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第二十四話 東北戦線

 ユニコーン小隊は、ラインハルト達の実家を後にした。

 実家を出たのは昼過ぎであり、そこから馬車で二時間掛けてナナイの実家のある都市ルードシュタットへ向かう。

 ルードシュタットはナナイの実家であるルードシュタット侯爵家が居城を構える都市であり、広大な侯爵領の中心都市であった。

 ルードシュタットからは、また革命軍の飛空艇に便乗して二日ほど掛けて前線近くの都市まで移動する。

 そこから街道を馬車で三日ほど東へ行く。

 国境から三十キロほど帝国領に入った地点。そこがメオス王国との最前線であった。







 ユニコーン小隊は、革命軍の宿営地に入る。

 ラインハルトはナナイと部隊の司令官に到着を報告する。

 部隊から割り当てられた大きめの陣屋に小隊の仲間達が集まると、ラインハルトは仲間達に指示を出す。

「皆、お疲れ。我々の任務は遊撃だ。私とハリッシュ、ケニーで偵察してくる。他の者は休んでいてくれ。」

 ジカイラが荷物を置いて陣屋の椅子に腰掛ける。

「やっと、ひと休みできるぜ」

 ナナイとティナ、クリシュナが補給物資の確認作業に取り掛かる。

「早速、飲み水と食糧の確認しなきゃ」

 ヒナは乗って来た幌馬車の馬の世話をしていた。

 ラインハルト、ケニー、ハリッシュは、敵情偵察に向かう。

 ケニーの潜伏スキルを使い、国境迄の街道に陣取ったメオス王国軍の陣地近くまで行き、ラインハルトは望遠鏡でメオス王国軍の陣地を偵察する。

 ラインハルトが声を潜めてハリッシュに話す。

「典型的な野戦陣地だな」

 そう言うとラインハルトは、ハリッシュに望遠鏡を渡す。

 ハリッシュは、受け取った望遠鏡でメオス王国軍の陣地を覗く。

「重火器は無さそうです。敵の主な飛び道具は弓ですね。」

 ハリッシュが続ける。

「野戦で上官に敬礼しているところとか。まるで誰が指揮官なのか、こちらに教えているようですね。見たところ、あまり練度は高くないようです。彼らの主な装備は斧と円盾、職業軍人三:徴兵七ぐらいの構成比率ですかね。」

 ラインハルトが苦笑いする。

「それでも革命軍の徴兵十割より強そうだ」

 ラインハルトの言葉にハリッシュも苦笑いする。

「革命軍は、素人集団ですから」

 ラインハルトは再び望遠鏡を受け取り、周囲を見渡す。

「歩兵師団くらいの規模みたいだな」

 ハリッシュも周囲の地形を確認する。

「このような細い街道に大軍を配置しても、通れませんからね。交易公路とは違いますよ」

 ラインハルトが考察を陳べる。

「これなら、我々が先陣を切って、革命軍に後から来るように段取りした方が良さそうだ。宿営地に戻って準備しよう」

 ラインハルト達三人は宿営地に戻るべく、偵察の地を後にした。






 メオス王国

 かつて、バレンシュテット帝国領だった国境の街ヴァンガーハーフェンには、現在、メオス王国の旗が掲げられていた。

 メオス王国のポクリオン王は、この街に本陣を置きメオス王国軍全軍を指揮している。

 ポクリオン王の御前に二人の将軍と部隊長達が集まり軍議を開いていた。

 二人の将軍は、激しい議論を戦わせていた。

「お前は敵を知らないのだ! 帝国の一個軍団でも攻めてきたら、我が軍は全滅してしまうのだぞ!? 先代王の遺言を忘れたのか? 『帝国と争うなかれ。戦えば王国は滅ぶ』だ!! 一刻も早く講和し、国境まで兵を引くべきだ!!」

 メオス王国軍ガローニ将軍。

 ガローニは、若い頃、アスカニア大陸の各地を武者修行で巡り、各国や各地の事情に精通していた。

 ガローニは、中世の文明しか持たないメオス王国に比べ、前近世の文明に近いバレンシュテット帝国の軍事力はケタ違いに強力であり、魔法科学文明の水準も遥かに上であることを知っていた。

「その帝国軍が一体どこに居ると言うのですか? 我々が戦ってきた敵軍は『槍を持った農民』、雑兵ばかり。こうして帝国領だったこの街も攻め落とし、国境から三十キロも侵攻している! このまま連戦連勝の勢いに乗り、敵の首都を落とし、積年の恨みを晴らすべきです!!」

 メオス王国軍ナブ将軍。

 メオス王国は、先代王の遺言にある通り、数百年以上、バレンシュテット帝国と争うことを避けてきた歴史がある。

 革命党による暴力革命によってバレンシュテット帝国の帝政が倒れる以前は、メオス王国が譲る形での友好条約をバレンシュテット帝国と結び、交易を行い平和に過ごしてきた。

 両国の圧倒的な軍事力の差から、トラブルがあると常にメオス王国側が引き下がる形で、問題を収めてきた経緯があった。

 ガローニ将軍とナブ将軍。

 二人の将軍の議論は結論が出なかった。

 ポクリオン王が重い口を開く。

「このまま、もう少し様子を見よう。戦争は継続するものとする。ナブ将軍は前線の指揮を。ガローニ将軍は、この地の守りを固めてくれ」

「畏まりました」

 二人の将軍はポクリオン王に深く頭を下げて、軍議の席を後にした。

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