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真偽


「そう..そんな事が起きてたのね..」

 顎に手を当てローレは考える。

「でもその人の言い方だと、旅に出て行ったオオハラに向けて言った可能性だってあるんじゃないかしら?」

っと言い目線をバレットにやる。



「いいや、あの言い方はまだ村にオオハラがいたはずだ! ローレさんは現場に居なかったから分からないだろうがなぁ....」

 溜まっていた怒りが抑えきれずバレットは感情的になっていた。



「一回落ち着きなバレット、今は言い合うよりもリールーから情報を得るのが先よ」

 メリネの鋭い言葉がバレットを黙らせる。



「ノエルはまだ寝かしておこう。それじゃあリールー、嘘か本当か教えてくれ」

 アルトリウスはリールーに視線を向ける。



 ずーっと黙っていたリールーが遂に口を開く。

「う」

っと言った後、ちょっと間を開けて喋り続ける。

「ほ」

ここからしばらくリールーの口からは単語しか出てこず、全員意味不明な言葉を聞かされる。



 それに耐きれなかったのか、貧乏ゆすりをしていたバレットが立ち上がり、リールーの側に行く。何だか硬い表情で懐からちょっと分厚い本をリールーに渡すとリールーは目をキラキラさせ、正常に話し出す。



「まず一つ目と二つ目の質問は本当。でも、三つ目の質問は本人が行っていた通り嘘」

っと言いながら、本を空中に投げる。すると本は消えた。



(....それじゃあ城に居た不審な人物は別の誰か..か)

っとアルトリウスが考えている中、淡々とリールーは話を続ける。



「彼が言った日本ていう所は本当にあると思う」

 リールーは首を傾げながら言う。



 その曖昧な言い方にバレットは疑問を持ち、問い詰める。

「なんだそのハッキリとしない答えは?」



「上手く魔法が機能しなかった。でも嘘では無い、これは確実」

 リールーの瞳がバレットを見つめる。



「チッ、何だよ日本って....」

 瞬きのしない瞳に負け、バレットは椅子に荒く座る。



「続けて、リールー」

っとローレの声が聞こえ、リールー喋り出す。



「言語が通じなくて勉強した。これも本当、後、アルトに伝えた本の言葉も本当」



「おお! じゃあオオハラさんは本当に三代目様と同じ場所から来たのか!?」

 両手を祈る様に握り、感動のあまり震えだすアルトリウス。



「そしたら本当にオオハラは村の悲劇に何も関係ないって..事?」

 メリネの不思議そうな声が部屋に響く。



 静まった部屋にリールーが再び淡々と喋り出す。

「....一つ気になる嘘があるよ」

その言葉を聞いた瞬間バレットの瞳が燃え、リールーの瞳に熱い眼差しが来るが無視し、続ける。

「確かに村を出てマイクっていう人物に出会うのは本当だけど、村の人達に感謝を伝えた。これは嘘」



「んだよぉ~、そのショボい嘘わよぉ~」

 熱が冷め、見てわかるぐらいの残念がっているバレットは体をグッタリとさせる。



(..何でそんな嘘を付いたんだろうか?)

 一旦冷静になったアルトリウスは静かに無言で考え込む。



「う~ん、もしかして一部の人にしか言って無かったとか..?」

 ローレの意見に続く様にメリネの意見も飛んでくる。



「それか、言えない状況だったとか?」



「あぁ? どういう事だメリネ」

 頭が回らないバレットは自分で考えず、聞いてみる事にした。



「オオハラは村の人達に感謝を伝えようとした時、彼女が悪魔かしてしまい村の人達は火で焼かれてしまった。そしてオオハラは命からがら村を脱出でき、マイクに出会う。ていう私の予想だけど、どう?」

 メリネは自信なさげに首を少し傾ける。



「おいおい、それだと何でオオハラはその出来事を黙ってたんだ? あいつは絶対悪魔化に関わってるはずだ!」

 迫真にバレットはメリネに訴えかける。



「ちょっと! そんな熱心に言われてねぇこれは私の憶測! もっと色んな情報があったらより詳しくなっただろうけど、うちのね~ダメ勇者ね~....」

っと痛々しい目がアルトリウスに向けられる。



「いやあ! 仕方ないよ! だってあの三代目様と何か関係があるかも知れないんだよ!? それにそれに....」



 また熱く語り始めるアルトリウスを見てメリネは頭を片手で抱え、首を横に振る。



 そんなメリネを見たバレットは少し呆れ気味に言う。

「アル~少しは状況を見てくれ..俺達は平和を取り戻す為に旅をしてたんだ..。まぁ俺が言うのは何だけどよぉ、真面目にやろうぜ。いくら平和だからっと言って、油断をしていいわけじゃあないんだぞ」



「....」

 今まで見た事もないバレットの真面目な顔を見たアルトリウスは、自分の方が気が緩んでたんだな~っと思い、自分の愚かさに悔しくなり体に力が入り、スイッチを入れ替える様努力する。





「ふぁぁ」

 あくびをかきながら体を起こし、片目を掻く。

「あれ? 皆おはよ~」

寝起きみたいな声が聞こえてくる。



「起きたかノエル」

っとバレットの声が聞こえた後、扉が開く音が聞こえる。



「ローレさん、器具洗い終えました」

 扉が開き、そこから大原の姿が見える。



「あら、もう終わったの!」

 何一つ曇りのない笑顔を大原に見せ、皆に聞こえるよう声を出す。

「さて皆、今日はもう遅いからお家に帰りなさい。..アルちゃんちょっと、フロンティーネのとこに行ってあれを取って来て欲しいの! いいかしら?」



「え? でも..」



「いいかしら?」

 優しいローレの瞳だが、どこか強い意志を感じ取れる。



「分かったよお母さん」

 渋々アルトリウスは受け、部屋を出て行こうとする。



「じゃあ俺が....」

っとバレットが何か言おうとする前に、手を大きく叩く音が部屋に響く。



「さあ! 解散、解散!」

 変わらず笑顔のローレが大原以外追い出すような形で、アルトリウス達を浮かし強制的に外へ追い出す。





 静まり返ったこの部屋には今ローレと大原以外誰も居ない。

二人は一言も喋らず静かな時間が進む。



 さっきまで笑顔だったローレの横顔は真顔になり、大原をまじまじっと見つめてくる。

「..一つ、質問いいかしらオオハラ....」









 テーブルの上に勢いよくジョッキ樽を置く音が聞こえる。



「くっそ、マジいけ好かね! 何であいつとローレさんを二人きりさせるんだよ! 俺は大反対だぁ~!」

っと力なくバレットはテーブルにうつ伏せになる。



「あんたの気持ちすげ~分かるよ。ほんとっ! あの三代目信者勇者は自己中なんだから..」

 そう言いメリネはつまみを食べる。



 二人が晩酌をしていると、扉が強く開く音が聞こえる。



「もうねぇさんとバレットさん静かにして下さい! 近所迷惑ですよ!」

 リビングに居る二人をエリオは注意する。



 気だるそうにバレットが答える。

「あぁ~、別にいいじゃあねぇ~かよ。近所っつてもここは防音だろ?」



「そうそう。しかもここには私達しか居ないわよ~」

 メリネの口から加工された食べ物の何処かの部位がはみ出てるのが見える。



「は~」

 全身の力が抜け猫背になるが、エリオはこれから仕事なのでビシッと背筋を伸ばす。

「良いですかねぇさん! お母さんとお父さんが帰ってくるまでに、綺麗にしといて下さいよ!」

っと強く言う。



「うぇ~」

っとやる気の無い適当な返事を返す。



「外は真っ暗だから気を付けろよぉ~。後かわいい子が居たら連れてきても良いんだぞぉ~」

 半笑いでバレットが言う。



「連れてきません! じゃ行ってきます!」

っと扉を開け、思いっ切り閉める。そして綺麗な廊下に出る。



「はぁ~」

 エリオは深いため息をした後、外に出る為歩き始める。



 歩きながらエリオは気分を上げようとネックレスを手のひらに持ち、眺める。

(この前ソフィエルさんから貰ったこのネックレス最高~! ..ん~どうしようかな~、挨拶していこうかな~。いや、今頃ソフィエルさんは書類整理とかで忙しいだろうから、いっか!)

っとウキウキに考え、廊下を歩き城から街に向かう。







 目の前には大体百人以上の剣を持った兵士が綺麗に隊を組み整列していた。

指揮台から規律ある言葉が聞こえてくる。

「今日は、より厳重に警戒する事! パレードの後だからって浮かれない事! いいか!」

っと気迫のある声と共に、兵士達のやる気に満ち溢れた声が街に響く。

「よし! では、業務始め!」



 その合図を聞き兵士達はバラバラに散る。



「ふ~」

 エリオは緊張から時離れて気が楽になっていた。

上を見上げ、星が綺麗に輝く空を眺めていると、ガシャンガシャンっとうるさく鎧が動いている音が聞こえてくる。



「ボッフォ、いいねネックレスですね」

っとこもった声が聞こえる。



 声のした方をエリオが見てみると、男は鉄仮面を被っており顔は見えないが、横にデカい人物がいた。



 エリオは指揮台の下付近まで近づいて来た男に返事を返す。

「君そろそろ痩せた方がいいんじゃないか~?」

(ボフラフかぁ~、癖強いからまんまり好きじゃないんだよな....。いつも分厚い鎧着て、暑苦しいし..)

そんな事を考え、ボフラフを見つめる。



「ボッフォ、厳しいお言葉です」

 ボフラフは照れているのか鉄仮面を軽く撫でる。

「しかしなぜ副団長殿が街の見回りに? 我々だけで十分だと思うのですが」

っと疑問をエリオにぶつける。



「いやちょっとね、別に君達の実力不十分だからとかそういうのじゃ無いから安心して。ただ単に俺の気分だよ」

っとエリオは誤魔化そうとする。



「そうですかぁ~」

 特に気にして無さそうな反応をした後、気分が良くなったのかボフラフの活気に満ちた声が聞こえる。

「それなら副団長殿も鎧ぐらい着たらどうです? 鎧は素晴らしいですよぉ~!」



 鼻から空気が抜ける音がした後、呆れ顔のエリオが言う。

「..君ぐらいだよ、四六時中しろくじちゅう鎧着るのは..もう誰も鎧何て、余程の事が無いと着ないさぁ~」



「なんと....」

 残念がっているボフラフの頭はガクンっと下を向く。



 ボフラフにカマっている暇は無いので、エリオは指揮台から軽く飛び降り、歩きながらボフラフに手を振る。

「んじゃ、ちょっと行ってくる」



「ああ、お一人で?」

 心配しているのかボフラフのこもった声に優しさを感じた。



「心配しなくていいよ~なんかあった呼ぶから~」

 段々エリオの声は遠くなっていく。

(ボフラフの方が年上だから心配するのは仕方ないよなぁ~)

っと考え、人気ひとけの無さそう方角を目指し歩いていく。

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