのですか誰も!?」
「目につきにくいからよ。目に見えない死角に隠れていてね……。その場に4人いても、誰も気づこうとしなかったの」
「……マジ!?」
「ハァ……言ってて段々疲れてきたわ……。あの人が、月見エビバーガーオーロラソース社を退社してから、あそこは掃除不足だったからね……」
「……」
一週間の間で、掃除は1日だけ。
しかも、その日は、従業員数は2人だけだから、大変なのだ。
どうやら、売り上げ利益の激減には、しょうもない話で、掃除不足がつきものらしい。
正直、聞いている方もなんだか、バカバカしくなってくる。

「基本、2人で掃除を行うようなところだから、1人抜けてしまったんだから、そうした弊害が起こってみても、全然不思議じゃなかった訳よ!?
2人で掃除を行った場合は、『1時間30分程度』で済む話だけど……それもあくまで、『熟練者(ベテラン)』さんがいた場合の話……!
1人抜けて、新たに後輩君を育てたとしても、この記録の壁は、なかなか破る事は難しくて、
以前は、1時間30分でも、その頃になれば、2時間超えもの掃除時間が、喰ってしまっていた訳よ!?
で、そこから箱上げをして仕事を取り組むんだけど、そのヨーシキワーカさんの先輩に当たる人が、夕方5時上りで、途中で上がちゃってね……。
で、1人残された後輩君に、その作業量ができるかといえば、全然できません~~ってなるわけなのよ!?
だから、昔の会社の人は、慌てて、そのヨーシキワーカさんを呼び戻そうとしていたって訳よ!」
「……」
ヒクヒク
とこれにはシャルロットさんのご顔尊も引くものだった。
エメラルティさんは、続けてこうも語る。
「これが土日の話。
続いて、あの人がいない日は、たった2人しかいないから、
朝働く2人は、昼2時上りと昼3時上りだから、途中で作業ストップしていた訳よ。
新入社員さんが入ってきても、すぐに辞めていっちゃうところだからね」
「あぁ……なるほど……。その人が、昼3時から夜7時まで請け負っていましたから、
その人がいなくなってから、その人員の抜け穴が大きく、会社の売り上げ利益が、なんだか大きく下がっていたんですね……」
わかってきたわ、段々と。もう、答えがあるとスゴイ楽だわ。
「しかも、加えて、菓子パンラインの廊下の前には、商品の積まれたパン箱が占有されていて、その部屋には入れなかった……から、
長い廊下の右手側にある部屋の方に持っていっては、そこで備蓄管理していたわけよ。
で、昼2時、昼3時上りだから、どうなるかと言えば……!?」
「全然、作業になっていないじゃないですか……」
もう、大きく呆れ返るしかない……。
「フフッ、だから、今まで、上の2階で食っちゃ寝していたり、ゲームで遊び呆けていた正社員さん達が、駆り出されていた訳よ!?
それは、もうスゴイ反感の思いでね。
あいつのせいで、今こんな目に合っているから、絶対に許すな――って、周りの方に取り次いで周っていた訳よ!
で、その行く着く先が、あの職業訓練校だったわけよ!」
とこれには、シャルロットさんも、なんだかわかりみになり。
「あぁ、だから、何も知らないから、ドクターイリヤマ達が、もう犯人なんだと、目星をつけていた訳なんですね……何も知らないから……」
「ピンポーン! 大正解よ!」
「……」
(ハァ……自分で答えを言っていれば、世話がありませんよ……)
そこには、やれやれな思いのシャルロットさんがいたのだった……。
――次いで、語り部を説いていくは、クリスティさん。
「――その7月下旬ぐらいにかけて、線状降水帯(ゲリラ豪雨)が襲ってきた日があってね!
その閑休話(かんきゅうわ)の話を話すわ。きっと大事な出来事(話)だからね!」
「!?」
僕達、あたし達、私達は、何だろうと思ったのだった。


★彡
【職業訓練校時代、7月】
【ゲリラ豪雨と高速鉄道】
ザァアアアアア
ゴロゴロ、ピシャーーン
――今日この日は、線状降水帯というゲリラ豪雨が襲った日だった。
ヨーシキワーカは、その職業訓練校の階段下で、消防の本を開いて勉強中だった。
『……』
そこへ、声を投げかけてきたのは、
『何だお前!? まだ帰っていなかったのか!?』
『!』
顔を上げるヨーシキワーカ。
そこに立っていたのは、ドクターイリヤマだった。
『他の奴等はもう先に帰ったとぞ!! そろそろこの本校も閉めるから、さっさとそんなもの畳んで帰れッ!!
どうせそんなものは、いくら勉強したって取れないだろうからなッ!! お前には!! フンッ!!』
カチンッ
腹に据えかねる思いのヨーシキワーカがいたのだった。
講師から、侮辱されたのは、初めてだ。
(こんな奴の下で、教わるだなんて……)
(……)
両者の視線がかち合う。
ジト目のヨーシキワーカに。
上から目線で、フンッ、と鼻を鳴らすドクターイリヤマ。
棄てセリフは、こんなものだった。
『早く帰れよ』
と、まぁ、真っ当な意見だった。
『……』
だが、この時、私は、反感の意に買った形になり、勉強の方に、少しの間だけ力を入れるようになるのだった。
――そして、職員室にて。
エアディスプレイ画面越しで、ドクターイリヤマとドクターライセンの2人に一報が入り。
『何っ!? 会社の機械が壊れた!?』
『はい……そうなんです。(アンスタッカー)機械の床が、上がっては下がってを繰り返すばかりで、その壊れた原因がわかりません』
『何で!? そんな状態になってるんですか!? もう完全に壊れてるじゃないですかコレ!?』
『あいつが、辞めていってからなんだろ!?』
『……はい』
『完全に犯人だコレ……』
『絶対に許されんぞあいつ!! よくも今まで、今までに散々お世話になった会社の機械を壊していったな!! とんでもない弁償もんぞコレ!!』
『しかも、2台も壊れてるんです、入りと出が……。しかも乾燥機のほうも壊れてまして……洗浄機側も何だか怪しく……聞こえますかこの音?』
ゴォオオオオオ
『完全に壊れるな……これ』
『もう犯人で確定ですね……』
【――犯人探しゲームならぬ、間違った犯人当てゲームと化してしまう事は、最早語るまでもない――】


☆彡
【勉強の仕方】
――過去から現在に返り、エメラルティさんは、こう語る。
「――この後2人は、とんでもないバカを見る事になるのよ? 何も知らなかったから……」
これには、シャルロットさんも。
「だと思います……」
そこへ、クリスティさんが。
「先に、多くの人達は、会社の連絡を飛ばすばかりで、肝心のヨーシキワーカさんを、まったくといって良いほど介していないからね。
当然、ヨーシキワーカさんも、まったく知らないから……」
これには、スバル君も、アヤネさんも。
「バカじゃねぇ……これ……?」
「阿呆の極みよ……」
もう頭が痛い……。
とこれには、さしものエメラルティも。
「えーと……後述するとね……。ヨーシキワーカさんは、すぐその場では動かず、切りのいいところまで勉強してから、切り上げたそうよ! 
その方が能率がいいからね!」
「切りがいいところまで、勉強してたのね……?」
「うん……。
途中で打ち切るよりも、切りのいいところまで勉強した方が良くて、その学習意欲があって、まだ、いい事だからね!
で、ヨーシキワーカさんは、高速鉄道とかを利用して、その中で勉学を積んでいたそうなのよ!」
「へぇ~……そうなんだぁ~」
とそこには、納得かつ、もうやれやれの思いのアユミちゃんがいたわ。
あたし、エメラルティは、続けてこう言ったの。
「……でも、惜しむらくは、失敗点があってね」
「えっ!?」
「高速鉄道では、教科書や参考書は広げられても、ノートまでは書けないのよ!」
「あっ……」
そう、ミスに気づかせる。
「だから、よく、ヨーシキワーカさんは、教科書や参考書に、直に文字を書き込んでいたそうよ! そこだけが、失敗だった!」
「……」
失敗点から上げることで、後発的に、どうすれば良いのかを考えさせる。
「さあ、この後、どうしたら良いでしょうか!? はい、子供達、考えてみて!」
う~ん……
と考えてみるアユミちゃんに、スバル君。
「わかる? スバル君?」
「いやぁ……全然だよ……」
「だよねぇ~……。ねぇ、ヒント頂戴!」
「うん! いいわよぉ!」
快く快諾してくれたのは、エメラルティさんだった。
「ビジネスマンでも、そうなんだけど……。会社に持ち込む以上は、なるべく少ない方がいいの」
「……」「……」
あたしは、未来の可能性から考えさせる。
「ビジネスマンや設備管理の人でも、そうなんだけど……。基本は、リュックサックではなく、革製のビジネスカバンを使うわよね?」
「うん?」
「まぁ、そうだと思うけど……?」
アユミちゃんも、スバル君も、まだまだ子供だからか、半信半疑の様子だったわ。
これには、エメラルティ(あたし)も。
「フフフ。だから、外せるものと、外せないもので、考えてみるといいわ!
わかる~? わかんないかな~?
答えはね! 参考書についている小冊子の切り離しが最重要項目だから、これは持ち込み可とするのよ!
次に、ノートに関しては、100均一のものがよくて、A4サイズのフラットファイル形式で統一し、
A4サイズのノートリフィルに、A4サイズの透明カバーを用いるのよ!
また、ビジネスシーンで分けて、色違いにすれば、必要な時に、サッ、取り出せるわ!」
これは、前にも言ったわよね!?」
「「あっ!」」
とあれを想い出し、確かにそれは言った事がある事だった。
「そして、もしも、会社で働いている時に、わかんない事があったら、
先輩や上司の方に尋ね、そのポイントだけを、胸のポケットのメモ帳に書き記しておく!
そうする事によって、会社のホログラム映像出力装置付きマウスを使って、書き起こし、
紙やファイルなどで、プリントアウトすれば……」
「そうか! その透明のカバーの中に入れられるから、次、何かあった時、同じ間違いをいくらか減らせるんだ!」
「ご明察! さすがねスバル君!」
「よしっ!」
と僕は、ガッツポーズを取ったのだった。
で、アユミちゃんが。
「あーあ……先に取られちゃった……」
と何だかガッカリしていて。
「あっ、なんかごめん」
「ううん、別にいいわ。……他にある? エメラルティさん?」
「もちろん! あるわ!
ビジネスシーンで大事なのは、何も勉学だけじゃなくて、必要不可欠なものがあるのよ!」
――これには、アンドロメダ王女様も。
「――ほぉ」
と職に関することなので、感心深いものだった。
エメラルティさんは、こう話す。
「それは、DESK DIARY(デスクダイアリー)よ! 西暦番号の書かれたね! 社会人にとって、必須なものよ!」
これには、アユミちゃんも。
「あ――っ! それ知ってるー! アユミのパパが持ってたやつだーっ!」
「あら? どーゆう特徴のものが、一番いいのかしら?」
「えーとね……えーと……」
う~ん……。
とアユミちゃんは考えるのだった。
この時のエメラルティさん(あたし)の心の内は。
(そう、この考える姿勢が一番大事なの)
と思うものだったわ。人はこうやって、1つ1つずつ成長していくから。
「えーと……」
「アユミちゃん頑張って」
「あっ! 思い出した! 左右の見開きがあるやつだわ!」
アユミちゃんは、そこに気づいたのだった。
「左手側には、月日が書かれてあって、右手側は、ノートのようになっていたの!
で、そこからはいくつか空白のノートページがあって。
次に、年齢早見表がついていたの!」
パチパチ
と拍手を送るエメラルティさん。
「うん、正解よアユミちゃん!」
「うん!」
パァ
とアユミちゃんは、月華草のような可愛らしい笑みを咲かせていたわ。
あたしはこう続けるの。
「後述すれば、メーカは問わなくていいわ。
いろいろと試して行っちゃうのはいいけど、指を痛めないかが肝であって、リング形式のものは、いくらか避けた方がいいわ。……何でだと思う?」
う~ん……
と考えてみる少年少女。
とここで、スバル君が。
「……もしかして、……そのノート切れ端を、誰かに盗られるから?」
「あっ!?」
「ピンポーン! 大正解よスバル君!」
「……」
でも、何でだと思う。
「誰でもそうなんだけど、リング形式のものを見たら、ちょっとしたイタズラ心で、そのノートの切れ端を横から奪い取っちゃうからよ!
また、そのノートを書いていて、リング部分に当たり、書き損じてしまう。
そうした意欲の減退が考えられるからよ!」
「「へぇ~……そうなんだぁ」」
と感心深い少年少女達の姿があったのだった。
これには、アンドロメダ王女様も、痛く感慨深いもので。
「ほぉ~! 関心感心!」
と褒めてらしたのだった。



★彡
【1人で勉強を続けるヨーシキワーカ】
――1人で勉強を続けるヨーシキワーカ。
そこへ、もう1人の先生が着て。
『うわっ!? まだ帰ってなかったのか!?』
『?』
『もうそろそろ、本校のゲートを閉じるから、お前ももう帰りなさい』
『……』
フゥ……
とやれやれ加減で、キリが悪いのに、ヨーシキワーカは、その勉強を切り上げるのだった。
(まぁ、イリヤマ先生よりは、いくらかマシかな)


☆彡
――過去から現在に返り、アヤネさんはこう語る。
「あたしもそう思うわ!!」
続いてミノルさんが。
「確かに!! さっきのドクターイリヤマと比べれば、まだマシだな! 勉学に学びにきていて、
『どうせそんなものは、いくら勉強したって取れないだろうからな』は、聞き捨てならんからな!!
続いて女医のクリスティさんが。
「もっともなご意見ね! そんな事言う先生なら、あたしだったら、告げ口して回り、その学校から追い出しちゃうわ!
異動よ異動!! あの昔の会社にね!! フンッ!!」
続いてアヤネさんが。
「そうねぇ~!? 反面教師の鏡よね! そんな人にうちの子供を任せたくないわ!」
とここで、エメラルティさんが。
「でも、実際の社会現場に出たら、ドクターイリヤマみたいな人がいるのが社会の現状なのよ?」
「……」
「ドクターイリヤマみたいな、人達が確実にいて、そーゆう話を出していて、そこにいた生徒さん達に、そーゆう耐性を持たせようとしたらしいの!
自分みたいな人に尊敬の念を抱かせて、泣きついてくるように仕向けててね。
『どうだ!? 自分のやり方は上手いと周りでも評判なんだぞ!?』――とここにも起因していたのよ!?」
これには、アユミちゃんを推しても。
「うわぁ……『何も知らない人』って、ホントにイヤだぁ~!
その人、間違った人のせいにして、仕向けて周ってたんでしょう!?
しかも、下手に自慢してて、アユミちゃんだったら、そんな人に師事なんかされたくな~い!」
そこへ、アヤネさんが。
「とんでもない先生ねぇ~そのドクターイリヤマって奴ゥ!! 完全に間違ってるじゃないの!!」
これには、美人三姉妹の誰を推しても、「うんうん」と強く強く頷き得るものだった。
大嫌いッッ。


★彡
【職業訓練校時代、7月】
【(続)ゲリラ豪雨と高速鉄道】
ザァアアアアア
ゴロゴロ、ピシャーーン
職業訓練校その帰り道にて、ヨーシキワーカ(私)は、雨合羽(オレンジのレインコート)を着て、自転車(クロスバイク)をこいでいた。
アメリカの交通事情としては、日本と比べて、自転車に乗っている人の数は少ない。
自転車の種類は主に、オフロード系のマウンテンバイクタイプやBMXに。
市街地で主に見かける、オンロード系のクロスバイクやロードバイクなんだ。
ちなみにアメリカで、有名な自転車3大メーカーは、キャノンデール、スペシャライズド、トレックなんだ。
ナレーションの語り手は、クリスティさん。
【――ヨーシキワーカさんは、線状降水帯(ゲリラ豪雨)の中、雨合羽(オレンジ色のレインコート)を着込んで】
【『自転車』Bicycle(バイシクル)をこいでたらしいわ】
【その日は、10年に1度のゲリラ豪雨、線状降水帯の接近もあって、自宅(マイホーム)には帰れなかったそうよ――】
なお英語のカタカナ表記では、バイシクルが正しいけど、これが発音事態の場合は、バイセコーというのよ。……わかった?
『……』
市街地を駆けるヨーシキワーカ。
雨足は、滝雨の如く激しさを増し、時折、雷鳴を立てて、青白い稲光となって、雨降る暗き空を一瞬照らす。
ピカッ、ドドン
(うへぇ~……酷いなぁ……)
レインコートを着ているのに、中はビッショリ濡れていた……。
下に着こんでいる作業着までビッショリだ。
シャー―ッ
そんな中でも関わらず、自転車の車輪(ホイール)は回転運動を続け、目的地を目指す。
行先は、高速鉄道駅だった――

【『高速鉄道駅』High Speed Train Station(ハイ スピード トレイン ステーション)】
――高速鉄道駅に到着した俺は、まず、状況を選査する必要があり、時刻発射表のダイアを見ていたのだった。
……だが、遅れが出ていたり、いつ運転見込みが再開するのかもわからず、いつ来るのかも、いつ発射するのかもわからないような状況下だった。
耐え切れず、駅員さんの周りに、人垣ができ、質問を投げているほどだった。
(これは、長引くな……しょうがない……。パンか揚げ物でも食っておくか……)
で、ホットドッグとチキンの揚げ物とフルーツ牛乳を購入した私は、そのコンビニの中にある椅子に座りつつ、
そこから見える景色の、時刻発射ダイア表を見ていたのだった。
その時、声がかかってきた。
『あれー!? ヨーシキワーカさんじゃん!! 何でこんな所にいるの!?』
『ああ……あれだよあれ……』
『……やっぱか……』
(だと、思った……)
そう、当然、この人も捕まってしまった口だ。
それは、ヨーシキワーカ(私)にしても、同じ事だった。
『あれから1時間以上もここにいるんだけど、サッパリでさぁ……ちっともあれから動く気配ないんだよなぁ……。
ここでジッとしてて、あそこにる人達と同じようにここで待ちぼうけしてるんだけどぉ、こうまいちゃうよなぁ……!? ……あーあ……』
『フ~ン……』
『ヨーシキワーカさんは!?』
『まぁ、似たような口だよ。ここにくる少し前までは、あっちの方の職業訓練校で少しは勉強してたんだけど……も』
『フ~ン……まぁ根を詰め過ぎないで、身体を壊さないようにね!?』
『うん……』
ありがと。
そう、彼は優しく、私に気遣ってくれたのだった。
『まぁ、この中には、食べ物や飲み物は揃ってあるから、金さえ出せば困りはしないからな!』
『……』
『で、帰る目途はあるの!?』
『……』
首を振るう私。
このまま待つか否か……。
『フ~ン……じゃあ、俺はここでしばらくいて、勝手にお暇するわ。
さっき下に降りて、チラッと見かけたんだけども、先に先客がいてさ、その人達にタクシーが捕まって持っていかれたんだ!』
『へぇ……』
『だから、下に降りて、そのタクシーを拾って待っておかないとな! じゃあ、また明日な!』
『うん、また明日!』
『じゃあ!』
『じゃあ!』
それから、その生徒さんとは、そこで別れるのだった。

――で、あれから1時間経過して。
(……長い……)
『ハァ……仕方ないか……』
私は、ここで待っていても、一向にちっとも進まないので、願掛けの意味を兼ねて、親に頼ることにしたのだ。
私は、手元の腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)を起動し、ヴーン……とエアディスプレイ画面が宙に飛び出したのだった。
そこに電話帳登録してあった自分家に電話を掛けるのだった。
で、応対に出たのは、母Mom(マム)だった。
それは自宅に備わっているTV電話を回線を通じてのやり取りだった。
『――! ヨーシキワーカちゃんね! 大丈夫ね!?』
『うん、まぁ……なんとかね』
『そっちの様子はどうね!? 道なんか混んどらんね!?
今、父(ダッド)がこっちのTVで見てたところ、今やどこもヒドイ洪水や濁流でどこもやられててね……。
今、どのTV番組を回しても、同じものなのよ!? ……そっちは!?』
『ああ、こっちも似たようなものだよ』
『やっぱり……』
母と父の不安が的中したのだった。
『で、あれからどうしたと!? 普段のヨーシキワーカちゃんの家に帰ってくる時間帯と比べれば、……いつもと違って遅いけども……!?』
『ああ、1時間ぐらいは、ここで時間を潰していたなぁ』
『ああ、その駅でね』
『で、その前は、職業訓練校の方で、少しは残ってたなぁ……』
『あぁ……そこで時間を潰して、その様子を見て、見計らっていた訳ね……それでかぁ……さっきに帰ってきていれば良かったのに……』
『う……うん……』
完全に私の失態である……。
……だが、職業訓練校のカリキュラム上の登下校の時間帯もあって、その時には既に、高速鉄道の運転見合わせダイアが、停まっていたぐらいなのだ。
それは、さっきここにいた彼が証明している。
つまり、先に帰ろうとも、後になってきて帰ろうとしても、結局は無駄なわけだったのだ……。
母はこう告げる。
『ああ、そっちも大雨で酷い事になっているものね!? うん? あなた何て……!?』
『……』
どうやら、TV電話画面の前には、父はその姿を現してはいないが……。
何やら母に、言伝を充てたものだった。
『うんうん……今こっちもTVで見てて、航空機(ボーイングもエアバス)も!
高速鉄道(アセラ・エクスプレス)も!
船舶(スター・バルク・キャリア―ズ ティッカ)も通行止め規制がかかっているもの!
父(ダダ)も同じような意見で、家からは車は出せそうにないみたい……。
これは……当分、通行止め規制が長引くでしょうね……!』
『うん……』
(まぁ、だろうなぁ……とは予想はしていたけどさ……)
それが愚直な私の感想であった。
『今そっちの様子は……!?』
『今こっちも、人がごった返していて、駅員の人に尋ねても、どうにもならないみたい……』
『そう……』
『……』
『う~ん……あたしの妹、次女(エミュシー)の電話番号は知ってる?』
『いやぁ……』
『あっそうか……。ヨーシキワーカちゃんは、ヨッシュタダワカーセと違って、まだ登録してなかったわね……。
あの子は取り次いで回る方は上手いけど……1人立ちしてて……。
ヨーシキワーカちゃんは、まだその時、それを持ってなかったし……』
『はは……』
そう、あの当時、私は弟と違って、まだそれを持ってなかった……腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)を。
できた弟を持って、兄としては非情に苦労する……面子が立たないからだ……。
私は、恥ずかしくも思う。
『フゥ……。……今からその番号を読み上げるから、後でエミュシーさんに電話して、
こちらからも来てくれるよう電話するから、キチンと後で、ちゃんとお礼を言うのよ!?』
『うん……』
【――その後、私は、親戚の姉、母(モム)の妹さんにあたるエミュシーさんに電話を掛けるのだった】
【それから、父や母を通じてのお願いも受けたエミュシ―さんが来てくれて、その人に拾ってもらったのだった】
【そして、その日一日やっかいになったのだった――】


★彡
【母の妹エミュシ―の家】
――その人は、私に取って見れば、母の妹に当たり、私に取って見れば、親戚お姉さんであり、従妹(いとこ)に当たる人だった。
私は、その人に招かれて、今日1日外泊を過ごす事になる。
『……』
私は、参考書を広げて、ベッドの上で寝転がって、勉強していた。
時期的に見れば、親戚のお姉さんから、夕飯を頂き、お風呂にも入らせてもらって、ある部屋で、消防の本を広げながら勉強をしていた時だった。
――その時だ。
『――何で親戚の兄貴が家に着てるのよ!?』
『!?』
それは、階段下から聴こえてくるものだった。声質からして、相当、怒鳴っていた……なんか済みませんねぇ……。
それに対して、階段下から聴こえてくるは、親戚の姉エミュシ―さんの声だった。
『高速鉄道(アセラ・エクスプレス)も、停まっていたそうよ』
『そんなのものしばらく待てば、あたしのように運転再開してたわよッ!!!』
その言葉を聴いた私は。
(はは……なんか済みませんね……)
猛省する思いだった……。……なんか恥ずかしい……。
(タクシー使おうにも、先に母(モム)に取り次いでしまったしな……その後はもう流れ作業で……。う~ん……全体的に見ても私が悪い……)
そう、自分が悪い……。
私は、終始、その親戚の妹さんには頭が上がらなかった……。
その理由は語るまい……。

――しばらく、時間が経ち。
『……』
私は、参考書を広げて勉強していた。
(……あれ? ひょっとしてあの時、マズったかな?)
ハァ……
もう溜息を零すしかない。
私は、長年の秘密が、この時、既に漏れていたのだった……。
(ヤベッ……)


☆彡
――過去から現在に返り、アユミちゃんから。
『――ヨーシキワーカさんの秘密って?』
それについて、答えてきたのはクリスティさんだったわ。
『守護霊の彼女さんにまつわる事柄で、まだ、自分が胎児だった時の記憶を持ち合わせていた事よ』
これには、あたし達も驚くしかなく。
『えっ……!?』
『まぁ、簡単に要約すれば、ポコポコとした羊水の頃の記憶よ――』


★彡
【職業訓練校時代、7月】
【(続2)ゲリラ豪雨と高速鉄道】
――それは、エミュシ―さん家での食事中の風景だった。
それは、エミュシ―さんの娘さんが、まだ帰ってくる前の事で、エミュシーさんと会話をしていた時だった。
『――ヨーシキワーカ君は頭がいいの?』
『……』
(親戚の姉(エミュシ―さん)からしてみれば、その当時の私が、職業訓練校に通っていたのだから、そこでの学力が気になっていたのだろう。
それに対して私は、自分を下にさげて、答えることにした)
『う~ん……下から数えた方が早いくらい……かな?』
(こう言っておけば先ず、それ以上の騒ぎ拡大にはならないからだ。
人の噂とは恐いもので、どこかでその話を聴きつけた別の誰かがいて、
それとなく学校の教室にも伝わり、以後、私を陥れるような企てに1枚噛んでしまうからだ。……それではいけない。
せいぜい、勉強ができる程度の子。
そう、平々凡々な『非凡な努力家』程度の方が、慎ましくも穏やかで、普通の日常を生活を送っていけるからだ。……能ある鷹は爪を隠す。
引いては、なるべく『目立ちたくない』からだ!)
「そう……」
(聞くだけ無駄だったわ……。期待して損した……)
『……』
(なんかごめんねエミュシ―さん。その顔には、ありありと出ていた……。
……だが、ここから私は、とんでもない取り返しがつかないほどの大きな失策を仕出かしてしまう。そうそれは――)
『――でも……記憶力の方は、いいんでしょ?』
(この記憶力、というのが引っかけであって、キッカケだったんだ。私は、思わずこう答えてしまう)
『うん? う~ん……勉強と比べれば、まだいいほうかな?』
『へぇ、どんな風に……!?』
そこには、興味津々の親戚の姉エミュシ―さんがいたものだった。
『昔の記憶があって』
『フンフン』
昔の記憶ね。
『赤い海にいたのを覚えてる』
『……』
赤い海。
『ポコポコ泡立っていて……』
『……』
ポコポコ……まさか……、羊水の頃の記憶?
『……』
『……』
微妙な間が空き。
私は、心の内でこう思うのだった。
(あっ、このまま言うと非常にマズイ……!?)
私は、こう言い直すことにした。
だが、今にして振り返ってみれば、それこそ返って、取り返しがつかない事だったんだ……――)
もう、後悔しかない……ッッ。
『――えーと……母(マム)とへその緒が繋がっている、まだ胎児だった時の記憶かもしれない……!?』
『スゴイ記憶力じゃないのー!? 滅多にいないわよそんな人ッ!! まだ赤ちゃんだった時の記憶を持ってるんなんてッ!!』
『う~ん……』
(完全に失敗だった……。完全に敗着濃厚である……完全に私の負け……)
『違うの?』
『いやぁ……夢で見た記憶だから、曖昧なんだよ……!?』
(私は、そう言い直すことにした、もう現実逃避だ!!)
『あぁ、そう……』
(なんね……夢ね……期待して損して、ガッカリしちゃったわ……)
エミュシ―姉さんは、そう思ったのだろう。
(そこには何だか期待の羨望を上げていて、それとなく夢で見たものかも知れないと告げると……。
一瞬にして天国の階段から踏み外し、地上の眼下に叩き落とされたような従妹の義姉の姿があったんだ……)
夢で済ませたかった……。
『………………』
『………………』
そこには、何だか期待していて、何だかすごい損したような面持ちがあったんだ……。……なんだか期待させちょって、すごいごめんなさい……。


☆彡
――過去から現在に返り、シャルロットさんが。
「す、すごい記憶力ですねぇ……その人……。あたし達の中でも、そーゆう人なかなか見かけませんですよ!?」
そこへアンドロメダ王女様が。
「いや、さすがに作り話じゃなかろうか……さすがに……!?」
「ああ、確かに、その線も有り得そうですよね……!? フーム……」
と考え加減になるシャルロットさん。
そこへ僕が。
「でも何だってその話を?」
とクリスティさんが。
「うん、さすがに出来過ぎよね?」

一同、訳がわからずじまいの疑問符が上がる。
――そこへ、彼の書いた小説の愛読者でもあるエメラルティさんが、こう言ってきて。
「――その記憶を持っていたのは、あくまで守護霊の彼女さんの方なのよ!
『大切な思い出』だからね。原初の記憶とも言って、どこかで、自分に気づいて欲しかったからなのよ?」
そこへ、スバル君が。
「どこかで……!?」
「ええ、ヨーシキワーカさんが、その記憶に目覚めたのは、小学生時代だったそうよ。
その当時に、ホルマリン漬けの彼女さんの肉体の死滅後、
魂の光のオーブとなって、その人に宿ったらしいの。
元々は、二卵性の双子で、その吸収体だったからね。
『双子消失』Vanishing Twin(バニシングツイン)という、双子の1人が消えてしまう――そーゆう偶然が起こっても、
まぁ、不思議と納得ができちゃう理由(わけ)よ!」
異例の事態だった。
『双子消失』Vanishing Twin(バニシングツイン)という、双子の吸収体がいたのだ。
それは、双子よりも、もっと珍しいもので、出生率が少ない例だった。
『……』
スバル(僕)は、その話を聴いていたんだ。
エメラルティさんの話は、こう続く。
『で、その後、小中高と渡り、金縛りにあった事もあるらしいからね!
身体はまったくと言っていいほど動かせず、意識だけはあった……! 目を開けると、不思議と、その金縛りから脱出できることもあった!
それは多分、詰まるところ、自分の所へ、知れず知れず、引き込もうともしたんだとも思うわ。……その彼女さんの方から……」
「……」
それは、守護霊の彼女さんからの案内だった。その手引きだ。
「で、その時に、名付けをしたって経緯(わけ)!
ヨーシキワーカを、一度、アナグラム化させて」
ヨーシキワーカ……YOOSHIKIWAAKA。
「そこから、自分と一緒に生を受け、共に生きた証を遺すために、AKI(アキ)を取って」
AKI。
「よく彼女は、夢の中で、夜空を見上げていたから、宇宙の星々の千の輝きを取り」
宇宙の千。
「チアキと名づけた。……愛称を込めて、縮めてチアってね」
「チア……」
それが彼女の愛称だ。
うん
と頷き得るエメラルティさん。
「――そして、その転機が訪れる事になったのは、そこの職業訓練校時代だったそうなのよ……!
俗にいう、成人した大人が、会社を辞めて、次の会社へ入社する前に、特別技能を学んで、再就職する道の1つね!」
「へぇ~」
「実はこの時こそが、1番のポイントであって、後々、取り返しがつかない、運命の分かれ道(ターニングポイント)だったそうなのよ!」
「運命の分かれ道……」
「いったいどんな……!?」


☆彡
【――その頃、遠く離れた銀河では――】
【スバル暗殺をもくろむ、某組織『アナトリア』】
――純黒の漆黒。静まり返った室内では。
「ホゥ……この2人、また、奇妙な……」
【謎の組織アナトリア コードネーム:『牝馬』Forada(フォラダ)】
それは、ヒューマンタイプの少女と異星人タイプの少女のプロフィールだった。
「これも縁よなぁ……。オフィウクス様のところと、セルペンス様のところか……フフフフフ」
2人の星王様の御膝元だった。
蛇使い座を象徴とする星王オフィウクス様。
同じく蛇座を象徴とする星王セルペンス様。
その御二方のところの信者だ。
「これは失礼がなきよう、先に連絡を取り次いでおかなければな……」


TO BE CONTINUD……

しおり