220章 抜群の報酬
アヤメは水着撮影の報酬として、50万ペソを受け取った。ミサキよりは抑えられているものの、十分すぎる金額といえる。
「フリーで仕事をすると、こんなにお金をもらえるんだね」
事業所を通さないお金なので、誰かに没収されることはない。全額を自分で使うことができる。
収入を増やせても、仕事を取れなければ無意味。事務所の力なくしては、一つの仕事を獲得することすらままならない。仕事を獲得できるのは会社の力によるところが大きく、個人では極めて難しい。99パーセント以上の人間は、フリーランスになった途端に仕事を失う。
ミサキは組織に所属しておらず、完全個人事業主である。抜群の実績を残すことによって、次の仕事を獲得できる立場だ。お金は大量にもらえるものの、後ろ盾はないというデメリットもある。
「ミサキちゃんといたから、これだけのお金を稼げた。本当にありがとう」
「どういたしまして・・・・・・」
アヤメは無一文の生活を脱却したことに、安堵の息をついていた。自由に使えるお金を持っていないと、情緒不安定になる。
「ミサキちゃん、住居探しに行ってくるね」
「アヤメちゃん、もうちょっとくらいはいてもいいよ」
アヤメは首を横に振った。
「誰かに世話されるのではなく、自分の力で生きていきたい」
前に進み続けようとする女性を見て、素直に応援したいと思った。
「アヤメちゃん、いい家を見つけられるといいね」
「ミサキちゃん、ありがとう」
アヤメは水を含むと、室内の扉を開ける。背筋の伸びた背中を見ていると、二度と戻ってこないように感じられた。