209章 いつもの仕事
ミサキは仕事をするために、焼きそば店にやってきた。
「シノブちゃん、おはよう」
シノブは材料の確認をしていた。焼きそばを作るにあたって、焼きそば、豚肉、キャベツ、もやし、ネギなどは欠かせない。
「ミサキさん、おはようございます」
シノブはいつもと比べると、テンションは低めだった。
「シノブちゃん、どうかしたの?」
シノブは手を止めたあと、こちらに視線を向けた。
「アイドル業界の不祥事を聞いて、少しだけショックを受けました」
「シノブちゃんは強姦を強要されたことはあるの?」
「私はありません」
マイが出社する。勤務開始の10分前だった。
「シノブちゃん、ミサキちゃん、おはよう」
シノブ、ミサキの順で挨拶を返す。
「マイさん、おはようございます」
「マイちゃん、おはよう」
マイはこちらに視線を向ける。
「ミサキちゃん、ハイテンションモードで接してもいい?」
シノブがすぐさま、ストップをかける。
「職場でハイテンションモードはダメですよ。みんなに迷惑をかけてしまいます」
マイは思い通りにならなかったことに、大いにすねていた。
「シノブちゃん、ちょっとだけだよ」
「ダメです。仕事前は心を落ち着けるための時間です。ハイテンションになるための時間ではありません」
ゆったりと過ごすことによって、仕事に集中できるようにする。シノブの考え方は、こちらに伝わってきた。
「シノブちゃんは、ハイテンションになったときを知っているの?」
「何度か見たことあります。お祭りのときはいいけど、職場ではマイナスに作用するでしょう」
マイのことをよく知っている、シラセがトイレから出てきた。アホ毛の部分は、いつもよりも強調されていた。
「マイ、きっちりと仕事しようね」
マイはすぐに気持ちを切り替える。
「うん。きっちりと仕事する」
仕事3分前。ミサキはポジションにつくように指示された。
「ミサキさん、握手、サインをお願いします」
「うん。わかった」
焼きそばづくりをするのではなく、サイン、握手を中心に行う。焼きそば店ではなく、アイドルのような仕事をしていると感じた。