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第7話「惨い……」

「惨い……惨過ぎるわ、みおちん……」

「ええ……惨いです……」

あれから殺人現場へと着いた匙守音。彼女の目の前には全身を50等分に切り離されて舟型の器に乗せられていた惨い死体があった。まさに舟盛りだ。鬼畜の所業だ。さらにそれだけではない。付近の地面には女性のものと思われる血で書かれた挑発的なメッセージも残されていた。

"やっはろ~!切り裂きタカシだよ~ん!おのれらがモタモタ捜査してる間にまた1人殺したった!m9(^д^)プギャー!!"

「切り裂きタカシ……どこまで人をおちょくれば……ん?」

匙守音は死体やメッセージを眺めていたところである事に気がついた。なんと死体の近く設置されていた街灯が折れて倒れており、それに加えて付近の地面がスパッと割れていたのだ。

「妙ね……街灯が倒れて地面が割れてるなんて……ここ最近大きな災害とかがあった訳でもないのに……」

気になった匙守音はスタスタとそこに近づいて行く。そして白鳥もそんな彼女について行く。

「んん?」

街灯を近くで見るなり神妙な顔を浮かべた匙守音。なんと街灯には綺麗な切断面があったのだ。つまり折れて倒れていたのではなく、切られて倒れていたのだ。

「誰が何のために切断を……お?」

匙守音はまた新たな発見をする。倒れていた街灯に微量の血液と肉片が付着してたのだ。DNA鑑定をした訳ではないが恐らく舟盛り女性のものであろうと匙守音は確信した。そしてここで彼女はある仮説を立てる。

「被害女性が街灯付近を歩いていたところを刃物を持った何者かが接近し、斬撃を飛ばした……そして彼女と街灯と地面がスパッと切れた」

匙守音の発言に白鳥が反応する。

「そ、そんな事人間に出来なくないですか?」

彼女の発言に匙守音は答える。

「普通の人間ならね……でも……人智を越えた力を持つ人間……ミュータントなら?」

「!!」

2人の周りが不穏な空気に包まれる。

「……犯人はミュータント……もしそうだとしたらかなり厄介な案件になりそうですね」

「そうね……ところでみおちん……防犯カメラの解析は?」

「終わりましたよ」

「怪しい奴は映ってた?」

「はい、1人ね」

「本当に!?どんな奴!?」

「映像、スマホに移してきたんで観てみてください」

白鳥は上着ポケットからスマホを取り出し、動画ファイルを開いて匙守音に差し出した。

「どれどれ……」

動画を確認する匙守音。そこに映っていたのは頭に鶏帽子を被り、ハート型のサングラスをかけた白のタンクトップに黄土色の短パン、白のビーチサンダル姿の25~35歳くらいと思われる男だった。男は防犯カメラに向かって"タカシ"と書かれたプラカードを向けてヒンズースクワットを行っていた。

「何をしてんのコイツ……?」

男の奇行に困惑する匙守音。すると男はスクワットを突然やめて、ズボンのポケットからペンを取り出してプラカードの裏に何かを書き始めた。そして書き終わるとそれをカメラに向けた。そこには"通り魔系男子"と書かれていた。

その後男はプラカードをカメラに向けた状態で数分間高速で反復横飛びを行い、それが終わると猛スピードでバック走をしながら去って行った。動画はここで終了した。

「……犯人絶対コイツでしょ」

「ええ、私もそう思います」

「よし、早速コイツを捜すわよ」

「了解です」

2人は男を捜すべくその場を後にした。

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