第十九話 緋色の肩章
今回の戦功によって、魔力が付加された武器防具やアイテムが面々に贈られた。
式典が終わりユニコーン小隊の面々は寮へと戻った。食堂に集まって皆で休憩していた。
ジカイラが安堵の息を吐く。
「はぁ、、、やっと堅苦しい叙勲式が終わったぜ」
ハリッシュが残念そうに話す。
「先日の非常招集によって、同期全員の繰り上げ卒業が決まったようです。ここの図書館は使い勝手が良く、この寮も居心地が良かったので残念ですが」
ラインハルトが口を開く。
「いよいよ戦地か」
ナナイが答える。
「学生まで狩り出すっていう事は、革命軍は余程、劣勢なのね」
ハリッシュがテーブルの上に地図を広げて、冷静に戦況を説明しだした。
「首都ハーヴェルベルクから東西南北に伸びる交易公路上の国境の街には、革命政府に服さない帝国の方面軍がそれぞれ展開し、革命以来、七年間、国境の街に駐留しています。彼等は極めて強力であり、今日まで列強諸国軍による帝国領への侵略を許していません。革命軍は、帝国方面軍と何度か戦ったようですが全く歯が立たないようです」
ハリッシュが続ける。
「従って、東西南北の戦線に動きはありません。問題なのは、その『隙間』でしょうね。首都ハーヴェルベルクの南から南西、西をぐるっと回って北西に掛けては海です。東北、東南の戦線で革命軍は劣勢なようです」
ナナイが尋ねる。
「私達は東北か東南の戦線に派遣される可能性が大きいということ?」
ハリッシュが答える。
「そうですね。東北か東南の戦線のどちらかでしょう」
ジカイラが気の抜けた声で話しだす。
「まだ、決まっていないものを、心配してもしょうがないだろ? それより、貰った魔法の武器や防具のほうが気になる」
ジカイラはそう言うとゴソゴソと贈られた包みを開けた。
「おおっ! すげぇ!
ジカイラはミスリル製の武器や防具を丹念に検分し始めた。
「んん? なんだ?? 裏側に刻印があるぞ。 ・・・『帝国造兵廠 謹製』って、この装備、革命政府が帝国軍の武器庫から盗んできた物かよ。・・・どおりで気前が良い訳だ」
ジカイラの見解は正しかった。
革命によって革命政府は、帝国軍の武器庫から様々な武器や防具を押収したものの、農夫や罪人からなる革命軍には、魔力が付加された装備を誰も使いこなせる者がいなかった。
「あとは腕輪だな」
ハリッシュが近づいてきて腕輪に手をかざし「
「『
ジカイラがラインハルトに尋ねた。
「お前の装備はどうなんだ?」
「騎士鎧、盾、手甲にサーベルとか、同じフル装備一式、全てミスリル製だな」
「その箱は?」
「なんだこれ??」
ラインハルトはジカイラが見つけた宝飾箱を開ける。
宝飾箱の中には、妖しい光を放つ肩章が収められていた。
「ハリッシュ。これって何か、判るか・・・?」
ラインハルトから呼ばれたハリッシュが宝飾箱の中身の肩章を見る。
「これは・・・?
ハリッシュが肩章について解説し始める。
「装備する者の精神に同期して、その者の能力を極限まで引き出します。状態異常を防いで精神を守り、味方に士気を与え、敵に恐怖と絶望を与えます。デメリットは疲労が激しくなるところでしょうか」
ハリッシュの解説にケニーが突っ込みを入れる。
「そんな凄い希少品が、なんで此処にあるんだ?」
ケニーの突っ込みにジカイラが回答する。
「どうせ『革命政府が手に入れたは良いが、誰も使えなかった』っていうオチだろう」
ハリッシュが付け加える。
「『手に入れても誰も使えなかった。だったら、使える者に与えて恩を売ったほうが良い』と。そんなところでしょうね」
ジカイラがケニーに尋ねた。
「ケニーの装備はどうなんだ?」
「魔力が付加された強化弓と革鎧とブーツだね。まぁ、僕にはコレがあるから」
ケニーそう言って、
ラインハルトがナナイに尋ねた。
「ナナイは?」
「同じよ。騎士鎧、盾、手甲とか、同じフル装備一式、全てミスリル製」
そう言うと小箱を取り出し、開けて見せた。
「あとはこれね」
「・・・ピアス? だよな??」
ハリッシュが自分にも判らないといった仕草をした後、近づいてきてピアスに手をかざし「
「能力向上が魔法で付与されているようです」
ナナイの答えを聞いたラインハルトが尋ねる。
「ティナは?」
「私のは法衣と杖ね。あとは指輪」
ハリッシュが解説する。
「
ティナが不平を口にする。
「指輪か~。ナナイみたいな、大人っぽいピアスが欲しかったのに」
ハリッシュがティナを諭す。
「まぁまぁ。魔法のアイテムですから」
クリシュナは魔力が付加された革鎧とブーツ、召喚魔法の書を貰ったようで、楽しそうに読んでいた。
ラインハルトがハリッシュとヒナに尋ねた。
「ハリッシュとヒナの装備は?」
ヒナが答える。
「私たちのは魔力が付加された杖と上級魔法の呪文書ね。爆炎系の書がハリッシュで、氷結系の書は私ね」
「上級魔法の書?」
ラインハルトの問いにハリッシュが説明する。
「私たちはあらかじめ士官学校で教育と訓練を受けていますからね。冒険者で言えば、経験を積んで、いきなり中級からスタートしているようなものです」
「なるほどな」
ハリッシュの説明でラインハルトは納得する。