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第66話 弓の違い

さてさて、本題は何だったかしら?

『あ、弓だったわよね?』
〖そうですよ。レイの弓も作りましたので試して頂きたいのですが、レイは先程、ワキュウなら経験があると仰ってましたよね?〗
『ええ。でも、私がやったことがあるのは弓道だから、こちらの弓を一から教えて貰うべきだと思うわ。弓道が狙うのは動かない的だし、鍛えるものも心身···不動の心なのよ。弓の長さもね、七尺三寸···二メートル二十一センチ、といっても分からないかしら··』
なんて説明したら?···ん?なんか今、丁度いいのが目に入ったようなぁ···あっ!

『武神様位!とにかく長いのよ!』
〖俺か?そりゃ随分〗
『デカイな。自分よりでかい弓引くのか?』

武神様と龍様が酷く驚いてるわね。そりゃそうよね。エルフさんに渡されたものと全然違うもの

『そうなのよ。しかも、形がとにかくシンプルでね?洋弓···あ、違う国の弓ね。そちらの大きさはさっきのエルフさんの弓くらいよ。それと違ってバランスをとる機能やスコープなんかもついてないし、とにかく前に弓を飛ばすことすら難しいのよ。弓が大きい分、ちゃんと出来れば遠くに飛ぶし、威力もあるけど、実戦向きではないわね。源さんなら流鏑馬といって馬を駆けさせながら的を射ることもできるけど』
凄いわよね、手網を握らずに馬を操って、尚且つ矢を放つなんて。

〖それは一度拝見したいですね〗
『『はい。是非!』』
あ、あら?エルフさんたち復活したのね?

『当然です。我々は弓にはそこそこ自信がありますが、そのような弓は聞いたことがありません』
『ええ。是非見てみたいです』
そ、そう。飽くなき探究心の賜物かしら?気絶から二人して目を覚ますなんて

〖レイ、俺の弓引いてみるか?〗
ぬっと差し出された大きな弓
『武神様の?』
さすがの迫力ね。

〖ああ。俺も遠距離を狙う時ように持ってるんだよ。森の中や障害物がある所じゃ使いにくいがな。障害物をなぎ倒していいなら使えるけどな!わはは!〗

それは森のためにあまりおすすめしないわ···
『でも、その弓を見る限り、握りの位置も違うのよ。和弓は中央より少し下にあるのよね』
きっと引きずるわ。

〖ふむ、こんな感じですかね〗
『え?』
素材に手をかざした工芸神様の手が光ると、弓が出来上がっていた。握りの所に皮まで巻いてあるわ。

〖いかがです?〗
『すごい。話を聞いただけで···』
弓が出来ちゃった
〖そりゃあ、工芸神ですから、この位なら錬成出来ますよ。使えそうならちゃんと一から作りますからご安心を〗
『そ、そう。それじゃあ、そのグローブも借りていいかしら?』
〖構いませんよ。的の距離は?〗

『近的がそのお盆ぐらいの丸い的に、二十八メートル離れた所からで、遠的が一メートル···この位の的に六十メートル離れた所から、だったと思うわ』
身振り手振りで説明すると

〖ふむ。でしたら〗とんっ

『『うわっ』』
『あらあらまあまあ、部屋が長くなったわ』

〖空間拡張ですよ。一メートルがこの位なら、的はあの辺ですね〗とんっ

『あらあらまあまあ』
工芸神様が足をとんっとするだけで次々と面白いわね。

〖何もアクション無しですると、貴方々はもっと驚くでしょう?本来は無しで出来ますよ〗
じゃあ、魔神様の指パチンッもそうなのね?カッコつけてるのかと思ってたわ。
〖魔神は恐らくそちらですよ〗
『あ、あはは?』
心、読みました?
〖いいえ?顔に出てますよ〗にっこり
『え?』
な、なんてこと···

〖まあ、とにかく今はこちらをどうぞ〗
『は、はい。ありがとうございます?』
なぜ、こんなことに?
『『レイさん、頑張って!』』きらきら
『あ、ありがとう』ひく
うわあ、エルフさんの視線が熱いわ···
まあ、とにかくやりましょう

『······ふぅ』
心を静かに···
構えをとって、深呼吸をしてからキリキリと弦を引く


〖すごいですね。一気に自分の世界に入りましたよ〗
〖ああ。精神統一だな〗

キリキリと弦を引く音が···ピタッと止まった瞬間、弓を···シュッ 放つ

タンッ

的を射た音が響く。
『ふぅ、何とか的中。だけどやっぱり』

〖すごいですね、あの距離を当てましたよ。ですが〗
〖ああ。とんでもない実力だが、こりゃあ〗
『確かに実戦向きではありませんね』
『ああ。自分の中に入り込みすぎだ』
『ええ。周りを見て感じなければ自分がやられてしまいます』
『絶対的に安心出来る環境がなければ難しいですね』
見守る神様たちとエルフさんから、厳しい意見

『やっぱり、そう思うわよね』
分かってたわ。

〖まあ、油断している敵に奇襲をかけたりするには有効ですよね〗
〖ああ。こんだけ長距離で当たるなら、火矢を射たりするにもいいかもな。だが〗
『混戦ではまず使えないな』

『ですね。やっぱりもっと素早く数も打てなきゃいけないですしね』

『ですが、その難しい弓でその精度は素晴らしいです』
『ええ。最初は戸惑うかもしれませんが、直ぐに習得できると思いますよ』
エルフさんたち優しい!

〖では、早速お手本をお願いしますよ。弓の使い心地、感想と意見をお願いします〗にっこり

『『あっ!』』ピシッ
あ、エルフさんたち本来の役目を思い出したみたい

〖さ、どうぞ〗にこにこ

『『は、はい』』ヒクヒク
エルフさんたち、頑張って!

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