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第2章36話 鬼の力 反撃開始

長時間による戦闘で立つこともままならなくなった悠は絶体絶命の危機に陥っていた。安倍晴明の刀が悠の首に達しそうになり、安倍晴明は勝利を確信した。その時・・。

 晴明:
 「なっ!何!」

悠は『百鬼夜行』で安倍晴明の刀を受け止めていた。

 晴明:
 「もう限界のはず。立つことはおろか動くこともままならないはず、なのになぜまだ動ける!」

 悠:
 『百鬼夜行 百鬼の舞(ひゃっきのまい)』

悠が技を出そうとすると、先程まで長刀の形をしていた『百鬼夜行』は大きな出刃包丁のような形に変形した。

 晴明:
 「また形が変わっただと?」

 悠:
 『怨鬼・青(おんき・あお)』

悠が安倍晴明の刀を振り払うように刀を振ると周辺に凄まじい冷気が遅い、周辺に生えていた草はまるで針のように凍り付き、木は剣山のようになっていた。あまりの冷気に安倍晴明は近くの住宅の屋根へと避難した。この冷気は広範囲に及び、氷室たちのもとまで届いていた。

 スターク:
 「なんなんだこの冷気は。これじゃあまるで・・。」

 ソフィア:
 「涼君の【ニブルヘイム】と同等かそれ以上の冷気。そんなことありえる?」

 氷室:
 「悠・・・。」

 晴明:
 「なんという冷気。深呼吸しただけで肺が凍りそうなくらいだ。」

 悠:
 「『怨鬼・青』は八寒地獄にいるとされる鬼の力。空気中の冷気を刀に宿して一気に開放する技だ。今は夏の終わり、夜は当然冷え込む。町がどれだけ明るかろうが気温は変わらないからな。」

 悠:
 「そういえば、お前さっきなんでまだ動けると聞いたな。そんなの決まっているだろ。」

 晴明:
 「?」

 悠:
 「今を生きている人達、これからを生きる人達が安心して暮らせるために決まっているだろ。今俺がここで倒れたら今を生きる人たちの人生が、これからを生きる人たちの未来が潰える。そんなことがわかっていながらやられるわけがないだろうが。どれだけ限界だろうが、ボロボロだろうが立ち上がる。でなきゃみんなの命もこの背中の数字も背負う資格がない!俺がここにいる資格もない!」

 晴明:
 「成程、やはり手強い。だがこの冷気のなか、お前自身も思うように動けまい。」

安倍晴明は屋根から降りると、悠の背後に回り込み腰めがけて掌底を繰り出した。

 悠:
 「そうだな。冷やしたら温めないとな。」

 晴明:
 「!」

 悠:
 『百鬼夜行 百鬼の舞 怨鬼・赤』

悠が刀を地面に勢いよく叩きつけると、先程まで冷え切っていた空気とは一変して凄まじい熱気が辺りを覆った。氷点下以下までに下がっていた気温も一気に日中の砂漠のような気温までに上昇した。

 晴明:
 「なんなのだこの熱気は尋常ではないぞ。それにさっきより技の威力が確実に上がっている。」

 悠:
 「『百鬼夜行』の技は2種類ある。相手への状態異常とスピード重視の『妖の舞』と周辺への影響とパワー重視の『百鬼の舞』。膝をついて悪かったな。続きをやろうか安倍晴明。」

 晴明:
 「最高だよ。悠。」

両者は即座に剣を交えた。その刀同士の衝撃により周辺の住宅は瓦礫を化しており、住宅で囲われておいた住宅街が平野のようになっていた。
切り合いの最中、安倍晴明は切りかかるふりをし、悠が防御した隙をついて体重70kg近くある悠を高く蹴り上げた。そして、落下してくる悠に合わせて攻撃するために構えた。

 悠:
 『百鬼夜行 妖の舞』

 晴明:
 「!」

悠は空中で攻撃モーションに入り、

 悠:
 『土蜘蛛(つちぐも)』

体を回転させながら安倍晴明を切りつけた。

 晴明:
 「空中での身のこなしは見事だが、攻撃直後というのは隙がデカいだろう。」

安倍晴明は攻撃直後の悠に刀を振ろうとした。しかし、悠はすでに次の攻撃モーションを完了しており、剣先が安倍晴明の肩付近まで来ていた。

 晴明:
 「!早すぎる!」

 悠:
 『百鬼夜行 妖の舞 八岐大蛇(やまたのおろち)」

悠は続けざまに安倍晴明に8連撃叩き込んだ。安倍晴明は何歩か後退し、遂に安倍晴明も膝をついた。

 晴明:
 「やはり強い。そのスピードと身のこなし、それに即座に状況に応じた技を選択する判断力と洞察力、見事だ。だが、戦いはこれからよ。」

安倍晴明は立ち上がろうとした時、体に違和感を感じた。

 晴明:
 「なんだ?立ち上がれないだと?」

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