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第五十九話 竜騎士の城

 メオス軍飛行船を撃沈した戦闘(ファイティング・)(ファルコン)と、ラインハルト達が乗る飛行船ユニコーン・ゼロは、ヤマタンとナナイが手旗信号で互いの状況や進路を連絡しあった。

 帝国北部方面軍の支配域まで、パーシヴァルの戦闘(ファイティング・)(ファルコン)がラインハルト達が乗る飛行船ユニコーン・ゼロを先導する事となった。

 クリシュナが測量結果を報告する。

「間もなく、帝国北部方面軍の支配域です」

「巡航速度100kmで半日程、掛かりました。何とか、無事にたどり着きましたね」

 ハリッシュが安堵の声を上げた。

※参考
 ツェッペリンNT:巡航速度80km/h
 ヒンデンブルク号:巡航速度130km/h






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「高度を下げる。雲の下に出るぞ」

「了解! 下げ角十五! 雲の下に出る!!」

 ラインハルトの指示を受けて、ジカイラが昇降舵を操作する。

 戦闘(ファイティング・)(ファルコン)とユニコーン・ゼロはゆっくりと高度を下げていった。

 眼下には高地と山々が見える。そこは帝国北部方面軍の支配域であった。

「高度300、進路西北西」

 ハリッシュが現在の高度と進路を報告した。

 ジカイラが船体を水平に戻す。

 しばらくすると、飛竜(ワイバーン)に乗った四騎の竜騎士が上昇してきて、戦闘(ファイティング・)(ファルコン)とユニコーン・ゼロの四方を取り囲んだ。

「竜騎士だ! 帝国軍のお出迎えだ!」

 カマッチが歓声を上げる。

「ナナイ、こちらに交戦の意思は無い。竜騎士に着陸場所を誘導するように伝えてくれ」

「了解!」

 ナナイは、ラインハルトの指示を竜騎士に手旗信号で伝えた。

 戦闘(ファイティング・)(ファルコン)とユニコーン・ゼロは、竜騎士達の誘導に従い、進路を北西に向ける。

 やがて、山を背にした小高い丘に城塞を持つ広大な軍事基地が眼下に見える。

 ユニコーン・ゼロに竜騎士の一人がハンドサインで着陸するように誘導してくる。

「ジカイラ、あの滑走路に着陸するように」

「任せろ!!」

 ラインハルトの指示を受けて、ジカイラがユニコーン・ゼロを操縦し、着陸態勢にする。

 パーシヴァルの戦闘(ファイティング・)(ファルコン)は、竜騎士のユニコーン・ゼロより一足先に滑走路に着陸した。

 ジカイラの着陸の腕は見事で、飛行船ユニコーン・ゼロは静かに滑走路に着陸した。






 飛行船ユニコーン・ゼロから降りてくるラインハルト達を誘導した四人の竜騎士達が出迎える。

「指揮官の方はこちらへどうぞ」

 ラインハルト、ナナイ、パーシヴァルの三人は、二人の竜騎士に案内されて城の中へ向かって行った。

「他の方々は、こちらへ」

 他のメンバーは、二人の竜騎士に案内され、基地の方へ歩いて行った。





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 小高い丘の上に作られた城塞は、荘厳な造りであった。

 ラインハルトとナナイ、パーシヴァルの三人は、城塞の中の応接室に案内された。 

「失礼ですが、皆様のお名前を伺っても、よろしいでしょうか?」

 竜騎士は丁寧に尋ねてきた。 

「バレンシュテット革命軍 独立戦隊 ユニコーン小隊 隊長 ラインハルト・ヘーゲル少佐」

 ラインハルトは、官名と姓名を名乗る。

「同じく、バレンシュテット革命軍 独立戦隊 ユニコーン小隊 副長 ナナイ・ルードシュタット大尉」

 ナナイもラインハルトに続く。そして、ナナイが竜騎士に告げる。

「帝国北部方面軍の司令官にお会いしたいのだけど」

「ルードシュタット侯爵家 執事長 パーシヴァルである!」

 パーシヴァルは胸を張って答える。

「少々、お待ち下さい」

 竜騎士はそう言うと、応接室から退室した。






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 死火山を貫く通路の奥に、帝国北部方面軍帝国竜騎兵団を率いる『アスカニア大陸最強の竜騎士』アキックス伯爵は居た。

 通路の先は広い空間になっており、見上げると噴火口から空が見える。

「アキックス伯爵!!」

 竜騎士は小走りでアキックスの元へ来た。

「どうした?」

「先ほど、領空を侵犯した革命軍の飛行船と飛空艇を拿捕しました」

「ふむ」

「それで・・・、革命軍の指揮官達がアキックス伯爵に面会を求めています」

「革命軍の将校が? 私に??」

 竜騎士からの報告に対して、アキックスは怪訝な表情を浮かべる。

「はい。二人は、ラインハルト・ヘーゲル少佐と、ナナイ・ルードシュタット大尉と名乗っております」

「ナナイ・ルードシュタットだと!?」

 竜騎士から将校の名前を聞いたアキックスは、驚愕する。

「はい。パーシヴァルという老執事を連れております」

「なんと!! あの『ルードシュタット侯爵家』の御令嬢ではないか!?」

「自分には判りかねます。応接室に案内しました」

「判った。すぐ、会いに行く!」

 アキックスは、足早に城塞の応接室へ向かった。


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