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第5話「エクセレント」

「燈君、改めましてこんちには、天ケ瀬舞です、1年間よろしくね」

「よろでやんす」

軽い挨拶を交わした焔火と天ケ瀬(本体)。現在2人は学校敷地内にある1000平米程の広さの耐熱性訓練室にいた。

「それじゃあ燈君、訓練を始める前に大事な話をするから耳の穴かっぽじってよく聞いててちょうだいね」

「大事な話?」

「ええ、この学校で能力訓練というものを行う理由よ」

「ああなるほど、そういう話ですか、分かりました
ちゃんと聞いときます」

焔火は真面目な顔を浮かべて耳を傾ける。

「この学校で能力訓練を行う理由……それはさっきグラウンドでも少し話したけど自身の持っている能力を完璧に制御出来る様にするため……それからまだまだ隠れているであろう潜在能力を引き出す為よ」

「はい」

「なぜその様な事をするのか……それは近い将来に社会に出た時に能力を暴走させて周りにいる人々を傷付けない様にするため、それから万が一、自分や大事な人の身に危険が訪れた際に能力を駆使して身を守れる様にするためよ」

「なるほど」

「あとそれからこんな事言うまでもないと思うけどこれから先自分の持ってる能力を校内や外で悪用したりなんかしたら絶対にダメよ?」

「ほい」

焔火はキリッとした顔で答えた。

「フフフ、良い顔に良い返事ね……よし、それじゃあ話はこの辺にして早速訓練を始めましょうか」

「うい~っす、ところで先生、先生は俺の能力既にご存知で?」

「もちのろん、入学前から把握してるわよ、発炎でしょ?便利な能力よね~、もしも屋台で買ったイカ焼きが生焼けだった場合その場で自分で焼けちゃう訳ですもんね」

「ハハハ……滅多にないっすよそんなシチュエーション……つーか俺からしてみれば分身の方が便利そうっすけどね」

「そう?」

「ええ、だって自分が複数いると色々と捗るでしょ?例えば夕飯の仕度と風呂掃除を同時に進行させたりとか」

「ああ……確かにね……でも結構面倒な事も多いわよ?例えば分身同士で些細な事から殴り合いの喧嘩を始めたりしたり、私の知らぬ間に冷蔵庫のプリン勝手に食べてたり、あとそれから洗面所の電気点けっぱなしにしてたり、さらにそれから……っといけない……ちょっと余計な話をしすぎちゃったわね、ごめんなさい、ガチのマジで話はこの辺にしといてとっとと始めましょうか」

「ういっす、ところで俺一体どんな事をやらされるんでしょうか?」

「そうね……まずはどの程度能力を自在に操れるか見せてもらおうかしら……」

天ケ瀬は近くに設置されていた液晶パネルを操作した。すると2人が立っている所から50m程先の床からダミー人形が横並びに3体出現した。

「燈君、あそこに立ってる真ん中の1体だけ燃やしてみてくれる?」

「合点」

焔火は右手の平を人形の方へと向けてそこから火炎放射機の如く炎をボワーッと噴射し見事に1体だけを燃やしてみせた。

「ヒュ~!いいわねぇ!」

「はん、こんくらいイージーっすよ、さ、お次は?」

「ん~……じゃあ……次は両端にいる人形の頭だけ燃やしてみてくれる?」

「頭だけ……中々の事要求しますね……まぁ余裕っすけど」

焔火は今度は両方の人差し指を各人形の方へと向け、そこからデスビームの様な細い炎を噴射し、見事に頭だけを燃やしてみせた。

「ナ~イス!」

「グラッツェ(あざっす)」

「よし、じゃあ次は~……」

天ケ瀬はまたパネルを操作し、今出ている3体の人形を床の底に閉まい、今度は15本のロウソクが乗った正方形の台を出現させた。

「あれは……ロウソク?」

「ええ、数はアナタの年齢と同じ15本よ、早速なんだけどこの場からあれら全てに火を灯してくれない?ちなみにロウの部分は燃やさない様にね」

「うへぇ~……しんど~……さっきよりもダルいっすねぇ~」

そう言いながらも焔火は右手をロウソクに向かって水平に構えた。そして各指先から蛍の様な小さな火の玉をポウッと発射。間髪入れずにまた発射。さらにもう1回発射。5×3。計15発飛ばした。

ポウッポウッポウッポウッポウッ
ポウッポウッポウッポウッポウッ
ポウッポウッポウッポウッポウッ

焔火はロウ部分を燃やす事なく、見事に全ロウソクの芯に火を灯した。

「ワ~オ!エクセレント!」

天ケ瀬はパチパチと拍手をして焔火を褒め称えた。すると彼は左手で後頭部を触りながら照れくさそうに笑った。

「いやぁ~……天才イケメンプレイボーイだなんてそんな……褒めすぎですよ……」

「……い……いや……言ってないわよ……」

天ケ瀬はやや困惑な表情を浮かべつつ、パネルを操作してロウソク台を床の底へと閉まった。そしてその後も施設内にある色々な設備を使い、焔火に色々とやらせた。


~40分後~

「ありがとう燈君、もう充分よ」

天ケ瀬は焔火に能力の使用をここで一旦止めさせた。

「さて……と、今までのを見た感じだと能力をほぼ完璧に制御出来ているみたいね、素晴らしいわ」

「ごっつぁんです」

焔火は天ケ瀬に向かって押忍ポーズをしながら頭を下げる。そしてそんな彼を見ながら彼女は言う。

「いやはやしっかし……まさかあそこまで精密に炎を操れるなんて驚いたわよ、ねぇ、もしかして普段から自己訓練してたりする?」

「はい」

「はえ~……偉いわね~……感心感心」

キーンコーンカーンコーン

天ケ瀬が焔火を褒めた直後に授業終了を知らせるチャイムが鳴った。

「はい!今日はここまで!お疲れ様!次回は潜在能力を引き出す為の訓練をするんでよろしくね」

「ういっす、あざっした」

その後2人は雑談をしながら校舎へと戻って行った。

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