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第2章30話 新たな武器 全力の一手

安倍晴明の式神、天后と対峙していたソフィア。天后が産み出した異形なる魔物の攻撃によって大ダメージを負ってしまった。

 天后:
 「どうだ?我が子の攻撃は。なかなか効くだろう。」

 天后:
 「100体分の魔物の力に私の力も上乗せされている。いくらそなたが師団長と言ってもこの子を倒せまい。」

 天后:
 「それにそなた、見たところ他の師団長達より経験が浅いようじゃからのう。他の師団長ならやられているかもしれないが、経験の浅いそなたでは勝つのは無理じゃろう。」

ソフィアは師団長に就任してから1年ほどしか経過しておらず、師団長の中では一番新しい師団長である。

 ソフィア:
 「だから、なんだって言うのよ。」

 天后:
 「?」

 ソフィア:
 「経験が浅いから勝てない?他の師団長なら倒せる?そんなの百も承知よ。他の師団長がすごいことも私がみんなに劣っていることも。」

 ソフィア:
 「でもね、師匠は私に南部の防衛を任せてくれて悠は私にあなたの討伐を任せてくれた。こんな私だけど頼ってくれる人たちがいる。そんな人たちの気持ちを踏みにじって逃げるなんて情けない生き方はしたくない。」

 天后:
 「硬い意思だこと。さぁ、やってしまいなさい。」

そういうと、魔物はソフィアのもとへ一直線に突っ込んで行った。

 天后:
 「だったらその意思ごと叩き潰してあげる。自分の無力さを痛感しなさい。」

魔物は休む間もなく攻撃を繰り出し続けた。ソフィアは魔物の猛攻を武器や罠を次々と生成して防いでいった。悠たちとの訓練により生成スピードは格段に速くなり、一度に生成できる量や大きさのレベルも上がっていた。

 天后:
 「なかなか耐えるのう。どこまで持つかな?」

 ソフィア:
 「このままではらちが明かないわ。」

すると、突然ソフィアの鼻から鼻血が出てきて一瞬気を取られた。その一瞬の隙をつかれソフィアは再び魔物の攻撃を受けてしまった。

 天后:
 「やはりか。それほどのスピードで次々に生成するには頭の中で錬成式を作り続けなくてはならない。恐らく、今のそなたは普段の数倍以上脳が動いている。そんな状態が続いたら神経が焼き切れる。そこが今のそなたの限界だ。」

 ソフィア:
 「そうね、もう新しく生成するのはやめるわ。」

 天后:
 「あら、意外に素直なのね。」

 ソフィア:
 「勘違いしないで。生成するのをやめただけで勝ちを捨てたわけじゃないわ。」

そういうと、ソフィアは腰の後ろに携えていた脇差サイズの刃物を抜いた。

 天后:
 「今度はそれで戦うの?どんなものか。」

 ソフィア:
 『七彩 赤 不知火(しらぬい)』

その瞬間、魔物の腕は切り落とされてその断面が焼かれたように焦げていた。

 天后:
 「何をした!」

 ソフィア:
 「『虹式ナイフ 七彩』。このナイフは普通の人が使ったらただの少し大きいナイフだけど、私が使うと強力な武器へと変化する。」

ソフィアが武器にシステム付与を行う際、普段は自身の頭の中で一度錬成式を組み立てそこから武器に錬成式を読み込ませることで様々なシステムを付与してきた。だが、『七彩』はあらかじめにいくつか錬成式を読み込ませることによりソフィアはどのシステムを付与するかを選択するだけで付与が可能になった。これにより、ソフィアの脳への負担が格段に減らすことに成功した。

 天后:
 「面白い。行きなさい。」

すると、魔物は川の底を勢いよく殴りつけ大きな水しぶきを上げた。

 ソフィア:
 「目くらましか。無駄よ。」

 ソフィア:
 『七彩 青 零獄(れいごく)』

ソフィアが『七彩』を一振りすると川の水が凍り付き、魔物の足が動かなくなった。

 天后:
 「なっ!」

 ソフィア:
 「涼君の【ニブルヘイム】には遠く及ばないけど動きを止めるには十分よ。」

 ソフィア:
 「2色同時は使ったことないけど今ならいける気がする。」

そういうと、ソフィアの『七彩』は赤と黄色に染まっていった。

 ソフィア:
 「『赤』 炎生成システム・『黄色』 電撃生成システム同時選択。」

 天后:
 「!させない。」

天后は何かを察して阻止しようとしたが、

 ソフィア:
 『七彩 赤+黄色 建御雷(たけみかづち)』

凄まじい雷鳴が周辺に響き渡り、熱気が凍り付いた川を溶かした。天后はあまりの雷鳴と熱気で近づけず、目を開けた瞬間、胴体を両断され丸焦げになった魔物の姿が目に飛び込んだ。

 天后:
 「小娘がよくも我が子をこんな目に。」

 ソフィア:
 「次はあなたよ。」

 天后:
 「やれるものならやってみなさい!」

天后はソフィアに向かって勢いよく突っ込んでいった。ソフィアは即座に壁を生成して天后を囲い込んだ。

 天后:
 「こんな壁すぐにでも。」

天后が壁を壊そうとした瞬間、なぜか天后は膝から崩れ落ちた。

 天后:
 「なぜ?息ができない。」

 ソフィア:
 「ここが川でよかったわ。水っていうのは不純物を取り除くとね水素と酸素で出来てるの。だから、あなたの足元にある水を分解して水素で充満させるようにしたの。」

 ソフィア:
 「生物は水素じゃ呼吸できないものね。まぁでも、このままであなたを倒せるとも思ってないわ。」

 ソフィア
 『七彩 赤 不知火』

ソフィアは天后を囲い込んでいる壁の頭上に穴を開け、壁の中に火のついた『七彩』を投げ込んだ。

 ソフィア:
 「バイバイ。」

 天后:
 「やめっ。」

次の瞬間、凄まじい爆発音が辺り一帯に響いた。ソフィアが壁を解除すると、天后は灰のように消滅していった。

 ソフィア:
 「早く悠の手助けをしないと。」

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