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270章 歌を聴ける喜び

 エマエマは室内を見渡す。

「ミサキさんの家は、ものすごく豪華ですね。豪邸に住んでいるみたいです」

「そうですね」

 ミサキの家は、大富豪さながらの豪邸。一般庶民の女性には、もったいなさすぎる。

「掃除はどうしているんですか?」

「掃除は全自動です。決まった時間になったら、部屋を掃除するように設定されています」

「とっても便利な機能ですね」

「はい。とっても助かっています」

 エマエマは自販機の前に立った。

「食事はこれで注文するんですね」

「はい。デパートリーが豊富なので、飽きずに食べられます」

「和洋中のバランスはいいですね」

「はい。いろいろなものを食べられます」

「ミサキさん、大食いを見たいです」

「食べられるようになるまで、もう少し時間がかかりそうです」

「食べられるようになったら、大食いを見せてくださいね」

「わかりました」

 布団のほうから、ごそごそという音がする。

「ミサキさん、誰かいるんですか?」

「シノブちゃんがゆっくりとしています。昨日はあまり眠れていなかったみたいで、睡眠をプラスしているところです」

 シノブはすやすやと眠っていた。当分は寝かしてあげたい。

「シノブさんは焼きそば店のリーダーですね」

「エマエマさん、そのことを知っているんですか?」

 エマエマは首を横に振った。

「ミサキさんの話を聞いていたら、リーダーなのかと思いました」

「エマエマさんは鋭いですね」

「そうですか。誰でもわかると思いますよ」

 エマエマの視線は、サインに向けられることとなった。

「サインを飾っているんですね」

「はい。見えるところに飾ることにしました」

「ルヒカさん、ズービトルが並ぶと、とっても豪華です」

「そうですね・・・・・・」

 一つでプレミアと呼ばれるサインが、三つも並べられている。ミサキは信じられない思いでいっぱいだった。

 二人の話し声が大きかったのか、シノブは目を覚ました。

「ひゅあああああー」

 ミサキはベッドの近くまでいったあと、シノブに頭を下げる。

「シノブちゃん、ごめんね」

「ミサキさん、誰かやってきたんですか?」

「うん。来客がやってきているよ」

「どんな人ですか?」

 シノブはほっぺを何度もたたいたあと、目を凝らしていた。

「エマエマさん・・・・・・」

「はい、そうです」

 起きたばかりということもあって、発音は安定していなかった。

「タワインに旅立ったのではないですか?」

「大雨によって、仕事は中止になりました。スケジュールが空いたので、こちらにやってきまし
た」

 シノブは空気を読もうとしたのか。

「私は失礼させていただきます」

 といった。エマエマはその言葉を聞いて、ストップをかけた。

「お疲れみたいなので、しっかりと休んでください。私たちのことは、気にしなくてもいいですよ」

「でも・・・・・・」

「シノブさんが回復したら、曲を披露したいです。聴いていただけないでしょうか?」

「エマエマさんの曲を聴けるんですか?」

「はい。時間に余裕があるので、たっぷりと披露できます」

 エマエマの生演奏を二日連続で聴ける。ミサキは自分に都合のいい夢を見ているのかなと思った。

「エマエマさん、カラオケボックスがありますよ。そちらで歌っていただけないでしょうか?」

「ミサキさん、ここでいいですよ。生の歌声を聞いてください」

 シノブは起きたばかりなのに、テンションマックスに急上昇することとなった。エマエマの曲を聴けることを、心から喜んでいた。

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