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第17話「警視正」

警視庁内のある部屋の前へと着いた匙守音はコンコンコンと扉を3回ノックした。

「警視正、雷光です」

匙守音がそう言うと中から「は~い、どうぞ~」という返事が聞こえたので彼女は「失礼します」と言いながらドアを開けて中へと入り、奥へと進んでいった。進んだ先には大きな机と椅子があり、そこには妖艶な黒髪セミロング女性が座っていた。彼女の名前は西園寺杏奈(さいおんじ あんな)。32歳独身。彼女は匙守音が所属する捜査一課のトップである"捜査一課長"である。階級は先程の匙守音の発言から分かる通り"警視正"である。それからミュータントでもある。

「おいっす、しーちゃん」

匙守音に対して軽い挨拶を交わした西園寺。ちなみにしーちゃんというのは匙守音のあだ名である。

「お疲れ様です警視正」

匙守音は西園寺に向かって軽くペコリと頭を下げた。
そしてその後頭を上げて深刻そうな表情を浮かべながら西園寺に話しかける。

「警視正……実はお伝えしたい事が……」

「結構ヤバめな話?」

「ええ……実は……」

匙守音は西園寺にタカシから聞いた事を全て話した。



「───なるほど……殺戮会に殺人ゲームか……こりゃまたヤバい連中が現れたわね……ミュータントが大量殺戮なんて事をすれば世間は恐怖で大混乱、それによって一般の人々のミュータント達に対する風当たりが強まり、政府の連中が動き出して過去に棄却された"ミュータント隔離監視法案"の再検討の可能性も出てくるわね」

「ええ……そうならないためにも早急にこの問題を解決してみせますよ……警視正……とりあえず今からみおちんと一緒に霧崎タカシから聞いたテナントビルに向かってみたいと思います」

「ええ分かったわ、一応この事は現在別件を捜査中の金剛達にも知らせておくわ」

「ええ、お願いします、では失礼します」

匙守音は西園寺にペコリと頭を下げて捜査一課長部屋を後にしようとする。

「しーちゃん」

西園寺は部屋から出ていこうとする匙守音を呼び止めた。すると彼女はピタッと立ち止まり西園寺の方へと振り返った。

「……もし何かあっても無茶は禁物よ?ヤバいと感じたらすぐに私に連絡しなさい、すっとんでいくから」

「ハハハ……それは何とも心強いですね」

匙守音は笑みを浮かべながら部屋を出ていった。



「───ここか……」

あれから少し経ち、例のテナントビル前に着いた匙守音と白鳥。ビルの入口近くにはテナント募集中と書かれた貼り紙が貼られていた。

「警部、容疑者の話に出てきた連中まだここにいると思いますか?」

白鳥は匙守音に尋ねた。

「……奴も言ってたけど、もう既にもぬけの殻でしょうね……」

「ですよね~……奴の逮捕ニュースが全国に流れてからもう数時間経ってますもんね~……私達がここに来る事想定してとっくに移動してますよね~……」

「ええ、でももしかしたら現場に捜査の鍵となる何かが残されているかもしれないわ、だから徹底的に調べあげるわよ」

「了解です」

その後2人はビル内へと入っていった。

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