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あなた何者、誰?

 ナリア「開いてたよ」

 カズヤ「嘘でしょ!!不注意だった……」

 カンちゃん「やっぱり閉めてない」カン

 また頭シバカれた……そのうち、くちばしが脳に刺さる
 開いてたとしても!!何故入ってくる⁉
 もしかして会話聞かれてた⁉


 カズヤ「何で入ってきたの?」

 ナリア「カズヤってさ、この世界の人じゃないでしょ?」

 カズヤ「……!!!」(ギクぅぅ!!)

 ナリア「大丈夫、他の人には言ったりしないから」

 ナリアがベッドに座り優しい口調で言うけど、ベラベラと個人情報を喋るのは怖い
 もし、ナリア経由で知れ渡ったらとんでもないことになる
 最大限の警戒はしないといけない
 仲間だけどこれは話が違う


 カズヤ「何でそんなこと聞くの?」

 ナリア「私もカズヤと同じ世界の人間だからだよ」

 カズヤ「……!!そうなの?いつから俺が違う世界から来たって分かったの?」

 えぇぇぇ!!!!
 衝撃の事実すぎる。でも、今思えば不思議なところはあった
 ケールとロイスが知らないような言葉を知っていたり、規格外の魔法を唱えられることなど
 だとしても驚きだ。まさかこんな近くに同じ境遇の人がいるなんて
 (ナリアは神に殺しの依頼、頼まれてないよね?)


 ナリア「異常な強さを知ったあたりかな。異常な強さは転移者の特徴だから。だとしてもカズヤは強すぎるけどね」

 カズヤ「そうなんだ。ナリアはどうやってこの世界に来たの?」

 ナリア「クラス転移ってやつ。でも、転移してきてすぐに国は滅んじゃった」

 カズヤ「その国って?」

 ナリア「チェドリアよ。今はほとんど更地だけど、あそこには異世界についての本が眠ってる」

 俺が隣に座ってもナリアは淡々と過去のことを語った
 ナリアも苦労してるんだな。急に転移したと思ったら国が滅ぶなんて
 災難にも程がある。頑張って生きてきたんだな


 カズヤ「じゃあチェドリアに行けば、元の世界に帰れる方法が分かるかもしれないってこと」

 ナリア「うん。確証はないけど。それっぽいことが書かれる本は見つかると思うわ」

 カズヤ「へぇー」(今すぐチェドリアに行きたいなぁー)

 ナリア「カズヤは城の設計図なんて手に入れてどうするの?」

 カズヤ「それは……」

 俺は城の設計図を手に入れている理由をナリアに話した
 ナリアは驚愕した後、怒りの表情を浮かべた
 怒ってる。ナリアには全く関係ないのに


 ナリア「酷い……許せない!!私も手伝う!!!」

 カズヤ「そんな、ナリアには関係無いことだし」

 ナリア「私たち仲間でしょ。手を取り合わないと!!」

 カズヤ「でも、巻き込むわけには……」

 ナリア「いいから!!」

 俺はナリアの圧に押され差し出された手を取った
 仲間を巻き込むのは気が引けるけど手伝ってくれるって言ってくれてるんだから協力してもらおう
 俺一人じゃなくて複数人でやった方が効率が良い


 カズヤ「お願いします……」

 ナリア「大丈夫。絶対にクラスメートを助けましょう」

 カズヤ「ありがとう」

 ナリア「そうと決まれば次の目的地はチェドリアね」

 カズヤ「そんな勝手に決めていいの?あの二人の意見を聞いた方が……」

 ナリア「大丈夫よ。あの二人は仲間のためなら何でもする人たちだから」

 ナリアはそう言うとニコッと笑った
 このパーティーで本当に良かった
 みんな良い人だ。心があたたまる


 カズヤ「ナリアは元の世界に戻らないの?」

 ナリア「私はこの世界が好きだから。現実世界じゃ苦労ばっかしてた。この世界で生きてる方が楽しいの」

 カズヤ「そうなんだ……ごめん、嫌なこと思い出させちゃったよね」

 ナリア「全然平気。もう過去のことだから。そういうカズヤはどうするの?」

 ナリアはそう言うとまたニコッと笑った
 過去のことを過ぎ去ったこととして捉えられるのすごいな
 それくらい辛かったのかな……
 でも、今楽しいなら良かった
 

 カズヤ「俺はやらないといけないことがあるから」

 ナリア「やらないといけないこと?」

 カズヤ「マラ王国の王様を殺さないといけないんだ」

 ナリア「王様を?」

 カズヤ「そう。クラス転移の時に……」

 俺がどうして王様を殺さないといけないのかということを話したら、脳の血管が切れて死んだことに爆笑された
 これほど笑い飛ばされるとこっちも清々しい
 爆笑してるけど死んでるからね……でも、俺でも笑っちゃうな


 ナリア「アハハハ、死因が興奮し過ぎて脳の血管切れただなんて」

 カズヤ「フフ、笑えるよね」

 ナリア「うんw久しぶりにこんな笑ったかも」

 ナリアはそう言うと笑い涙を拭った
 泣くほど笑うって相当ツボに入ったんだろうな
 一応、これで俺死んでるからね

 
 ナリア「カズヤも大変ね。神様にそんなこと依頼されるなんて」

 カズヤ「受けちゃったからやるしか無い。王様を殺すためにも城の設計図を探してるんだ」

 ナリア「城の設計図なんて、どこにあるんだろうね」

 カズヤ「神が言うにはダンジョンとかにあるらしいけど」

 ナリア「なら、この世界にある三大ダンジョン行けばいいんじゃない?」

 なんだその言葉は?聞いたことが無い
 三大ダンジョン?三大ミステリーとかの|類《たぐい》に入るのか?
 興味がそそられる言葉だな。もちろん、正当な理由がないと行かない(行く理由出来て良かったぁ!!)
 興味本位では行かない。自分のために割く時間は無いんだ


 カズヤ「何それ?」

 ナリア「世界にはたくさんダンジョンがあるけど、その中でも強い魔物・良いお宝がある大きいダンジョンが3つあるんだけどそれらが三大ダンジョンって呼ばれてるの」

 カズヤ「それってどこにあるの?」

 ナリア「アルメルート、エンデプール、リッジグーテンにあるわ」

 カズヤ「チェドリアの次にその三箇所を周りたいな」

 ナリア「いいわね。世界を旅するの楽しそう」

 ナリアはウキウキした様子で胸を高鳴らせた
 俺も同じ気持ちだけど心の底からは喜べない
 世界を周ることになりそう。時間かかっちゃうな
 どうにか時間を短縮して行けないかな


 カズヤ「俺、外行ってくる」

 ナリア「どうして?もう真夜中だよ」

 カズヤ「ウルトルさんを寝かせてあげに行くんだ」

 ナリア「私も行くわ。ウルトルさんにはお世話になったから」

 カズヤ「短い間だったけど恩は計り知れない」

 俺はベッドから立ち上がり扉へと向かう
 ナリアも立ち上がり俺の後をついてくる
 これくらいの時間なら人に見られることも無いだろう
 ウルトルさんにはゆっくりしてもらいたい
 

 ナリア「ちょっと期待したけどなぁ」

 カズヤ「何が?」

 ナリア「いい年した男女が部屋に二人きり、そしてこの真夜中。することあるでしょ?」

 カズヤ「……!⁉え、え?え?」

 ナリアが誘惑するように囁いてくる。(確認だけど20歳になって無いですよね?)
 俺の頭にデてきたの1つしか無いんだけど……
 ナリアってそんな冗談言える人だったのかよ。先に言っておいてくれよ
 びっくりしちゃうじゃんか
 ナリアみたいな綺麗な人だったら大抵の男子落ちちゃうよ
 

 カズヤ「そんな冗談言えるなら先言ってよ、びっくりするじゃん」

 ナリア「顔赤いよ。もしかしてウブ?」

 カズヤ「……!!先行ってるからね!!」

 ナリア「あぁ行っちゃった。反応良かったなぁ。ウブかぁ。でも、冗談って言われたのはちょっと傷ついたかも……」

 ナリアってこんなグイグイ来る人だったっけか?
 爆弾を投げ込んでくるとは……心が持たないよ
 顔も赤くなるよ!!仕方ないだろ!!


 カンちゃん「顔赤い。キモい」

 カズヤ「あぁ⁉仕方ないだろ!!」

 カンちゃん「うるさい」カン

 あ、痛っ……!!
 でも、少しは熱冷めたかも
 変に舞いがってた。我ながら気色悪いな
 キモいは言い過ぎじゃない?
 誰でもあぁなるって。そうだった|こいつ《カンちゃん》に感情とか無いんだった


 カズヤ「夜風が涼しい……」

 ナリア「居たいた。涼しいね」

 カズヤ「丁度いい風が吹いてる」

 宿の外に出て夜風に当たり熱を冷ましているとナリアが出てきた
 いつものナリアだ。さっきのは何だったんだ
 何か取り憑いてたのか?


 ナリア「どこに寝かせるの?」

 カズヤ「街を一望出来る高台にしようと思う」

 ナリア「私たちが出てきた場所ね。確かにあそこなら街を一望出来るわね。それに景色綺麗だし」

 カズヤが先程森から出てきた場所である高台を指差す
 真っ暗ではっきりとは見えないが何となくの形は見えてる
 あそこでこの街を見守ってもらおう
 

 カズヤ「そう。丁度いいかなって思って」

 ナリア「いいと思うわ」

 俺とナリアは真夜中の街を歩き高台に向かった
 こんな時間に道行く人は誰もいなかった
 高台まで来てウルトルさんの遺体を収納魔法から取り出す
 このまま埋葬するのは気が引けるな
 火葬するか。ウルトルさん腐ってもらいたくないし


 ナリア「あれ?ここにお墓がある。暗くて名前見えないけど、剣が刺さってる」

 カズヤ「他にもあったんだ。……名前は見えないや。暗すぎるな。そうだ、光魔法・|光明《ランルークス》」

 ナリア「テソロ、ヴェシェ、サクロ?誰かしら?」

 カズヤ「さぁ。でも、ウルトルさんが一人で眠ることは無くなった。知らない人かもしれないけど安らかに眠って下さい」

 俺は地面に深く穴を掘ってそこにウルトルさんを寝かせ、火で遺体を燃やした
 穏やかな顔をしたまま骨になっていくウルトルさんを見てられなくて、涙をこらえ街の夜景に視線をずらしてしまった
 ダメだよな。最後まで見届けないと


 ナリア「……」

 カズヤ「……」

 お互いに何も発させずに涙だけを流してウルトルさんの最後を見届けた
 全てが焼け、骨だけになったウルトルさんに土を被せて埋めた

 
 カンちゃん「……」パサパサ

 土を山のようにして固め、落ちていた木の枝を差してその先にウルトルさんが着けていた手袋を被せる
 カンちゃんが暗闇でも分かる程綺麗な花を取ってきて墓の前に添えた
 カンちゃん、分かってるじゃん。毎回そういうことやってよ
 絶対にウルトルさんの言葉は忘れません。短い間ありがとうございました
 安らかに眠って下さい


 カズヤ「戻ろうか。寝ないとマズイよね」

 ナリア「そうね。明日にはパーティー狂に付き合うことになるでしょうし」

 カズヤ「そうだった。早く休まないと!!」

 街の高台にウルトル、テソロ、ヴェシェ、サクロの四人が寝ている
 手袋、剣、杖、短剣。四人が生前、身につけていたものが供えられた
 テソロ、ヴェシェ、サクロの墓はウルトルが作ったものであり、ウルトルは偶然にも同じ場所で寝ることになった
 偶然であり必然であったのかもしれない
 俺たちは急いで宿に戻る
 部屋に入るとベッドにダイブする
 このまま寝よう。もう寝られる……


 カンちゃん「寝るな。窓開けろ」カン

 カズヤ「痛ぁぁ!!人が気持ち良く寝ようとしてたところでしょうが!!起こすじゃないよぉ!!!!」

 カンちゃん「うるさい。早く開けろ」カンカンカンカン

 カズヤ「痛ってぇ!!!開ければいいんだろ!!分かってる分かってるから!!」

 俺はカンちゃんの連続突きに屈して窓を大人しく開けた
 クソッ!!!寝れるところだったのに!!
 邪魔しやがって!!ふざけんじゃねぇぞ!!
 絶っっ対に許さない!!!!
 

 カズヤ「覚えとけよ!!この野郎!!」

 カズヤはベッドにうつ伏せでダイブした
 俺は枕に向かってゼロ距離で叫ぶと仰向けになり目を閉じた
 眠気がすぐに襲ってきてすぐ眠りについた

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