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第3章の第35話 チアキの親書! 地球を救う希望シアノバクテリア


☆彡
入室してくるデネボラさんを先頭に、アユミちゃん、クコンちゃん、クリスティさん、そしてヒースさんとシャルロットさんが続いていく。
その後ろで、再び、星座を模した機械質的なドアがロックされたのだった。
「……待っていたぞ。と言っても聞こえぬか……」
「では、私たちが通訳を賜りますよ王女様!」
「うむ、任せる!」
王女様の希望に沿うように、
ここは仲介人としてヒースさんが名乗り出たのだった。これには同意するようにシャルロットさんも頷き合う。
「皆さま、馳走を用意しました。お座りください」
「……」
「初めてね。ここで馳走を出すだなんて」
「うっうん……」
シャルロットさんがそう告げ。
クリスティさん、クコンちゃん、アユミちゃんと着席する。
それを見届けて、ヒースさん、シャルロットさんが着席し。
最後にデネボラさんが座るのだった。
席順はだいだいこんな感じだ。
     王女
   L     デネボラ
ヒース      シャルロット
アユミ      クコン
    クリスティ
――がこの時、ポンタヌの着ぐるみを着ているクリスティは。
(――どうしよう? 中が結構蒸し暑くなってきちゃった……)
頭なんてこの場でかぶれないし、不敬罪にあたるし……仕方ない。このまま我慢しよう。
あたしは我慢する事に決めた。あたしは遅まきながら、この時、後悔しだしていた。
(ハァ……。着ぐるみの人って、意外と蒸し暑いのね……)
あたしは着ぐるみの人達に、同情するのだった……。
で。
(スバル君が言ってたけど、こーゆう事だったのね?)
(うん……)
アユミちゃんが口元に手を当てて、ヒソヒソ話をあたしにして。
クコンちゃんは頷き得る。
で。
「……見た事ない、食材ばかりだわ。地球産に似たものもあるけど……。……食えるの?」
クリスティ(あたし)は見てて、段々と不安に思えてくる。
(それに……)
チラッと顔を上げるあたし。
向こうに誰かがいるはずなのに、まるで見えないし聞こえないのだ、こんなに怖い事はない。
(……見える宇宙人も中にはいるけど、なんか気配で感じる気配の数が合わない……し)
そう、見えないのに、気配として複数感じるのだ。
見ず知らずの宇宙船に、地球人の女医として放り込まれた立場、こんなに怖い事はないわ……。
(夢なら覚めてよ……ッ!)
「フム……やはり緊張しておるな……。シャルロットさん」
「はい」
「そちらにある『プリン』を回してください」
「はい、畏まりました」
シャルロットさんは、アンドロメダ王女様の希望に沿うように動き、
「クコンちゃん、これを回してくれる?」
「はい」
コトッとクリスティさんの目の前に、『プリン』が置かれた。
「!」
「そちらは最初に、スバルが口にしたものじゃ! お前たち地球人の口にも合うはずじゃよ」
「クリスティさん、こちらの『プリン』をお食べください」
「!」
「スバル君が最初に口にしたもので、ご安心ください」
「…………」
あたしは恐れながら、それをただジッと見て。
「…………」
それを手に取って、恐る恐る口元に運ぶのだった。
「!」
これにはあたしも驚嘆してしまう。
「美味しい。味が濃厚だわ……! まるで、そう、黄身だけをいくつも使い、溶かしたものだわ。でも、ずっと臭みがなく、美味しい!!」
それは初めて味わう、地球外の食材の味だった。
「何の卵なの……これ!?」
「それは『ガサバエルの卵』じゃ!」
「それは『ガサバエルの卵』じゃ! だそうです」
「『ガサバエルの卵』!? ……初めてきく名前ね……どんな生き物なのかしら?」
カチャカチャ
と興味を示した2人の少女達も、そのプリンを手に取るのだった。
口元に頬張っていく少女達。
「う~ん、美味しい~」
「へぇ~、スバル君、こんな美味しいもの食べてただんだ」
ご満悦のアユミちゃんに。
ちょっと妬み加減のクコンちゃん。彼の事を羨ましがる。
「まずは傷ついたその身を労わるために、精を取る事じゃ。気にせず食事を勧めてくれ!」
アンドロメダ王女様がそう告げ。
その希望に沿うように、今度はヒースさんが答える。
「『まずは傷ついたその身を労わるために、精を取る事じゃ。気にせず食事を勧めてくれ』……と! 皆さん、ここはお言葉に甘えて、お腹がすっかり空いてるから一緒に食べましょう」
ヒースさんがそう告げて。
シャルロットさん、デネボラさんと頷き得て。
アユミちゃん、クコンちゃん。
最後に最も緊張していたクリスティさんが「はい……」と、緊張の面持ちで答えるのだった。
カチャカチャ
と音を立てて、口元に出された料理を運んでいく一同。
その中で、食材が勝手に煙を上げて、蒸発して、炭化していく様を見た。
これにはクリスティさんも
「ウエッ……!?」
と驚いた。
それをやらかしちゃったのは、普段のノリで食べていたLちゃんだった。
「いっ今のなに!?」
あたしは身の危険を感じ、後ろに引く。
でも、この事について、当たり前のように知っているアユミちゃんが。
「あぁ、Lちゃんかアンドロメダ王女様ね!」
「え?」
「大丈夫よ、全然危害なんてないから」
「そうそう、いつもあんな食べ方なのよ」
と説明をするアユミちゃんにクコンちゃんの2人。
続いて、同様の現象が起きて、食材から勝手に煙を上げて、蒸発して、炭化していくのだった。
次にやらかしたのは、アンドロメダ王女様ご本人だった。
で、クコンちゃんが。
「あぁ、あたしたちも初めて見た時は驚いたけど。アンドロメダ星人はあーやって食事を取ることもできるのよ!」
「……」
「もちろん、口からも出された料理を食べる事もできるんだけどね」
「……」
「スバル君が言うには、アンドロメダ星人の中でもエナジーア生命体の人達は、一段階上の進化した生命体なんだって!」
「……進化した生命体……」
クコンちゃん、アユミちゃんと説明して、あたしはアンドロメダ星人をというものを知る。
少なくとも、アンドロメダ星人には、大別して二種類いるようだ。
さっきの門番を司っていた衛兵2人は、目に見えるタイプで。
今こちらにいる王女様達は、エナジーア生命体という、目に見えないタイプだ。
「フフッ、こうして取った方が、また違った味わいなのでな!
口でも取るが、エナジーアで取るかで、また味わいが変わってくるのじゃよ。
その日の気分次第。まぁ味変じゃな!
……そうじゃなぁ……人は同じものを食べても、いつかは飽きがこよう?」
「――とおしゃってます」
と告げるシャルロットさん。
「確かに、僕達アクアリウス星人も味変するために、様々な趣向を凝らすからね!」
「ね!」
「そうね! 醤油をかけたりソースをかけたり」
「塩コショウしたり、黒ゴマをかけたりしちゃってね!」
「……ああ、なるほど……」
姫様の話を、シャルロットさんが告げて、ヒースさん、シャルロットさん、クコンちゃん、アユミちゃんとして、クリスティ(あたし)も納得の理解を示すのだった。
「あたし達と同じなのね」
あたしはそう呟き。
目の前にあったスープに、スプーンを入れてから、口元に運び流し込むと。
「――! 深いわ!
メロンとコーンポタージュとキウイの味がする……!! いったいいくつの食材を組み合わせてるの!?
でも、あるべき食材なのに欠けた味もある……!! 栄養素もいくつか欠けてる!!
でも、他の食材が上手く、それを補って上品な味わいになってる……!!
これが宇宙食……なのね!!」
あたしは宇宙というものを感じ取った。
「まるで未知だわ……地球以外にも、こんな味が眠ってただなんて……!」
クリスティ(あたし)は素直に驚き、感服した。
「フフッ、この宇宙はとても広いからな……!
知っているだけでも、1000以上の銀河がある! 当然そこには未知の食材があり、未知の調理方法も眠っておるのじゃ!
かく言うわらわもまだ、この宇宙すべての食材の味を知らぬのじゃよ……!
どうじゃな!? 宇宙に興味を持って、わくわく、ドキドキしてくるじゃろ!?」
「うんうん!」
「旨いわ!」
アユミちゃん、クコンちゃんと舌鼓を打つのだった。


☆彡
――食談が進み。
いよいよ、チアキからスバルへ、スバルからシンギン副隊長を経て、渡されてきた『親書』の出番が訪れる。
「――さて、あれを」
「ハッ」
アンドロメダ王女様がそう告げて。
シンギン副隊長が頷き。
それを持参して持ってくるのだった。
「――どうぞ」
「!」
持ち込んだ先は、シンギン副隊長からクリスティさんの元へ運ばれたものだ。
あたしの目にはこう見えた。
親書がふよふよ浮いて、こちらに運ばれてくる。
とあたしは緊張の面持ちで、それを受け取るのだった。
「……見た限り、上品な紙を使ってるわね……まるで封筒みたいだけど……」
そう呟きを落とすクリスティさん。それは高級和紙を用いられる封書だった。
「あら? 封を切った跡があるわ……!?」
それは、先にアンドロメダ王女達が親書を見た後だった。
あたしは構わず、中の紙を抜き取りにかかる。
「……失礼します」
「「!」」
それは興味本位にかられ、アユミちゃん、クコンちゃんと覗き見る。
その中で、シャルロットさんが一言。
「あたし達が聞いた限りでは、元々は、あなた達の星、チアキさんという女性の方が記したものだそうです」
封書から親書を引き抜く。
「スバル君に渡り、シンギン副隊長を経て、こうしてアンドロメダ王女様に渡ったのですが……」
その親書を見るクリスティさんに、アユミちゃん、クコンちゃんの3人。
「なにぶん、日本語で書かれていて、王女様たちには読めませんでした……。
ですが!
地球人であるあなた方なら、その文字を解読できるはずです!」
「えーと……何々」
日本語を解読しようするクリスティさん。
だけど、それよりもずっと早く、身近に使っている日本人女性のアユミちゃんとクコンちゃんは。
「いや、これ、『ひらがな』と『カタカナ』と『漢字』なんだけど……」
「うん、解読も何も、もうフツーに読めるわね」
「「「「「え?」」」」」
うん、普通だった……。
「こんな簡単な『字』も読めないのかしら?」
そう漏らしたのは、クコンちゃんであった。
疑いの眼差しを向ける。
「ええい!! なんて書いてあるのじゃ!?」
「……」
とクコンちゃんは気持ちを切り替えて。
「そうね。今読み上げるわ。ちょっと貸してください」
「はい」
とクリスティさんから、クコンちゃんの手に『親書』が渡るのだった。

【――当然の成り行きかもしれない】
【クコンとチアキは、同じ学校の生徒なのだ】
【友の意思を紡ぐため、その『親書』を読み上げていく――】


――あの日、チアキは1人、親書を書き留めていた。
読み上げるは、あたしクコンだ。
【親愛なるアンドロメダ王女様へ】
【突然の返事をお許しください】
【スバル君から事情を聞きましたところ、こちらでも対策を講じようと思います】
【誠に勝手ではありますが、地球産の野菜や果物、その土を残したいと思い筆を取りましたことお詫び申し上げます】
【先だって送ってもらった恵けいちゃんが入っていた棺桶の手押し車には、冷凍機能が備わってることがわかり、役立たせてもらおうと思いました】
【つきましてはアンドロメダ星移住際、こちらからの持ち込みをどうかお許しいただきたく、先だって親書をお送りしましたことを失礼つかまつります】
【p.s.チアキより】


「――です」
読み上げたクコンちゃんは、顔を上げると。
アンドロメダ王女様を初め、皆さんは顔を下げて考え込んでいた。
「「「「「…………」」」」」
その様は、塾孝している様だ。
「いかがなさいますか? 王女?」
「認可する!」
即答だった。
「私も、正しい意見と思います!」
デネボラさんも了承の意を示す。
「恵けいちゃんって、あの死んだ子だよね?
あの子の入っていた棺桶に、地球産の土と野菜と果物を冷やしているわけか……。
どんなものなんだろう?
僕もいいと思うよ。
種子保存法としても、凍った地球から僕等の星に移動するのは、地球産の種子を残す意思の表われだから。
学者さんの目からみても、きっと太鼓判を押すと思うよ!」
Lちゃんも了承の意を示す。
とシャルロットさんが、アンドロメダ星人たちの総意の意思表示を伝える。
「地球人の皆様、お慶びください。受理されましたよ! 地球産の物産資源の持ち込みは、正式に受諾されました!」
これにはヒースさんも、コクン、と力強く頷き得て。
わぁ、と喜ぶ一同。
これには実際に読み上げていた、クコンちゃんもビックリだ。
「良かったわねクコンちゃん」
「うっうん……まさか、こんな大役を仰せつかるだなんて……」
(どこかで言っておいてよッ!! チアキちゃんもスバル君もッ!!)
クコン(あたし)は心の中で、愚痴るのだった。2人の知人に。
と。
「あら? 中にもう1枚入ってるわ」
「「え!?」」
そう、『親書』の入っていた封筒の中には、『もう1枚、別の親書』が入っていたのだ。
「はい」
「……」
その『もう1枚の親書』がクリスティさんの手から、今度は、アユミちゃんの手に渡される。
「読み上げるわね。うわぁ……こっちはミミズが走ったみたいな字になってる~……。……相当大急ぎで、書き上げたんじゃ、あの子……」
あたしは、やれやれという思いで嘆息した。
「まあ、前にスバル君の汚い字も解読できたし……これぐらいはできるけどさ……」
あたしはやれやれという思いだ。
「……ハァ」
とどうやら、スバル、あやつは以前、ミミズが走ったような汚い字を書いた経歴があるようじゃった。
これにはわらわもガッカリじゃ。
嘆息する思いじゃった。
「読み上げてみよ」

【――この時、わらわの中で、そのチアキと名乗る少女の評価が右肩下がりで下がっていた……】

「読み上げるわね」
あの日、チアキちゃんはスバル君の後姿を見ていて、『夢見』の能力を通して、未来のスバル君の様子を垣間見ていた。
未来のスバル君は、温泉地に足を運ぶなどして、
その『小さな星の小瓶』の中に、色の違う硫黄分の塊等を削り出し、赤土と温泉水を入れるなどして、大事に保管していた。
これには、当時のチアキちゃん本人も、驚愕するほどだった。

【――スバル君は、必ず、全球凍結した地球を復興して見せます】
【今日、初めてスバル君に偉業をさせました】

「偉業!?」
言ってた本人が驚くほどの驚愕の事実が記されていた。
「えっちょっとこれどうなってんの!?」
記されていた内容が、読み上げているアユミちゃんの驚倒をさらう。
「ちょっと貸して!! ――ふんふん。えっ!? マジ!?」
アユミちゃんから受け取った、クコンちゃん(あたし)も驚くほどの、初めての偉業の達成だった。
「うるさいな~。ちったぁ静かに読み上げなさいよッ!!」
ドスの効いたような声質を上げるクリスティさん。悪の本質があるのかも……。
これには女子2人とも……。
「「はい……」」
とここで、シャルロットさんが。
「続きを読み上げてくれる?」
と促し、コクン、と力強く頷き合い。
アユミちゃんに変わり、クコン(あたし)が引き継いで読み上げようとしたけど……。
「えっ? これどう解読するの?」
「……」
「うっ……つ……無理!!」
「はいはい」
危うく、クコンちゃんの手から早々にアユミちゃんに任さられるのだった。
続きを読む、アユミちゃん。
この字を解読できるのは、ミミズが走ったような汚い字を解読できる、彼女だけだ。

【温泉水、その硫黄成分の塊、その周辺に住むコケと赤土の周りには、多くの微生物たちが豊富に住みついています】
【その微生物、光合成細菌を行う微生物たちの中には、大気中の二酸化炭素を吸い、酸素を作る細菌がいます】
【その名を『シアノバクテリア』】
【地球は今までに3度、全球凍結した時代背景があり、二酸化炭素とメタンガスが覆う、人が住めない過酷な世界でした】
【気温マイナス40度、地上から1000mの氷の壁で厚く閉ざされていました】
【………………】
【このシアノバクテリアの起源を遡っていけば、その厚い氷の下の海水に多く分布し、海流に乗り、世界各所に多く分布していました】
【古い文献には、こう記されています】
【地球の全球凍結が溶け、温暖な気候になっていったのは、二酸化酸素を吸い、酸素として排出してくれる、『シアノバクテリア』の功績『も』大きい……と記載書きがありました】
【先カンブリア紀時代、生命の大進化が起こったのは、地球の環境に酸素があったからです】
【なので、どうかスバル君には、こうした現場を巡り合わせてください】

頷き得るアンドロメダ王女様。
「――さすがじゃな。ようそこまで読み上げるとは……。一度、お主とは顔を合わせてみたいものじゃ。……チアキよ」

「えーと……。まだ続きがあるわね」
「ま・だ……じゃと……!?」
読み上げるアユミちゃんの発言に、
さしものアンドロメダ王女様も驚嘆する。

【『LUCA(ルカ)』という言葉をご存じでしょうか!?】
【LUCAとは、『全生物最終共通祖先』とも呼ばれ、太陽光の光源が差さない、海底の奥深く、熱水が噴き出す、熱水噴出孔から生まれました】
【つまり、地球で、一番最初に生まれた原初生物なのです】
【生命の起源はそこから始まり、今に至ります】
【その原初生物の主食は、熱水噴出口から採ってきた水と硫黄成分です】
【主に水素と鉄分です、その名残があたし達の赤い血液なのです】
【超好熱菌と呼ばれる原核生物であり、つまり菌の一種です】
【生まれ年は、今より36億年前、地球誕生年が46億年前なので、その10億年後に、原初の生命が誕生したことになります】
【非常にシンプルな微生物で、あたし達のような複雑な多細胞生物ではなく、単細胞生物であると記されています】
【顕微鏡で見た写真は、『一種の紐みたいな微生物』の絵でした】
【どうか、『全生物共通普遍祖先LUCA』を探してください】
【現存するLUCAは、今もまだ息づいており、アメリカのイエローストーン国立公園のどこかにわずかに潜んでいます】
【あたしの切なる願いは】
【今、スバル君が隠し持っている『小さな星の小瓶』の中に潜んでいる、『シアノバクテリア』と『LUCA』を特別交配し、それ等をベースに新たな酸素の素を創ってくれる】
【まったく新しい微生物、細菌の誕生です】
【未来的な技術革新を経て、どうか地球を復興させてほしいという切なる願いでもあります】
【その名には、どうか亡くなった知人の名前『恵(けい)』の一文字だけでもつけてくださいませ】
【p.s.チアキより】


静まりかえる食談の場。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
アンドロメダ王女が、Lが、デネボラが、ヒースが、シャルロットが、クコン、クリスティが、そしてアユミちゃんがただただ驚いていた。
【――それは一同の顔から驚きをさらう】
【これにはアンドロメダ王女様を初め、L、デネボラ、ヒース、シャルロット、クコン、クリスティ、そしてアユミちゃんと面持ちから表情が消えていた……】
【それだけの事をしたのだ】
【スバルが偉業というのなら、あの日、彼女もまた偉業を達成していたのだ】
【これにはすぐにアンドロメダ王女様も、兵士たちに指示を与える】
「何をしているお前達!!」
「「「「「!」」」」」」
兵士たちも驚く。
「今すぐにスバルが隠し持っている、『小さな星の小瓶』を持ってこい!!!」
「「「「「はっはい――!!!」」」」」
現場が慌ただしく動くのだった。
「追って通達!! 今すぐに当船を、その『アメリカのイエロストーン国立公園のどこかに』に向けて飛ばすのじゃ!! 急げ!! 『LUCA』が死滅する前に!!!」
「「「「「はっはい~~!!!」」」」」
緊急方向転換。
宇宙空間を飛んでいたアンドロメダ王女様の宇宙船が、急遽、地球に帰還するために進路変更を余儀なくされたのだった。

【LUCA(ルカ)とはいったい……!?】
それを心の中で考えるアンドロメダ王女様。
【ルカとは、先ほど話した通りである】
【その名のつづりを解き明かしていくと……】
【last Universal Common Anecester(ラスト・ユニバーサル・コモン・アンセスター)の略で、日本語に訳すと、『全生物最終共通祖先』となる】
【『LUCA』は、『全人類共通普遍祖先』または『全生物共通普遍祖先』とも呼ばれ、『全生物最終共通祖先』とも呼ばれている】
【人類の歴史を遡っていくと……】
【人、類人猿、猿、トカゲみたいな生き物、海洋中の魚、多細胞生物、単細胞生物、そしてルカと最終的に辿り着くのだ】
【つまり、原初の生命体であり、母なる海から生まれた最初の者】
【シンプルな組成をした原核生物、細菌の一種なのだ】


☆彡
【治療室 セラピアマシーン】
もう現場はバタバタだった。
星座を模した機械質的なドアがあった。そのドアのロックが解除されて、左右に開き、上下にも開いて、入室してくる兵士さん達。
向かう先は、スバルの衣類が入った衣装ケースだった。
宇宙人たちがそれに手をつけて、服を掴み取りながら、ポケットを探っていく。
出てくるわ出てくるわ、スバル君の私物が。
ディッシュにハンカチにお財布、
もう使用できない壊れた腕時計型携帯端末、
恵パパから頂いた『ケイちゃんの護り刀』と『森平砥石烈火シリーズ』、
そして、ケイちゃんとチアキちゃんのバトルカードが混ざったデッキ『ケイちゃんのデッキ』が、ボトボト、と。
「ねえぞ、どこにあるんだ!?」
「もしかして――」
その宇宙人さんが見つめる先は――回復液に浸かっているスバル君のトランクスだった。そこはもっこりしていた。
「あのもっこりしたところに隠し持っているじゃ……」
「金玉か! その手があったか!?」
「地球人って、そんなところに隠し持てる、種族だっただな!?」
(なわけないでしょ……!)
そんなバカみたいな会話(意見)に振り回されないとばかりに、1人の女性兵士さんがそれを見つける。
「――あったわ」
――その女性兵士さんの手握られていたのは、地球を救う希望『シアノバクテリア』が入った『小さな星の小瓶』だった。


☆彡
――そして今、食談のテーブルの中央の場に置かれたそれは、まるで、碁盤の中央、天元のように居座るのだった。
スバルとチアキの偉業、功績だった。
これには亡くなった、恵ケイの恵起ホテルの温泉地も含まれる。
「……」
アンドロメダ王女様は、泰然とした構えで、そのモニター画面を注視していた。
彼女は今、何を思うのだろうか――……


TO BE CONTINUD


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