221章 うどん屋にやってきた
ミサキ、アヤメはうどんのPRをするために、うどん屋にやってきた。
朝から何も食べておらず、極限の空腹状態だった。一刻も早く、うどんを口にしたかった。
ミサキのテーブルには20人前のうどん、アヤメのテーブルに1人前のうどんが置かれた。胃袋の大きさに応じて、うどんの量を調節されている。
うどんの具材は刻み葱のみ。うどん本来のよさを、PRしてほしいのかなと思った。
おなかの状態からすると、30人前では完全に不足している。仕事を終了させたあと、20~30人前を追加注文することになりそうだ。
「ミサキさん、アヤメさん、お願いします」
ミサキはうどんを食べる。もちもちとしている麺は、食べているものを幸せにする。
「とってもおいしい」
プラスチックのスプーンを使ってダシを飲む。とっても優しいスープは、女性向きであるのを感じた。
「ダシはとっても優しい味がする」
空腹から解放されたい一心で、うどんをがむしゃらに食べすすめていく。おなかを満たすためには、食べ続けるしかなかった。
30人前のうどんは、30分程度で胃袋に収められることとなった。
「ミサキさん、アヤメさん、OKです」
アヤメはうどんを完食していた。
「うどんは最高でした。これならいくらでも食べられそうです」
店主はうどんの説明をする。
「国産小麦100パーセント、無添加で作られているうどんです。食べる人の健康を最優先に考えました」
無添加は女性の心強い味方。添加物を大量に取り込むと、ニキビなどで悩まされることになる
「うどんダシについても、完全無添加を心がけています。不純物の混じったダシは、体に優しくありません」
アヤメはうどんに対する情熱に、心から感動していた。
「うどんにすごいこだわりを持っているんですね」
「妻に提供したところ、体はみるみるよくなりました。ほかの人にも健康になってもらいたく
て、無添加うどんを提供するようになりました」
家族に対する愛情から、体にいいものを提供する。感動的な話に、心はジーンとしてしまった。
「ご主人はとっても優しい人ですね」
うどん屋の店主は真っ赤に染まった。夕日よりも、ずっと、ずっときれいだった。
うどん屋の奥さんと思われる女性が、姿を見せる。持病持ちにもかかわらず、とっても元気そうにしている。健康にこだわる食事は、病気を回復させる効果があるのかもしれない。
ミサキに仕事の依頼をした、女性が姿を見せる。
「ミサキさん、こんにちは・・・・・・」
「ミナギさん、こんにちは・・・・・・」
ミサキ、ミナギは一文字違いである。しっかりと聞いていないと、間違える可能性はおおいにある。
「前回は伝えていなかったけど、うどん屋の娘として働いています」
「そうだったんですね・・・・・・」
「報酬を満足に用意できないので、依頼していいのか悩みました。小さなうどん店なので、100
万ペソは準備できません」
ミサキの依頼料=100万ペソは、小さなうどん屋にまで広がっているのか。企業だけの共有事項かと思っていた。
「ミサキさんには申し訳ないですけど、大金を払うのは難しいです」
「大金は結構です。身の丈にあった報酬をお支払いください」
報酬が足りなかったときは、妖精によって支給される。合計金額で損をすることはない。
「そういっていただけると、こちらとしては救われます」
アヤメはうどんをリクエストする。
「ミナギさん。もう一杯ください」
「わかりました。すぐにお持ちいたします」
ミサキは財布から、500ペソを取り出す。
「お金を支払うので、50杯のうどんを準備してください」
うどんはとってもおいしく、100杯、200杯であっても食べられる味をしていた。
「ミサキさん、お代は結構です」
「仕事以外のお金はこちらで持ちます」
ミナギは渋っていたものの、最終的にはお金を受け取った。
「ミサキさん、ありがとうございます」
うどんを待っていると、思いがけない人物と出会った。
「ミサキちゃん、うどん屋に来ていたんだね」
「ホノカちゃん・・・・・・」
ホノカは隣の席に座った。
「アヤメちゃんも一緒にいるんだね」
「うん。生活が安定するまで、家で預かることになった」
アヤメは間もなくいなくなる。20日くらいの共同生活は、幕を下ろそうとしていた。
「アヤメちゃん、ひどい仕打ちを受けたんだね」
「うん。とんでもない目に遭ったよ」
「命があってよかった」
「私が生きていられるのは、ミサキちゃんのおかげだよ」
「これからの生活はどうするの?」
「十分すぎるお金を稼いだから、一人暮らしを始めようと思う」
「アイドルの社長から、ほとんどの財産を没収されたと聞いたけど・・・・・・」
「一週間前くらいに水着撮影の仕事をして、50万ペソをゲットした。5年くらいは悠々自適な生活を過ごせるよ」
「アイドルの仕事は大金をもらえるんだね。凡人とは金額が全く違う」
「ミサキちゃんと撮影したからだよ。私一人の力では、10分の1にもならなかったと思う」
ホノカの前に水を運ばれた。
「何にいたしましょうか?」
「2杯のうどんをください」
「ありがとうございます。しばらくお待ちください」
ホノカは体を左右に揺らす。
「ホノカちゃん、どうしたの?」
「うどんを早く食べたいと思ったの。うどんはとっても優しい味で、すごく癒されるように感じる」
「そうだね。うどんはとっても優しい味がする」
ホノカと話をしていると、50人前のうどんが運ばれてきた。
「ミサキさん、うどんです」
テーブルでは収まりきらないため、カウンター席にうどんを置かれた。
「ミサキちゃん、全部のうどんを食べるの?」
「うん。全部を食べるつもりだよ」
「おなかをこわすよ」
「朝から何も食べてないから、腹ペコの状態なの」
ミサキの体重は40キロに届いていなかった。うどんをたくさん食べることで、42キロに近づけていきたい。