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第3章の第90話 どうしようもない問題17



★彡
――今日も今日とて、職業安定所に通うヨーシキワーカの姿があった。
職業相談面談ボックスの相手は、今日は、ファウンフォレストさんだった。
左隣には、希望求職者がいて、正体を先に明かせば、おそらく電気工事会社の人。
そして、ヨシュディアエさんだ。
配置は以下の通りだ。
   A               B
ヨシュディアエ       ファウンフォレスト
電気工事会社と思しき人  ヨーシキワーカ
『――何かいい求人はありますか?』
『!』
ヨーシキワーカ君にそう言われたファウンフォレストさんは、
職員用の端末を操作して、半導体製造工場の求人情報を、希望求職者の意思に沿う形で、コピーを取り、用紙にしていく。
その時だった。
バシッ
『!』『!』
『! えっ……!?』
ヨシュディアエさんは、その手を伸ばし、
ファウンフォレストさんとの間にある置き場から、ある1枚の用紙を、勝手に持ち出していくのだった。
『その子には、そんな高くていい求人を出さなくて良かけんね!!」
こっちがこんなに負けてるとやけん! それなのに、ちっともその顔を出さんし、それぐらいで良か!!』
バシッ
『……』
とその電気工事会社と思しき人の目の前に、その用紙が差し出されるのだった。
『……』
『……』
これには、ファウンフォレストさんも、自分も、言葉を失うばかりだ……。
『フフッ、あなたはまだ、あたしの方にその顔を出してくれるけん。
まだ可愛げがあるけんね?
その子の方には、後でその会社に入れて、堕とすけんねぇ……』
と怪しい話を話すヨシュディアエさんの姿があったんだ。
これを見たヨーシキワーカ(私)は。
(……愛も憎しみも、もうない……――)

ナレーションの語り手は、クリスティさん。
応対に応じるのは、アユミちゃん。
【喜怒哀楽。そして愛憎……!! 愛の反対は何?】
【えーと……わかんない……】
【これは、以前にヨシュディアエさんの前でそうした事があって】
【そのヨーシキワーカさんの小説の中に記したあった言葉なんだけど、もう一度、あたしから言うわ】
【……】
【愛の反対は、無関心よ……。もう、興味もないわ……勝手にやったら?】

『ちょっとヨシュディアエ! それはこの子のでしょ!?』
『フンッ!』
そのヨシュディアエさんの悪態の態度は、どうかとばかりに食って掛かるファウンフォレストさん。
だが、そんな事は関係ないとばかりに鼻で笑うヨシュディアエさんの姿があったんだ。
『……』
これを見たヨーシキワーカ(私)は、無言を決め込む。
その心内では。
(――今のは、どうみても、明らかにヨシュディアエさんが悪い……!!
他の人でも、そー言う事をやっていたのか……!?
だとしたら……、職業安定所職員として、公正な判断能力が欠けている……。
それが伴っているとは、甚だ思えない……)

ナレーションの語り手は、クリスティさん。
【傷ついた女心が、表面上に出てしまった形ね……】
【……まぁ無理もないけどぉ……。。何度も幾度も負けて、気分的に落ち込み、精神力がすり減っていたからね……】
【その悪態の態度が……どうしても出ても、仕方がないと言えるのよ?】
【ヨシュディアエさんも、1人の人間だしね……。だけども、その顔は、してやったりを思わせるもの……だったらしいわ】
【……】

『……』『……』
『……』『……』
横に、私がいるという事に、この時は、まだ勘づいていない電気工事会社と思しき人は――
『――あっ、やっぱり何かあったんですか!?』
『ううん、何でもないわよ! だから気にしないで! ……勝手にあっちがおかしいだけだからさぁ!?』
『? そうなんですか……?』
『うん!』
『……』
ナレーションの語り手は、ヨーシキワーカ。
【横の私達には、悪態の態度で接し、そっちの方には、猫の皮を被って接するわけか……。見え見えだな……】
ニコニコ
【それに、おかしいときたか……。まぁ、この場での発言は控えよう】
【ここで立ち上がり、食って掛かれば、そこでおかしいのは、私という立場になる】
【自分で自分を陥れるものだ、そんなヘマはしない】
『……』
チラッ
【ヨーシキワーカ(私)は、ヨシュディアエ(お前)を見る】
【昔は、あなたという表現こそが正しいが……】
【この場に限った話では、それが私としての実直な心情だ……】
『……』
『……』
【そこには満面の笑みを浮かべるヨシュディアエさんの姿があったんだ】
【そして、そのヨシュディアエさんを怪しむ様子の電気工事会社と思しき人の姿も……】
【そこへ、ファウンフォレストさんが、私の代わりに、職業安定所職員としての正しい応対の態度を取ってくれた訳だ――】
『――後でこっちから、あっちの方に話を通しておくからね!?』
『うっ……』
『あんたの話が後で、こっちの方に言ってきても、聞き耳持たんけんね!!』
『ううっ……何でこんなにも、こっちが負けとるとに、その子は何も言ってこないのよォ~!?』
『……』
【そう困り果てた感じで、断腸の思いのヨシュディアエ(お前)がいたんだ……】
【無様なものだ。たった1つ、やり方を間違えただけで、これだ……】
『……』
『……』
【ファウンフォレストさんにしても、何らかの葛藤はあったのだろう】
【今思えば、去年入ってきたようなばかりのような人だ】
【この横の人には、ここ職員としての礼節や応対の態度、職業安定所職員としての希望求人に沿った形のマナーを学んだ事だろう】
『……』
『……』
【その眼は、こう訴えるかけるかのようだ。あなたは、ホントに何も言わないのね……と】
『……』
『……』
【今の私の心情を現わすのならば、ピッタリの言葉がある……】
【虚無】
【それは、失ったものが多く、失った時間はもう戻ってこない……】
【行き着いた先、辿り着いた先の境地が、まさにこれだ】
【一個人としては、確かに若かりし頃のヨシュディアエさんを一目見た時は、内心惚れてたものだ】
【が……今やそれもない……】
【喜怒哀楽愛憎……興味も何もなく、ただただ、無関心の意だ】
【その後、彼女が何をやろうが、特に関心もない……――】

質問を投げかけたのは、アヤネさん。
ナレーションの語り手は、サファイアリーさん。
【――その後、何があったの?】
【その後は、まるで声のトーンが低過ぎてて、上手くは拾いきれなかったそうよ……? ヒソヒソ話って訳】
【え……? ヒソヒソ話程度の、声の低いトーン……?】
【それって、ほとんど何も聞こえないんじゃ……?】
そう、声をかけたのは、アユミちゃんだったわ。
あたし、サファイアリーは、こう答えるの。
【そうね……。ファウンフォレストさんでも、ほとんど聞こえなかったそうよ? ヨシュディアエさんの横にいたって言うのにね……】
【……】
【ヨーシキワーカさんに取っては、隣の人との間に仕切りの上の壁があって、上手くは聞き取れなかったんだって……】
【小声よりも小さくて、か細い声だったから……】
【で、ご自身もその後、重要ワードだけを拾い集めて、無理にでも補完した事があるんだけど……】
【その時の完成度は、目安としては20%程度……】
【でも、途中から、意識を集中して、長時間かけて書いてたことで、第三の扉前に入り、スイッチが切り替わり】
【守護霊の彼女さんの手助けもあってか、どうにかこうか50%台までこぎつけたんだって――】

『――えっ!? まさかここにあの小説を書いたとんでもない人が着てるのか!?』
『……そ、そうかもね……。……でも、さすがに違うとは思うけど……!?』』
『……』
今の私の心の内は。
(ヨシュディアエさん、あなたもしどろもどろだな……。
だが、私という名もなき作家(ライター)が、横にいたという素振りを見せなかったのは、賞賛に値する)


ナレーションの語り手は、サファイアリーさん。
【この当時、ヨーシキワーカさんは、無名だからね……】
【小説家といっても、ウェーブグローバルに小説を投稿していたような人よ? だから、作家(ライター)という表現がピッタリだったわけ……!)


『――おい、上手く口裏を合わせて、話を引き延ばせるぞ?』
『えっ……ッ、また、おかしな話を今ここでするの?』
『あぁ、こんな偶然、滅多にない……そうそうな。
……それに、ホントにあいつが今、この話を聞こえないかどうか……こっちで確かめるんだ。
あのミシマの野郎からの『済まない依頼』も、『中にはある』からな……。
もう、あそこから出してはくれんとは思うが……、あいつの泣きっ面にためだ』
『いいわ……わかったわ……』
【コクッ……と小さく頷き得るヨシュディアエさん】
【対面の相手からの要望もあって、上手く話しを合わせるために、話を引き延ばせる】
【そして、普段のそうした口調よりも、ほとんど聞こえ難いほどの声のトーンを下げるのだった――】
『――えーと……何てどこから言おうかな?』
『ええ……今さらぁ……?』
『あったりめーだッ、いきなりだからな……ッ。
何だって横にいるあの人は、こうも何気ない曜日に着てるんだッ? そうしたチャンスの話は会ってたはずだろ?』
その意見をヨシュディアエさんに伺うが、返ってきた返答は。
『……聞いてないのよそれを……。あの子はまったくと言っていいほど……にね』
『マジか……?』
うん……
と頷き得るヨシュディアエさんの姿があったのだった。


☆彡
【電気通信】
過去から現在に返り、サファイアリーさんは、こう話す。
「――大真面目な話よ! ヨーシキワーカさんが、そうした詐欺電話事件の時に、一度として顔を出した事がないわ!
いつも、対応に出ていたのは、お父さんとお母さんだったからね……!
後た~まに、弟さんが出ていた事もあっていたわ」
とここで、妹のエメラルティさんが。
「何でそうなったのか、わかる!? 順を追って説明しましょうか!?」
「……」
コクリ
と頷き得る僕達、あたし達、私達。
サファイアリーさんは、こう話す。
「詐欺電話事件を起こした首謀者達は、その身内関係の繋がりに優秀な人達が控えていて、その中に『電気通信系の免許所有者』がいたのよ!
特別なモニターや、ハッキング用の端末を使ってね!」
「電気通信系の免許!?」
そう言ってきたのは、スバル君、あなただったわ。
エメラルティ(あたし)は、こう答えるの。
「『はい、そうです』Yes Off Course(イエス・オフ・コース)!
今回の場合に限って言えば、電気工事会社や設備管理関係の協力者たちの割合が特に多いわぁ!
ミシマさんは、電気通信事業の免許を持っていらしてね。
えーと確か……。
『連邦通信委員会』Federal Communication Commission(フェデラル コミュニケーション コミッション)。
通称FCC、電気通信法が1996年アメリカで改正されていてね。
ミシマさん達は、そこを通して、免許を取得したわけよ。
この『電気通信事業者』Telecommunications Carrier(テレコミュニケーション キャリア)の免許を所持している人達は、
さらに、『無線通信事業者』(Federal Radiocommunication Commission(フェデラル ラディオコミュニケーション コミッション)。
通称FRCの免許取得もできちゃうからね!」
「そんなに頭がいい人なんだぁ!? そのミシマさんって人!!」
スゴイ
と感心せざるを得ないアユミちゃんがいたわ。
とここで、恵アヤネさんが。
「そう言えば……日本にも、それ系の免許もあったわね!?」
「!」
一同、恵アヤネさんに振り返り、その人はこう話すのだった。
「えーと……確かぁ……。『ネットワークスペシャリスト』
『電気通信工事施工管理技士』『電気通信主任技術者』『電気通信工事担当者』『陸上無線技術士』『陸上特殊無線技士』等ね!」
続けて、夫のミノルさんが。
「そうだな。後、疑わしいとすれば……。『基本情報技術者試験』
『応用情報技術者試験』『ITパスポート』『データベーススペシャリスト』『情報処理安全確保支援試験』
『Linux技術者試験(Linuc)』『Cisco技術者試験(CCNA)』『AWS認定』『ORACLE MASTER(オラクルマスター)』等だな!
インフラエンジニアの割合が多いな!」
「そうね!」
と相槌を打ち返す妻のアヤネさんの姿があったのだった。
そこへアユミちゃんが、こう質問を投げかけてきて。
「? インフラエンジニアって?」
「情報処理能力、IT関係に長けた技術者の事だよ。需要が最も多いね!
ナビ、AI、フューチャーウォッチ、エアディスプレイ、ホログラム映像、TV電話、ウェーブグローバルと多岐に渡り。
そのシステムのインフラであるウェーブグローバルのサーバー、データベースなどの構築や管理、処理能力などを、
日夜、陰ながら見守っているエンジニア集団の事だよ!
私達の生活のインフラを支えているのは、実は彼等彼女等なんだね!」
それについて答えたのは、ミノルさんだったわ。
これには少女アユミちゃんも、関心の思いで。
「へぇ~そんなスゴイ人たちもいるんだぁ! アユミちゃん、感心しちゃうなぁ~!」
「「フフフ」」
「「「フフフ」」」
恵ご夫妻が、美人三姉妹が、その少女の関心の言葉を聞いて、たまらず、微笑みを浮かべるのだった。
とミノルさんは、こうも続ける。
「……今回の場合は、その悪用と見ていいんだよ!?」
「そっかぁ……『残念な人達』もいたんだぁ……!? あ~あ、アユミちゃん、ガッカリだなぁ~……。ねぇ? スバル君?」
「うっうん……」
アヤネちゃんのその言葉に、少年は軽く頷き得るのだった。
次いで、エメラルティさんは、こう話す。
「人様の小説を見たり、まだ未公開のメモ帳を見たり、作曲途中の歌も、なんやかんやあって、結局は延期しちゃったからね……」
「延期?」
とここで、女医のクリスティさんが。
「そうよ! 『銀の翼』とかね……。……まぁ、あの人が言うには、必要に応じて、こちらも吟味して対処するって事なんだけどね……!?」
でも、アユミ(あたし)は、その歌が気になり。
「どんな歌なの?」
「ヒ・ミ・ツ・よ♪ 医・者・の・クスッ♪」
「フ~ン……」
どうやら医者の秘密らしい……。いったいどーゆうものなんだろうか? 気になるところだ。
とここで、サファイアリーさんが、内心お怒り加減で――


☆彡
【現在はハッキングツールなどを搭載した悪意あるAIナビの総称を、ジャミンガー】
【200年前のハッキングツールの1つが、ピアコム】
「――まぁ、それと言うのも、『ゼーンブハッキング行為を仕掛けてきた人達が悪い』んだけどね……」
といい。
そこへエメラルティさんが。
「『ピアコム』だっけ!? あの人の読みでは……!?」
そこへアユミちゃんが。
「ピアコム!?」
その少女に振り返り、サファイアリーさんとエメラルティさんが、揃って頷き得る。
そして、その2人に代わり、クリスティさんが、こう告発する。
「ええ、アントラローダイトが、逃げるナビを追い詰め、倒したところ……」

斬ッ
鋭い斬撃が、そのAIナビ:ジャミンガーを切り裂く。
断末魔を上げるジャミンガー。
そのまま、爆発四散。
その後、漂うはそのナビを構成していた廃棄情報(ジャンクデータ)だった。
アントラローダイトは、そのジャンクデータを調べて――
『――これは……!?』

「――それからアントラローダイトの調べたところ、
ハッキング用ツールなどを搭載した悪意あるAIナビ:ジャミンガーであることが判明したの!」
クリスティさんが、そう説明して。
次にミノルさんが、こう付け加える。
「ジャミンガーとは、悪意あるAIナビの総称の事だよ!」
うん
と頷き得るクリスティ(あたし)、こう語り部を続ける。
「そのナビをデリートして、廃棄情報(ジャンクデータ)を調べたところ……。
その『原型』となっていたものが、『ピアコム』だったの!
『Peer To Peer』(ピア・トゥ・ピア)技術……! 略してピアコム!
これは、今から200年前、2020年頃初頭から使われていた技術の応用発展型とも取れるものなの!
インターネットに『接続していない』PC(パソコン)やスマートフォンを、『ハッキング』し、
外部から『超音波』で機密データを盗む攻撃よ!
その距離感覚は、おおよそ『5m程度』。
2022年、Ben-Gurionn University Of The Negev(ベン グリオン ユニバーシティ オブ ザ ネレヴァレ)の研究者が発表したものだそうよ!」
200年前から、既にあった高度な科学技術だった。
インターネットに接続せずに、ハッキングできる手口。
それはスマートフォンからパソコンへ、超音波通信により、ハッキングできる優れモノだ。
それが悪意ある人達に渡った訳だ。こんなの決して、許されるものでもない。
これにはあたし達も。
「200年前の応用発展型、超音波で……!?」
「ジャミンガーに、そんなものが……ッ!? 何だってまた!?」
アユミちゃんが、スバル(僕)が驚く。
クリスティさんは、こう答えた。
「待って待って、順番に答えさせて!?」
「!」
「!?」
そう、順序が大事だった。
でないと混らがって、要点がわかり難くなってくる。
言外に、クリスティさんはそう答えたんだ。
「まず初めに、『ピアコム』は、
1台と1台の端末同士を繋ぐ目的であって、超音波無線距離で『5m程度』、機器同士を無線通信していたの。
で、『ピア・トゥ・ピア』は、
機器同士で接続し、設定の同期、ペアリングしていけば、まるで数珠つなぎのようになって、『200m程度』まで拡張が可能だったの。
これは、電気における周波数帯といえるもので、電子のやり取りをしていたからよ。
大気中には、目に見えない電子のやり取りがあって、
その超音波を通じて、空気の震えにより、電子回線のやり取りを講じていたものなの。
人によっては、耳がキィーンとなったりもするわね。
後は、頭が痛いとか」
「あぁ……あるかも……」
「だからかぁ……突然、街中にいても、耳がキィーンとなるのは……それで試してたんだね!?」
うん
と頷き得るクリスティさん。
そこへ横からサファイアリーさんが。
「電子のやり取りだからね、それは周波数帯における空気の震えだから、過度が増せば、『地球温暖化』の要因の1つでもあるのよ!?
これは、学校で習ったはずよね!?」
「そう言えば、倣ったような?」
そう、口を零したのは、スバル君だったわ……。
勉強不足ね……この子。
ハァ……
とサファイアリー(あたし)は、溜息を零したの。
で、クリスティが。
「実は、腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)にも、ホログラム映像出力装置付きマウスにも、
TV電話にも、アンドロイドやロボットにだって、
内臓の『小型マイク』があって、人の耳に聴こえない『超音波』を発し、『機器同士を繋げている』のよ!?
……これは、みんな知っているわよね!?」
「……」
コクリ
と頷き得る僕達、あたし達、私達。
「そして、『第三次世界大戦以降から』は、世界中、どの国、どの地域とも、『ほぼ制限なく』、結び付けるようになっていく。
……これは、何でだと思う!?」
「えっ……えーと……」
「大ヒント! それは人の頭の中であって、対象になってくるのは、大人」
「あっ……! 『チップ』か……!」
「大人の人達、苦しそうだったもんね……!?」
「……ほぼ死んだわよ……その人達……」
えっ……
一同、驚愕だった……。
「あのオーロラ大厄災でね……頭の中に埋め込まれたチップが誤作動が起きて、異常発熱したの……!」
「……」
それには、僕たち、あたし達、私達にも、身に覚えがあった。
そう、あの日だった。あの運命の日――
「――人によっては、多くの幻覚作用を見たそうよ!?
まるで現実の目線と、誰かの目線。それともアンドロイドかロボットか、AIナビかマザーAIのものか……。
とにかく、記憶情報が凄まじくてね……。
一瞬のうちに、脳の処理が追いつかないほど、処理しきれないほどの波が襲ってきて、頭が焼き切れて、ほぼ脳死だったのよ……」
「……」
「患者さんの中には、たったままイカれた人もいたわ……。
……ッ、そして、既に死亡した患者さんを調べるために、
あたし、ドクターイリヤマ、ドクターライセン、あの3人で、患者さんの頭の中を開けたらビックリしていてね……。
面白可笑しく笑い声を上げていたのよ……」
「……」
「ホント、気味が悪い……。あんな連中と知り合い関係だなんて思われていただなんてね……」
「……」
クリスティさんは、まるでおぞましいものでも見たのか、その身が打ち震えていた……ッ。
生理的な嫌悪であり、身体からの拒否だ。
「……」
その身震いの想いのクリスティさんは、僕たちに振り返り、こう告げる。
「あたし達のような大人の頭の中には、『チップ』が埋め込まれていて、それを植えつけるかどうかの、選択の余地がある。
……選ばなくて良かったわ……ホント……」
「そうね……」
「うん……」
「だな……」
「そうね……」
クリスティさん、サファイアリーさん、エメラルティさん、ミノルさん、アヤネさんと順々に応えていくのだった。
どうやらこの5人は、頭の中にチップがないようだ。だから、助かったのだ……。
クリスティさんは、こうも続ける。
「これが、人の動きにのり、それを制限なく、情報のやり取りをしているの。
で、だいたいが、第三次世界大戦以降からと言われていて、世界中、どの国、どの地域とも結びつけることができる。
……ここまではわかった!?」
「うん……」
「だいたいわかった……」
アユミちゃんが、スバル君が、そう言ってくれたわ……。
2人とも辛いわよね……。
そのせいで、自分たちの両親や知り合いを失っているのだから……ッ。
「――奇しくも、あのヨーシキワーカさんの『最悪の予言』が当たった事になるわね……」
「そうね……」
それはエメラルティの呟きだったわ。
で、その妹に相槌を打ったのは、サファイアリーだったわ。
「………………」
あのヨーシキワーカさんの最悪の予言か……。

「でもさ! 何でそんな事になったの!?」

その意外な声を言ってきたのは、アユミちゃんだったわ。
クリスティ(あたし)は、その少女にこう答えるの――
「――『次の世界大戦』に備えての準備よ。『世界国連』のね……!」
「「「「「えっ……!?」」」」」
「簡潔にわかりやすく言えば、例えば……。
先にそのウェーブグローバルの『次世代型』を発明し、世間に公表すれば、『その国の知名度』が上がるでしょ!? ……かってのピアコムのようにね……」
「……」
みんなの関心が、そのピアコムに向く。
世界国連の、裏の見え方が見えてくる。そう、それは――。
「――『生存競争』よ! 答えだけを先に言えばね……。
第三次世界大戦前に、その『国の知名度』が売れれば、『世界各国から同盟の呼びかけ』や、『融資の話』を受けられる。
先にその『登録商法』の『版権』を買い、波に乗れれば、
世界各国との連携の輪が、そうした事前準備がし易くなる!
それは、世界大戦において、情報戦は特に、勝敗の行方を大きく左右する要因とも言えるものだからね……!
……ここまでは、わかるわよね!?」
「……」
コクリ
となんとなしに頷いて答える僕達、あたし達、私達。
「だから、事前準備が目的だったの……。その大戦で負けないためにもね……。
だから、『生存戦略』とも取れるものだったの……! 生きるか死ぬか……だからね……!?」
「……」

【――そして、それがあった……! 時間軸的に、今はそれ以降の話である――】

「――だから、その世界大戦が訪れる前に、国から要請を受けた各々の企業が、それぞれの意見と知恵を出し合って、
より優れたものを作ろうと誠意を尽くしていたの。……自分たちの子供や孫世代を護るためにもね……。
それは口外無用であって、守秘義務が課せられていたの」
「……」
「……国からね……。
周りの諸外国に、その革新的な技術が漏れると……、『敗走』になるからね……。
だから、それを護るためにも、問題で済ませようとする、陰ながらの動きがあった……!」
「それがどうしようもない問題なんだね……!?」
「ええ、自国民には、決して明かせない『秘事』だからね……。
トップシークレット中のトップシークレットよ! ……国の生命線にも、懸かってくるからね……!?」
「……」
ドエライぐらいのトップシークレットだった……。
よくあの人は、それに関わったものだ……。
クリスティさんは、続けてこう語り部を続ける。
「内密に、その先駆けた技術革新の波に乗り、それを『試験的に試す必要』があった……!
で、対象となってくるのが、ハーバード大学姉妹校のその職業訓練校であって、講義の場を受けていたすべての生徒達が、そのターゲット層。
ミシマさん達は、その企業の闇ルートを通じての『入手』と『試験的私用』に他ならない。
問題を通して、それを試験的に試す必要があったの」
「……」
黒だ……
誰かが、そう言ったのが聴こえた気がした。
金まわりのいい話に、みんなが飛びついたからだ。
だから、そうした折、悪意ある誰かが、それを仕掛けた事になるんだ。問題という形で、どうにか済ませるように……ッ。
クリスティさんは、続けてこう告発する――
「――ピアコムは、2020年代初頭から、既に実在していたものなの……!
その後、ピアコムは、第三次世界大戦時代を経て、ネットワーク回線とは、また別のネットワーク回線技術の礎(いしずえ)を担っていく……!
当時、インターネットと呼ばれるものがあって、それはサーバーを介して、複数の端末を、そこにアクセスするタイプのものだったの。
第二次世界大戦の悲劇が産んだ最先端の科学技術ね……!
そして、第三次世界大戦では――」
「――そのピアコムが……か……」
「ええ……その革新的な技術は、端末と端末を結びつけたものであって、『サーバーを介す必要がない』ものだった……。
『エアギャップ・ネットワーク』とも呼ばれていて、
その先史文明の機器端末である、パソコンやスマートフォンを、
向こうでハッキングした事がある端末であれば、そのやり取りを通じて、その端末にマルウェア等を残し、感染させる事ができる……!
まるで、置き土産のようにね……。
後で、ゾンビパソコンやゾンビスマートフォンの要領で、その複数台の端末を踏み台にし、対象の機器を外部から攻撃できるの。
『設定の同期』ともいってね、『ペアリング』を組みわけよ!
被害を受けたヨーシキワーカさんが言うには、未公開メモ帳のファイルの消去や、そのメモ帳の一部分の削除、文字の誤字・脱字・編集も可能。
つまり、書式の『書き換え』もできちゃうのだから……、
これが世界大戦になったら、敵国は、とんでもないぐらいの被害を被る訳よ……!!!」
「……」
ゾッ
と戦々恐々する想いだった……。一同、顔が青ざめる思いだ……ッ。
そんな革新的な技術が、あの人に向いていただなんて……。
あの人は、それに勝ったのか? 負けたのか? よくわからないが……なんかスゴイッ。
「対処方法はないの!?」
そう言ってきたのは、アユミちゃんだったわ。
「……残念ながら、それがないのよ……。
向こうには、上からの『威権指示』や『マスターコード』みたいなものがあってね……。
国からの圧力がかかっている以上、下はそれに従わないといけないわけよ!?
だから、『アカウント詐欺』や『個人用電話番号』が、主に使われている形跡があって、
どこかの国の諜報員を、自国に招き入れた際、
余計なトラブル防止のために、眼を光らせている訳よ!」
「……」
「アカウントであれば、マイクロソフト社やグーグル、Yahoo。
ウィルスセキュリティソフトであれば、トレンドマイクロ社やノートン、カスペルスキーセキュリティ。
あと、電話局等にも、闇子がいるから、その内部犯が、個人情報保護法を護らず、
外部に漏らしていた訳ね。
国の職員であれば、それが事件性だと判断されれば、誤った形で、盗用される危険がある訳よ!?
それが問題作り、どうしようもない問題であり、金まわりのいい話に通じるものであって、
国の陰で隠れて、その国の威光を借りる形で、ドクターイリヤマ達が、その陰で暗躍していた訳よ!
後、ミシマさん達であれば、電気工事士である以上、電気工事施工の時、予め仕込み、後で周波数帯のブーストもできちゃうわけ……!!」
「……」
国、学校、職業安定所、企業の中にいる一部の人が、グルだった訳だ。
それを問題で試しつつ、研究を進め、調査報告書をまとめていた事になる。
ピアコムという5m程度の超音波攻撃で、大事なデータが欠損されて、あの人のまだ未公開のメモ帳が、穴凹だったわけだ。
しかも、その5mも、電気工事士であれば、企業の闇業者を通せば、そうした裏の商品を取り寄せ、取り付けることもできる。
「恐いなこれは……」
「ええ……」
そう言ってきたのは、ミノルさんにアヤネさんだったわ。
で、横からエメラルティが。
「だから、1番の被害を被るのは、『知的財産権』の侵害を被った方々だったのよ……。
マンガ家、イラストレーター、小説家、そして作曲家等ね……。……何でだかわかる?」
「えーと……自分の作品を横取りされちゃうから……!?」
「それだけじゃないのよ……。
作曲家であれば、自分で考えた曲名があっちの人に盗らちゃうから、『版権を奪われた』ようなものよ!
決して、これは他人事じゃなくて、みんなに言える事なの!!
だからあの人は、自分の将来よりも、周りの助け合いの輪の為に、小説(それ)を公表したわけよ!!
これは絶対に許しちゃいけない!! もう問題事で済ませられない事件だったのよ!!
その後、ヨーシキワーカさんの人生を大きく左右するね――」
「……」
それがあの人の賭けだったの……。
あの人は、とんでもない事件に巻き込まれた経緯(わけ)だ……。
エメラルティさんも、それを知った時は、心が圧し潰れそうだった。
もちろん、サファイアリーさんも。
「……」
無理もない、ヨーシキワーカさんとは、顔見知りなのだから……。
「……」
そして、クリスティさんは、その顔を上げて、こう語る――
「――で、第三次世界大戦以降、既存のネットワークだけではなく、その超音波通信技術、『ピアリングウェーブ』が普及していったわけよ!」
「あたし達のウェーブグローバルは、その後かぁ……なるほどなるほど」
アユミ(あたし)は、納得の理解を深めるのだった。


☆彡
【ハッキングの手口は、色々な嫌がらせにも使える。それが偶然に見せかけた騙しの問題作り】
――次にエメラルティさんが。
「――クリスティがここまで言ったんだから」
「ムッ」
とくるクリスティさんがいた。
次女が四女に呼び捨てにされたからだ。……まぁ、無理もない……。
エメラルティさんは、こう語り部を続ける。
「後は、自ずとわかりやすいはずよ?」
「……」
「……」
僕たちが、あたし達が、私たちが、その視線を向ける。
それは、クリスティ(あたし)の説明が、土台となっているからだ。
エメラルティさんは、こう語り部を続ける。
「ミシマさん達はねぇ、連絡網を通じて、腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)等で、裏でやり取りをしあって、タイミングを合わせていた訳よ!」
「このタイミングが命だから?」
「フッ、正解!」
そう言ってきたのは、アユミちゃんだったわ。
エメラルティ(あたし)は、こう続ける。
「特殊なモニター画面を見ながら、
そのハッキング行為を仕掛けてきた人達は、ヨーシキワーカさんのお宅に、
腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)が『2つ以上』集まっている時のタイミングを見計らってやってたわけよぉ……!
だから、そんな偶然みたいな事が折り重なり、おかしな事態が相次いで引き起こされていたって所以(わけ)……!」
とここで、横からサファイアリー姉さんが。
『問題に見せかける』ためにもね~ェ……!?」
と言ってきたものだわ。
引き継いで、サファイアリーさんが、こう話してきた。
「まぁ、こんな事は、『就職活動の一環の折』、どこかの誰かが、どこかの企業を受けるために、希望求人を出したとするでしょ!?」
「うんうん……」
「そこへ、その人が、ゲームコーナーや、マンガ倉庫等へ、例えば行っていたとしましょうか!? 仮に……!?
……どうなると思うー!?」
「えーと……わかんないや……」
あはは……
とアユミちゃんは、早々諦めたわ……。
で、スバル君はというと……。
「……」
う~ん……う~ん……うう~ん……!?
ありゃりゃ、やっぱり、これは、スバル君であっても、似たようなものね……。
わかんないか……なら、しょうがない。
「例えば、どうしようもない問題の講義を聞いていた人がいて、その職業訓練校を修了後、しばらく、就職できていないと仮定しましょうか?
そこへ、不適切にも、そう思わせるように、そこで電話がかかってきたら、相手方は、どう思う!?」
「あ!?」
「そう、そこでは、何らかの音がしてるんだから、ホントにその人は、就職活動をする気概がある人なんだろうかどうか!?
勘ぐる事ができる訳よね!?
実は、誰か横繋がりがいて、その人達繋がりで、ハッキングができそうな人が、もしもいたら……!?
設備管理の人や、電気工事会社の人だったらどうなる!?」
「……」
「故意的に、その人を墜とすことができる訳よ!?
また、あちらから、腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)に不正アクセスして、
その端末の電源を、強制的にシャットダウンさせることだって、できる訳!!
充電率30%でも、充電率60%の状態でも、あちらからハッキングして、強制的に落とすことができる訳よ!!
また、腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)の動作が妙に遅い……。
充電率の減りが、妙に速い……。
カメラ機能が、勝手に機能して、あっちの人達に写真を撮られていたり、動画撮影されていたりと、
故意的にされていたわけよ!
だから、あの職業訓練校のあの場で、その先生方から講義を受けていた修了生たちは、こう思ったはずよ!
あぁ、これはあの問題なんだなぁ……ってね!?」
「……」
「だから、偶然に見せかけて、おかしなぐらいのやり口で、よく手の込んだような『騙し』だったわけよ!」
「……なるほど」
「……要は、そーゆう訳だった訳ね」
これに、関心の思いを示したのは、ホテル経営者の恵ご夫妻の姿だったわ。
何かそうした事でもあって、どこかの誰かに聞いて、尋ねられたことで、思い当たる節でも、あるのかしらね?
サファイアリー(あたし)は、続けてこうも語ったの。
「頭いいわよねぇ~あの人達も……!?
だから、お父様とヨーシキワーカさんの赤印が、マイホームに集まっている時に狙ってたらしいよぉ~!?
で、その時に、フューチャーウォッチかTV電話の方に、その詐欺電話事件が掛かってきて、
いつも、そうした応対に出ていたのが――お父様とお母様だったわけ!」
「……」
「偶然に見せかけるためにもね……。そうしたチャンスの話があっていたんだけども……」
「……」
コクリ
サファイアリーさんが、妹のエメラルティさんの方に振り向き、
そうした意に勝った動きになりよう、頷き得るのだった。
エメラルティさんが、こう話を語り継ぐ。
「この時、ヨーシキワーカさんは、寝ているか? 小説を書いていたか? お風呂に入っていたか? お外で何らかの作業をしていたらしいわ?
そして、忘れてはならための後学として……。
その時、ヨーシキワーカさんが、家(ホーム)にフューチャーウォッチを忘れていったら……、……どうなる!?
取次ぎ成功する~? 成功しない~? どっち!?」
そう尋ねられたあたし達は。
「そりゃあ失敗するに決まってるわよ……!」
とハッキリ断言した。
その質問に答えたのは、アヤネさんだったわ。さすがね。
これには妹のエメラルティに代わって、サファイアリー(あたし)も。
「ご明察!」
フゥ……
何を当たり前のことを言うのとばかりに、あたしは吐息を吐き出す思いだったわ……。
サファイアリーさんに代わり、次に、エメラルティさんが、こう続ける。
「何かそうしたおかしな事態にも成り兼ねないよねぇ……!? 例えば、食料品などを買いに、買い出しに行ってた場合は……!?」
「なるよそれ……!」
「ご明察! さすがね! スバル君 それにアヤネさんもね!」
「……」
「……」
何となくうれしい思いのスバル君に。
姉のサファイアリーさんに代わって、この娘(こ)は、アヤネ(あたし)を褒めるのだったわ。
エメラルティ(この娘)は、こうも続けたの。
「また、ホームの2階にいる時や、地下にいた場合も、同様に必ず失敗するけどね……」
「それはそうだ……」
とミノルさんが、それを告げる。あって当たり前だからだ。
エメラルティさんは、こう続ける。
「また、そうした関連の話があって、お父さんとお母さんのご友人の方が、TV電話を通してやり取りしている時に、
そっちの方にヨーシキワーカさんが、偶然にも来た事があっていたんだけども……。
それも、2回か、3回ぐらい音がしていたんだって。……何か変な話じゃない~~!?」
「確かに……!」
「実はね、後々になって、ヨーシキワーカさんが告白すると……。それはホームの仕切り、間取り上の問題だったそうよ!
相当、奥まった部屋にいらしていたのね……」
エメラルティ(あたし)は、昔のあの人の身を案じる思いだわ。
こう、軽く頬に手を当てちゃってね。
と次にクリスティお姉さんが。
「――そして、一切連絡の取れないすべての連絡手段を絶った人がいてね……。アヤさんって、言うんだけども……。
その音信不通の相手が、その仲間達だと思うんだけど……。
そのヨーシキワーカさんの赤印を、ワザとあるように見せかけていたそうよ~!?」
「えっ……何でそんな事が起こるの!?」
これには、アユミちゃんも、驚いていたわ。
エメラルティ(あたし)は、こう続けるの。
「さあ? そこは考えてみたら?」
「考える……? う~ん……」
考える一同。そんな時だった。
ピコーン
と何事かを閃めいちゃったようにアヤネさんがいて。
「どうにも怪しいわね……、何でそんな事が起こるのか……!?」
うん
と頷き得る一同。
クスッ
笑うエメラルティさん。アヤネさんは、こう言の葉を唱える。
「――この案件には、実はそうした『裏話』がありそうだわ……。
この名探偵アヤネの推理通りなら……そう、そのカジノの後の話が、どうにも怪しいわ!?」
オオオオオッ
と一同関心の思いで買い、その恵アヤネさんを称えたんばかりの感心の声だった。
「さすがね……アヤネさん、お見事!」
「さすがアヤネ! 大したもんだ!」
「ケイちゃんのお母さん! すごい~!」
と次々と称賛の声が上がる、クリスティさん、夫ミノルさん、少女アユミちゃんのものだったわ。
これにはあたしも照れくさくて。
「へへん、まぁね~! ……で!?」
「その話を語ったら、つまらなくなるから……飛ばしましょうか!? なんか話が混んがらちゃいそうだからね……!?」
「あら……!?」
ガックリ……
と気を落とす思いのアヤネ(あたし)がいたわ。まぁ、仕方がないかな……。
ハハハ……
空笑いを浮かべる一同の姿。
それを見たクリスティさんは、続けてこう話すのだった。
「その身内関係の中に、ドクターイリヤマ、ドクターライセン、ミシマ、ヨシュディアエ、他……に連なる、繋がりのありそうな人達がいて、
向こうで、気を利かせていたそうよ!?
だから、失敗の連続だったらしくて……。あっちは完全にバカを見ていた訳……!?
何でそうなったと思う!?」
「ヨーシキワーカさんに、直接電話やメールをしてなかったからでしょ!?」
「恥ずかしい書店でも、そうした話が上がっていたよね!?」
そう答えたのは、アユミちゃんにスバル君だったわ。
「ええ、そうね! 良く覚えてるじゃないの、アユミちゃんにスバル君!」
「エッヘン!」
と鼻高々のアユミちゃんがいて、スバル君が。
「また、一個人にとても負えないものなら……、僕やアンドロメダ王女様やシャルロットさん達のようにそうして、組織を関わらせる必要がある……!」
「……」
「僕という一個人よりも、組織という名義を出せば、相手方からのそうした対応の変化もあり、いくらか交渉事も変わってくるからな。
それが社会だ。
同義で、組織と組織という横の繋がりを持って、いくらか柔和に穏便に済ませることもできる。
相中に立つのが、そうした仲介にである、シャルロットさんやヒースさんだと言える」
「ど、どうしちゃったのスバル君……!?」
「つまり、こう見て取れる!!
その職業安定所に、日時と時間を指定して、会議室にヨーシキワーカさん達を呼び出してやれば、
まだそうした問題という体もなり、合法的にも、講義的にも、まかり通る。
それが法の執行力だ!
その相中に職員さんを立たせれば、法的制裁措置を取り、そうした外交上の圧力がかけやすいんじゃないかなぁ!?」
「……君、ホントに小学6年生……!?」
これには、大人の女性のエメラルティさんを推しても、驚かんばかりだ。
スバル(少年)は、こう続ける。
「いやぁ……これ、ヒースさんやシャルロットさん達と一緒にいたからね……」
「あぁ、なるほど……」
と納得のご理解を深めるのだった……。
受け売りは、ヒースさんやシャルロットさんからのものだ。
もう少年は、小学6年生でありながら、大人のそうした世界に、一歩先んじて踏み出していたのだった……。
完全に、他の地球人一同は、脱帽ものである――


★彡
ヨシュディアエさんは、こう話す。
『――向こうの親父さんが、それを握り潰していたそうだからね……。
こっちでも、今向こうにいる女の人が、あなたの位置からでも見えるとでしょ?』
『あぁ、見えるな……って、あの人がそうかぁ?』
そう、あの人がファウンフォレストさんである。
『……』
その人を見ている、電気工事会社の人と思しき視線に気づき、ヨシュディアエさんは、こう話す。
『その小説の中に書かれていたものがそうなら、そうなんじゃないのー?』
『うへぇ~……ホントに、こんな所に、今あの人がいたのか?』
『……そこまで凄くないわよ?』
『えっ? そんな事言えんのか? ここまで書いてて?』
『あったりめーでしょ? 何をバカな事を言ってんのよッ。こっちはこうやって何度も負けててあげてるのに……。
ちっともそこから、その顔を出さないんだからね? いい年こいてて、臆病者なんだからぁ、てんで大したことないわッ』
『……』
(ホントにそうか……?)
【――電気工事会社と思しき人は、ホントにそうなのだろうか甚だ疑問に思えるほどだった……】
【相手方のそうした心情までは、汲み取れないからだ】
【感情論や心理状態の駆け引きである――】
対面の相手のヨシュディアエさんは、こう話しかけてきたんだ。
『でもあなたなら、特別よぉ~!?まだ、そうして、その顔をあたしにだけ、見せてくれるけんねぇ……?』
『……』
電気工事会社と思しき人は、不信感を募らせる。
そうした警戒の目を、あなたに向けていた。
『まぁ、あの後から、あたしの所へ来る子達が減っちゃってて……。今なら、あなただけ、特別に見て上げられるわぁ~。
で、今回はどういった用件で、こっちにその顔を覗かせてくれたのかしら?』
『……』
怪しさビンビンだな、姉ちゃん。
フッ……
とほくそ笑む電気工事会社と思しき人(俺)。
そのヨシュディアエ(あんた)の声を聴き、その心の内で。

(誘いの暗示……勧誘の手引きだな? 姉ちゃん? ハニートラップも……もうその年齢的に無理があるだろ?)

『……』
そこには、満面の笑みの姉ちゃんがいた。
電気工事店会社と思しき人(俺)は、ここがタイミングだと思い、左腕にかけていた腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)を外し、
対面の相手に差し出して、
スッ……
エアディスプレイ画面を出力させるのだった。
ヴーン……
中空に投影されるは、エアディスプレイ画面だ。
『……あら? これって……。フューチャーウォッチ? ――この窓を見ろって事?』
『――あぁ。あの後、俺たちのそうした連中繋がりが、向こうにいるあの人の親父さんからの『依頼の許可』も『降りて』、
今、あの人の書いていたものを、こっちもそうした経緯があって、通して、『見た』んだ』
『へぇ~。良くあのお父さんの方から、そうした許可の話が降りたものよねぇ?』
『……いや、こっちでもよく、あっちからの応対の話がわかんないんだが……。とりあえず、あっちから見ていいって?』
察し
ヨシュディアエ(あたし)は、そうした横繋がりの、意図した動きを勘ぐる思いだったわ。
きっと、依頼の許可が降りていないのね……。
つまりは勝手にこっちが、またそうした手柄の話を、先に奪りたいのね。……フフッ、わかったわ。
『あぁ、なるほど……そーゆう事?』

――とここで、ファウンフォレストさんサイドでは。
『――あっ……!?』
『……』
ゴゴゴゴゴ
憤怒のオーラが高まっていた。だが……。
それに気づかなかったファウンフォレストさんは。
『やっぱり、これって聞こえていないんじゃあ……? 今、こっちもそうした横からの声が聴こえ難いし……』
『! ……』
シユウゥゥゥ……
と高まっていた憤怒のオーラが、落ち着きを取り戻していく……。
何も知らずに、ファウンフォレストさんは、こう語りかけてきた。
『あっちからの音も届いてきて。
そっち方には、隔てる壁もあって、あっちの人からのそうした声も、特に届き難いし……』
『……』
(ごもっともです。正直、取り払って頂きたい……!! それか、会議室をそちらで用意してもらってね!?)

――所変わって、ヨシュディアエさんサイドでは。
『――えーとこれは……なんて書いてあると……!? さすがに小さくて、読み難いんだけど……?』
『まだ向こうにいる時に、俺たちもそうして見せてもらったものを、コピーして持ってきたんだが……さすがに読み辛いよなぁ?』
『もう、小さくて、こっちの方にまだ突き出してくれないと、さすがに読み難いわよ……』
『……わかった。じゃあ、要点だけ掴んでいる俺の方から、勝手に言わせてもらうからな?』
『ええ、そっちの方が助かるし、いいでしょうね?』
『うしッ、じゃあまず……。あいつはあの後、あそこのあの職業訓練校であった事を、もう一度、思い出そうとして、ここに書いたんだ』
『まだあったの!?』
これにはあたしも驚いたわ。
あなたはこう言うの。
『あぁ、実はあの後、まだあっていたみたいなんだよ……。
あの逝かれた講師が、出入り口付近で立ち話があってな……。
そこであいつは、『金まわりのいい話』と、そうした『古い連絡網』の話をした事があってたみたいなんだよ……。
そこを俺たちの電気屋関係の連中が、またそうして『連絡網』を取り次いで回っていって、『辿って』たんだわ……。
今あそこにいる奴のその時の奴等に、それを見せて、それを聞き出してな?
その言質を取って回っていたんだ……まぁ2、3人ぐらいは、そうした現場を見たと言っていた奴がいたぐらいなんだぞッ。
良くそんな事、覚えていたな――ってあいつ等も感心してて驚いていたぐらいだからな?』
『えっ? そんな話あり得るとねぇ?』
『まったく、とんでもないぞあいつ……ッ。それが有り得てていたんだよ、こっちも今ビックリこいたさ』
『ハァ……すごっ……』
『うん……』
『その話は、あっちの人達が前にそうやって、見せに着てくれた話もあるけんね……?』
『あぁ、やっぱり、1日出遅れた感じかぁ……』
それは、この一週間の間に、数えるほど起きていた出来事だったわ……。
それを見せに来てくれてた子はね、実はあなただけじゃないのよ……それ知ってた?
フゥ……
とその口から吐息をついたヨシュディアエ(あたし)は。
『あなたはあの会社に行っているからね……。まだそうして働いている分、今あそこにいるあの子と違って、幾分かマシよ?
それにたった2日程度よ? もっと元気出しなさいって』
『!』
『これはこれで、もう仕方がない話よ……』
『そう言ってもらえると、こっちとしても、助かる思いだ……』
『フフフ』

【チラッ……とあたし達は、隣にいるファウンフォレストさんとヨーシキワーカ君の姿を見ては、気落ちするような思惑だったわ……】
『……』
【まだそうして、ここから顔を覗かせてくれれば、まだそうしたチャンスの話があって、あの子も良かったとに……】
【でも、それが往々にして上手く事が運ばないのが、悲しい現実の話だったりもして……】
『……』
【あーあ……なんだって、こんな話になったんだろう……?】
【ムッ……何だか無性に、イラついてきたわ】
『……』
【で、電気工事会社と思しき人は――】
『――……さすがに、まだ出てこないか……?
そこから乗り出そうとして、来てくれれば……。まだこっちとしてもそうした対応が取れるんだが……?』
【そんな期待の声を上げても、無駄よ】
【こっちの方から、また試すんだからねッッ】
『それも前に、あなたとは違って、まだ若い子が言っていた言葉よ?
あの子は、あそこから出てくる気はないのよ!? とんだ小心者とでしょ?
ねえ、いい加減それくらいにして、諦めたら……? 『それに』、あなた達も……?
あたしの方から、また、あっちの方へ回しておくけんね』
『……』『……』
【それは、また別の隣の人達へ向けたものだったの……】
【それは、後ろにもいる職員さん方にも、同様に言える事よ】
【着てたのね、あなた達も?】
えっ……!?
【そこには、驚き得て、振り返る電気工事会社と思しき人(あなた)のすがたがあったわ】
『……』『……』
『……』
【微妙な間が流れたものね……。そっちの方へ顔を向けていた電気工事会社と思しき人は――】
『――着てたのかよ……あんた達も……?』
『……』『……』
『みんなしてここへ……。ってどうせ、こんなの聴こえてねぇよな?』
【そうね。こんなの聴こえてるはずもないでしょ?】
『こんなの聴こえる訳もないし……。またあそこから、その顔を覗かせていないんだから、見える訳もないとでしょ?』
『それもそうだよな……。……あっちへ行ってろよ?』
『……』『……』
そこには、渋々と離れていく顔見知りの人達の姿があったんだった……。
恐らく、打ち合わせのために着てくれたのだろう。
さっきの昼のやつは、なぜか失敗しているからな。
その後姿を、チラッとは見送っていた俺は、ヨシュディアエさんの方へ振り向いては――
『――うへぇ~……マジかぁ……? こんなのもとんでもないぐらい勝っていると言うのに……。
アイツが1番多く勝っているぐらいなんだぞ……? 今までの中でとんでもないぐらいにな……?』
『でもね』
『!』
そのヨシュディアエさんが何かを言おうとしたところで、その話を断ち切って。
電気工事会社と思しき人は、こう告げるのだった。
『このままじゃさすがに、こっちとしても、あいつをいいような形として、どうにかして引き込んで、
まだこっちの電気企業の世界に誘えるんだがなぁ?』
『いや、さすがにあのミシマさんの事があって……、特に嫌そうなんじゃないのォ?
あの子には、あのお父さんも後ろで睨みを利かせているんだろうし……。そんな話誘えるはずもないわよ?』
『さっきに帰っていったあいつ等に、あっちのそうした親父さんに繋げて、1つ筋を通す必要がありそうだなぁ……?』
『イヤ、今度は無理だと思うわ……』
『えっ? なぜ……?』
『だってぇ……あそこにいるあの子の、その小説の中に書いているものを見た事があって……。
その中に書かれていたんだけど……、『初めから全部』『一から上手く説明』してくれないと、こっちとしてもさすがに『ダメ』だなんて……。
こんなのどうすればいいのよぉ……?
こっちはそうして、何度も助けてやったって言うのにィ……ッッ』
『……』
キツイな、ヨシュディアエさん(あんた)も……ッッ。
それはさすがに……俺たちでも、今、俺たちの中には……ッッ。
『……』
『それは、初めから最初に全部は……』
『とんでもないぐらい多いから、さすがに無理よねぇ……?』
『あぁ』
(無理だ……絶対に……ッ)
正直、そう思いたいぐらいだ……。むしろ、泣きたい……ッッ。
こっちにも、あっちの彼女さんみたいな人がいればなぁ……?
『そんな人、探す暇もないし……どうしたもんか……?』
途方に暮れていたぜ。前途多難だな……。
『あの子みたいに、これを書いてくれる人を、まず先に探さないとねぇ……? でも、どこにそんな人がいるのかぁ?』
『………………』
電気工事会社と思しき人(俺)は、それだけを考えて。
『いっその事、あいつに『全部』書いてもらったら?』
『……』
電気工事会社と思しき人(あなた)の言う事は、支離滅裂だったわ……。
案外、アホの子ちゃんかもしれないわね……。頭の上にフラワーが付いてるわよ、クスッ。
『無理ぃ……一度もそうして、あそこに顔を一度も晒してないみたいだし……』
『やっぱり無理かぁ……ここまでやってて、いい話なんだけどなぁ……?』
この頭を掻きむしりたいほどの衝動にかられる電気工事会社と思しき人(俺)。
グシャグシャ
『……あぁ、もう仕方ないなぁ……ホント』
『!』
『こっちがこんなにも、さすがにやっていると言うのにィ?』
『痛く同感よね……』
『まったくだ……ッ。……なぁ、この話知っているか?』
『何を?』
『あの老いぼくれた爺さんの先生は、俺達すら騙していたんだからな……?』
『ええ』
『あっちの方へこっちから突き出してやったさ』
『あら? その話……、ホラ話じゃないのかなぁ?』
『ホラじゃないッ。そんなにも信じられないなら、ほらッ、あんたの方から、その、今、ミシマの奴のいるところへかけてみれば、わかる事だぞ?』

(んっ?)

『まぁ、後で、あんたも一緒に入る事になりそうだがな!?』

(……あぁ、そーゆう事ね)

『アハハハッ、そんな訳ないじゃないのよー!? おかしーッ!』
『フッ……どうだかな?』
『待ってて、今、あのミシマさん家に取り次ぐような話になっているから』
『!? ……あぁ、やっぱりそうなんかぁ……?』
『んっ!? 何かそうしたの!?』
『……いや、何でもない……』
(こりゃあんたも気づいていないな……?)
電気工事会社と思しき人(俺)は、それを見て見ぬフリをするのだった。
『? なんか変なの?』
あたしは、社員用の端末から駆けようとしたところで、それを不思議と踏み止まって。
『ちょっと待ってて』
『……』
コクッ……
と軽く頷き得る電気工事会社と思しき人の姿があったわ。
(……まぁ、そらぁそうなるよな……?)
ヨシュディアエの奴は、自分の個人用、腕時計型携帯端末(フューチャーウォッチ)からかけるのだった。
エアディスプレイ画面は、入り切りの操作があって、今回は必要はない。
その話は簡単だ。後ろの職員や、両隣の職員に、バレるからだ。
PPP……PPP……
ほらぁ、かかった。
『あっもしもし! 今奥さん、あの人の様子はどんなですか!?』
『……今、あの人というより、うちにそうやって帰ってきた長男(あの子)の事がどうにも心配で、
うちに帰ってきた途端、あの階段を上がっていて、こっちからのそうした静止の声を振り切っていったの……どうにもあたしは心配で。
何か周りの方で、嫌な事があったらしくて、
……今、そのお兄ちゃんの様子を持てもらいに行ったら、陰りの方で、蹲っていたところなの。
そう、この子が話していたわ』
それはミシマさんの奥様の声だったわ。

(へぇ~、今そんな事になってるんだぁ……)

『――はぁ、人目を避けて、陰りのところにいる~ゥ!?
それって『あの息子さん』が恐い!? イヤホントに恐いのは、守護霊(あの女の子)!?
えっ!? いったい何のこと!? えっ見ればわかるって!? ……なんのこっちゃ!?』

(クスクス、何ででしょうね~?)

『……』
これには、あたしも畏怖と恐怖を覚える思いだったわ……。
いったい何があっていたのよ。
『えっ!? あの小説が載ってるウェーブグローバルを見ればわかるって? えっ? 何それ? どーゆう事?』
ブッツ……
と向こうから勝手に切られるのだった。
『あっ……向こうから、勝手に切れちゃったわ。……ねえ、いったいどーゆう事なの?』
『フゥ……どうせそんな事だろうと、こっちも思ってたぜ……?』

(クスクス)

『あっ、やっぱりそうなんかぁって、思ってたのよォ?』
『フッ……。あの後で、ミシマのいる野郎の所へ行って、それを見せたら……あの野郎もさすがに、これを見て驚いていてやがったぐらいだからな?
何であいつは、こんなにも平然と、次々と奇跡が起こせるんだァ……ってな?』
『それってミシマさんが……? 自分のした事を認めたって事?』
『あぁ、そうとも言える!!』
電気工事会社と思しき人(俺)は、そう断言したんだ。
『……まさかね……?』


(安心して、あたしも全部は見ていないからさ……。
こっちにはいろいろと制約と誓約と契約と秘事があるのよ? 色々と重いんだからァ!? ……まぁ、言う気も、書く気もないんだけどね……。
お兄ちゃんにも、言ってもいけない事があるんだからぁ? ね?)

『……』
『んっ!? ここを見ろって? ……えっ? 何よこれェ……?』
『どうだ? 何かそうした身に覚えがある出来事はあるか? それとも作り話なのか?』
『えーとちょっと待っててねぇ……』
ヨシュディアエさんはね、その指でタッチして、エアディスプレイ画面を下にさげた形で、それを見ていたわ。
周りの職員さん達には、見え難いようにしてね。
何が書かれてあるんだろう?
あっ、無理だわ……制約があって……。
『……何であの子は、こんな事が平然と起こると……!?
ここに書かれているものが、もし、ホントなら、あたしがここでそうやって、あの子に話した事も、ここに書かれてあるわ』
『やっぱりあるのか?』
『ええ』
『……あるわか……? まぁ、言質として充分だな!』
『……言質?』
『おい、今言った言葉、言い逃れできないんだからな?』
『そんな事するはずないじゃない?』
『言ったな、その言葉忘れるなよ?』
『フゥ……』
と溜息をつく思いのあたし。
知ってか知らずか、ミシマさん達、繋がりの連中はこうやって橋渡ししてるのよねぇ。
『今、言った俺が覚えているんだかな。そうでなくとも、今から俺が、念のために前もって、周りの奴等に伝えてまわっていくんだからな?
後で何かあった時には、そうやって、連絡を飛ばしまわって、
あんたを追い込むことになるんだからな? 覚悟をしておけよ?』
『そうやって、あなた達は今まで、繋がりの連中を辿って、よく『橋渡し』をできてたじゃないのよぉ? 誰のおかげだと思ってるのよぉ?』
『……あんただな……』
『そうね。そんな事、できないから……。まるで言い逃れみたいに、あたしが、そんな事犯すはずな訳ないじゃないのよぉ?』
『信頼が置けるもんか』
『じゃあ、こっちはどう言えばいいのよォ?』
『自分で、そのない頭で考えてみるんだなぁ?』
『ムカつくわね、こいつ……今まで誰のおかげで、美味しい思いをしてこれたと?』
『フンッ、そんな事も、あったのかもしれないなぁ?』
『イラつくわね……』
『……』
『……』
チラッ
と電気工事会社と思しき人とヨシュディアエさんは、ファウンフォレストさん側を見て――

『――さすがにあそこにいるんじゃ、こうした会話があっていただなんて、さすがに後で、あそこには書き込めないだろうからな?』
『アハッ……それはさすがに、いくらあの子でも無理だって……。
こんなにも、『声のトーン』を『低く抑えている』んじゃねぇ~?』
『それもそうだよな……?』
『あたしでも、あそこいたら、聞こえないんじゃないのかなぁ?』
とここだけは、俺もさすがに普通の声トーンで言ってしまい。
『って、あんたでも、やっぱり無理だと思うか!?』
『ええ、さすがに、いくら何でもマグレでも無理がある話よ!』
『俺も、そう思いたいもんだな……」
『? 何があっていたのよぉ……』
『やっぱり、あんたはあれを見ていないのか?』
『あれ? あの子のウェーブグローバル小説の事ォ? そんなの見る必要もないじゃない? あなた達から、情報を渡してもらえるんだしぃ』
『いや。一度はそうして、眼を通しておけ。あそこにはあんなにもわかりやすく書いてやがったんだからよォ』
『バカバカしぃわねぇ……そんなのこっちは見る必要もないって、何度も言ってるじゃないのよぉ?』
『……』
『……それよりもぉ……。……ッ。何だってあの子は、あんな昔の事なのにィ、今でもこんな事鮮明に覚えていたとォ……? ほんに信じられんとよぉ?』
『どうなってんだ……いったい……? とんでもない記憶力だぞあいつ? いくら何でも高過ぎっぞ? そうした水準が?』
『ええ、変じゃないさすがに……? あたしでもさすがに、あなた達のように、まだあの子がそうしたものを持っているなら、まだわかるんだけどさぁ……?』
『……いや、さすがに『この線』は、『限りなく低い』な……』
『何でよぉ!? そうしてそんな事が言えると?』
『あぁ実は……、こっちのそうした連中の繋がりが、向こうにいるあの親父さんに取り次いでて、
そうした様子を、聞き込んだ事があったんだが……』
……ゴクリ
と生唾を飲み込む思いのヨシュディアエ(あたし)がいて、
電気工事会社と思しき人(あなた)が、それを話したのよ。
『そんな様子は、ちっとも微塵も見せた事がない……あいつはあれに、ただ書き込んでいただけだ!!』
『えっ、これをこんなにも書き込んでいた、だけ!?』
『あぁそうだ……。信じられんぞあいつッ』
『嘘よ……そんなの……だって……ッ。こんなにも長く、長文で、これを書いてて……こんなのあたしにだって……ッ、無理よォ……』
『……俺もそう思う……』
『とんでもないぐらい、高い記憶力じゃないのよぉ~……?
もしもこれが、あなた達の言うように、ホントなら……?!
あの子の前じゃ、そうしたどんな悪どい僥倖(ぎょうこう)も、もうこっちは何もでできないって事じゃないのよぉ!?』
『いいや』
『え?』
『だが、どんな野郎にも、そうした『弱み』があって、こっちでいいようにそこを『突け』ちゃえば、要はそうした『使い道(よう)』だ』
『は……?』
そこには、呆ける思いのヨシュディアエ(あたし)がいたものだわ……。
『仕事でもそうだが、あれぐらい記憶力が、とんでもなく高いぐらいんなら、どんな仕事でも、すぐにものにできる!!
今からあそこにいるあいつを連れ回して行って、向こうのあっちの会社の奴等にも、そうした連絡を一報入れて、
俺の隣に、相棒として立たせたいぐらいだ』
『あっそれ? ミシマさん達と同じことを言ってるわぁ……』
『やっぱかぁ……。なんか、同じことを言っているなぁと……。そうした自覚があったんだよなぁ? そうかぁあいつ等と同じかぁ……』
『フフフッ、考える事は、みんな同じね……』
『……フゥ……やっぱか?』
『まぁ、いいんじゃないそれでも? その口に出して言う分には、誰でも自由とやっけんね?
あなたは、まだそうして可愛げあって、特にいい方よ?
逆に今向こうにあの子は、それはないんだし……』
『そんなもんかなぁ?』
『そんなもんよ?』
『――あっそうだ!?』
『!?』
『例えば、今回の出来事が会ったみたいに、俺たちのそうした連中繋がりが向こうの方にもいて、
車で相当離れたところにあいつを連れていくだろ?』
『うんうん』
『そこで2、3人悪い奴がいるから、そうした現場にあいつを紛れ込ませて、
後であいつのところで、それを頼んで、記録の調書を取ってもらえれば、
後で俺たちがそうやって、向こうから盗り立てることが、スゴイ容易なんじゃないか!?
それか、そうなるのが嫌なぐらいなら、後でこっちの方から、警察の方におって報せるぞと脅してな……。
2、3回ぐらいは、そうしたことがやれるだろ!?
それも全部とは言わなくて、必要なところだけを、少しだけ抜き出してもらってな?』
『そんな危ないところにあの子を連れて行くの?』
『……ダメか……やっぱり……』
『ダメよそんなの……危険過ぎる……』
『何で……!?』
『今回の事が会って、あの子、眼を付けられて、マーキングされているのよぉ……。もう周り中から』
『そうしたもんか……?』
『そうしたもんよ……』

(うわぁ……今、そんな事になってたんだぁ……。って2、3回!? 無理無理!! 絶対無理ィ!!
そんなの都合よくできないって!!
って、どんな仕事でもすぐに覚えるねぇ……あ~~それは無理無理! 固執観念が、どうしたって働くものねぇ!?
説明を上手い具合にしてやらないと、いくらうちのお兄ちゃんでも、パニックちゃうわよォ~!?
逆それが、弱みなんだからぁ……ね?)
(いや、それ、臨機応変なんだからな?)
(ゲッ?)
(~~~~)
(印呪は止めてぇ~)

『――可愛げかぁ……あっそうだッ 今日の昼ぐらいなんだが……?』
『今日の昼? ……何かあったの?』
『あぁ、そうした事があって』
『うんうん』
『今あいつのそうした時計の話があってるだろ!?』
『あぁ、あってるわねぇ……?』
『じゃあ、こっちのそうした業界でも何か使えるものがあるんじゃないかと思い……。
どうにかして、あいつを上手い事、この業界にも引き込んで、誘えないかと思ってたんだよ……。……『あの人』を?』
『『あの人』って言わなくていいわよ、別に?』
『そんな訳にはいかないだろ? ここまで書いてあるんだし……』
『~~ッ』
もう頭の中がグチャグチャねぇ。
『どうしてみんな、あの子のことをそんなにも。べた褒めするかぁ~?』
『? ……よくわからんが……?』
『そんな事(こた)ぁこっちもわかってるわよ、仕方がないじゃないのよぉ~もう』
『そんなもんかァ~?』
『こっちにも色々とあるって事よォ~?』
『? その言ってる意味もまるで、こっちはわからんが……続けさせてもらうからな?』
どうぞとばかりに、ヨシュディアエ(あたし)はその手で促してあげるわ。
『こっちはそーんな話し、何も聞きたくもないんだからねぇ、あのクソ坊主……』
『ぼ……坊主って……まぁ、今はそんな歳じゃないだろうあれも……?』
『わかってるわよ、そんな事(こた)ぁ……』
『もう、何なんだァ……やれやれ……前までは、そこまでは口先は悪くなかったってのーにな』
『……』
これはイケないわね……あたしも……。思わず地が出ちゃってるわぁ……。
『まぁ、さすがにこの話を、すぐにあれに載せることはないだろうなぁ? あれに……?
まだ、そうした話を、あの人はあれにいくらかいいものを書いてあったんだし……。
でもぉ……やっぱり、2回か、3回か、そうしたやり取りを通してやれば、あそこにこれを書いてくれるんじゃないのかなぁ?』
とここで、ヨシュディアエ(あたし)は、普通のトーンで話すのだった。
地が出てたわは、さすがに……。
『なんて書いてんだかは、こっちはそうした動き、何もわかんないわよ!?  あの子の考えている事はねッ! でッ!?』
『恐ぇな~姉ちゃん……』
これには電気工事会社と思しき人(俺)も、お門ビックリだぁ……。
『フンッ!』
『……あぁ……そーゆう訳か? 何も言われずに振られちまって……意外にキツイよなぁこれ……?』
『……ッッ』
『ととと! 怒られねぇで聴いててくれよ? なっ? そのままそのまま』
『……』
ドゥドゥ……
と電気工事会社と思しき人(俺)は、怒る番犬をしつけるように宥めるのだった。
『ちょっとぉ~あたし犬ぅねぇ~?』
『……』
汗が滴る思いだったぜ。
犬は犬でも、あんたは地獄の番犬のケルベロスちゃんだな?
……ッ。
なっ、ピッタリなもんだろ?

『――で、上手い事、あの人を引き込めないものかと思って……。
俺達の中で、知り合いの『女関係』を通じて、前にそうした話上がっていただろ?』
『あぁ、上がっていたわね……』
確かに……。
えーと……今年の2月の時期ぐらいから。まぁ、あの子には持ったいない話ね……。
ちっともそこから出てこないからね……。
『2人ほど、すごい美女がこっちの方にいて、もう周りの連中があいつが羨ましいと騒いでいたもんなぁ!』
『……!』
チラッ
と電気工事会社と思しき人(俺)は、この職業相談面談ボックスの向こうにいるあの人に、
興味の関心を示してもらおうと、ワザと低い声ではなく、誰にでも聞こえるような発声で、こう言い放つ。
それは、あたしも目撃していたわ。
『その中でも、『1番』選りすぐりの、『1番』若くて! きれいで!
美しい娘(こ)ちゃんを、紹介してやろうと、こっちから思ってたんだがよぉ!?
一度あれのそうした画像の写真を送られてきてみたら……あれっ!? すげぇ『別嬪さん』だと! みんなして驚いていたぐらいだかんな!!?』
『へぇ~! それは大したものなんでしょうね!!?』
ワザとらしく、あたしも付き合うわ。
『だろ!? 今持ってるからよぉ、見てみるか!? ほれ、この子の奴!?』
グイッ
(とこの電気工事会社と思しき人(人)は、あたしの方にそれを突き出してきたわ。
けど、こっちにも女としてのプライドがあるのよ。
自分よりも輝いている娘を見て、女の劣等感、嫉妬心が現れていたわ――)
『――そんなの見る気もないわよ!! ……こっちはあれ!?』
『どうだ!?』
『へぇ~いいんじゃない!? 中々……!?」
(あの子には、もったいない子よね……。
そもそも、歳が離れ過ぎている。
顔立ちにしても、釣り合いが取れるとは、とても思えないけど……)
『だろ!? だと思ってたんだよ? いけるかこれ!?』
『そうねぇ……。1番……若くて奇麗か……。……んっ!? いけるんじゃない!? いいんじゃないその話!?』
『だと思っただろ!?』
『ええ!!』
(これなら、いくらヨーシキワーカ(あの子)でも、興味の関心を示すはずよね! 問題は、その段取りか……!?)
電気工事会社と思しき人(彼)は、こう言ってきたわ。
『で、お昼方、この娘の親を通して、この子を実際こっちの方に呼び出してもらって、
その着てくれた子を、実際にみんなで一目見たら……!?
ものすごいぐらい可愛い子ちゃんだっただよッ!! 10代の美人さんだったんだよ!
さすがにあいつも、言うだけの事はあるなぁって思って……!
まぁ、あんたなんかと比べて、それは物足りないところがあるが……』
『うっさい!!』
(なんで、おっぱい(乳)ばっかりなのよアンタたちはッッ!!)
『この服の上からでもわかるぐらい、胸は少しあるぐらいだかんな……!
あの子を見た瞬間、誰もがそうで、鳥肌が立っちゃったもんだ……!
どこかのアイドルユニットメンバーのアイドルさんが着てくれたんじゃないかってーな!? スゲーだろアンタ!?』
『……』
『こっちの連中はそうした錯覚を覚えちまったぐらいなんだぞ!? どうだ!? すげー美人さんだろ!?
……あんたなら、いけると思うか!?』
『そうねぇ~……』
(あたしは、エアディスプレイ画面に映る、10代後半から20代前半ぐらいの彼女の容姿を見て……。
確かに、言うだけの事はあるわ。
どこかのグラビアアイドルの雑誌にも似てる。
TVのコマーシャルの告知にも出てる、アイドルユニットメンバーを思わせるほどの美貌と容姿が、抜きん出てるわね……!
この街にも、これほどの高いレベルの娘(こ)がまだ、いただなんて……)
『へぇ~。1番とは言うだけの事はあるわよねぇ』
ここからあたしは、ホントに小さい声で呟きを落として――
『――ちょっとこの娘(こ)がくっ付いちゃったら、後であの子ん家に押しかけていって、どうしちゃってくれようかしら?)
それはとても小さな声だったわ。
隠しきれてないわね、ヨシュディアエさん、あなたは……。
『……何言ってんだ、あんた……? 今の声に出てたぞ?』
『え? 声に出てた?』
『あぁ、なんかそうして悪い事を企んでる顔なんじゃねぇあろうなぁ?
そんな悪ぃ事わぁ、この娘の身にしてくれるんじゃねぇよ……スゲーもったいない話なんだからな?
ここまでの事をやらかしてしまったんだから、後でそうした折り合いの話をつけちまいやがって、
後であの子のために紹介するための話なんだからな?
こんないい機会の話、もう二度とはないんだからな?』
『誰に言ってんのよ?』
『……聴こえねぇか……さすがに……。こっちのそうした会話の声は?』
と、あたしはその娘(こ)の顔写真の画像データを見て、
『まぁ、いけるんじゃないのー?』
『! だと思うだろ!?』
やっぱり、この娘を選んで正解だった?
『ええ、……でも、さすがにこんなレベルの高くて1番若くて美人な子を、あの子に紹介するのは、もったいないんじゃないの?
まだ、そうして、あの子には、こっちの方から低い娘(こ)を充てた方が、喜ぶんじゃないのかしらぁ?
……その娘の為であるんだしぃ……』
『まだそんな事を言える立場なのか!?』
『だってーー』
『ハァ……振られた女の話か……難しいなぁ?』
『……』
『だがそんな思いは、頭の片隅にでも置いておけ!
でないと、こっちの話が、ちっちも進まないじゃないか? ……わかったな?』
『ハァ……しょうがないわね……』

ナレーションの語り手は、クリスティさん。
【スバル君は、同じ男の子としてどう思う?】
【どうって……?】
【いきなり、アイドル級の女の子を紹介されたらね?】
【……】
【……】
一同の視線が、たった1人の少年に向けられる。
それに対し、少年はこう答えるのだった。
【いきなりじゃ……ちょっとねぇ……】
【そうよねぇ……もっと具体的に……?】
【具体的か……そうだなぁ……】
【……】
【怪しさ満点かな?】
【だよね……】
そう呟いたのは、アユミちゃんだったわ。
とここで、クリスティ(あたし)は。
【じゃあ、アユミちゃんの場合は?】
【あたし!? そうだなぁ……いきなり、アイドル級の俳優さんが紹介されたら……】
【……】
【何でだろう? と勘繰るんじゃないかなぁ? スバル君のまったく同じ意見になっちゃうけど……アユミちゃんも、怪しさ満点かな?】
【……じゃあ、体接触によるスキンシップを取られた場合は?】
【いっ!?】【えっ!?】
【可能性がまったくないわけでもないでしょ?】
【う~ん……】
とここでエメラルティさんが。
【これはヨーシキワーカさんの、その後の対応の仕方らしいんだけど……】
【?】
【体接触行為を、女性の方から男性の方へされた場合、丁度、その胸がサンドイッチされるのはわかるよね?】
【まぁね!】【う……う……ん】
同じ女性のアユミちゃんは、物怖じする気配はなく、ハッキリそう答え。
異性であるスバル君は、それを思わず想像してしまい、しどろもどろだったわ。
わかりやすいわね……。
【そうね……今のスバル君の反応が、まさしく正しいわ】
【……】【……】
ジトッ……とアユミちゃんが、僕を見てくるのだった。ジト目で……。
たまらず僕は。
【……ッ】
痛まれなさを感じる。
【実際のところ、ここから3パターンに分かれるの】
【1つは、両想いの異性の場合、抱きしめ合う構図ね】
【……】【……】
アユミも、スバル(僕)も、脳内で抱きしめ合うあたし達、僕たちを想像してしまう。
ほんのり、顔を赤く染める。
【次に、片思いの場合は、まだそうした準備期間が整っていないから、そうしてきた相手を突き放すわね。
その肩を掴んで、引き剥がしにかかる感じよ】
【……】【……】
アユミ、スバル(僕)も、それを想像してしまい、ちょっと残念がるのだった。
それだけ、相手の方を想い合っているという事だ。
【で、3つ目は、それ以外に当たり……。
一方的な恋愛感情なら、キスを迫るか?
もしくは、キス顔をして、そのまま待つか?
もしくは、そのおっぱいを揉みしだくか? お尻を触るか?
もしくは、勢いに任せて、押し倒すか?
ここまでは、一般的ね。
次に、ボクサーや格闘家なら、組んで、ガッツファイトか!?
もしくは、投げ飛ばすか?
相手を、思わずドンッと突き放すか?
もしくは、イヤそうな顔を浮かべて、その女性の方を、退かせようとするか?
もしくは、何にも感じず、爽やかな顔を浮かべて、その場を立ち去るか?
放置プレイのどれかね?
もちろん、これ以外も有り得るわよ?】
【……】
あの御兄さんなら、そのどちらかを取る訳か……。怪しい女の人に、体接触された場合は。
とここで、シャルロットさんが――
【――相手がエイリアンの場合は?】
【え?】【え?】【え?】
【え……?】
【これは実際にあるパターンですが、キスをして、その口内に何かをする宇宙人もいるので、ご注意ください】
【……】
【テヘッ――】

『――よしっ! じゃあ、勧めさせてもらうぞ?』
『……』
『で、こっちでもそうしたその娘を立てるために、セッティングの話が上がっていて。
あっちでそうした様子を、『カメラ』を通して見つつ、あっちの方とそうしたものとを『繋げた』てんだよ。……そしたらどうなったと思う!?』
『どうなったのよ……!?』
『……』
そこにはやれやれの思いの電気工事会社と思しき人(俺)がいた。
手を水平に見立てて、垂れ加減で、やれやれだったぜ……。
『あの娘(こ)が、まだ、こっちの方に、そうして手を振っていた時によぉ。
こっちの方で、そうした機材の準備をしていたんだ。で、いざオンにしてスタートしたら……。
笑顔でその子は、その手を振ってて、
こっちが、その用意したベッドに寝転んでくれたら、
そのスカートをまくり上げて、その中の白いパンツを見せたところで……』
『え?』
ヨシュディアエさんが。

『え?』
『……』
ファウンフォレストさんが、その顔を一時的に、向ける。
ヨーシキワーカは、反応を見せず。

『たったの2、3秒で切れちまいやがったんだよ……』
『それは見たとは言えないわよ……?』

『……フゥ……』
これには、ファウンフォレストさんも、まるで安心したかのような思いで、安堵の吐息をつくのだった。
その心の内では。
(そんな事があってたの……? でも、この場で本人に問い質すわけにもいかないし……?)
『……』
(あっ!? あれかぁ!? スカートの奴ぅ!!
……確か、エアディスプレイ画面にあれが突然現れたんだよな……!?
ウェーブグローバルのマンガの画像データを見てるときだった……。
えーと……指でタッチして、まるでスライドするかのように、画面の中央部近くに持っていて、
もちろん、あっちの操作で。
で、あの娘が可愛い笑顔で、その手を振ってて……、
俺から見て、左後ろ側にあるベッドの上に、寝込んで、
そのスカートに手をかけたんだよな……!?
で、そのままじゃヤバいから、途中で切ったんよな……そうか、あれは白パンかぁ……。
うん、稀に見るぐらいのどこかのアイドルメンバーかのような美人さんだった。歳は見た目で、そう20代前半ぐらいだ)

ナレーションの語り手は、サファイアリーさん。
【――まぁ、これは、先にネタバラシなるんだけど……】
【!?】
【その後、また、そうした事があって、わずか0.2秒から0.3秒の間に、『戻るボタン』をタッチして、切り上げたそうよ】
【0・3秒!?】
【ええ、実直に感想を零せば、そのマンガサイトを閲覧してて、切りのいいところで、タッチして、次のマンガを見たんだって。
これが真相らしいわよ】
【あれっ!? それって……!?】
【ええ、その娘(こ)が、カメラに写り込んでて、笑顔で手を振っていた最中に、戻った事になるわね……】
【ブチ切れたんじゃない? その娘(こ)……?】
【……】
そのサファイアリーさんとアユミちゃんの説明を聞き、少年はこう思っていた。
その現場は、騒然だったんだろうと……。
期待して損して、ブチ切れた淑女を、宥めるために……。


守護霊の彼女は、その心の内で、心の声を投げかける。
(――さあ、どう出る? お兄ちゃん?)
(……)
それに対して、ヨーシキワーカの答えは――


TO BE CONTINUD……

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