ｋ－１３３
今日も俺は一人、暖炉の炎をボーっと見つめながら考え事をする。
俺は物事に対する執着心が欠落しているように思う。
会社もそう、お金もそう、何より人に対して執着してこなかった。
こちらの世界に来て、親友ができた。そして、その関係値が崩れることを、初めて怖いと思った。
俺は、本当の意味で恋愛をしたことがないのかもしれない。
一流商社マンはモテるので、彼女はできるが全く長続きしなかった。
相手は全く愛情表現を示さない俺に傷つくか、呆れるかのどちらかだったように思う。
そんなことを繰り返すうちに、恋愛は自分には向いていないと考えるようになった。
相手も自分も傷つける恋愛なんてまっぴらだと思うようになった。
でもユリナさんと出会って、気がつき心を改めたことがある。
――恋愛は、執着心の末の産物なのではないか。
執着して、粘って、泥だらけ傷だらけになって、その末にやっと成立する関係値なのではないだろうか。
そう考えると、俺にとってこれほど困難なものはない。
相手が自分に執着するかが重要なのではないから恋愛テクニックでどうこうなる話ではない。
俺が相手にどれだけ執着できるかという問題だ。
そしてそれは自分の気持ちの問題なので、アウト・オブ・コントロールだ。
彼女のことを考えれば考えるほど、深く入り組んだ迷路に迷い込むかのような感覚に陥る。
彼女のことが好きなのか嫌いなのかと問われれば、自分はきっと「好き」と答えるだろう。
しかし、その程度は、温度はと問われると、とたんに言葉に詰まってしまうのも事実。
俺は自分の心がわからない。
なぜ恋愛は、こんなにも難しいのだろうか。
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