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154章 ちっぽけな報酬

 ミサキはお金の支給日に、30万ペソの援助を受ける。しっかりと貯蓄をして、将来に備えていきたい。

 現在の貯蓄額は220万ペソ。お金を使うことはないので、これからもたまる一方であると思わ
れる。

「ミサキさん、今回の報酬です。少ないですけど、お受け取りください」

 写真撮影の報酬は20万ペソ。アイスクリームよりは少ないものの、十分な金額といえる。
ミサキ、アヤメの2ショット水着写真は、爆発的な人気を見せる。巷の噂によると、5000万部以上の売り上げを記録したようだ。過去の最高は1000万部なので、5倍以上は売れていることになる。

 初版の10000冊に1冊は、アヤメ、ミサキの特別サイン入り。希少価値の高さから、定価の10000~20000倍の値段をつけられている。

 シズカは渋い表情になった。

「5~10倍くらいは渡したいけど、アイドル業界の予算は圧迫しています。売り上げについては、
アイドル育成に使わせていただきます」

 取り分を大幅に減らされたと知って、大いに落胆することとなった。

「アイドル界は余裕ないんですか?」

 シズカは小さく頷く。

「売り上げの少ない人たちであっても、ご飯代、移動費、衣装代などは必要です。経費は非常に大きくて、アイドル業界の予算を圧迫しています。アヤメさん、ココロさん+数人で、3000人近いアイドルを支える状況です。極端なピラミッド型なので、アヤメさん、ココロさんなどに何かがあったときは、一気に傾いてしまいます」

 わずか数人で、3000人のアイドルの卵を養成する。1人に対する負担は、相当なレベルに達している。

「アヤメさんは引退発表しました。ココロさん+数人だと、かなり厳しいといわざるを得ません。アヤメさんの引退までに、超一流のアイドルを発掘する必要があります」 

 超一流をすぐに発掘するのは難しい。3~5年くらいはかかるのではなかろうか。

「今回の収入、アイスクリームの臨時収入は、本当に助かりました。アイドル発掘の猶予をもらうことができました」

 アイドルではない人によって、アイドル業界は支えられている。本来あるべき姿からは、大きくそれてしまっている。

「ココロさんはどうしたのですか?」

「ココロさんは仕事過多によって、体調不良になってしまいました。当分の間は、アイドル活動をお休みします」

 ココロはアイドルになりたてなので、仕事ペースをつかめていなかったのかな。詳しいことはよくわからない。

 ミサキは気にしていた部分を聞いてみる。

「私が代理出演したのはどうしてですか?

「アヤメさんの強い要望です。ミサキさんと出演したいと、譲りませんでした」

「素人出演に反対意見はなかったんですか?」

「ミサキさんは知名度抜群、スタイル抜群なので、反対意見はほとんどなかったですね。予定していたよりもスムーズに決まりました」

 シズカは下を向いた。

「ココロさんの代わりになるアイドルは、一人もいませんでした。内部に人がいなかったからこそ、外部に頼ろうという話になったのだと思います」

「それなりの人はいるような・・・・・・」

「アヤメさんはトップアイドルです。人気のないアイドルと一緒にして、名誉、プライドを傷つ
けるわけにはいかないです」

 トップの人間に対しては、細かいところまで気をつかう。一流の人間というのは、自然と大切にされる。

 シズカはさらに首を下に傾ける。

「絶好のチャンスを得ているのに、生かす機会すら与えようと思わない。私たちにとっては、その程度の評価ということです」

 シズカは話を切り替えた。

「来週の木曜日に、お風呂のCMを取りたいです。アヤメさんといっしょに、お風呂に入っているシーンです」

 ミサキは予期していなかったのか、とんでもない声を発していた。

「お、おひゅと・・・・・」

「アヤメさんとお風呂に入るお仕事です。アヤメさんはタオルで入りますけど、ミサキさんはスクール水着でOKです。今日と同じ衣装を着て、お風呂の良さを伝えていただきます」

「アヤメさんは裸なのに、私は水着ですか?」 

「ミサキさんはアイドル所属ではないので、裸で入れとはいいません。恥ずかしくない格好で、お風呂に入ってください」

 裸は無理だけど、水着ならどうにかなる。ミサキは前向きな気持ちが芽生えていた。

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