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 ついに来てしまった。

 貴族さまに付き従う冒険者たち10名あまり。サラサも心配そうな顔をして俺を見ている。俺も不安しかねえよ……。

 カイ先生には肩を叩かれ、期待しているからな! というというニュアンスのことを言われた。俺に何を期待するのですか……。

 貴族さまの頭の中では、おそらく凱旋のファンファーレが鳴り響いていることだろう。そんな表情をしているし、勇ましい言葉をかけられた。

 しかし、俺の頭の中ではドナドナがエンドレスで流れている……。

 俺はサラサに抱っこされたアッシュに、「パパお仕事、良い子にしてるんだぞ」と頭をなでなでして、出発した。

 アッシュがもの悲しげに「クーン」と鳴いたのだった……。


 ◇◇◇


 俺は、しこたまポーションをもってきた。ショイコに満載だ。みんなが石化するか、焼死するか、毒くらって死ぬ未来しか見えないからな。

 はあ……。行くのやだなあ。ダンジョンに入るとか、意味わかんねえよ。

 モンスターがうじゃうじゃいる洞窟だろ? なんでそんなところに突っ込まねばいかんのか。



 俺たち一団はとりあえず無事ダンジョンにたどり着いた。

 今回は比較的人数が少なかったおかげか、幸運にもコカトリス他、強敵にエンカウントしなかった。そして、俺たちは大きく口を開けたダンジョンに踏み入れた……。


 キシャーーーーー! ギイエエエエエエ!


 ぎゃああああああ。


 なんとサーペントが、広い通路を抜けた大広間でとぐろをまいていた。しかも3匹もいる。

 コカトリスまで沢山いやがる。うん、これ死んだな。

 これ、猛毒のブレスと石化攻撃くらって、全滅コースじゃないでしょうか?

 しかし、アホ貴族さまは剣を敵の軍団に向け突撃いい! 的なことを叫びだした。

 その強メンタルどこから来るんですか……?

 ところがどっこい。カイ先生と、ギルドマスター、大蛇討伐の三人組が無双した。

 しかし、多勢に無勢。五人がいくら強くても、他の冒険者に敵の攻撃は押し寄せた。アホ貴族さまはギルドマスターに守られて無事だった。

 俺はというと、猛毒や石化攻撃をくらった冒険者に、解毒薬を飲ませる係に徹した。


 俺、ヒーラーにジョブチェンジしました! ポーションが切れたら帰らせてもらって良いでしょうか? もう嫌だよ、俺……。



 とりあえずこの戦闘で負傷者は出たものの、無双五人のおかげでなんとか勝利することはできた。

 しかし、他の冒険者はボロボロで、満身創痍だ。ポーションもほぼ尽きかけている。マルゴやジュノも負傷している。

 俺は一番話の通じそうなギルドマスターのところに行って、ポーションが空になっているというジェスチャーと、猛毒や石化攻撃で倒れている他の冒険者を指さして、無理だというジェスチャーをした。

 ギルドマスターは大きくうなづき、アホ貴族さまに御注進なされた。

 何か揉めているようだった。早く判断しろよアホ貴族。もう、無理に決まってるだろ。

 生きているだけ奇跡みたいなもんだ。アホ貴族はシブシブという感じで「撤退~!」と叫んだ。

 どうでも良いけど、これちゃんと対価出るんだろうな? 貴族さまよ、命の値段ってそんなに安くありませんぜ?

 というか、金とかどうでも良いから、もう俺には関わらないでほしい。

 俺はマルゴ、ジュノと肩を貸し合い、疲れ果てた顔でサラサが心配しているであろう家へと帰ることにした。


 ――さすがにやってられんな、これは。

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