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第3章の第43話 星王アンドロメダと三英傑



【星王アンドロメダの宮殿 御前前】
【――星王アンドロメダの御前前にて、僕達7人は、屈強な衛兵さんたちと相対していた】
その2人の衛兵さんたちが、その手に持っていた槍を交差させて、ガシンッと道を塞ぐ。
「ここより先は、星王の御前!」
「汝の力を我等に示してみよ!」
「「対戦方式は、地球人の若者、お主と我等2人とする!!」

【僕達はここに来るまでに、ちょっとした腕試しをしていた】
【極論、魔法を覚えたての僕では全然かなわくて、今はLに手伝ってもらって、彩雲の騎士エルスの力を借りていた】
【ちょっと……いや、かなりズルかな――って思う】
「――では」
「尋常に勝負!!」
王の御前前を預かる衛兵2人との対戦だ。
わかりやすくAとBとする。
その2人が勝負を仕掛けてきた。
Aの衛兵が、その場からエナジーア弾を連射射撃する。
掌から次々と放たれる光弾は、まさしく熟練者のそれで、連続射撃の速度が光弾の大きさが段違いで速い。
Bの衛兵は、その場から躍り出て。
その槍を振るい、必殺技と化した100条の連続突きを敢行する。
2人とも、いかにも強そうだ。

【ここにきて僕は再認識する】
【あの戦いでレグルスが手加減していて、ワザと僕達に勝ちを譲った事を――】
「――エンセルト!」
彩雲の騎士エルスは、手を前に突き出してバリア(エンセルト)を張る。
それに100条の連続突きが当たり、パリンと破壊される。
さらに続けざま、エナジーア弾の弾幕が襲い掛かる。
(避けきれないと思ってるんだろ? 甘いよ)
その場から消え去り、まるで光速移動の如く衛兵の懐に現れるエルス。
これには衛兵Bも驚きだ。
「!」
(お前の懐が安全なんだろ?)
横蹴りをお見舞いする。
しかも、その飛んでいく方向は弾幕の嵐の中だった。
「がっ――」
ドドドドドッとその弾幕の嵐が急襲劇を仕掛け、衛兵Bはその背中からエナジーア弾を被弾していく、していく、していく。
そしてそのまま。
「――!」
Bの衛兵が、弾幕の嵐の中を突き破って。
Aの衛兵と盛大にぶつかり合うのだった。
ドシャ―ン、とこれには、面白い具合に横転する
頭は下に足は天を衝き、マヌケな様さらすAの衛兵とBの衛兵。
「ハァアアアアア」
僕は片手に、エナジーア弾を生成し、畜力に入る。
エナジーア弾の周りからエナジーアの粒子が集束し合い、畜力されていく。その様はまるでエナジーアチャージのようだ。
この様を見たアンドロメダ王女様が一言呟く。
「ほぉ」
と。
起き上がる2人の衛兵達。
「「!!」」
Aはその場から飛び、距離を取った。
だが、Bは被弾のダメージ量が大きく、よろけてしまい、グググッと起き上がるのが遅い……ッ。
(先にあいつから潰そう!)
(わかった!)
Lが語りかけてきて、僕も了承の意を示す。
シャッとまるでその場から消えたように、光速移動して衛兵Bの目の前に現れる。
「チャージ・エナジーア爆(エクリシィ)!!」
ドォオオオオオン
とエナジーアが爆発した。
その爆発の中に、衛兵Bが巻き込まれていき「ウォオオオオ」と叫び声を上げて。
ドシャン
と豪快な音を奏でた。
衛兵Aが振り返った先には、宮殿の壁に背中から打ちつけられた衛兵Bの姿があったのだった。
その姿が痛々しい……。
「おっおのれ――!!!」
「!」
衛兵Aが槍を振りかぶって、僕たちに攻撃を仕掛けてくる。
この身長差と大柄差だ。当たったら痛いだろう。
だが、そんなのはごめんだ。
僕達は再び、手を前に突き出して、バリア(エンセルト)を張る。
衛兵Aが振りかぶった槍で、それを攻撃すると。
パリィンと簡単に壊れるが、それは攻撃直後のため、大きな隙を晒していた。
「――!?」
「攻撃後の技後硬直だね」
「ハッ」
振り抜いた姿勢の衛兵A。
トンッ
とその胸部に触れるのは、エルスの手だ。
「ま、待て」
「レグドより弱いよ」
その胸部に触れた掌から閃光が走り。
ドドドドドッ
とエナジーア弾による連続射撃を敢行する。
衛兵Aのその身は踊るように、よろめきながら、のけぞる、のけぞる、のけぞる、大きくのけぞっていく
「おおおおおっ!?」
痛烈なダメージを受け、顔が天上を向く。
その間に、エルスは急接近を仕掛け。
「やあっ!!」
と気勢いっぱい。
突き上げるような前蹴りをお見舞いした。
光が走ると――
ドォオオオン、パラパラ……
と衛兵Aのその顔が、宮殿の天井に減り込み、見えなくなったのだった……。天井の破片がパラパラと降ってくる。
さすがのエルス(僕達)も、この光景を見て。
「「……さすがにちょっとやり過ぎたかな……?」」
と反省するのだった……。
「………………」
完全勝利を飾ったエルスは、楽な姿勢を取り。
その元に集まってくるのは、アンドロメダ王女、デネボラ、レグルス、ヒース、シャルロットさんだ。
「弱者とはお会いしない。それが星王アンドロメダ様の示しか……」
「ひえぇ……シャルじゃ、ここまでこれなかったかも……」
「にしても凄いね。そのエナジーア変換の力は」
ヒース、シャルロット、ヒースさんと述べて。
そのヒースさんがエルスの左手につけているエナジーア変換携帯端末を指さすのだった。
「……」
「さすがに戦争の道具になった小型兵器だ! ……僕なら、その後の後遺症を恐れて使えないよ」
「「……」」
これにはさしものエルスも、その後の後遺症と聞いて恐れるのだった……汗々。
「エルス」
「!」
「今の技は、エナジーアチャージと爆裂系の合わせ技じゃな? お主、少し見ぬ間に成長し過ぎたのではないか……!?」
「「はい……」」
エルス(僕)は向き直り。
アンドロメダ王女様たちに事情を話す。


――精神世界の中で、スバルとLの2人が向き合っていた。
再び、今まであった出来事、記憶が共有されていた。
(そんな事があっていたのか……)
(うん……君も、精神世界で大変だったみたいだね)
(フッ)
(フフッ)
お互いに、記憶が共有し合う中で、不思議と笑みを零し合うのだった。


――そして、現在。
「「これはLにもスバルにも言える事ですが」」
「!?」
「僕は少なからず、姫姉の下で修業し、こっそり試行錯誤を繰り返していたんだぁ……。で僕は、精神世界の中で師匠と先生に鍛えられていた」」
「!?」
「……2人分の記憶の、共有だな」
「さすがレグルス、……実地体験者は良くわかるねね……」
「フンッ」
エルス、みんな、エルス、みんな、レグルス、デネボラ、レグルスと言いあい。
最後にレグルスが、鼻で笑うのであった。
「「勘違いしようないように、先にLから話すよ」」
「!」
「「僕は、アメリカのイエロストーン国立公園の場で、エナジーア爆(エクリシィ)を使ったけど……。
実は、それ以前から隠れて、いろいろと試していたんだ……。
……使えると思ったから使っただけ……」」
「……」
それはLにはまだ、別の新技があるというものだった。
「「次に僕、スバルだけど……。
キッカケはそうだな……。
初めての戦闘でレグドに負けて以来、僕は精神世界の中で、師匠からは剣術を、先生からは魔法を指南してもらっていたんです。
これはLにも既に話してある事で、この場にいる皆さんの中には、もしかしたら、もう既にご存じの方もいるのかもしれません」」
「……」
それはLを伝い、みんなの中には知っている人がいるのかもしれないという事を、端的に表していた。
もしかしたら他の要因も。
「「そして、つい最近、セラピアマシーンの回復液に浸かっているとき、……その精神世界の中で、『氷瀑』を納めたんです」」
「……なるほど。さっきのチャージ・エナジーア爆(エクリシィ)は、それが大きく起因しておるのじゃな……!?」
「「はい、おそらくは……」」
僕はアンドロメダ王女様たちに、この場を借りて、簡潔に事情を話したのだった。
「つまり、Lでもスバル君でも、もしくは両人とも強くなれば、それに比例してエルスの力も増すわけね」
「「……」」
デネボラさんがエルスにそう話しかけると。
僕は頷いて答えた。


――その精神世界の中で、Lがスバルの横顔を見詰めていたのだった。
(……)
(……)

――そして、現在。
「………………」
レグルス隊長は歩みを進め、
滝の奥に見える入り口を見詰める。
――ドドドドドッ
と滝は音を立てて、落ちていた。
この滝を攻略しなければ、先には進めない。
俺は顔を上げる。
この滝は、雲の上から音を立てて落ちてくるものだ。
試しに俺は、その滝に手を触れる――。
「――エルス、覚悟を決めておけ」
「「!」」
「この先が、星王アンドロメダ様のおわす御前だ。……心の準備はいいか?」
「「……」」
エルス(僕)は小さく頷いた。
「よしっ! 行くぞっ!」
ドンッとレグルス隊長が、エナジーアの波動を発すると――そこから上下に向かってエナジーアの波動が伝わっていき――パリィンと幾千もの光の線となって砕け散るのだった。
その真上の方から、ドドドドドッと滝の音だけが聞こえる。
謎の現象だった。
「エルス、エナジーア変換を解け! ……失礼に値する」
「「……」」
エルス(僕達)はレグルスにそう諭されて、エナジーア変換を解くのだった。
カッと光が爆ぜて、スバルとLとに分離する。
それを見送ったレグルスが先陣を切り、奥に進んでいく。
その後に続くように、アンドロメダ王女様、デネボラさん、ヒースさん、シャルロットさんと続いていき。
Lがちょっと動く中、何かに気づいた。
それはスバルが付いてきていない事だった。
「………………」
ドドドドドッ
滝を見上げる姿勢のスバル。
その頃僕は不思議そうに、音だけなっている滝を気にしていた。
どうみても、あの雲の上から音が鳴っているからだ。
「どうなってるんだ? これ……?」
訳がわかんない。
「何やってるのスバル!? 置いていくよー!?」
「あっ、ごめん!」
Lに注意された僕は、その場から少しだけ走り、Lの隣について一緒に歩を進めるのだった。
みんなを待ち受けるものはいったい――


【試しの門前】
「……」
レグルス隊長が、その大扉に手をかける。
と、その手がすり抜けた。
それを見たシャルロット(あたし)は。
「ホログラム映像……!?」
「……」
とあたしは呟き。
レグルスは無言で、その大扉を見詰めていたの。
そこへ新たに歩み寄ってくるのは、Lちゃんとスバル君だ。
(……試してみるか……)
「スバル!」
「!」
俺はスバルを呼んだ。
「ちょっと試しに、この試しの門を開けてみてくれ」
「? ……わかった」
僕は、その大扉に手をかけて、すり抜けた。
「……」
やはりホログラム映像だ。
よしっ、と僕は頷き、中に入っていった――


――そのまま、今度は大扉の方から戻ってきた。
これには僕達も。
「え?」
「キャッ!?」
驚いたものだ。
前に進んだはずが、なぜか、大扉の向こう方から出てくるのだった。
これにはスバル(僕)も、シャルロットさんもビックリだ。
「なんでそっちから出てくるの!?」
「えっ!? 僕にそんな事言われたって……ッ!! も、もう一度!!」

――繰り返される。大扉の向こうに侵入したつもりが、なぜか大扉の向こうから戻ってくるからだ。
違う、これは、ただのホログラム映像じゃない。
何なんだこれは。
「!」
「! ちっ違う!! これはホログラム映像じゃない!! 何なんだこれは……ッ!?」
それは不気味に、その大扉がその道を塞いでいたのだった。
そこで、レグルス隊長が口を零す。
「ここは『試しの門』と言われている……!」
「試しの門……!?」
「なにそれ?」
レグルスの言葉に、シャルロットさん、僕と口を零す。
「星王アンドロメダ様はご多忙のため、招かれざる客を、こうやって追い返しているんだ」
「え……?」
「何でよっ!?」
レグルスがそう答え、僕、シャルロットさんと口を零す。
「……」
「じゃあ、どうやって会うのよ!?」
「う~ん……」
黙るレグルスに、文句を言うシャルロットさん、考えるヒースさん。
とここでデネボラさんが。
「レグルス隊長、それじゃあ言葉不足ですよ」
「!」
「!?」
「いいですか皆さん、この試しの門は、ある一定の実力がないと……『ループ』(ヴォロボス)する造りになってるんです!」
「ヴォロボス……?」
「永遠に繰り返すって事よ……スバル君」
「なっ! 何だってまた……あっ!」
僕はレグルスを見上げた。
「フッ、そーゆう事だ。招かれざる客! 実力不足と会う気がない。それが星王アンドロメダ様の思し召しだ……! ――だが!!」
「じゃあどうすれば……」
「!」
何かを決めるレグルス。
それに対し僕は、困った顔でレグルスから視線を切り、Lに向けると。
「……僕が開けようか?」
「うん」
――だが、その時だった。
ドォンとあろうことかレグルスが、我が身にエナジーアを込め、その身が激しく燃え盛る。
ジュウウウウウと俺の足元に面した白い床が熱で溶け、溶解していく。
「えっ!?」
「熱っ!!」
「キャッ!!」
これには驚くLに、悲鳴を上げるスバルにシャルロット。
「俺が、大扉を抑えておく!!! その間にお前等が入れ!!!」
「ちょっ!?」←安全なのはこっち
勇ましく決めるレグルスに。
引くぎみのL。その顔が高熱に照らされていた。噴き上がる炎。
そうして僕達は、レグルスが大扉を抑えている間に、中に侵入する事ができたんだった。
大慌て入っていったのは、女の子に取って命ともいうべき髪の毛を抑えているシャルロットさんと、次に男性陣の僕とヒースさんだった。


☆彡
【星王アンドロメダの間】
――その後、中に入っていったスバル達に追いつき、レグルスが先頭を歩いていた。
鏡面反射する床上を歩いていくレグルスを先頭に、アンドロメダ王女様、デネボラさん、ヒースさん、シャルロットさん、L、そしてスバル君の7人。
王の間は、滝がすぐ近くにあるからか、マイナスイオンで充満していた。
近くを見れば、植物が造形美として生えていた。
壁を見れば、コケも生えている。
これは多分、使っている石材などが大きく起因しているのだろう。
「……ちょっと焦げ臭いわ……」
あたしは焦げた髪の一房を、手で持って前に持ってきて、それを見ながら酷く気分が落ち込んでいたの……。
「毎日、キューティクルで時間をかけてるのに、グスッ……」
「あちちち、まだ肌が焼けついてるよ」
「……ッ」
僕もヒースさんも、すぐに近くで灼熱の炎に当てられて、軽い火傷を起こしていた。
これにはレグルスも。
「……フンッ、魔力ぐらい張って置かないからだ」
「「「……」」」
ジロリと僕達3人は、こいつを睨みつけるのだった。
で。
「やっぱり僕が、開けておくんだった……ハァ……」


そして、進む事しばらく――
ドドドドドッ
大いなる重圧(プレッシャー)を感じた。
突然、息苦しさと体調不良を覚える。
全身という全身から、激しい汗が噴き出る。
「――何だこれは!? か、体がスゴイ……キツイ……ッ、ゼ~ッ、ゼ~ッ……」
「大丈夫スバル!?」
「クッ……」
(意識を持っていかれる、何なんだこれは……ッ!?)
キィーン
とその瞬間、全身の発汗、悪寒、動悸、目まい、心臓の音がうるさく、耳鳴りを起こし、目玉が赤く充血し、涙が出た後すぐに血の涙が出始めた。
「!?」
視界の異常も覚える。目の前が歪み、赤、緑、青の視界分割して、目の前が回っていた。
「ウプッ」
吐き気を覚える。
手足の震えも覚える。
ズキズキ
頭痛がして、肩や腕、膝や足からも関節痛が起る。
(気持ち悪過ぎるだろ……ッ!! どうなってる!?)
これに気づいたヒースさんは。
「……やはりか」
「?」
「……魔力を張るんだスバル君、それしか手がないッ!!」
「!」
僕は目を瞑り、精神を集中させる中で。
(できるのか……!? この体調(コンディション)で!?)
「これが星王様のプレッシャーだよ! ……ちょっと漏れているだけ……だけどね」
「!?」
現実を知るスバル。
これが星王様のプレッシャーというものだ。しかも、ただ漏れているだけ……。
(漏れているだけでこれって…………本気を出したら、どうなるんだ……!?)
畏怖と恐怖を覚える。
明らかに地球人の理解を超えている、これから会う人は、超常の存在であることを思い知る。
「……ッ、アアアアア」
ドンッ
と魔力光の気炎を激しく噴き上げるスバル。
「グググッ……ウプッ……」
ゴクン
と喉を鳴らして、吐き出そうになっていたものを飲み込む。
「それでいい。吐瀉物なんて吐くものじゃない。飲み込むんだ……臭くて苦い味だけどね……」
「……ケホッ」
僕は、口の中で苦みを覚える。
「苦っ……もしかしてヒースさんも……」
「ああ、ガニュメデス様相手に……昔ね」
「……」
「……」
ヒースさんは昔、星王ガニュメデス様に失礼した事があるようだった。
「この『星王の覇気』を覚えて、初めて一人前」
「……」
「僕は羨ましいよ。僕の時は、アクアリウスファミリアに入った時だったから……。これから君は、雲の上の存在と謁見するんだ」
「……」
「言葉の1つ1つに注意するんだよ」
とそこへシャルロットさんが足を伸ばしてきて、一言告げる。
「地球の認識は通じませんよスバル君。今持っている、認識の誤りを、誤りと認識するのです」
「誤りと認識する……?」
「そうです!」
「……」


――その時、奥の方から声が聞こえた。
「……よぉ、来たな」
「「!」」
「「!」」
その声を聞き、一瞬早くヒースさん、シャルロットさん、L、そして僕が振り向く。


【星王アンドロメダ】
その人の特徴は、人型のエナジーア生命体だった。
大きさは、人よりちょっと大きいくらいで、アンドロメダ王女様より、背がちょっぴりだけ高い。約2mほどだ。
その身から、自然と星王の覇気をだだ洩れ、大気をビリビリと震わせていた。
まるでやる気がないようで、あぐらをかいてくつろいている様子だ。
やはり王というだけあって、威厳があり、奥の間の玉座に座り、星王たる威厳を持って威厳ある着衣を着こなしている。
座ったままの星王を照らすように、ステンドグラスからの日光が差し込んでいた。
その王の周りには、側近達が控えていた。
特に目を引くのがこの6人。
【3英傑の3柱】
【水のネロ】
【その適合者アイ】
【雷のヴロンティ】
【その適合者ガノス】
【炎のフローガ】
【その適合者ティフ】
仮にもしも、この3組がエナジーア変換すれば、想像を絶する強さになる。
水のネロア、雷のヴルガ、炎のフロテじゃ。
さしものわらわも、手こずるやもしれん……。
「……」
わらわは注意を払う。
エナジーア生命体3名と肉体を持つ宇宙人3人。
「……」
僕が気になったのは、あの子。
あの子なんかは、僕達地球人と同じ見た目をしていた。
もちろん、あの子の相棒ネロは、エナジーア変換携帯端末持ちである。
「……驚嘆だな……3英傑の3柱が一堂に集まっている様は……」
これにはレグルスと言えど驚きだ。
「3柱が控えていたか……」
「安心しろ娘よ……。戦う気はない」
アンドロメダ王女、
星王アンドロメダと言いあい。
ようやくその場に足を運んだ僕が見たものは。
アイだった。
「……!」
(あの子、僕たちに似てる……)
「……」
「……」
驚いた顔のスバルと。
無表情な顔なれど、前だけを見据えるアイ。
あの子はどう見ても、地球人に近い容姿で、まだ幼い女の子だった。
年頃は僕達と同じくらいで、こうして目と目を合わせなければ、そこにはいないじゃないかと思うくらい、希薄な存在だ。
(何だろうあの子……こうして目を合わせているのに、まるで気配が感じられない……。いったい何者なんだ……?)
その子の肌の色は、クリスティさんよりも明るい桃色で、一目で僕達地球人とは違う宇宙人だとわかる。髪はピンク色で、目もピンク色という可愛らしい女の子だ。
(……あれは箒か……!? 何かが……?)
違うと感じる。
女の子が持っているのは、箒で間違いないが、何かが違うと思うのは、なぜだろうか。
(あんな不思議な子もいるのか)
「……」
あの子も僕の視線に気づき、無表情から一転して、ムッとした顔を浮かべる。
何かが機嫌に触ったようだ。
「スバル君」
「?」
「心の声がだだ洩れよ」
「え……?」
「声を出さなくても、この人達クラスになれば、容易にわかるもの」
(じゃあ、どうしろと……!?)
「無になりなさい、無に……」
「……」
僕はシャルロットさんから、忠告を受けるのだが……それは無理な話だった。
少なくとも、この頃の僕には……。
「……アイよ」
「!」
「戦いはなしだ。我々は話し合いの場を設けたのだ」
「……」
「……」
星王アンドロメダ、アイと述べて。
アイちゃんは星王様に向けていた視線を、僕達の方に戻し、再び無表情な顔つきになる。
(お人形さんみたいな子もいたんだな……? 可愛いけど……もう少し、感情豊かなら可愛いのに)
(……)
あくまで無表情を貫き通すアイちゃん。
だけど、その手に持った箒を握りしめる手に、力がこもるのだった。
スバルの心の声は、レベルの高い人たちにとって、だだのだだ洩れだった……。


「――よくぞ参られた。地球人の少年、名をスバルよ」
「……僕の名前を知ってる……?」
「とーぜんじゃ!! お主の名前は、この宇宙中に知れ渡っておるわ!!」
星王アンドロメダ、スバル、アンドロメダ王女様と述べて。
その星王様が、娘を見やるのだった。
「!」
「……やるか?」
「いっいえ!?」
その顔をブンブン、と振るう王女様。
それだけ星王様は恐れ多い御方なのだ。
「フンッ……」
星王様は鼻で笑い。
「……」
僕の方を見て。
「最低限中の最低限の力を持っているようだな、地球人よ」
「……」
あの星王様のプレッシャーでも、ただのだだ漏れで、最低限中の最低限である事を知るスバル。
「さて、地球人よ」
「!」
「今から少し、お主を試そう」
「試す……?」
「見たところ、魔力光の気炎を棒立ちしているようだ」
「……」
「それを消せ。目障りだ」
「――!」
ただの一睨みだった。
たったそれだけで、さっきまで魔力光の気炎を棒立ちしていたのに、あっさり取り払われた。
「!? ッ……」
再び押し寄せてくるのは、星王様の覇気のプレッシャーだ。
しかも最低限中の最低限、ただのだだ洩れだ。
「クゥ……クッ……」
体が重過ぎる。
僕は立つこともできず、床に手をついてしまい、額から激しい汗を噴出して。
ポタッ、ポタッ
と床上を汚す。
「失礼なガキだ」
「……ッ」
「アイ、あとで掃除しておけ」
「……」
コクリと無表情のアイちゃんが頷く。
その頃僕は。
ドックン、ドックン
と激しい心臓の音を奏でていた。
みっともないくらい、床上についたその手で、「ゼッ……ゼッ……」と過呼吸していた。
(なんて重たいんだ……ッ!! 心臓の音がこんなに聞こえるなんて……!! 体中の血液の流れがわかる……なんて熱いんだ!!」
僕の体内で、血液の循環が急速な勢いで行われていた。
(それにこの息切れ……動機、目まい、苦しい……ッッ)
それは過呼吸だった。
(背中が冷えて寒い……この肌を突き刺すような針のような痛み……ッ!! これが生身で受ける星王の覇気……!! なんてプレッシャーなんだ……ッ!!
体が寒い、まるで極寒の世界……ッ!!)
僕は、身震いしていた。
(……ま、マズイ……意識を持っていかれる――……ッッ!!)
「どうした? 呼吸の仕方すら忘れたのか地球人?」
「!」
(……こ、呼吸の仕方だって……ッッ!! これが……ッッ)
僕は、脂汗を大量に噴き出して、もう冷や汗しか感じられない。
目線なんて、恐くて合わせられなくて、顔が赤く、血流の循環が急速に行われていた。
動悸や目まい、吐き気がきそうで、呼吸が浅くて速く、荒かった。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
「スバル君、気をしっかり持って! プレッシャーなんかに屈しちゃダメよ!!」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
僕は過呼吸しながら、片手で胸を掴んでいた。
(く、苦しい……っ、どうしてしまったんだ僕の体……!?)
(何かないか? 何か……あっ!)
ここでL(僕)は何かを思いつく。
「君の気の大きさじゃこの圧に屈しちゃうー!!」
「!」
「魔力も放出しちゃダメだ!! 魔力を体内に放出して、循環させて留めるんだ!! 魔力のコントロールだよ!! 大丈夫!! 君ならできるよ!! 僕達みたいに!!」
「か、体の中に放出して留める……!? ……クッ」
それは相棒、Lからのアドバイスだった。
それは魔力のコントロールだ。
今までは体外に放出していた。
だが、それを体内で巡らせて、行えというものだ。
もちろん、経験はない、そんな知識すらない、産まれて初めてだ。だが、ここでやられければ、早々に潰れる。
それだけの自覚がある。
普通に護って、やる手段もある、だがここは、星王アンドロメダ様の御前だ、それは大変失礼な行為にあたる。
それ故にできない。
だから、その誤った認識を改める。
(……認識の誤りか……! 今までの僕の考えは、間違っていた……!!)
僕は、認識の誤りを、改める。
(循環させろ……!! 魔力の流れを感じ、こう体内に循環させるんだ……!! 耐えてくれよ、僕の体……!!)

【――僕は目を閉じて、精神を集中させる……】
【それは体内で魔力の循環を行う、基本を納めたものにできる、応用業だった】

僕はこの時、Lの助言(アドバイス)を受けて、師匠や先生たちの指導も受けずに、初めて実践運用するのだった。
(失敗を恐れるなスバル……!! 大丈夫、体が壊れても、あとでセラピアマシーンで治せる……!!)
僕は自分自身に言い聞かせる。
それは暗示だ、まじないだ。
「………………」
バチィ、バチィ、バチィン
額から切れ目が入り、血が少量噴き出して、腕、指、足、背中と続々と切れ目が入りながら、少量の血を噴出していく。
それが汗と混ざって、神聖な床上を汚していくのだった。
これを見ていた星王様は。
「ほぅ……」
「よしっいいぞスバル!! その調子じゃ!! 歪だった魔力の流れが安定しだしておるぞ!!」
「ゆっくり、確実に……ですよ!」
「………………」
感心の声を零す星王様。
応援するアンドロメダ王女様。
エールを送るデネボラさん。
僕はみんなが見ている前で、体内での魔力コントロールを行う。
スゥ――ッ
と目を瞑っていたスバルは、その目を開けた時、ギラリと光るのだった。
体内の魔力のコントロールは、未完成ながらも完成を見た。
「……。……。……」
足を踏みしめて。
その場から立ち上がっていく様は。
体内の魔力コントロールを未完成ながらも修めた様だ。
これを見ていたアイちゃんは。
「ムゥ……」
と不機嫌ながらも反応を示した。
「……」
スバルの足元周辺は、汗と血で汚れていたのだった。
「……」
自然、いったい誰が掃除を行うのだろうか。
それはアイちゃんであり、その苦労を知っているアイちゃんは、箒を力強く握りしめる。
(((よしっ!)))
L、ヒース、シャルロットさんが心の中でガッツポーズを取る。
(フンッ、あれぐらいできて当ったり前だ!!)
レグルスは、心の中でそう零すのだった。
(よしっいいぞ……! 気が楽になってきた……。……これなら……!)
僕は実感していた。
魔力コントロールの上達ぶりを。この拳を握りしめる。
(この『星王の覇気』のプレッシャーの中で身につけた、新しい力だ……)
僕は拳を握りしめる。
(試したい……!)
僕は強力な力を得た。
実感できる。
それは強力な力を得たものの心情であり、当然の心理だ。
僕は心の中で、どことなく戦闘意欲を覚えていた。
「……」
「……!」
星王アンドロメダ様は、私デネボラを見た。
アドバイスをしろというのかスバル君に――
「――スバル君」
「!」
声を投げかけるデネボラさん。
反応を示すスバル君。
その時、星王アンドロメダ様は嘆息した。やれやれ、手間がかかると。
「魔力コントロールの術は、気、魔力、霊力、エナジーアと遜色ないわ」
「……」
「それは体外放出も、体内循環もね。……やり方を教えるわね」
「……」
僕は、デネボラさんに体を向けて、コクッ……と小さく頷き得る。
「今、体内で行われているのは、荒波のよう。……それでは体を壊すばかりだわ」
「……」
事実、その通りだ。僕の体はこうしている今も壊れていく。
「それでは、自分を殺すようなもの。
それではいけないわ……!
自分の力も、世界の力も、とりまく理念、概念。
細胞の1つ1つ、肌、筋肉、骨、血管、臓器、神経に至るまで集中するのよ!
初めのうちは、心臓から送られてきた血管の中を流れる血流の循環を、その身で覚えなさい」
(血流の流れ、心臓の鼓動……)
「あっ……!」
僕は、さっきまでの自分の症状を思い出す。
あの時、僕は、星王様の覇気を受けて、速い心臓の鼓動の音と、血管の中を急速に駆け巡る血流の流れを覚えていた。
「あの感じを思い出せば……!!」
僕はそれを思いついたのだった。
目を瞑ってイメージをする。
「スバル君、初めのうちはゆっくりやりなさい……!」
「!」
「そうね。川のせせらぎの様なイメージね」
「川のせせらぎ……」
僕は、暴れ狂う体内の中で流れる魔力の流れを集中した。
川のせせらぎの様なイメージをもって、荒波から川のせせらぎのような、落ち着きを取り戻していく。
それは次第に、暴れていた魔力の流れが落ち着きを見せ、緩やかな流れになるのだった。
ゆっくり目を開けるスバル――
「――ふぅ……」
「よしっ!」
「フムゥ……」
スバル(僕)、デネボラさん、星王アンドロメダ様と述べて。
星王様は、その光景を認めた。
「――!」
――その時、ふと覚えたのは。
「何だこれ……」
身に感じる変化だった。
「まるでお風呂の中に入っているみたいな……」
「その感覚は大事よスバル君!」
「……」
「今君は、自分の足で立ったの! そうね……赤ちゃんが自分の足で立ち上がるみたいに……! お母さんの体の中から出て、産声を上げたみたいに! 今君は、その足で立ってる……!」
「……」
「――ようこそ、あたし達の世界へ」
「……」
この日、僕は自分の足で立ったのだった。
「……フム……この魔力量……――!」
――星王アンドロメダ様の眼光には、ひときわ大きいスバルの使用魔力量が見えたのだった。
この時、無意識的に使用している使用魔力量に関しては、ヒースさんとシャルロットさんの2人を、大きく引き離していた。
むしろ、巨大というイメージだ。
「……Lめ、なかなか筋がいいのを選びよる……!」
笑みを浮かべ、気づかれない程度に微かに頷いたアンドロメダ王。
「……」
外見は何も変哲もない。
だけどその体内、血流の循環の中では、魔力光を帯びた血流が流れていたのだった。
それは血管を強化し、流れる血流によって、全身をくまなく強化していた。
「……」
僕は、自分の掌を見て。
手の甲、掌と裏返して交互に見合う。ふ~んなるほどなるほどと認める。


「――さて」
「「「「「!」」」」」
星王様の呟きに、僕達は振り向く。
「どうやらお前達は、このワシと話し合う資格があると見た……!」
認める星王アンドロメダ様。
いよいよだ。
「……」
「「……」」
「「……」」
「「……」」
レグルスが、アンドロメダ王女とデネボラが、ヒースとシャルロットが、スバルとLが向き合う。
「「「「「……」」」」」
「……」
僕達は、星王アンドロメダ様といよいよ、謁見を行える。
「――では、何から話そうか……?」
そんなの決まっておる。わらわが第一陣を切った。
「父王よ、それなら決まっておるわ!」
「……」
「わらわ達の願いは、地球人難民たちの移住先じゃ!!」
このアンドロメダ王女様の発言に、僕達は深く頷き得た。
「………………」
星王様は、その目を閉じ深く考える――


★彡
――振り返るのは、過去の回想の一部だった。
『――デネボラよ、『リポートデータ』を作成し、事のあらましを詳細にこちらに伝えよ』
と手短に済ませるものだった。


☆彡
――そして現在。
「――デネボラよ、話せ!」
「……」
「あの『リポートデータ』。報告書作成に当たり、心に迷いがあった事はわかっておる……!」
「……」
(……バレてた……)
その顔にありありと出ていた。冷や汗のエナジーアの粒子を流し、天に立ち昇っていく。
「今なら許す。全てをありのままに話せ」
「……」
私は、冷や汗のエナジーアの粒子を流し、それが天に立ち昇る中、今まであった出来事を振り返りながら、可能な限り詳細に話すのだった――


☆彡
「――なるほど……実に濃い内容だったようだな……」
星王アンドロメダ様は、深く目を瞑り考える。
とここでスバル君が。
「デネボラさん、贈答品を」
「……」
贈答品の話を持ちだして、私は頷き得る。
私達は、地球からの手土産だとばかりに、静止軌道ステーションで入手した各種飲み物を、贈答品として送るのだった。
これを受け取るのは、3英傑の1柱の1人、ティフさんだ。
「……」
「……」
無言で受け渡し合う2人。
スバル君が星王様に進言する。
「地球産の贈答品です。どうぞご賞味ください」
「……フンッ……! ……」
スバル君がそう述べて。
星王アンドロメダ様が鼻で笑うが、その口元が確かに緩んだのだった。
「……」
その贈答品を受け取ったティフさんは、それを持って移動する。
デネボラさんも離れ、僕達のところに戻る。
そして、星王アンドロメダ様の口が開き。
「後で馳走になろう」
「……」
手短に伝えるのだった。
「……」
不愛想な態度を取っていた星王様は、ここで身を正し、僕達に語りかける。
「報告にあったのは、地球人類難民大移動の一件……! その数、実に4500人越え……!」
「……」
「こちらが、難民2000人を引き受けよう! それだけの事を仕出かしたのだ。うちのバカ娘はな……!!」
ジロリと一睨みする星王様。
その痛い、痛過ぎる視線は、娘様に注がられていた。
その娘様は。
「……返す言葉もありません……」
とこの時、しおらしいまでに小さくなっていた……。
あらら。
珍しいアンドロメダ王女様の光景も見られたものだ。
「残り人口はこれで2500人。アクアリウス星とソーテリア星で振るい分けよ! なお、プレアデス星は、今回は見届け人として参加しているので、この件には関与しない」
「という事は……」
「あと2500人か……」
星王様、L、ヒースさんと言いあい。
「……」
ここで、ヒースさんは塾考するのだった。
(実に、半分近く持って行ってくれた……。割合とするなら、4対3対3ぐらいか……」
「……」
その様子を、星王様が観察しておられた。
「……」
動向を見守る星王アンドロメダ様。
――ここで、助言の口を零す。
「――で、お主達は、その一時、避難民移住先を、取り決めてあるのか?」
「!」
「いえ、それはまだ……」
星王様の問いかけに答えたのは、
ヒースさんではなく、デネボラさんだった。
デネボラさんを推しても、その対応に困っていた。
それはここにいる一同全員がだ。
星王様はこれに対し、嘆息した。
「なんじゃ、全然ダメではないか……」
「……」
グウの音もでないデネボラさん。
それはここにいる僕達にも同じことが言える訳で。
そこで星王アンドロメダ様は、ある提案を下す。
「よかおう! 『ファミリア星立総合運動公園陸上競技場』を貸し出す!!」
「!」
「そこに4500人の難民を集めろ!! 一度そこでバラバラになった家族を引き合わせ、3つのブロックに分ける!!」
「3つのブロック……」
「あっ! そうか! そこで3つの星に分かれるんですね!?」
「左様! そのままアンドロメダ星に残るものは2000人! 残り2つのブロックで2500人余り……! 主に家族同士、知り合い同士の者達で固めよ!」
「なるほど……」
「そうじゃ! 忘れてはならぬ事があった……」
「?」
「妊婦、赤子などはこの星の環境は特にキツイ……! 流産、死産の恐れもある! それは見ていて、ワシも心が痛む」
「……」
「率先してそーゆう者達は、重力の低いアクアリウス星に回せ!」
「はっ、はい!」
星王アンドロメダ様はキチンと考えておられた。人の流れを上手く誘導してくれた。
「後はリーダーか……」
「……」
「そうじゃな……リポートデータにあった。その宇宙航空研究開発機構(JAXA)と世界保健機関(WHO)が使える! それを3つのブロックに分けよ!」
「そうか……!」
「……」
頷き得る僕達。
それは思ってみなかった好手だった。


☆彡
「――ワシが思うに、将来的にそのブロックには、独自性が生まれるはずだ! 健康面だけではなく、何らかの変化が起こる! それは環境に適応した人類学の進歩じゃ!」
「人類学の進歩……!?」
スバルも、初めて聞く言葉だ。
「聞けば、地球人類は宇宙人との交流は浅い……。一部の国際機関が昔から関わり、独自の文化・文明の進歩を促した」
「……」
「そう言った者達の掲げていた目標は、次世代の子供達の手での成長を信じての……ものだった」
「次世代の子供達……」
「『古きは良き土に還ろう』……『次世代の芽を育むために』……」
「……」
「この言葉の理念……!! 決して忘れるな、地球の子よ」
「はいっ!!」
「フッ……」
星王アンドロメダ様は僕達の意を組み、昔の人達が掲げていた心情を、教えてくれたのだった。
「――さて、後の問題は……」
「……」
「いかにして地球を元の青い惑星に戻すかだ……!」
と語った星王アンドロメダ様の問いかけに対し、
シャルロット(あたし)が答える。
「それなら『テラ・フォーミング計画』……惑星の緑化計画はダメでしょうか?」
「無理だな……」
「え……?」
「引用ができるであろうが……。少なくとも今は無理だ……!
あれは環境が落ち着いた星を対象としている……!
うちのバカ娘が地核に刺激を与えたもので、環境が激変し、大地震や猛吹雪、台風に大竜巻、雷が猛威を振るい、嵐が吹き荒んでいるであろう?」
「……」
「……ッ」
一同は、アンドロメダ王女様に冷ややかな視線を殺到した。
「……」
これには星王様も嘆息す。
「実行に移すなら、落ち着いた頃だ」
「なるほど……」
「……元々あれは、人が暮らせそうな星で、酸素がないところを対象にしたものだ!
そもそも対象は、生命の居住条件であるハビタブルゾーン……。
太陽からの公転距離、未来的に人が暮らせそうな気温などの条件が揃った、複合的に整える可能性を持った惑星である事!
第一に、太陽からの公転距離。
第二に、岩石惑星である事。
第三に、衛星がある事で、自転周期が一定である事。
第四に、その星に水などの氷のエリアがある事。
第五に、火山活動がある事。
他にもいくつかあるが、だいたいこの5つが必要じゃ!!
……。
1つ目の問いは、
その星の1年を通しての四季がある事。
春・夏・秋・冬といった四季折々が必要で。これがその星の環境、変化に繋がる……!
2つ目の問は、
岩石惑星であることで、質量がある事。
質量があれば、その場の宇宙空間には重力場が生じ、粒子と波が起きる。
さらに恒星の周りを回る事で、遠心力が生じ、その星の中でパワーが高められる……!
3つ目の問は、
その星に小惑星などの衛星がある事で、太陽の周りを超高速で回るとき、その惑星が大きくブレずに済んでいるのは、衛星などの重力場が一定に保たれているからだ。
これが自転周期に繋がる。
なにより、隕石などの宇宙災害から保護してくれる役割が大きい……!
4つ目の問は、
当然、水の話で。
水を電気分解すれば、水素と酸素に分かれる。
その星に人が暮らせるような大気ができれば、雨雲から海ができ、やがて地上には緑が栄える!!
5つ目の問は、
火山活動の話だ。
立ち昇る噴煙は、お前達、人にとっては有害だが、火山雷などの電気分解により生じるのは、水素、酸素、二酸化炭素、さらに将来的にオゾンなどに分かれる。
オゾン層のバリアができた事で、太陽からの直接的な宇宙災害を防いでくれる。
これは、オーロラなどの真空放電現象がその証拠だ。
さらに、地上で温まった熱が、大気中にある事で、地表から宇宙空間に熱が逃げていくのを防いでくれる。
その後起きるのが、気温の差によって生じた、自然現象であり、嵐などだ。
雨風が吹けば、そこには水たまりができ、土壌の栄養となって、緑や花などが生まれてくる!!
……それが、その星の息吹じゃ!!
………………。
――我が思うに必要なのは、太陽からの公転距離ハビタブルゾーンを筆頭に、重力、磁場、大気、水、火山活動などが必要不可欠な事……!
そもそも、大気がなければ、有害な宇宙線から、その星に住む生命を護る為に、地磁気のバリアがない事から、不毛の大地と枯れ果てる……!
また、生命存続のために、適した重力地の候補が必要になってくるからじゃ!」
「なっ……なるほど……」
あたしシャルロットは、星王アンドロメダ様が、意外に博識であることに疑いを持ち、驚き得ていた。
これはもう、驚嘆としか形容できない……ッッ。
「……」
「………………?」
この時、星王アンドロメダ様は、スバル(僕)の顔を見下ろしていた。
ちゃんと聞いておるのか、と問い質したいのだろうか。
「……」
星王アンドロメダ様は嘆息し、さらに話を続ける。
「今、地球は酸素がある状態だ!
だが! 10年経過したら酸素量が下回り、今度は、有害な二酸化炭素とメタンガスの世界が広がる……!
二酸化炭素とメタンガスは、空気の比重よりも重いため、地上を蔓延するじゃろう。
そのガスは、不活性ガス……火山性のガスのものだ……!!
大気中の酸素は、向こう1000年の間は持つ。
……。
また、一部地域では硫化水素ガスが蔓延し、人が暮らせないような過酷な世界が広がっておるじゃろう。
気温は、世界平均で氷点下40度の世界が広がり。
氷壁は地表から1000m。
海と陸地を隔てる、海洋プレートが音を立てて動き、その地下から天然の冷えたガスが噴き上がる。
あれはまさしく、間欠泉のようであった……。
……。
そして、極寒地域までおもむけば、そのセルシウス温度は、氷点下71度を下回る……。
それだけ局地的に冷えれば、大気中の酸素と窒素が冷えて、地上に落ちてくる。
これは比重の違いじゃった……!
ワシが見たものは、氷壁の表面で液状化したものじゃ。
天然の液体酸素と液体窒素が見れる、比較的珍しい現象……!
ワシもその昔、どこかの辺境の星で見たことがある……!
天然の液体窒素じゃったな……。
……。
過去にその惑星の歴史を振り返れば、1億年以上の全球凍結時代があり、それが4度起っていた……。
大気中の空気比重を、厳密にファミリアが調べたところ……。
3度目より、4度目の方が酸素量が多くなっていた……!
これが後に、生命の大進化が起こった大きな要因と言えるじゃろう……!
……。
それ故に、我が思う。
それだけ激しく凍てついた星で、テラ・フォーミング計画は……、……効果が薄いじゃろうと……」
「「「「「………………」」」」」
それが現実だ。
どうしようもない現実が重くのしかかる。
テラ・フォーミング計画では、土台無理があったのだ。
「それに元々、あの計画は、砂漠化や荒野みたいな岩石地域を対象としておる……!!
今の地球の推移は、まるで氷の惑星。
名付けるなら、また別の名称が相応しいじゃろうな……!」
ガックシ……
とこれにはシャルロットさんも、いろいろと星王様に論破されて、ダメ出しを喰らったのだった……。


――とここでスバル(僕)は考える。
さっきの発案者シャルロットさんを横目で見ながら、心の中でそう考えて、熟孝す。
(――確かに……前にTV報道でみた、月や火星などのテラ・フォーミング計画は、岩石惑星を対象としている点は同じだけど……。
月や火星と、今の地球の推移は違う。
方や岩石、方や氷の惑星か……)
「う~ん……」
「……」
その様子を、星王アンドロメダ様が見下ろしていた。
「………………」
「……」
星王アンドロメダ様は、考え中の僕から視線を切り、デネボラさんを見た。
「デネボラよ」
「はい……」
「地球に調査探査機を飛ばした時、確かに『休火山』を確認したのじゃな?」
「……はい」
「……」
儂は真剣に塾考した。
――そしてある糸口に気づいた。
「――! ……レグルスよ」
「はっはい!」
「そのアローペクス達の星は、確かに『死火山』になっていたのじゃな?」
「……はい。望みがないとのことでした……」
「ふむ……もしかしたら……」
儂は「フフフフフ」と笑った。
「お、王……!」
「これは不幸中の幸いじゃな……! 厄災の混濁獣が星との内核を繋ぐ前に、討伐できたことが大きい……!」
「討伐……!?」
これを聞いた俺は。
(……俺、生きてるよな……?)
なんか腑に落ちなかった……。
「そ、それじゃあ……!?」
希望を胸に宿すスバル。
――だが、続く言葉が現実となって重くのしかかる。
「――ああ。1億年の休眠を経て、地球の氷は解けるだろうぞ」
その言葉を聞き、みんなの顔が明るくなった。
「やったね。あの時、苦労したかいがあったよ!!」
「うん!! あはははは!」
「あはははは!」
「あっ……」
「どうしたの?」
「……ダメだ……そしたら生きている間に地球に帰れない……」
「そうか……そうだよね……」
「……」
「……」
この時、L(僕)もスバル(僕)も落ち込んでいた。

「手がないわけではない」

「「――!」」
その時、そのお声を投げかけたのは、他でもない星王アンドロメダ様だった。
――L(僕)とスバルは、その人に振り向き、見上げた。
「過去に実際に、アローペクス達の星を解凍しようと、いくつか実験を試みた事がある……!!」
「!」
「その実験結果を後で、デネボラを通してお前達に送れるよう手配しよう!」
「あ、ありがとうございます!!」
(な、なんだよずっといい人じゃないか……!)
「では次に、本題『親書』を取り交わすか。……おい、書記官!」
「はい!」
その書記官の方が、
こちらに浮遊移動してきて、「どうぞ」とその封書を手渡しするのだった。
「失礼します」
僕達は、その封書の封をビリッと破って、その封書の中から、親書を取り出した。
その驚くべき内容により、僕達は戦慄した。
問題は、その馬鹿げた金額だった。
「「「「「………………」」」」」
僕たちの目が点になるのだった。
唯一なっていないのは地球人のスバル君ぐらいで、彼は、金額の単位を知らないからだった……。
僕達は、思い思いに口を零す……。
「は、破格だなさすがに……」
「ええ……」
「マジかよ……」
「さすがにこれは……払えないわよ……」
「父王……」
「唖然……」
「……?」
ヒースさん、シャルロットさん、レグルス隊長、デネボラさん、アンドロメダ王女様、L、そして僕と述べる。
そして。
「それはあくまで今年1年分の難民生活にかかる試算だ……! だが、場や状況により、その推移の統計は変動し、また加減算されるじゃろうな……!」
「こんなに払えないわよ……」
「払えないなら、働いて払ってもらう! 各惑星の民間企業に問い合わせたところ、夜勤の手が腐るほど空いていたからな……! そちらに労力として回してもらう!」
「……」
「ワシはな……そちらのガキの懐なぞ当てにしていないのじゃ!」
「!」
「自分達の食いぶちは、自分達で働いて稼いでもらう!
国からの援助金なぞ、アローペクス達の悲劇でうんざりよ……! ワシはな……同じ過去の過ちは、同じテツを、2度は踏まない……!」
「……」
「何か言いたげだな少年よ?」
「いえ……」
「フンッ!」
なんじゃつまらん。
「そうそう、お前達地球人の年齢で、12、13歳くらいの中学生ぐらいの年代から働いてもらうぞ! それであれば心も体も幾分か成長していよう。
それまでは学業を無償提供することを、誓う!
それは、頭も必要だからだ!
ワシはな、難民という扱いをさせない……!!
それはなぜか!?
暴力や武力行為により、家や親を失った子供は、施設送りになる。
満足な水や食料を与えられず、飢えや苦しみ、侮辱やさげずみ、持ち物を奪われる等の差別的行為を受け。
精神的に鬱になっていくからじゃ……。
それでは成長も望み難い……。
……紛争地域の難民達は、そうした環境下に立たされて、腕や足を失う子供達もいる!!
まともな学業を受けられず、ケガや病気をしても、満足な医療機関も受診できない……!!
そうした子供達が、難民だ……!!」
「……」
「フゥ……。元はいえば、うちの娘がやらかした事だ……!
その責任は持つ!
だがな……最終的に立ち上がるのはお前達だ!!」
「!!」
「飴だけ与えても、アローペクスたちと同じ末路を辿る!!
ならば、そちらも生きるために、学業を積み、職に手をつけてもらう!!
文字が読めなければ、本を買え!!
文字が書けなければ、ノートを買え!!
人の話をノートに記し、生きるために動け!!」
「……」
「その対象の者達は、1週間ぐらいの期間を経て、働き口に強制労働に入ってもらう!!
こちらから便宜を図る!!
そのお金を調整し、お主達の軍資金に当てよう!!
政務活動として動け!! それが活動資金となる!!
上手くファミリアと連携を取り合い、便宜を図っていけ!!
それならば、開拓者(プロトニア)として活動した時、手持ち無沙汰にはならぬよな!?」
「あの……そこらへんはもう少し、やんわりと話し合いませんか? 王様……」
「くどいぞ!! 黙れ!!!」
「……ッ」
シャルロットさんは、地球人達側に助け舟を出そうとしたが、
星王アンドロメダ様に、軽く一蹴されたのだった……。
シュン……クスン……
これには物凄い落ち込む……ッ。
(ダメだこの人……! 話し合いとかそーゆう場に向かない……! まるで暴君よ……。
あたし、この人苦手だわ……)
そう認識を改めるシャルロットさんであった……。


「――さて、今日中にホテルを手配しよう!」
「!」
「疲れた体を休むことも、また政務だ!」
「……」
やさしさも垣間見せる。ただの暴君ではない星王アンドロメダ様。
「と、難民達のベッドの数が足りなければ、病院のベッドを空かすよう、こちらで調整してやる!」
(それは脅しじゃ……)
「が、まだ足りぬな……。商業施設に仮の野外テントを設けさせよう。
(それは営業妨害なんじゃ……)
「それでもまだ足りなければ、高校や大学などの寮に泊めさせてやろう!」
(息苦しさを感じるわ……)
星王様、シャルロット、星王様、ヒース、星王様、デネボラさんと述べて。
僕達は、あたし達は、私達は、この人に戦慄す。
「……まだ、何かいるか!?」
「い、いえ……」
物凄い、恐い人だった……。
(この人ならやり兼ねない……ッ!!)
(周りの民間企業や国際機関も、この人が相手では、逆らえないはずだ……ッ!!)
「おい! 今の話を国土にオフレを出せ!!」
「ハッ! 王の仰せのままに!!」
「それと、ソーテリア星の女王とアクアリウス星の星王を呼べ!!
後で話をつける!!
合流場所は……『ファミリア星立総合運動公園陸上競技場』じゃ!!」
「ハッ! かしこまりました!」
【――そうして、地球人類難民たちの移住先(仮)が決まるのだった】
【その後も、怖い、恐い、星王アンドロメダ様の采配によって、グウの音も出せずに続々と決められていくのだった】
【悲鳴を上げるのは、いつだって下の者達だった……】


☆彡
おまけ
その道の帰り道にて。
「あっそう言えばさ、あの試しの門!」
「んっ?」
「一定の実力があればいいんだからさ、Lやデネボラさんでもできたんじゃないの!?」
「……」
「……」
スバルの言葉に、Lとデネボラさんが反応して、小さく頷き合った。
「「……!?」」
これには今更になって気づかされる、シャルロットさんやヒースさん。
そのしまった感の言葉が漏れる。
「「あっ!!!」」
「……ッッ」
そして、ここで妙に立場が追いやられる、事の発端のレグルス隊長。
周りからジロリと熱視線が殺到す。
シャルロットさんなんかは、焦げた髪の一房を持っていた。
「ってか、エルスで入った後、エナジーア変換を解けば、なんら問題はなかったんじゃ……?」
「……あ……」
「……」
スバルの言葉に、今更になって気づかされるレグルス隊長。
しまった、急ぎ過ぎた。
星王アンドロメダ様の御前の前で、粗相がないようにと配慮し過ぎた。
だが、そんな事は知らないとばかりに、これにはスバルも嘆息するのだった。
アンドロメダ星の空に、乾いた声が昇るのだった……――


TO BE CONTIUND……

しおり