319章 サイン交換
ミサキは食事を終える。たらふく食べたから、お腹は少しだけ痛かった。
「ミサキさんの食事を見られて、本当にハッピーです」
時刻は20時30分を回った。30分後には、何も食べられない身体になる。
「ミサキさん、ハグをしていただけないでしょうか」
「いいですよ」
DRAZと体を合わせる。歌手として活躍した女性からは、圧倒的な包容力を醸し出していた。
「ミサキさんは天性の温かさを感じます」
「DRAZさんは、包容力がすごいです」
DARZは顎を、ミサキの右肩にのせる。
「こうしているだけで、ストレス解消できます。ありがとうございます」
ストレス解消は、人間の永久的な課題。発散方法を間違えて、人生を台無しにするケースもよくみられる。
DARZは体をゆっくりと離す。あと五秒、あと一〇秒でいいからハグをしたいという思いが芽生えていた。
「ミサキさん、ありがとうございます」
DARZは鞄の中から、あるものを取り出す。
「ミサキさん、サインをしてください」
「はい。わかりました」
ミサキは手慣れたやり方で、サイン色紙にサインをする。
「サインかけました」
「ありがとうございます」
DRAZはもう一枚サイン色紙を取り出す。
「私からもサインを差し上げます。大切にしてくださいね」
ルヒカ、エマエマ、ズービトル、キイの横に、DARZのサインが並ぶ。一枚ですごいサインが、五枚も並ぶことになる。サインマニアからすれば、おたから宝庫といえる。
「ミサキさん、サインです」
「DARZさん、ありがとうございます」
ミサキはサインを大切に受け取る。貴重なものなので、一ミリたりとも傷つけたくなかった。