263章 店内に猫
他の客は誰もいなかった。ミサキ、シノブによる貸し切り状態である。
ミサキの耳に、猫の泣き声が聞こえた。
「ニャー、ニャー」
ミサキ、シノブのところに、白い猫がやってきた。食事を提供する場所において、猫を野放しにするとは思わなかった。接客態度も最悪クラスなら、社会常識も地を這っていた。ミサキはラーメン店に入ったことを、ものすごく後悔した。
シノブと同席したのは、せめてもの救いといえる。猫アレルギーを持っている、マイがやってきていたら、大変なことになっていた。彼女はちょっとの毛を吸っただけで、鼻水、咳などといった症状が出る。
「ニャー、ニャー、ニャー、ニャー」
猫はかわいいけど、食事の場所には不要。料理を食べづらいので、すぐに片付けてほしい。
ミサキの前にラーメンが置かれた。
「ラーメン・・・・・・」
ラーメンのスープの色は、下水道の汚水そのものだった。どんな作り方をすれば、こんな色になるのだろうか。
見た目はまずそうだとしても、味はそれなりにいけるはず。ミサキはラーメンを、胃袋の中に強引に押し込んでいく。
「まあま・・・・・・」
まずいといいかけたものの、軌道修正することができた。
ラーメンは適当に作ったとしても、それなりには食べられる味になる。おいしく作るよりも、まずく作るほうが難しい部類に入る。
空腹を我慢するのはつらいけど、ラーメンを食べるという選択はありえない。ミサキは腹ペコのままでいることを選択する。
ミサキのテーブルにから揚げ、餃子が運ばれた。
「から揚げ、餃子」
から揚げは真っ黒こげで、原形をとどめていなかった。素人目に見ても、調理時間の長さが伝わってきた。
餃子は両面真っ黒こげ。片面を焦がす餃子はよく見るけど、両面の黒い餃子は初めてである。食べなくても、失敗作であることがわかる。
シノブのところに、チャーハンが運ばれてきた。
「チャーハン」
ご飯、卵の分量を完全に間違えている。チャーハンではなく、卵焼きのように見えてしまった。
ミサキ、シノブは食べる気になれず、会計を呼ぶことにした。
「会計をお願いできますか?」
「あいよ」
ミサキは食事代として。70ペソを支払った。ほとんど何も食べられなかったので、ぼったくりに近い印象を持った。