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380章 家政婦としてのホノカ

 ホノカはお手伝いとして、一生懸命に汗水を流していた。

「ミサキちゃん、窓ふきは終わったよ」

 児童の掃除だけでは、埃を完全に除去するのは難しい。数カ月に一度は、人手による掃除も必要だ。

「ホノカちゃん、おつかれさま」

 窓ふきをきっちりやっているのかという、確認はしていなかった。勤勉な女性なので、サボったりすることはないと思われる。

「ホノカちゃん、まかない料理を食べる?」

「ミサキちゃん、ありがとう」

 まかない料理は、自販機から注文するだけ。定食屋、ラーメン屋で出される料理と根本は異なる。

「ホノカちゃん、すごく元気になったね」

「ミサキちゃんに助けてもらったからだよ。救いの手を差し伸べてくれていなかったら、今も苦
しみ続けていた」

 生活苦で苦しんでいる女性に、一週間分の給料を差し出す。

「ホノカちゃん、一週間分の給料だよ」

 ホノカはお金を稼ぎたいのか、週6回の仕事をした。生活資金を稼ぐことに、重きを置いている。

「ミサキちゃん、ありがとう」

 基本給1440ペソに、特別ボーナス8560ペソをプラス。今回の合計金額は10000ペソである。

 ほのかは給料に、戸惑いを隠せないようだった。

「ミサキちゃん、お金が多すぎるよ」

「パンを持ってきてくれたり、いろいろなことをしてくれた。これくらいは奮発させてほしい」

 パンのときは本当に助かった。あれだけで、10000ペソの価値は十分にある。

「ミサキちゃん、ありがとう」

 ホノカはもらったばかりのお金を、大切に握りしめていた。

「しっかりと貯蓄して、今後の備えにしよう」

 堅実な生き方をしていても、お金は底をつく。最低限の稼ぎは、生活の必須条件といえる。

「本当に苦しかったとき、写真集をオークションにかけようと思った。サイン入りなら、定価の1000倍、10000倍は固い」

 ホノカはサイン入りの写真集を入手していた。あれを売ることによって、数年は生き延びることができる。

「ミサキちゃんのサイン入りの本は、どうしても手放せなかった」

「生活に困ったときは、手放してもいいんだよ」

 ミサキのおなかはギュルルとなった。

「牛丼10人前、かつ丼10人前、親子丼10人前を食べよう」

「ミサキちゃん、すさまじい食欲だね」

「私はこれだけ食べても、数時間後には腹ペコだよ。食べて、食べて、食べまくって生きていくんだ」

 自販機はメンテナンス中と書かれていた。ミサキは画面を見た瞬間、頭は真っ白になった。

「ミサキちゃん、冷蔵庫の中の食料を食べよう」

「そうだね。今日のところはそうする」

 冷蔵庫の中には、数日分の食料を買いだめしている。今日はそれを食べることで、飢えをしのげる。

「今後の食料はどうするの?」

「自販機はすぐに動くようになるはず。明日中には解決していると思う」

「ミサキちゃん、3日分くらいは食料を買いだめしておこう。先に準備しておくことで、緊急事態に備えたほうがいい」

「そうだね。食料をきっちりと買っておこう」

 ミサキは食事を終えたあと、スーパーに買い出しに向かった。ホノカは仕事時間外にもかかわらず、一緒についてきてくれた。

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