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遭遇


 食材を買い終えてから二日が立ち、俺は多くの本を読んだ。そして、今日はローレの息子が帰って来る日だけど、俺はいつも通り庭で花の手入れをしていた。



「うお~! ひっさびさだぜ~!」



 ひときわ大きい見知らぬ声が聞こえた後、続けて他の声も聞こえてくる。



「相変わらず、広い庭ねぇ~」



「早くお肉食べたいなぁ~!」



「あ! すみません、ちょっといいですか?」



 俺は振り返り、そこには謎の集団がいた。

「あ~、どちら様ですか?」



「はい! 僕は.....」



 爽やかな男は喋ろうとした時、ローレの声が聞こえた。



「アルちゃん~!!」



「お母さん!」



 二人は近づきハグをした。



(ん? お母さんだと? 若すぎる、それに一瞬手の甲に何か見えた気が....)

 俺は男をよく観察する。



 ある程度ハグをした二人は離れ、何だか幸せそうな顔をしていた。



「お母さんそこの人は新しく雇った人?」



「そうよ~、紹介しないとね」



 ローレは俺に近づいて来た。

「この人はオオハラって言うの、私の庭師兼執事をやっているわ」



「どうもオオハラです」

 俺はお辞儀した。



「よろしく、オオハラさん! 僕はアルトリウスです!」



 アルトリウスと言う名の男は俺に握手を求めてきた。俺はほんの一瞬考えたが、すぐ握手した。

「よろしくお願いします。ベルフェト・アルトリウス様」



「ハハ! そんな固くならなくていいよ!」



「わかりました」



「じゅあ、仲間を紹介するよ!」



(運がいいのか、悪いのか分からないが、ここに居る人物達は危険..覚えておいて損はないだろう)

 目の前にいる男の容姿を俺は絶対に忘れないよう覚える。

 アルトリウス、正しく青年って感じだ。サラサラな髪の青色で正義感があふれている感じがする。





 アルトリウスは仲間を紹介するため、仲間に手を向けようとし振り向いた時、仲間の一人が何処かに行こうとしている場面を発見し大声で叫ぶ。

「バレットー! まだ酒は早いぞー!」



「うっせー!」

 バレットはズカズカと家の中へ入っていく。



 バレット、金髪の短髪、身長は百九十ぐらいありそうで、気性が荒そうだ。



 もう一人バレットに引き続き家に入っていくのをアルトリウスは見つける。

「おい! メリネもまだ早いよ!」



「へへ! お先~!」



 メリネ、髪はぼさぼさのボブ、身長はそこそこ高い、これも気性が荒そうだ。



 アルトリウスは困った顔をしながら、俺の方を向いてくる。



「はぁ~、ごめんなさいオオハラさん。あの二人は後々紹介します」



「はい、わかりました」



 気を取り直してアルトリウスは次の名前を呼ぶ。

「ええと、まずノエル! ....あれ?」

仲間の方を振り向きさっきまでいたはずの者が居なく、アルトリウスは頭を搔きむしる。

「も~! どこ行ったんだよ!」



 俺は恐らく一瞬で家に入って行った、あの金髪のロングの子だろと予測した。

ノエル、耳の長さからして種族はエルフ、最悪だ。



 吹っ切れたのか、謎の気合で満ち溢れた声がアルトリウスから聞こえる。

「もう! どうしてうちの仲間はこうなんだ....。ええい! オオハラさん全員一気に紹介しますね!」



「は..はぁ」

(こいつら本当に勇者の仲間達か?)

っと俺は心の底から疑いが、少し湧き上がる。



 アルトリウスは次々と指を指さしていく。

「はいこいつがリールーで! こっちが親友のエリオ! んでこっちがこの国の団長、ソフィエル! 以上!」



 俺は紹介された皆と顔を合わせ、会釈する。



 リールー、メガネをかけた少女? 銀色な髪はロングで前髪がぱっつんなのが印象的だ。

 エリオ、髪色は赤、メリネに少し似ている部分がある、もしかして姉弟していか?

 ソフィエル、なんだか真面目そうな女性だ、髪は金髪、ロングで毛先がクルクル巻かれている。





 ローレが皆の自己紹介が終わったのを確認し、喋りだす。

「さっさみんな、お家でゆっくりお話しましょ!」

そう言い家の中に入っていく。



(なんだか、拍子抜けだな....)

 俺は気分が下がった。









 アルトリウス達はリビングに居た。



「いやぁ~! やっぱり、実家は落ち着くなぁ~!」



「アルトリウスいいのか? まだ出発しなくて?」



「うん! まぁ明日には、行こうと思う!」



 アルトリウス達 (ソフィエル、エリオ以外)は王の命令で、メムロ村に行くよう命令された。



(何やら赤い球体が村を包み入れないらしい、遂に異変の発見だ!

僕はメムロ村に行く前に、どうしてもお母さんに会いたかったので、一日だけ居ることにした。

後ついでに、どうせなら皆で出発前のパーティーをしようと思い、二人を誘ったんだ)

 そんな事を考えアルトリウスは一息つく。

「お母さん、元気そうで良かった~」

アルトリウスはソファに座ると、活気があって楽しそうな声が聞こえてくる。



「ねぇねぇ、ソフィエル! これチョ~おいしいよ!」



「んっおいしい」



「でしょでしょ!」



 何やらソフィエル、ノエル、リールーが女子会? 的な事をしていた。



 ボソボソっとアルトリウスは隣に座ったエリオに耳打ちをする。

「なぁエリオ、僕が君達を誘った意味、分かるよな?」



 エリオは目が飛び出しそうな顔をこっちに向けた。

「アルトリウス....お前は神か!!」



「ふっ..いいや、親友だ!」



「この借りは、絶対に忘れない!」



「ああ! ..貸一つな!」

 男二人は手を熱く握手させる。





 満足したアルトリウスとエリオは手を離す。そしてアルトリウスはソファから立ち上がり、皆に聞こえるように喋る。

「皆! 少し集まってくれ!」

そう言うと、集まり丸テーブルに全員集合した。



 ちょっと不機嫌そうなバレットが喋る。

「んだよぉアル、まだ飲んでてーよ」



 立ったままアルトリウは説明する。

「ちょっとした会議がしたくてね」

そう皆に聞こえるように喋り続ける。

「今回、異変解決の為メムロ村に行くことになったが、飛んで行かず、馬車で行く事にする」



「まじっかよ~、それじゃぁ平和パレードに出れねぇじゃん!」

 更に不機嫌になるバレット。



「ええぇ~、美味しい物食べた~い!」

 駄々をこねるノエル。



「ク」

 恐らく、クソがっと悪口を言っている顔をするリールー。



「アル~、別にそんなに警戒しなくてもいいんじゃあな~い?」

 意外と暴れなかったメリネ。



 仲間から色々の意見が飛び交い、アルトリウスの心が段々苦しくなっていく。

「ま、まぁ~早く終われば..帰って来られるかも~しれないし~....」



「アルトリウス様、異変を甘く見てはいけません」

 真面目な意見を言うソフィエル。



「そ、そうだぜ! アルトリウス!」

 それに同意するエリオ。



(おいぃ! エリオは僕の味方だろ!)

 どうやらアルトリウスに味方する人はいない様だった。心を燃やし気合を入れる。

「....なるべく迅速かつ! 安全に! 異変を解決しましょう! 以上。質問ある方?」

アルトリウスは皆を見渡す。皆やらやらという感じで、首を横に振りながら納得したようだ。



 静かになった時バレットが辺りを見渡し、アルトリウスに質問する。

「そういえば、ローレさんとあの男はどこにいるんだ?」



 メリネも辺りを見渡す。

「そう言われて見れば、いないわね」



「ああ、お母さんとオオハラさんは晩御飯の準備をしているよ」



 それを聞いたバレットは不機嫌な顔をしながら喋る。

「ふ~ん....なーんか俺、あのオオハラだっけ? あいつ、いけ好かねーな」



「なにさぁ? イケメンだからって焼いてんの?」

 メリネはニヤニヤしていた。



「は~? ちげえよ! 何つーかよぉ、あの清ました態度が気に食わね~」



 メリネはため息混じりに喋る。

「あんたホント、ああゆうタイプの男は嫌いよね。女は好きなくせに」



「あったりめーだ! 女は綺麗だったら許されるからな! ガハハッ!」



 仲間達はバレットのクソみたいな話を聞き、その後は晩御飯時になるまで雑談をして時間を潰した。









 全員が手を祈る様に握り、一斉に口を開ける。

「勇者様に感謝を」



 皆、それぞれ食事を楽しんでいた。

そんな中アルトリウスはエリオの方を見るとソフィエルの隣に座っており、エリオは小さな痙攣を起こしながら喋っていた。



「ソ、ソフィ、ソフィエル団長、きょ、今日は、お疲れさまでした!」

 エリオは、ソフィエルの空いたグラスにぶどう酒を入れようとしていたが、手が震えていた。



 ソフィエルは震えている手を気にせず、空いたグラスをエリオに向け、入れてもらった。

「ありがとうエリオ、でも今日は特に疲れるような事はしてないわ」



 自分の名前を呼ばれエリオは興奮した。

「いっ! いえ! 団長はいつもいつも.....」



「ソフィエルの分頂きー!」

 横からノエルが突っ込みソフィエルご飯を奪った。





(ノエルー!! お前はなんで、二人の雰囲気をぶち壊すんだ!!)

 アルトリウスは頭を抱えた。

(まったく、すまないエリオ、うちの仲間は空気が読めない奴らしかいないんだ....)

 そんな事思い顔を上げる。このモヤモヤする気持ちを晴らすため、アルトリウスはローレと話す事にする。スッとローレの方を見るとその隣にはオオハラが立っていた。

(オオハラさんはご飯食べなのかな?)

っと思い、質問してみようとするが何処か見ているようだった。



 アルトリウスはその視線の先を見るとノエルの方だった。僕は笑顔でオオハラさんに話しかけた。

「オオハラさん、ノエルはあんなにいっぱい食べて大丈夫なのかみたいな顔してますよ」



「....あぁええ、どこにそんな胃袋あるのかな? と思いまして」



「ハハハ! 僕とまったく一緒の感想ですよ!」

 アルトリウスはなんだか親近感がわく気がした。

大原と楽しい会話をしていると、なんだか喧やかましい声が聞こえてきた。



「おい! オオハラ! おめぇ立ってねーでここに座れや!」

 バレットが自分の隣の席に指を指さしながら喋った。



「いえ、自分は大丈夫ですよ。お腹もあまり減っていないので」

 冷徹な感じで大原は喋る。



 メリネが席から立ち、大原の肩に腕を置く。

「な~に冷たいこと言ってるの? ほらほら座ろ~う!」



「い....」



「オオハラ座っていいわよ、もう気軽にしなさい」

 ローレの優しい声が大原を包む。



「....はい」

 渋々大原はメリネに連れていかれ、バレットが指した席では無いところに座らされる。

そして、隣のリールーに話しかけられる。



「ん」

 リールーが何か真っ赤な肉を差し出してきた。



「リールーさん大丈夫ですよ気を使わなくても、それはリールーさんが食べてください」



「ん」

 リールーはなぜか涙目になりながら渡し続ける。



 メリネが言う。

「あ~、オオハラが女の子泣かした~!」



 バレットが言う。

「おいてめぇ! 女の差し出したものは受け取る。それが男の礼儀ってもんだろ!」



 エリオが言う。

「オオハラさん、せっかくなので食べて上げて下さい」



 ソフィエルが言う。

「女性を泣かすのはよくありませんよ」



 ノエルが言う。

「食べ物を粗末にすると、嫌われちゃいますよ~!」



 アルトリウスが言う。

「オオハラさん、ここは覚悟を決めましょう!」



 ローレが言う。

「オオハラ食べなさい」



 大原は思う、こいつらなんなんだ!っと大原は真っ赤な肉を見つめ、リールーに視線をやる。

(期待、ウルウルした瞳が見つめてくる。食べるしか....ない)



「あ!」

っと嬉しそうな顔をするリールー。



 大原はリールーから肉を取り、一口食べた。

一回、二回、口の中で噛むと、何だか口の中がピリピリしてきた。

大原は思う、これは舌が拒絶反応している! と。



 急いで大原は席を立ち、駆け足でトイレへと向かうが遠いいことに絶望しながら向かうのであった。



「ププ」

 リールーは頬を膨らませクスクス笑っていた。



 バレットが唖然な顔をした。

「おいおいリールー、まさかお前、辛いやつ混ぜたのか?」



「ふ」

 自信に満ちた顔をする。



「ア~ハハ! いいねリールー! やっぱこうじゃなきゃ!」

 メリネは腹を抱えながら笑う。



「オオハラさん、ごめんなさいうちの仲間はこういうやつらなんです」

 アルトリウスは罪悪感に襲われた。



 爆笑が聞こえる中、アルトリウスはローレに質問する。

「お母さん、オオハラさんはどこで雇ったの? 多分だけどきちんとした基本出来ているけど、なんだかぎこちないからさ、正式な執事じゃないよね?」



「流石アルちゃん、ん~なんて説明していいのかしら....」



「アルトリウスと同じ、道端で拾ったとかか! ハハ! なわけねぇーか!」

 バレットそう言うと、急に静かになった。少し怖くなったバレットは恐る恐る聞く。

「あ~~、もしかして....当たった?」



「..まぁ....そう、ね」

 気まずそうにローレは答える。



 誰も喋らなくなり、バレットが口を開ける。

「おいおい、アルはまだ赤ちゃんだったから、拾われるのは当然だけどよ。あの歳で道端で拾われるなんて、なんか悪い事でもしたんじゃーねえのか?」



「バレット! 言いすぎだぞ!」



「おお、すまねぇアル」

 迫力のあるアルトリウスの言い方に少し弱気になるバレット。



「まぁ~何か事情はありそうよね~」

 あんまり興味の無さそうなメリネの言葉を最後に空気が重くなっていく。



「でも! オオハラさんはきちんと仕事をしてるし! 僕達に気を使ってくれる! だからそんな悪い人では無いと僕は思うよ!」

 アルトリウスはなんだか熱くなっていた。

(僕と同じ、拾われるという経験をしているし、なんだか共通点が多い気がするんだ..)

アルトリウスは更に親近感が強くなった気がした。





 ローレが両手を合わせる音が部屋に響き落ち着いた声が聞こえる。

「そうよ、悪い人なんかこの世にはもういないわ。そもそも悪い人だったらこんな叔母さんのお世話なんかしないわよ」



「そうだね~、悪い人ではないね!」

 ノエルの呑気な言葉を聞き、バレット以外みんな頷いた。





「ただいま戻りました」



 音もせず大原が急に帰って来た。皆体をビックンっと少し跳ねた。



「? どうかしましたか? みなさん」



「い、いや、何でも無いわよオオハラ! さっ! みんな食べ終わったから片付けましょ!」

 少し動揺しているローレがそう言うと、大原以外が元気に何かを誤魔化す様に返事をする。



「は、はーい!」 

っと皆片付け始める。





 何事もなく朝になる。





 元気な声が庭に響く。

「それではお母さん、オオハラさん、ソフィエルさん、エリオ! 行っていきます!」



「気を付けるんだよ。アルちゃん」

 寂しさなどは感じ取れ無いが、愛のある別れ挨拶をローレはしていた。



「はい!」



「アルトリウス様油断せず、無事に帰って来るのを願ってます」

 ソフィエルの軽い笑顔が輝いて見えた。



「はい!」



「アルトリウス! 帰ってきたら二人で飲もうな!」

 力強い顔をエリオはアルトリウスに見せる。



「ああ!」



 最後にアルトリウスは大原の目の前に立った。

「オオハラさん、時間がある時ゆっくりお話ししましょう!」

アルトリウスは手を差し出した。



「はい、時間がある時に」

 大原はアルトリウスの手を掴み握手する。



「んー!!」

 リールーが口を抑え何か興奮しているが、無視。



 アルトリウスは大原の軍手から手のぬくもりを感じ、手を離した。



 最後にアルトリウスは大原達を見つめ。

「では、行ってきます!」

皆に手を振りながら去っていく。

(さぁ行こう、メムロ村に!)

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