第15話「ご報告」
「お手柄ね焔火、よくやってくれたわ、あなたのおかけでこれ以上の犠牲者を増やさずに済んだわ」
タカシが警察署に送られた後に匙守音は廃墟の入口前で焔火を褒め称えた。
「へへへ、俺そんな大した事やってないよ」
焔火は匙守音に向かって照れ臭そうな笑みを浮かべた。
「しっかし相変わらずの腕っぷしね……凶悪ミュータントを素手で倒すなんて……もしかして高校入ってからもあの一流アスリートもドン引きの高強度トレーニングは続けてる感じ?※3話参照」
「もちのろん、土日以外は毎朝かかさずにやってるよ」
「そう……それにしても……一体どうやってアイツ(タカシ)の居場所を突き止めたの?」
「公園にいたおっさんが缶コーラ3本と引き換えに教えてくれたんだよ」
「コーラと引き換えに……?……そのおっさんってもしかして……ハゲてた?」
「え?う、うん……ハゲてたけど……?」
「やっぱり……それ多分"コーラおじさん"ね」
「コーラおじさん?」
「ええ、※城西地区を徘徊している神出鬼没のコーラ大好きおじさんよ、なんでも噂によると彼の体は60パーセントがコーラでできているらしいわよ」
※新宿区・渋谷区・杉並区・世田谷区・中野区・練馬区の6区の事。
「へえ~……世の中にはそんな変わった人間がいるんだなぁ~」
「フフフ、それミュータントのあなたが言う?ま、私もだけど、それよりもほら、そろそろここから離れましょう」
「うん、そうだね」
その後焔火は匙守音の車に乗せてもらい水咲姫にタカシをブチのめした事を報告すべく彼女の入院している病院へと送ってもらった。そして匙守音は焔火を下ろした後にタカシの取調べのため警察署へと戻っていった。
~病院~
「バナナうんま」
水咲姫は病室のベッドに横になりながら焔火から貰ったバナナを頬張っていた。するとそんな時にベッドの近くにあった窓からコンコンと音が鳴ったので顔を向けた。
「あ!」
窓の外を見た水咲姫は思わず声が出た。なんとそこには焔火がいたのだ。
「おいっす水咲姫」
焔火は窓の外からニコッと笑いながら彼女に手を振っていた。
「と、燈!?何してんの!?」
「へへ、ちょっとご報告があってさ、悪いんだけどここ開けてくんね?」
「う、うん」
水咲姫は窓を開けてあげた。
「よっと」
焔火はスタッと病室内へと入った。
「何で窓から?普通に入口からここに来ればいいのに……」
「え?そりゃあ無理だっての、だって今17時過ぎだぜ?面会時間とっくに終わってるっつの」
「ああそっか……でもだからって普通3階までよじ登る?」
「へへ、俺は馬鹿だからな、それぐらい普通にやるぜ」
「フフフ、そっか……ところで報告したい事って?」
「ああ、お前を襲ったタカシとかいう奴なんだけどな、俺がブチのめしといてやったぜ、だからこれから先また襲われるなんて心配はいらないぜ」
焔火はそう言いながら彼女にピースをした。
「うっそ!?それは誠!?」
「ああマジで誠、多分ヤフーニュースとかにも載ってると思うぜ」
焔火に言われた水咲姫はスマホでヤフーニュースを確認してみた。
「……本当だ」
焔火の言う通りヤフーニュースにタカシの事が書かれていた。ちなみに記事にはこう書かれていた。
"お手柄!ミュータント男子高校生の燈焔火君(15)、連続殺人ミュータントを撃破。犯人はその後警察に連行される。"
「ほえ~……本当に倒しちゃったんだ……なんか……ありがとう……仇討ちなんかしてくれて」
「へへ!礼なんていらねぇよ!あ!そうそう!そりよりまたお見舞い品持ってきたんだ!ほい!」
焔火は水咲姫に左手に持っていた袋を差し出した。彼女はそれを受け取り中を見てみるとバナナが7房も入っていた。
「うわぁ~!またバナナだ!嬉しい!ありがとう!」
水咲姫は満面の笑みを浮かべて喜んだ。焔火もそんな彼女を見て「よかった~!喜んでくれて!」という感じの笑みを浮かべていた。するとそんなところで水咲姫は焔火にある事を伝える。
「あ!そうだ!そういえばさっき早乙女先生が隣の病室に運ばれてきたよ」
「マジか!?この病院に運ばれてきてたんだな……容態は?」
「さっき看護師さんに聞いたら軽い貧血みたいな感じで命に別状はないってさ、でも念のため1日入院が必要だって」
「ほえ~……そっか……俺ちょっと様子見に行こうかな……」
焔火が早乙女の元へと行こうと病室内を出ようとした時に中に若い女性看護師が入ってきた。そして焔火と目が合った。
「あ!?ちょっと!面会の時間はもう終わってるはずよ!?どこから入ってきたの!?」
そう言いながら焔火に詰め寄っていく看護師。それに対してヤバいと思った焔火は「あかん!!水咲姫!!お大事に!!先生にもお大事にって言っといてくれ!!」と水咲姫に言い残して病室の窓からダイブして逃走した。