第九十七話 決戦、死の山(二)
--翌日。
帝国軍は、三日の行程を行軍の合間に休息を交えながら
空母ユニコーン・ゼロの艦橋でラインハルトは、帝国軍全軍の陣立ての様子を見守っていた。
ナナイがラインハルトを気遣う。
「
「そうだな。ナナイの言うとおりにするよ」
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革命党軍事委員コンパクが司令室にやってくる。
「ヴォギノ主席。港湾自治都市郡から返答が来ました」
「寄越せ」
ヴォギノはコンパクから返答の文書を受け取ると、封印を切って羊皮紙の文書に目を通す。
「『革命党の自治都市通過は認めるが、自治都市への滞在は認めない。これが最大限の譲歩』だと!?クソッ!!」
地団駄を踏むヴォギノにコンパクが尋ねる。
「自治都市も帝国と事を構えるつもりはないと?」
「そうだ。だが、通過できれば充分だ。そのまま新大陸へ逃れる」
「なるほど」
「まぁ良い。帝国にこの
「はっ!了解しました」
--翌々日
帝都を出立した帝国軍の先鋒は、革命党が立て籠る要塞
空母ユニコーン・ゼロの艦橋にいるラインハルトの元に報告が届く。
「我が軍の先鋒が死の山に到達。革命党と交戦に入りました」
ラインハルトが命令を下す。
「帝国機甲兵団の艦砲射撃を第一撃とし、帝国竜騎兵団に第二擊を任せる。対空砲火を沈黙させろ」
伝令兵が敬礼しながら答える。
「了解しました」
ラインハルトからの命令を受けたヒマジンが喜びながら、副官のロックス大佐に話し掛ける。
「喜べ、ロックス! 我が帝国機甲兵団が一番槍の名誉を賜ったぞ! 単縦陣! 面舵! 飛行戦艦艦隊の一斉射撃を
ヒマジン率いる帝国機甲兵団の戦艦艦隊は、単縦陣に陣形を組み変えると向きを変え、
たちまち艦隊に面した
自動装填装置が付いている飛行戦艦の艦砲と、人力で一発ずつ装填する革命軍の野砲では制圧火力の差が桁違いである。
飛行戦艦艦隊の一斉射撃により革命軍の防御陣地は次々と破壊されていく。
小一時間の砲撃を加えたヒマジンは、艦隊に砲撃停止を命じる。
「頃合いだな。後は二番手のアキックスに任せよう」
飛行戦艦の砲撃停止とヒマジンからの合図を見計らい、アキックスがシュタインベルガーに話し掛ける。
「友よ。どうやら、我々の出番のようだ」
「承知」
帝国竜騎兵団が編隊を組み、
上空のアキックスの目に、艦砲射撃によって破壊された防御陣地の塹壕の中を革命軍兵士達が逃げ惑う姿が見てとれる。
シュタインベルガーは大きく息を吸い込むと、革命軍の防御陣地に残る塹壕に爆炎の吐息を浴びせ掛けた。
シュタインベルガーの爆炎の吐息が当たった斜面は、大きく抉れ、溶けた溶岩とガラス状になった岩が剥き出しになる。
シュタインベルガーに続き、
地表での戦闘は、帝国軍が革命軍を一方的に圧倒していた。
飛行空母ユニコーン・ゼロの艦橋から帝国竜騎兵団の戦いぶりを見ていたラインハルトが次の命令を下す。
「帝国不死兵団と帝国魔界兵団に連絡。揚陸戦に移れ。我々、ユニコーン小隊も出る!」
伝令兵がラインハルトに敬礼して答える。
「了解しました」
ラインハルトはアルケットに話し掛ける。
「艦長。後を頼むぞ」
アルケットもラインハルトに敬礼して答える。
「御武運を! 殿下!!」
ラインハルトは艦橋から飛行甲板へ向かう。
ナナイがラインハルトの後ろに続く。
ラインハルトが通路を飛行甲板へ向けて歩いていると、ナナイがラインハルトの腕を取り、通路の一角にある給湯室にラインハルトを引っ張り込む。
驚いたラインハルトがナナイに尋ねる。
「どうしたんだ? ナナイ?」
ナナイは両手をラインハルトの頬に当て、キスする。
「おまじないよ。無事に帰れるように」
ラインハルトはナナイの両肩に手を置き、正面から見詰める。
「帰るさ。今までも無事に帰って来ただろう?」
「約束よ。私を一人にしないで」
「しないよ。約束する」
互いに言葉を交わした後、二人は再びキスする。
「行くぞ」
「ええ」
二人は再び通路を飛行甲板へ向かう。
二人は飛行甲板に出た。
上空の冷たい風が二人の顔を撫でる。
飛空艇には既に他の小隊メンバーが乗り込んでおり、ラインハルトとナナイが来るのを待っていた。
ジカイラが飛空艇のコクピットから右手の親指を立てて、二人を出迎える。
揚陸艇にも陸戦隊が乗り込み、出撃準備を終えていた。
ラインハルトとナナイが飛空艇に乗り込む。
「ユニコーン小隊、出るぞ!! 揚陸艇も続け!!」
ラインハルトの号令で四機の飛空艇は次々と飛行甲板から飛び立って行く。
飛空艇の後に揚陸艇が付いていく。
ユニコーン小隊は、