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第2章33話 本当の名 力の代償

悠の指示で少し離れたマンションの屋上にやってきた氷室らは少し揉めていた。

 氷室:
 「スターク!なぜ止めなかった。あのままだと悠が。」

 スターク:
 「落ち着け涼介。説明してくれないとわからねぇよ。」

その言葉に我に返った氷室は一旦深呼吸した。

 氷室:
 「悪かった。怒鳴ったりして。」

 スターク:
 「いや、大丈夫だ。」

 ソフィア:
 「それで涼君、あのまま悠が戦ったら何かあるの?」

 氷室:
 「さっき悠が抜いた武器の名前わかるか。」

 スターク:
 「『夜行』だろ。俺も何回も戦ったし。」

 氷室:
 「その名前は半分正解だ。」

 ソフィア:
 「どういうこと?」

 氷室:
 「『夜行』っていうのは本当の力を封印した時の名前だ。」

 スターク・ソフィア:
 「「!!」」

いきなり明かされた真実にスタークたちは驚きを隠せなかった。

 氷室:
 「本当の『夜行』はあまりにも危険で使用者にも多大な代償が求められたから悠が今の日本刀の形に力を封印したんだ。だから、『夜行』の能力は音を消すとかそんなんじゃない。」

 氷室:
 「『夜行流一刀術』は悠自身が編み出した剣術だ。」

 ソフィア:
 「まさかそんなことが。」

 スターク:
 「じゃあ『夜行』の本当名前って?」

 氷室:
 「『夜行』の本当の名前は・・・。」


 

 



 悠:
 『百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)』

悠が名を呼ぶと重く、禍々しい空気が辺りに漂った。紺色だった悠の着物は真っ黒に染まり、日本刀サイズであった『夜行』は柄に部分に包帯のような布が巻かれ、鍔のない2m近くある長刀へ変化した。

 晴明:
 「刀が変化しただと?それになんだこの禍々しい空気は?」

 悠:
 「『百鬼夜行』それがこいつの本当の名前だ。こいつを使うのは骨が折れるんだけどな。全滅するよりましだ。」

 晴明:
 「形が変わったところで余に勝てなかろう!」

安倍晴明は一瞬で間合いを詰め、悠の顔面目掛けて裏拳を繰り出したが、

 悠:
 『百鬼夜行 妖の舞(あやかしのまい) 玉藻(たまも)』

攻撃が当たる瞬間、悠は消えたかのように攻撃をよけた。

 晴明:
 「まだ動けるか。」

 悠:
 「『百鬼夜行』の能力は使用者の身体能力を著しく上昇させる事。そして、刀に妖怪や鬼の力を宿す事。」

 晴明:
 「何?」




 



 ソフィア:
 「つまり妖怪や鬼の力を使えるってこと?」

 氷室:
 「あぁそうだ。」

 スターク:
 「でも、それじゃあ何が危険なんだ?あまり危険そうにないけど。」

 氷室:
 「妖怪って言っても様々いる。いたずら程度のことしかしない妖怪から人を呪い殺してきた妖怪まで様々な。鬼も同様だ。そんな力を全開で使ったら町1つくらい余裕で崩壊できる。」

少し沈黙が続いた後、氷室が続けて

 氷室:
 「それより恐ろしいのが使用者の代償だ。」

 氷室:
 「俺たちが使用している『ギフト』にもデメリットのようなものが存在する。もちろん悠の【武器使い】にもだ。悠のデメリットは武器を使用していな時の力が全力の3分の1程度の力しか出ないというものだ。」

 氷室:
 「でもな・・・。」

 ソフィア:
 「涼君?」

氷室は下唇を嚙み続けた。

 氷室:
 「悠の使う『彼岸』と『百鬼夜行』は『ギフト』のデメリットとは別に使用する際に代償を支払わなければならない。」

 氷室:
 「『彼岸』の場合は相手が受けた痛みの倍の痛みを受けること。」

 スターク:
 「おいそれって!確か『彼岸』って。」

 氷室:
 「あぁ。悠は『彼岸』を使う際、何十倍・何百倍と膨れ上がった痛みをさらにその倍の痛みを受けている。普通なら失神するか最悪の場合ショック死してもおかしくない。」

 氷室:
 「それよりやばいのが『百鬼夜行』だ。こいつの代償は使用者の生命力。」

 氷室:
 「つまり寿命だ。」
 
 スターク・ソフィア:
 「「!!」」

 氷室:
 「持っていかれる寿命は使用時間と『百鬼夜行』の気分次第。もし、今回の戦いが長引いたら最悪命をおとす。」



 晴明:
 「妖怪の力と来たか。面白い。妖怪退治をしてきた余を相手に妖怪の力で戦うか。」

安倍晴明は高笑いをした。

 晴明:
 「では、久しぶりに妖怪退治と参ろうか。」

安倍晴明は一枚のお札を一本の剣に変えた。

 晴明:
 「『十拳剣(とつかのつるぎ)』我が国に伝わる宝剣だ。これでお前を倒してやろう。」

 悠:
 「行くぞ。」

その直後、悠と安倍晴明は激しく切り合った。安倍晴明は魔物を召喚しながら攻めていき、悠はそのすべての魔物を切り伏ていった。両者互角の勝負を繰り広げていた。

 晴明:
 「素晴らしい!三王の一角であるこの余とたった一人で同等に渡り合う人間など今まで存在しなかった。もっとだ。もっと力を見せてみろ。」

勝負は均衡状態に入り、互いに攻めるにも攻めきれなかった。すると、悠が足を滑らせ一瞬バランスを崩してしまった。

 晴明:
 「今だ!やれ!」

安倍晴明の合図とともに数百体といた魔物が一斉に悠に襲い掛かった。

 悠:
 「舐めんなよ。」

その一言で安倍晴明に悪寒が走った。

 悠:
 『百鬼夜行 妖の舞 独眼・一目連(どくがん・いちもくれん)』

悠の居合の形からの一撃により、直線状にいた魔物は全滅し始めて安倍晴明に手痛い一撃を与えた。

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