バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

祭り


 今日は畑仕事が休みなので、家でのんびり本でも読もかと思っていたら、ドタドタと言う足音が聞こえ、俺は身構え例のごとくバタンっと、扉が開き「オオハラ! 散歩に行こ!」っと、元気な声が聞こえた。



(彼女はクエン、この村で1番元気で活気のある女性だ。しかも火の魔法が使えるが、そんなにすごいものではなかった)



「クエンさん、自分今日は、本を読みたいんですけど、、」

「えぇ〜! つまんない!」

「あ! そういえば、昨日リュエンさんが美味しい果物、取ったから食べに来いって言ってたような....」

「え! ほんと! ちょっと行ってくる!バイバ〜イ!」

嵐のようにクエンは去っていく。



 ふぅっとため息をつき、俺は本を最初から読む事にした。



 魔法とは。

生きる者全てに、平等に与えられるものである。

しかし、人間族には与えられる者と与えられない者が存在する。

なぜ、人間族のみに二つに分けられるのか不明だが、人間族には急な成長が見れ、与えられなかった者は訓練、鍛錬を行うことで、覚える事がある。ただ個体差があり、何ともいえなかった。

人間族以外の、種族もゆっくりだが、成長することもわかった。

 魔法は体内の見えない、エネルギーを使い、魔法を放つ、これを気力エネルギーと名付けた。

気力エネルギーは使えば使う程、器が大きくなり、魔法の威力、放てる回数が増す事がわかった。





 魔法具とは。

主に生活用品や戦闘道具をメインに開発進めれている。

魔法具は気力エネルギーを使わない為、大体は便利な生活用品になっている。

 魔法具を主に生産しているとこは、獣人族の首都アルベリーノであり、オリ・ムー博士を中心として、開発されている。





 悪霊とは。

黒い何かである。

悪霊は人間族にのみ存在し、怒り、悲しみ、憎悪などの、負の感情が膨張した時に体内に現れる。

負の感情が爆発した者は悪霊の力を得て、悪魔の化身に姿を変える。

 化身が出現した時期は三代目勇者亡き後に確認された。

我等の真の平和により、人々幸せになり五代目勇者の時には、化身の発見は無くなった。



 パタンっと大原は本を閉じ、部屋の窓から外がまだ明るい事を確認して、自分が倒れていた森に向かう事にした。







 俺は畑道を歩いていた。

(この村にはだいぶお世話になったな、村の人々とも仲良くなったし、ある程度の情報も手に入れた。まぁ、未だに姫男と呼ばれるのは癪しゃくに障るが、まぁいい....そろそろ潮時かな)

っと大原は考えていると、森に着いた。



 今や森は、大原の実験場みたいな場所になっていた。

大原は森の奥へと、入っていく。森の中央まで行き大原立ち止まった。



 俺はこの世界に来てから、自身の異変に気づき始めていた。



一、全然疲れない

 理由として、結構重労働な畑仕事をしているのに、疲れず、何なら有り余るぐらいだ。



ニ、身体能力が飛躍的に上がった

 実際にここに十五センチ程の木がある、普通の人間なら安全帯などつけヨチヨチ登るのだが、俺はこれを軽々登れる。

今は面倒くさいので、登らないが。



三、音を消せる様になった

 これは、偶然気づいたのだが。

俺はそこにあった、雑草の葉っぱを勢いよく叩いた。

普通なら、ガサガサと音を立てるのだが、ただ揺れるだけだ、これが魔法なのかは不明。



 俺はクエンに魔法を習ったが、覚える気配が全く無かった。

そもそも、俺が小さい頃やったゲームでは、なんか呪文を言って魔法を放つイメージだったが、クエン曰く感覚らしい、頭の中に魔法が流れるだとか。



「何だよ、感覚って....」

 大原は少し不貞腐れて辺りを見渡した。周囲がいつの間にか暗く、太陽の方を見ると陽がだいぶ沈んできたので、大原は森を出って帰ろうっと思い歩き始めた。



 大原は途中で何か蹴った、蹴った物が気になり見てみた。

それは石? みたいな物で手に持とうと思い、触れた時バチバチと静電気が指に触れ体がビックっと一瞬だけ震えた。



(これは静電石? よく魔法具の材料として使われているだとか....)

 俺は静電石を手に持った。まだ、手に軽い電気が来るがさっきより威力は無い。

 俺はこの石を使って、何か面白い事ができないか考える。頭の中に少しずつ物語が構成されてく。

(近々祭りがあるらしい、祭りと言えば特別な日)

 俺はフフっと、不敵な笑みが溢れてしまった。

(久々だ、こんなに楽しいのは)

 俺は再び足を動かし、森から出る。







 家に帰る道中、声が聞こえる。



「おーい、オオハラ」

 俺は声のした方を振り向き、こっちに走って来るリュエンを見た。



(リュエンこいつはクエンの幼なじみでクエンの事が好きらしい、年齢の割に老け顔だが、体つきは良く働き者だ。ちなみに魔法は覚えて無いらしい、農夫には要らないからっだそうだ)



「リュエンさん、どうかしましたか?」

「お前なぁ〜、クエンに果物の事言ったろ?」

「あー、言って無いです。」

「下手な嘘はやめてくれ、まぁ良いけどよ」

「2人きりの、時間をつくてあげたんです」



 リュエンは、大原の肩を両手で掴み。

「おま、誰からに聞かれたらどうすんだよ! ダチの秘密だろ!」



 大原はフッっと口を少し上げニヤケ顔見せた。



 リュエンは手を引き、片手を頭にもっていき、ポリポリ搔く仕草さをしながら。

「はぁ〜、また畑仕事手伝ってもらうからな! じゃ、俺まだ仕事のこってから」

っと言い、手を振りながらリュエンは畑に戻って行く。



 俺はそれに応え、軽く手を振った。

(ダチになったつもりはないんだがな..。まぁ、俺の物語の重要人物だ、大切に扱わないと)

 大原は手を振り終え、静かに家に帰る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



(私は今日気合が入っています! 何せ、お祭りです。何の祭りかと言う、夏祭りです!

うちの村は五十人ぐらいしか居ないので小規模ですが、それ相応に楽しいです!

私はお祭り用に作られた服を着て行きます。オオハラにも特別な服を着させようと思いましたが、なぜか最初に着ていた、謎の服を着ていたのです)



 クエンは椅子に座り、体を左右に揺らしながら大原に聞く。

「オオハラ~、何でそれ着るの〜?」

「クエンさん、これは自分に取って、特別なんです」

「変なの〜」



 私は自分で作った、服を着させたかったのにっと思いムスっとしたが、また今度でいっか! っと思いました。



「ほら! 二人とも行くよ!」

「あ、待って、お母さん!」

 私達は三人仲良く、祭りに向かいました。







 空中に透明な人が映り、その透明な人物は村長のウィッグであり、魔法具の類で出せる現像だった。皆が顔を上げ何を待っていると。



「え〜、オホン、それでは、これよりメムロ村、夏祭りを行う!」

っと、同時に村人は皆おぉー! っと気合の入った声を出した。



 今はまだ、昼ぐらいなのでクエンはやる事は無く取り敢えず2人を連れ、ご飯食べに行きました。



「コラクエン! 食べすぎたら夜踊れなくなるよ!」

「大丈夫! まだまだ時間あるし! オオハラ、絶対観ててよ!」

「はい、クエンさんが頑張っているところをちゃんと見ますよ」

 大原が固い感じで喋っているとクエンが半ば呆れながら喋る。

「んも〜、そんな堅苦しい喋り方しないで、クエンって気軽に呼んでいいんだよ!」

「オオハラさん、私達はもう家族同然なんだ、肩の力を抜いていいんだよ」

「いえ、自分はこの喋り方のほうが落ち着くんです」

「そうかい?」

「......」



 最後にお母さんが喋ってから会話がなく、クエンは気まずかった。

クエン手元にある料理を素早く平らげ、席を立ち。



「よし! オオハラ、お母さん! 遊びに行こう!」

 クエン強引に二人の手を取り、祭りのちょっとした屋台で時間を潰した。





 クエンは背を丸め片手でお腹を押さえ、もう片手で街灯によしかかっていた。



「うえ〜、ぐるしぃ〜」

「だから、食いすぎるなって言ったのに、もぉ〜」

シュルアはクエンの背をさする。



「だって〜」

「クエンさん、もうそろそろ舞台の、踊りの時間では?」



クエンはその声を聞いた瞬間背筋を伸ばした。

「はっ! いっ、行ってくる!」

駆け足で祭りの中央にある舞台へと向かった。



「ちゃんと踊ってくるんだよ!」

聞こえているのかいないのか分からないが、シュルアは笑顔でクエンの後ろ姿を見ていた。







 舞台の踊りはこの村で若い女六人で行われ、盛大に盛り上がった。



 クエンは満足できる踊りができ、皆んなに手を振り舞台の裏に戻ると、そこにリュエンがいた。

「クエン! ちょ、ちょっと話がある!」



 いつもと雰囲気が違う、リュエンを見て私は少し驚いた。

「いいけど、今汗くさいよ?」

 クエンはそう言い、自身の肩付近の匂いを嗅いだ。



「だだだ、大丈夫だ」

 リュエンはそう言い、クエンの手をつかみ何処かに連れて行く。



 私は祭り会場から、ちょっと離れた場所に連れてかれた。

リュエンと私は対面になり、私は質問した。

「リュエン、どうしたの話って?」

「.....クエン、お、俺は、君の事が好きだ!!」

「え!?」



クエンは異性からの告白など、受けた事などなく。

しかも、幼なじみからされるとは思ってもいなかった。

クエンは特にリュエンの事を意識していなかったのだが、いざ、目の前にいる人が自分の事を好きでいてくれてると思うと、心が高ぶった気がした。



「リュエン、ありがとう、凄く嬉しい」

「じゃあ、」

「でもね、私リュエンの事好きって言えない」

「えっ! な、何で?」

「だって、私、今リュエンの事意識し始めたばっかだもん! だから、、待って、来年には答えを出すから、それまでに、もっとリュエンの事教えて」



 少し沈黙が続いた。



「わかった、クエン、君に俺の全てを教える! だから、必ず、来年答えを聞かせてくれ」

「うん」



 クエンはリュエンの胸にそっと飛び込み、リュエンは胸元に来たクエンの背中に手を回すと、クエンもリュエンの背中に手を回し、二人は抱きしめ合った。



 クエンはスッっとゆっくりリュエンの胸元から離れ。

「私、そろそろ行かなきゃ」

「ああ、また明日」

「うん! また明日」



 クエンは二人が待っているであろう、会場に向かった。



 リュエンもクエンを見送ったあと、会場の片付けに向かった。

しおり