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第2章35話 『百鬼夜行』の力 限界寸前

『夜行』の真の力を解放した悠。苦戦を強いられるも渾身の一撃により遂に安倍晴明に深い一撃を与えた。

 晴明:
 「まさか余が一撃もらうとはな。それにさっきの一撃は人間業とは思えないほど早く特殊な軌道のようであったが。」

 悠:
 「流石だな。一回で見切るとは。『独眼・一目連』は片目に視力を集中することで相手の小さな隙を見つけて、居合の形からその隙に切り込む技だ。視野は狭まるがどんな小さな隙も見逃さず、『一目連』の力が乗った一撃は掠っただけでも致命傷になりかねない。」

 晴明:
 「成程。面白い。」

安倍晴明は不敵な笑みを上げると、悠との間合いを一気に詰めて『十束剣』を悠の首めがけて下から上へ振り上げた。悠はなんとは反応して『百鬼夜行』で受けたがその一撃は想像以上に重く、数m後ろに下がってしまった。

 晴明:
 「良く反応したな。反射神経も上昇しているようだな。だが、相手は余だけではないぞ。」

残っていた魔物たちが四方八方から雄たけびを上げながら悠に向かって襲い掛かってきた。

 悠:
 「うるせぇ、邪魔だ。」

 悠:
 『百鬼夜行 妖の舞 鞍馬天狗(くらまてんぐ)』

悠は上半身を限界まで捻り、遠心力を使って力いっぱい刀を振った。それにより、斬撃を帯びた突風が吹き荒れ、まるでミキサーのように四方八方にいた魔物たちは1体も残らず切り刻まれた。
その時吹いた突風は小さな台風と大差ないほどの風力であった。

 晴明:
 「風・・・天狗の力か。懐かしいな。余も昔退治したなこの刀で。」

 悠:
 「そうかい。」

悠が魔物を全滅させたことにより、安倍晴明は魔物に分けていた力が戻り再び全力の力を取り戻した。

 晴明:
 「では、参ろうか。」

 悠:
 「あぁ。」

互いに構えると少しの間動かず、近くの住宅の瓦礫が地面に落ちた瞬間、両者は再び刀を交えた。









その頃、ソフィアたちは手助けできる隙を伺っていた。

 ソフィア:
 「ねぇ、早く悠を助けに行かなくていいの?流石に一人で陸王の相手は悠でもきついし、こうしている間にも悠の寿命が。」

 氷室:
 「あぁわかってる。だけど、何の策もなくあの戦いに首を突っ込むのは自作行為と一緒だ。今行っても多分、一瞬で死ぬ。」

 スターク:
 「だな。2人してなんつう殺気してんだ。ここもだいぶ離れているのにそれでも殺気がビンビン伝わってくる。」

悠と安倍晴明の殺気と圧は遠く離れた氷室たちですら安易に近づけず、一般団員では立っていることもままならないほどである。さらに、氷室たちより離れた場所にいた避難者たちも悪寒や手足の震えが止まらない者が出るほどであった。

 氷室:
 「クソっ!どうしたらいいんだ。」

殺気や圧だけでなく両者が刀を交えるたびに強い衝撃が辺り周辺を襲い、近くの住宅も衝撃で崩壊寸前までになっていた。

 氷室:
 「とりあえず2人とも、いつでも出れるようにだけ準備しておけ。すぐに全力を出せるように。」

 スターク・ソフィア:
 「「了解。」」







刀を交えていた際、安倍晴明の攻撃を『百鬼夜行』でなんとか防御した悠だったがよろけてしまい遂に膝をついてしまった。呼吸も荒く、下を向いたままで『百鬼夜行』を掴んでないと倒れてしまいそうであった。

 晴明:
 「やっと膝をついたか。当然と言えば当然だ。戦闘開始から約2時間、お前は休むことなく戦い続け2体の式神撃破・【四神】撃破そして、余との戦闘。今まで立っていたのがおかしいくらいだ。見てみろお前の手を。」

悠が自分の手を見るとひどく痙攣しており、『百鬼夜行』を持てているのが不思議なくらいだった。

 晴明:
 「それだけ震えていたらもうまともに刀も握れまい。お前は十分善戦した。余に渡り合うだけでなく一撃与えた。そんな人間は初めてだ。天晴であった。今楽にしてやろう。」

安倍晴明はゆっくり悠に近づき、刀を振り上げた。

 晴明:
 「さらばだ、悠。」

安倍晴明は下を向いた悠の首をめがけて介錯人のように刀を振り下ろした。

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