第46話「予想していなかった幕切れ」
「ぐっ……効いたぜ……」
スキンヘッド男は、めり込んでいたビルの壁から抜け出し、地上へと着地した。そしてその様子を数百メートル先から見ていた焔火は、(おいおい……加減したとはいえ、"紅蓮脚"と"烈火"を喰らってまだ動けんのかよ……タフだなぁ……)なんて思っていた。そんな中でスキンヘッド男は、ゆっくりと歩いて焔火の元へと近づいてきた。
「お前強いな、正直舐めてたわ、という訳で本気出すわ」
スキンヘッド男は、焔火に向かってそう言うと、身構えて「うおおおおおおおおっ……!!!」と叫び始めた。すると中野区全体で、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッと大きな音を立てながら地殻変動が起きた。
「な、何だこりゃ!?」
突然起きた出来事に驚愕した焔火。
「フハハハハ!!!地球の地磁気を操作して地殻変動を起こしたのさ!!!どうだ!!?すげぇだろ!!?」
「野郎……!!中野区を滅茶苦茶にしやがって……!!許さねぇ!!」
焔火はキレ気味の様子で、両手に炎を纏いながらスキンヘッド男に突っ込んでいき、再び"烈火"を喰らわそうとした。それも今度は先程よりも強めの。
「フハハハハ!!!正面から突っ込んでくるなど馬鹿な事この上なし!!!喰らえ!!!!"磁気ビーム"!!!!」
ズバァァァァァァァンッッ!!!!
「おわぁぁ!!??」
焔火は、スキンヘッド男が右手から放った磁気ビームを真正面から喰らい、数百メートル吹き飛ばされ、駐車されていた車のフロントガラスに衝突した。
「ぐっ……!!結構効いたぜ……!!」
焔火が車のフロントガラスにめり込んだ状態で、そう呟いた刹那、彼の頭上から大きな影が差し込んだ。
「ん?何だ?」
焔火は気になって上を見てみると、直径3mはありそうな巨大な看板が落下してきていた。
「うお!?」
焔火は咄嗟に起き上がり、横にローリング。
ズガァァァァァンッ!!!!
看板は車に直撃し、車はペシャンコになった。
「ふ~……!!あっぶね~……!!危うく下敷きになってたぜ……!!」
焔火がペシャンコになった車を見ながらそう呟いた直後。
ドゴォッ!!!ドガァッ!!!ドゴォッ!!!ドガァッ!!!
「がっ……!?」
突然焔火の全身に、勢いよく飛んできた無数の鉄や金属が直撃した。それにより20m程吹き飛んだ焔火。
「い……いっでぇぇ~!!!全身がいでぇぇぇ!!!ぜってぇ青タンできるわこれ!!!」
そう叫びながら地面に転がり悶絶していた焔火。そんな彼の元にスキンヘッド男がスタスタと歩いて近づいてきた。
「いい様だな、クソカス」
スキンヘッド男は不敵な笑みを浮かべながら焔火に向かってそう言った。
「……てめぇ……よくもやってくれたな!!倍返しだ!!"紅蓮脚"!!!」
焔火はバッと飛び上がり、右脚に炎を纏いながらスキンヘッド男に蹴りをお見舞いしようとした。しかしその直後。
「"スーパー磁気バリア"!!!」
ブオオオオンッ!!!
巨大な磁気バリアがスキンヘッド男の周りに出現した。
「おわぁぁぁ!!!」
焔火は、磁気バリアに直撃し、15m程吹き飛ばされた。
「ぐっ……!!」
吹き飛ばされた後すぐに起き上がった焔火。しかしその直後、いきなり彼の上空から無数の鉄骨が落下してきて、彼の周りを取り囲んだ。
「な、何だこれ!?」
「フッフッフ……近くの工事現場から拝借させてもらったのさ……喰らえ!!!"鉄骨サンドウィッチ"!!!」
スキンヘッド男は鉄骨を操作して焔火をペシャンコにサンドウィッチしようとした。しかし焔火は、瞬時に広範囲に炎を噴射し、鉄骨を全て焼き付くした。
「チィッ!!悪足掻きを!!」
「へっ!!今度はこっちの番だぜ!!」
焔火は両手をスキンヘッド男に向けて炎を放つ態勢に入った。
「はん!!馬鹿が!!俺には強力な"スーパー磁気バリア"があるという事を忘れてんのか!?お前のチンケな炎なんぞ余裕に防いでやるぜ!!!」
「今から出すのはタダの炎じゃねぇ」
「ああ?」
「いくぜおい!!焔火流・木曜ミステリーの型"
ボワァァァァァッ!!
焔火の両手から"双剣を持った女の形をした炎"が噴出し、スキンヘッド男に向かって勢いよく斬りかかっていった。
「フン、くだらん、"スーパー磁気バリア"!!!」
スキンヘッド男は攻撃を防御すべく、巨大な磁気バリアを展開した。
スパァァァンッ!!!
「がっ……!?」
"火双剣の女"の斬撃は磁気バリアを破り、スキンヘッド男の胴体に当たった。
「ば、馬鹿な……!?俺の"スーパー磁気バリア"が破られるなんて……!!」
「まだまだいくぜ」
焔火は両手をクイクイと動かし、"火双剣の女"を操作してスキンヘッド男をスパスパと何度も斬りつけた。
「ぐふぅ……!!」
深刻なダメージを負ったスキンヘッド男は地面に仰向けにドサッと倒れた。
「ふ~……やっと終わったぜ……」
そう呟きながら焔火は倒れているスキンヘッド男の元にゆっくりと歩いて近づいていった。
「さて、お前を殺人の容疑で逮捕するぜ」
焔火はスキンヘッド男に向かってそう言いながら、着ていた短ランのポケットから西園寺から貰っていたミュータント用の手錠を取り出した。するとその直後にスキンヘッド男は右手を使って自身の胸を貫いた。
「な!?何してんだてめぇ!?」
スキンヘッド男の突然の行動に驚愕した焔火。そんな焔火にスキンヘッド男は吐血しながら答える。
「がふっ……捕まるくらいなら……ごふっ……死んだ方がマシ……だ……」
スキンヘッド男は、そう言い残して息を引き取った。
「…………マジかよ……」
全く予想していなかった幕切れに、その場でただ呆然と立ち尽くしてしまう焔火であった。