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第3章の第33話 盗難にあった無人航空機メイビーコロ


☆彡
レグルス隊長はシシドを乗せ、放っておいた無人航空機(メイビーコロ)を回収した後、地球から飛び立っていた。
今いるのは、静止軌道ステーションに向かうため、宇宙空間だ。
「……」
コロコロ、コロコロ……
俺は無作為に、掌の上でメイビーコロが小さく納まったカプセルを転がしていた。
「やはり、数が合わない気がする……」

【――あの時、俺は全部回収したつもりでいた】
【だが、予め俺が用意した数より、少ない気がしたのだ……】
【一抹の不安を禁じ得ない……ッ】
【この時、俺は気づきもしなかった……】
【俺が用意した無人航空機メイビーコロの一部が、もう既に盗難されていた事実に……ッ】

「う~ん……地球の環境は荒んでいたからな……。
どうせ、雷か吹雪か、嵐にでも巻き込まれたんだろう……」
【俺は、自分に言い聞かせる】
コロコロ
「火山も噴火していたし、海もいくつか荒れて、渦巻きもできていたし、竜巻だって……」
コロコロ
【俺は自分に言い聞かせて、一抹の不安を消し去ろうとしていた。だが――】

「もしや――」
俺はもしかしたらを考える。
その時、覆いかぶさるように、無線が入った――PPP、PPP
「んっ?」
俺は、モニター画面のボタンを押して、ONにした。
モニター画面に映るのは、アンドロメダ王女の宇宙船にいる兵士2人だった。
「……何だ? お得意のハッキングか?」
「ハッキングだなんて人聞きの悪いですなー! レグルス隊長!」
「……」
「そうですよ! ちょっとそっちの船に使われている、固有番号を調べて、そちらの周波数帯に合わせて、こちらからお邪魔しているだけですよ!」
「~~!!」
あーいえばこーゆうだ。
なるほど、確かにハッキングとは呼べないな。
「ご利用をこちらから、強制的にOFFしていないだけ、まだハッキング行為とは呼べませんよ」
「そうそう、落ちてませんよね? 宇宙船が? グレーですよ、グレー!」
「……」
後ろで、この言葉を聞いていたLは、顔がピクピクしていた。
「クソ技術者どもめ!!」

【ハッキングとは何か!? まず、これを議論しなければならない】
【1つ、外部から、ネットを通じて攻撃を受ける行為】
【2つ、ID・パスワードの不正利用】
【3つ、情報が外部に流出される】
【4つ、WEBサイトが改ざんされる】
【5つ、サーバーが停止する】
【6つ、知的財産権が外部の人に奪われる、利用される、閲覧される】
【等々多岐にわたる】
【が、今回の場合はあくまで、レンタルしている宇宙船の固有番号を調べた上で、そちらの周波数帯に合わせて、無線で連絡しているだけだ】
【不正行為ではあるが、実際に顔出しして、連絡を取り合っているだけなので、ギリギリグレーゾーンの合法である】
【しかも、バックには主君のアンドロメダ王女様がいるため、頭が上がらない……】
【完全にグレーだった】

「――クッ、何の用だ!?」

【ここまで要した時間はわずか2秒! 早々にレグルス隊長は、気持ちを切り替えて、仕事に望むのだった】
胸を撫でおろす兵士2人。この人が怒ったら恐い……。
「いや~~丸くなりましたねレグルス隊長!」
「ホントホント、まさか勝ちを譲られるだなんて!」
「フン」
わかってるじゃないか。
「……あれ~~? まさか本気で負けたとか?」
「そんなはずないですよね~~?」
からかう兵士2人。
これにはLも、その2人の兵士の立場がマズい事がわかる。
ギロリ
と睨みつけるレグルス隊長。その眼光はとても弱っている人には見えなかった……。
もう1戦ぐらいはできそうな余力を残していた。
「……勝手に憶測を立ててろ!」
フンッ
と鼻を鳴らす。
「またまたご謙遜を!」
「だってあなた、本気を出していないではないですか!? まだ実力の半分も出してませんよね――?」
「……カウンターか?」
ニィ
と笑みを浮かべる兵士2人。
「確かに、強化業も残していた……が、今回の趣旨はそこではない!!」
「……」
「……」
「……」
腕を組んで、深く考えるレグルス。
「あのガキが、話題に上がっていた! アンドロメダ星での話だ!
風潮は様々、いい面、悪い面の双方がある!」
「「……」」
「……」
「悪い面の話をしよう!
元はといえば、宇宙探査機が俺達の星で実際に被害を起こしたのが原因だ!
が、視聴者の民間人は、地球人がアンドロメダ星にきて、移住するとき、
何かと難癖をつけるんじゃないかと、悪い印象を持っている!!
……割合で言えば、いい面が30%、悪い面が60%、どちらかわからないが10%だ!!
実際に被害を受けた人もいる!
……。
その人がTVに出て、講義に打って出るような、番組の一幕もあった!」
(そんな事が……!!?)
これには実際の話を聞いたL(僕)も驚きだ。
とレグルス隊長が、ニュースペーパーを取り出して、実際に口頭で読み上げる。
「『地球人の難民、アンドロメダ星への定住希望か!? アンドロメダ星の安全が脅かされるのではないか!?
地球の王は誰か!?
少年を差し向けて、同情を買おうとしている卑劣な輩なのか!?』
……そんなものだ」
と言いつつ、レグルス隊長はそのニュースペーパーを取り下げた。
「……なるほど……だからその割合を裂くために、一芝居を打ったのですね? 隊長!?」
「半分はな」
「? 半分……?」
これにはLも、首を傾げる思いだ。
「俺は前に、小僧の意識がない状態のエルスと一戦した事がある……!」
「「……」」
「……」
――あの時か。
「――その時、Lが言ったんだ。『あなたについていけない』……とはっきりと……な」
「「……」」
「……」
「地球人とアンドロメダ星人の歩み寄る道を探す、それは『救世への道』だ!」
「「……」」
「……」
「……んっ」
これにはなんだか気恥ずかしそうに、レグルス隊長は画面の前で、頭をかく動作を取ったのだった。
「姫様の気持ちも考えないとな。
地球人を全滅させれば、周りの惑星からの風評被害をかってしまう。
そうなればどうなるか……!?
……。
それよりも、こちらから一歩引いて、歩み寄らせる立場を作るべきではないか!?
俺が大衆の面前で負けたことで、地球人側から、1歩踏み出せる立場を作らせた」
「「……」」
「……」
「後は、アンドロメダ王女様と少年が……スバルと言ったか?」
「はい」
「合ってます」
「……」
頷き得るレグルス隊長。
「有利な場は作らせた! これで、俺が多くの命を奪った一件に報いることができる……!」
「「……」」
「……」
「失った命は戻ってこない……。
散々人を殺めた俺が言うべき言葉ではないが……。
あのガキならこう言うはずだ!!
『残りの地球人を、1人でも多く救いたい!』
……。
……。
……。
……俺があのガキの立場なら、そう願うはずだ!!」
「「……」」
「……」
兵士2人とLがその一言を考える。
兵士の人が、口をついて出た言葉は。
「……そのために、自ら悪者になったんですね?」
「おいおい、俺は取り返しのつかないことを仕出かしたんだぜ!? これぐらいは人として責任を負う、悪役としての面目躍如だろ!?」
「「……」」
「……」
「……」
フゥ……と溜息を零すレグルス隊長は。
「……後はお前等の仕事だ!! そちらは任せたぞ! 何かあった時はまた呼び出せ!! ……と見えてきたな、静止軌道ステーションが……じゃあ切るぜ!」
プツン……
とあちらから無線通信を切ったのだった。


――場に残された兵士2人とLは……。
「……大人だな、あの人」
「ああ……俺も負けてられねえな」
「ははっ、違いねえ……」
「うん……やっぱりすごい人だったんだね……」
これには僕も、渋々思うところがあった。
「……」
「……」
「……」
黙って物思いにふけこむ兵士2人とL。
「悪役なりの落とし前か……」
「フッ……」
「あの人らしいな」
「ああ」
「……」
「……」
黙って物思いにふけこむ2人。
「……アンドロメダ王女様への報告どうする?」
「告げた方がいいだろうな? 絶対誤解してるぜあれ?」
「ハァ……あの人もホント、こんなところでツメが甘いんだから」
「ハハッ、後で事情を話して、おごりでどこかの酒場に誘ってもらおうぜ」
「違ぇねえや!!」
ハハハハハとこれには兵士2人も笑い飛ばすのだった。
「――とL!」
「んっ?」
「さっきレグルス隊長が言ってたんだけど……、あの少年の意識がない状態で、どんな話をしたんだ!?」
「そうだよな? さっきから気になってたんだ!? いったい何の話をしたんだよ!?」
「あぁ、それはね……」
――その後、僕はあの当時の話を2人に話したのだった。
これには兵士2人も、とっても納得する思いで、何度も頷き得たのだった。
それはとても、正しく、心にくるものがあった。


☆彡
――そして、デネボラさんを先頭に、ヒース、シャルロット、クリスティさんの4人がこの部屋に入ってきた。
「「「!」」」
Lと兵士の2人は、その顔を向けるのだった。
「デネボラ!」
「ムッ!」
デネボラは急ぎ足ではないが、空中浮遊してきて。
Lの脳天に、ゴツンと拳を打ち下ろすのだった。
これにはビクッとする兵士2人。
「おお~~ぅ」
小さな頭を小さな手で抑えて、痛みに苦しむL。
「勝手に動かないでください!! 後始末するのはいっつも私なんですよ!!!」
「~~っ」
「フンッ!!」
兵士2人がエナジーアの粒子をダラダラ垂らして、天に立ち昇る中。
頭を抑えてうずくまるLと。
腕組をして、明後日を向くデネボラさんの一幕があったのだという。
自業自得である。
いくらスバルの身を、第一優先で運んだとしても、それは他の兵士の仕事だ。
Lは希少なオーパーツだ。
本来なら厳重に保管すべき立場なのだった。
「L、あなたには後で、三々クドクド言っておきたいことがあります! 覚悟しておいてくださいね!」
「あい……」
((怖え~~!!))
デネボラさんも、怒らせると怖い。
普段、おとなしい人ほど怒らせると恐いよね。
と物珍しそうな面持ちで、辺りを伺う乗船初めてのクリスティさんは。
「宇宙船の医療施設ね。ここが……」
辺りを伺うクリスティさん。
「………………え?」
クリスティさんの視線の先には――トランクス一丁のスバル君が回復に漬かっている姿だった。呼吸器も何もつけていない……。
酸素なんてない、呼吸もできず、溺死……。最悪の脳裏が過ぎり。
これには悲鳴を上げちゃうクリスティさん。
「キャアアアアア!!!」
ビクッとする人たちは、女の人の金切り声を聞いて、耳を塞いでビックリするのだった。
「人殺し――っ!! せっかく助けたのに、呼吸器をつけてない――ッ!!!」
――キャアアアアア
と女医は大急ぎで患者さんの元へ急ぎ、そのセラピアマシーンのガラス板を、ドンッドンッドンッと叩く、叩く、叩く。
「すぐに目を覚まして!!! このままじゃあなた、ホントにすぐ溺死しちゃうわ――っ!!!」
――イヤァアアアアア
「取り押さえろシャルロット!!」
「ったくもう!!」
ヒースに言われて駆け出すシャルロットさん。
ヒースさんは男性なので、ここは同じ女性の立場のシャルロットさんに任せた方がいい、とした現場の判断だった。
「クリスティさん落ち着いてください!!」
「これが落ち着いてられるかあ――っ!!」
もう精神的に大きく慌てていた。女医として患者さんを見殺しになんてできないッッ。
もう大慌ててのクリスティさんは、バキッ、とシャルロットさんの鼻に肘打ちを当ててしまう。
これには「あっ……」と言葉を零す人達。
あの美人顔のシャルロットさんの鼻から鼻血が……。
「こんのっっっクソデカパイがぁあああああ」
――もぎゅん、ボルン
女子が、女子の超乳を背後から揉み潰したことで、その激痛が伝わり、その身が弓なりに沿って反応してしまう――ビクンッ
(痛いッ!!)
抑え込んでいた揉み潰した手の周りから食み出ちゃう乳肉。
加えて、その揉み潰した指の隙間からも乳肉が食み出ちゃう。
世にも珍しい超乳のスライム乳だ。
赤い顔で、苦悶の表情を上げたクリスティさんは、余りの激痛に耐え切れず、その意識を手放して、その辺にドサッ……と倒れてしまうのだった……。
それをやった女子は。
「ふぅ……静かになった……」
とスッキリした。
これには唖然とする面々。
クリスティさんの弱点は、その類稀な規格外の超乳そのものだった。
デカ過ぎる事がかえって、弱点になったのだった。
「……思い切ったことをするんだな、シャルロット……!? ……その、大丈夫なのか?」
「う~ん……」
手をニギニギして、先ほど揉み潰した感触を思い出すシャルロットさん。
「大丈夫……じゃないでしょうね?」
「……え?」
「あたしも地球人の事は詳しく知りませんが……。
ドワーフとエルフを持ち出しますと。
黒人よりも、白人の方が、おっぱいに敏感で、乳腺数が多いんですよ。
それは多分、地球人にも言える事で、黒人、黄色人種、白人がいます。
彼女みたいな白人種は、その乳腺の数が多い!! その分、発育しやすい傾向にある!
それは人に触られた際の感覚に敏感で、痛みや刺激を感じやすいという事!」
手をニギニギして、解説するシャルロットさん。
「……」
これには男性陣も、何とも言えない顔になる。
「……」
その視線は、超乳に注がられていた。
「……」
ゴクリ、とここでヒースさんは生唾を飲んだ。
「彼女、アクアリウス星人とはまた違った膨らみの感触があるわね」
「えっ!?」
「う~ん……」
ニギニギ
「豆腐とプリンを足して2で割った感じで」
ニギニギ
「豚足のコラーゲンのお肉の弾力性とマシュマロを歯で嚙み潰したような、反発力と復元力があったわね」
「……」
それを聞いて、うっかり想像してしまいヒースさんのあそこが反応しちゃう。
「よくもこれだけ育ったものだわ……本物よこれ」
「……」
ヒースさんはゴクリと喉を鳴らして。
「……そっそうか」
「それにこの人、結構汗ばんでるわね……」
「?」
「ううん、この感じ、肌が熱い、血の巡りがいいのかしら?」
「……」
「ニオイも、汚れた、臭いニオイの中に隠れて、ホントのかぐわしい匂いがひっそりしたし……」
それはかとなく女性として、自分とこの人を見比べてしまう。
きっと万人の捉え方からすれば、この類稀な容姿を持つこの人が勝つだろう。
スタイルのいいモデルというよりも、おっぱいの大きいグラビアアイドルといったところだろう。
いや、むしろ、下手なグラビアアイドルより、売れ行きが好調だろう。
「……」
そんな事をついつい考えちゃう。
だが、いつまでもこのままにして置くわけにはいかなくて。
「……ハァ……仕方ない、ヒース、運ぶのを手伝ってくれる?」
「え……?」
(ちょっと待って……もう少し待って)
「バカみたいにデカいからって、服の隙間から手を入れちゃダメよ」
「……ッ」
(僕にどうしろと……!? か、屈まないと……)
ヒースさんのあそこは、膨らんでいた。
「……」
僕が目線を落とすと。
彼女の顔立ちは、かわいいと美人の中間色のような整った顔立ちで。
その類稀な超乳が強く主張していた。
そのあられもないシーツ姿も、男の性欲をそそる促進剤だ。
「……」
ヒースさんの顔。
「……」
ヒースさんのあそこ。
「……!」
シャルロットさんはその様子に気づかずに、クリスティさんの頭側に回る。
自然、ヒースさんが担ぐのは下半身だ。
だが、男の人が、興味を持つのがこのおっぱいである以上、そこを担当したいのが、恥ずかしい実情だ、性情だ。なんだ。
でも、この時ばかりは、シャルロットがそこを担当してくれて、助かったと思う。
なんか、情けない……ッッ。
「んっ? どうしたのヒース?」
「いっいや……もう少し待ってくれ」
膨らんでいたものが縮んでいく……。
「……?」
「やっぱりすごいな……」
「……」
クリスティさんの顔を見て。
「……」
クリスティさんの潤んだ唇。
「……」
あたしは、シラッと同僚のヒースに対して、非難がましい視線を向ける。
「うっ……」
「……」
ボソッと呟くあたし。
「これだけの上玉が、未婚なわけないでしょ」
「うっ……そっそうか……」
「もう、肌も柔らかいし、きめ細かいし、大きな傷なんてない、もう既に誰かが奪ってるわよ」
「……」
「あたしが男でも、もうやってるって……」
「……」
頷き得るヒースさん。
「しっかりしてよ」
「……大丈夫だ! シャルロット!」
「……」
その言葉を聞いたあたしは、嘆息した。
「……」
あたしは顔の女の顔に視線を落とす。
意識を失ったその顔は、まるで女優のようにかわいくも美しい。
(かわ美しわね……)
「……」
新しい造語が生まれた。かわ美しい。それは、可愛いと美しいの略語である。
彼女はあたしの目から見ても、持っていないものを持っていた。
これにはかとなく、あたしも落ち込む。
「……」
同僚のヒースが、彼女の体に欲情をするのもわかる。
あたしだってそうだ。
持っていないものを主張している。万人の男の人達が興味がそそられるのは、このおっぱいだ。
「……んっ?」
その時、屈んだヒースさんは何かに気づいた。
「ちょっとヒース覗かないでよ!!」
「いや、違う!!」
「? ……え?」
「ちょっとこっちにきてくれ!!」
「!」
ヒースさんは、何かを見つけたようで、ヒースさんの元に、兵士が、デネボラさんが、Lが、そしてシャルロットさんが集まる。


「――どうしたのよヒース?」
「この靴を見てくれ!」
「靴を……?」
靴の裏で、何かが光っていた。
「……?」
「……」
「……」
シャルロットさんは訳がわからず。
デネボラさんが覗き込んでいた。
で、Lがちょっと手を伸ばすと……。
「!」
バッとその小さな手を引っ込めた。
これにはデネボラさんも不審に思う。
「どうしたのL?」
「何か、この靴から嫌な気がした……ものすごく嫌な……」
「……」
あたしはLから視点を切り、この靴裏を見た。
(なに? 何かこう胸を鷲掴みにするような、嫌な気が……!!)
あたしが、そんな事を思っていると。
ヒースさんが、その手を伸ばしていた。
「ちょっと待って! 靴を脱がせるぞ」
「……」
ヒースさんはそう言い。
一同、頷き得る。
クリスティさんの履いていた靴を脱がしていく。
その手に取った靴を、その裏面を覗き込むと……。
「……何てことだ……!!」
「え?」
「この人は、死ぬ……!! 信じられないところにいた!!」
「え……?」
「見てくれ! この靴裏の結晶片を!」
それは土色の中にキラキラと光る結晶片があり、中には人の血のような跡があった、焼け腐った人肉の跡も……。
それは最悪の地域にいた証拠だ。
「これは……っ!!」
ガシッとその靴を掴むシャルロット。
叫ぶ。
「すぐに彼女に放射線治療を受けさせてください!!!」
これにはヒースも、デネボラも、兵士2人も頷き得る、何も知らないのはLだけで……。
「えっ……!? なんで……!?」
「君、さっき嫌な気がしただろ!?」
「うっうん!」
「その感覚は大事にした方がいいよ!!」
「?」
「すぐにアンドロメダ星の病院に連絡して!!! 今ならまだ間に合う!!!」
「はっはい!!」
声を上げるデネボラさん。
その声を受け取ったここの管理に当たっていた兵士さんが、慌てて駆けだしていく。
それだけの事態だった。
「?」
「L!」
「!」
「君は知らないだろうけど、ギャラクティアコールで戦争の跡地が残ってるんだ!!
放射線量を含んだ黒い雨が降った事があって、
その細胞が時間をかけて、確実に壊されていくんだよ!!」
「――ッ!!」
ショッキングな出来事だった。
ヒースさんは語り続ける。
「二次的な被爆の疑いがある!!
頭髪の脱毛や、歯ぐきからの大量出血、血便、急性白血病による大量の吐血、皮や肉、骨や血液、臓器などのDNA遺伝子の細胞が壊されていくのかも知れない!!
それは彼女にとって、容姿が凄惨なまでに壊れていく悪夢だ!!
『急性放射線障害』の疑いがある!!!
彼女は、爆心地周辺にいたかもしれない!!!
一時被害者は、爆発の被害で消し飛んだか、大やけどや大怪我を負って、皮が焼けただれて服と溶着していたのかもしれない!!
喉の渇きを耐え切れず、黒い雨を口にしたのかもしれない!!!
それは放射能汚染だ!!!
でも、今ならまだ間に合う!!!
ファミリアの手を借りれば!!!
すぐに大病院を手配をするんだ!!!
今なら特効薬を服用すれば、被害は最小限に抑えられる!!!」
「ッ」
ヒースさんの的確な診断で、病状を言い当てて、これからクリスティの身に訪れようとしていた最悪を遠ざけようとしていた。
まさか、被爆だなんて。
これを知ったシャルロットさんは。
「まさか、おっぱい(これ)がそんな事になるなんて……」
もみゅみゅん
シャルロットさんは、クリスティさんの脇の下から両手を通して、抱きしめている姿勢だった。
その細腕に潰されて、いかにも柔らかそうなスライム乳が変形していた。
これを見たヒースさんは、「ゴクリ……」と喉を鳴らしたのだった。
「サイズは、カップは、いくつあるんだろう?」
「え?」
「え?」
「へ?」
「え?」
「なんかもんっっっスゴイもったいない……ッッ!!!」
それは男の性だった。
これには、L、シャルロットさん、デネボラさん、もう1人の兵士さんと、何とも言えない顔になった。
「「「「「………………」」」」」
何とも言えない沈黙の間が流れる。
「ヒース……」
「……すまん」
「いくらなんでも、もう男の人がツバつけてるわよ」
「……わかってるって」
「……」
「……」
「運ぶわよ」
「ああ」
そうしてシャルロットさんとヒースさんの2人で、クリスティさんを持ち上げて、安全なところへ運ぶのだった。


☆彡
【アース・ポート】
アンドロメダ王女の宇宙船に乗車している兵士の人達は、機械操作をしながら、当船を飛ばしていた。
天候は大荒れ。
空一面には黒雲があり、ゴロゴロと雷雲が鳴り響き、ビュオオオオオと猛吹雪が吹き荒れていた。
向かう先は、天に衝き立つ宇宙エレベーターがそびえるアース・ポートだった。
――そのアースポートにいたのは、主に3人。
手を挙げてこちらの存在を報せるように、アユミちゃんとクコンちゃんの姿が、
もう見てて可哀そうになってくる。
もうホントに寒そうで、ガタガタと震えていた。
無理もない、レグルス隊長の手で防寒着を失い、2人とも抱き着くような体勢で、鼻水を流していた。
そして、親書を持ったシンギン副隊長の姿があったのだった。
その後ろには、3つの磔台があり、相中にあったものは爆破された跡が見受けられた。焼け焦げた跡、壊された跡がある。
宇宙船はその3人の頭上に回り、下部から光線を出す。
光の柱だ。
「わっ!」
「すごっ!?」
「フッ……」
アユミちゃん、クコン、シンギン副隊長と述べる。
顔を上げるアユミちゃんとクコン、シンギン副隊長は、高度が挙がっていく過程で見える、ここからの景色を見下ろしたのだった。
この光の柱の周りは、猛吹雪が吹き荒んでいて、極寒の世界だった。
「見てよこれ! この光の中まで雪が入ってこない!!」
「助かった~! ホントに死ぬくらい寒かったんだ~ぁ!」
「アハハ、あたしもよ! 後10分ぐらいしたら、凍傷してたわ!!」
「アハハ、言えてる~ぅ」
「ハァ……」
俺の姿が見えない中、好き放題言ってくれる地球人の子守を押し付けられていた身にもなってくれ。
もう一度。
「ハァ……。せっかくエナジーアで火炎を起こしていたのに、ドン引きするんだもんなぁ……マジであの時は傷ついたぜッ……。
ハァ……。
どうせ見えないし、聞こえないんだろうけど……も。……なんか哀しい……」
なんだか自分で言ってて、可哀そうになってくる。シンギン副隊長さんがいたのだった。
その手に握られていたのは、スバルから預かった親書だった。
とゆっくりその3人を引き上げて、宇宙船に乗車させていくのだった――


☆彡
アンドロメダ王女の宇宙船に乗船した3人は、一路、アンドロメダ王女のおわす指令室に足を伸ばしていた。
だが、その衛兵が再び待ったをかける。
その衛兵たちは、地球人の身では見える存在で、翻訳機を使っていた。
「「待て!!」」
いかつい顔つきで、見下してくる衛兵2人。
「「……」」
これには尻込みしちゃう2人。
「この先にいるのは我が国の王女!」
「今のそなた等の格好では会わせられない。分不相応だ!」
「あっ……」
「もしかして……服なんじゃ!?」
アユミちゃん、クコンちゃんと、今自分達の姿をよく見て、汚れていることを知る。
中にはレグルスの命を奪う炎で、焼けた跡もあり、服の替えが急務だった。
「衣装室はあちらにある」
「だがその前に……」
「……」
「……」
ゴクリ
と喉を鳴らす2人。
ちょっと鼻をつまんで、臭そうにする衛兵さん。
「ちょっと焦げ臭いぞ」
それは嫌そうに、手で振ってその臭いを遠ざけようとするのだった。
これには短気で勝気な2人とも「あっ!?」と挑発する。可愛い顔して、それはやめてくれ。
これには、見えも聞こえもしないが、シンギン副隊長が「まぁまぁ」と呼び止めるのだった。それはとても困った顔で……。
(クソ~~なんで俺がこんな役を――っ!?)
もう涙目のシンギン副隊長。こんな役になるだなんて知らなかった……ッ。
「当船にはシャワールームも完備している。今の時間帯なら誰も使ってないから、先に浴びてくるといい」
「服とかを着替えた後、準備ができ次第、我等の王女に謁見を許そう」
「あっそ!」
「じゃね!」
そうしてアユミちゃんとクコンちゃんの2人は、プンプン怒りながら、この場を歩き去っていくのだった。
これには衛兵さん2人とも。
「「ハァ……」」
と溜息をつかんばかりだ。
「あの子も大変だな……」
「な」
同情を買ってしまう、この場にいない少年君。
で。
「ホントムカつく!」
「美少女を捕まえて、こんなに可愛いのになんだと思ってるのよ!」
「そーだそーだ!」
「ねえ!」
「ねえ!」
そんな感じのやり取りをしながら、アユミちゃんとクコンちゃんの2人は、この場を後にしたのだった。
と、この現場に取り残されたシンギン副隊長は。
「アンドロメダ王女にお目通りを」
スッと目線の高さまで持ち上げるは、スバル君から預かった親書だった。
「言伝は伝わってるはずだ!」
「もちろんだ! 許可する」
「入室を許そう」
これには衛兵2人も退き、「「入れ」」と告げ、その道を譲られたシンギン副隊長が、入室を許されたのだった。
これで、王女の元にチアキからの『親書』が無事、渡る――


☆彡
【治療室 セラピアマシーン周辺】
スバルは回復液に浸かっていた。
呼吸器などを何もつけていない状態で、その口から泡を吐いていた。
――そして、クリスティさんの目覚めの時。
「クリスティさん! クリスティさん! 起きてください!」
「……」
彼女に呼びかけながら、その肩を揺らすシャルロットさん。
「……」
彼女に目覚めの気配はない。
これにはシャルロットさんも。
「う~ん……」
と考えて。
「そうだわ!」
とある事を思いつく。
そのクリスティさんの頭の上に、掌を置いて、光が発せられる。
「フムフム……なるほどなるほど……」
とこれを見ていたヒースさんは。
「シャルロット!」
「んっ? なーに?」
「お前、何やってるの?」
「ああ、見てわからない?」
「……」
「こうやって、彼女の夢の中に侵入して、悪夢を見せているのよ」
アクアリウス星人には、人の夢の中に侵入し、悪夢を見せる能力を持った人種もいる。
相当、質が悪い能力だった……。
「う~ん……う~ん……」
なんだか段々と嫌そうな面持ちをしてくるクリスティさん、
「ハァッ、ハァッ」
それは夢の中でうなされていた。
「う~ん……あぁ……あぁ……」
苦しみの声を上げるクリスティさん。いったい夢の中で何をッ。
「さてと、クスクス」
さえずりが止まらない、悪戯心を持つシャルロットさん。
これを見ていたヒースさんは「ハァ……」と溜息を零す。
「枝切りバサミでジョギン!!」
「キャアアアアア!!!」
それは悪い子供の悪戯のようで、クリスティさんの耳元でトドメの暗示をかけた。
悪夢から覚めるように悲鳴を上げて、彼女は目を覚ましたのだった。目は大きく見開き、鼻の穴が見えて、大きく開いた口からベロと喉チンコが見えるほどの、狂気そのものだった。
ギャアアアアア
とスローモーション映像で、3回ほど映って、なんとも可哀そうだ……。
「……あ、あれ?」
「クスッ、目が覚めましたか?」
「え、ええ」
「何の夢を見てたんですか?」
「え?」
「と、そろそろシャワールームに行きませんか?」
「え?」
自分の鼻をつまむシャルロットさん。
「ちょっと服から腐臭がしますよ。それにガス臭いですよあなた、ホントに医者なんですか? 衛生管理はどうしたんですか? どうしてそんなところにいたんですかあなた?」
「……」
こうしてクリスティも、シャルロットさんに誘導されるまま、アユミちゃんたちと同じシャワールームに送られるのだった。
道案内を買って出たのは、デネボラさん。
この場に兵士さん1人だけを残し、後にする。
廊下を歩いていくのは、デネボラさん、L、ヒースさん、シャルロットさん、クリスティさんの5人だった。
と。
「そうだL!」
「?」
「これから女子が入るから、あなたは覗いちゃダメよ」
と一応釘だけは差していくデネボラさん。
これにはLも。
「う~ん……」
と考えて。
「わかったよ! それじゃあ今会った事を、姫姉にも告げていくね」
「ええ、連絡お願いね」
「じゃ!」
シュンッとLはその場から消えたのだった。
デネボラさんには、道案内という仕事があるため、このまま面子と動くのだった。


☆彡
【指令室】
テーブルの上に置かれていたのは、封を切った後の『親書』だった。
だが、地球の言葉で書かれていたため、この場にいるものの中で解読できる人は、誰1人としていなかった……。
まぁそんなもんだ。
この場にいるのは、親書を持ってきたシンギン副隊長に。
連絡しにきた、兵士1名とLの姿があった。
「――なるほど、事情はあい分かった」
胸を撫でおろす兵士さん。
それに引き換え、Lはなんだか、思うところがあった。
「どうしたL?」
「いやね……ホントにそんな事を考えていただなんて……、にわかには信じられなくて」
「だが、思い当たる節があるじゃろ?」
「まぁ確かに……」
「……レグルスの言葉を鵜吞みにすると、無人航空機メイビーコロを通して、アンドロメダ星に情報を流出していたはずじゃ! おそらくハッキングの手口じゃろうな!」
「やっぱり……」
「という事は、仲間がおるな……! フムゥ……」
と考えるアンドロメダ王女様。
その言葉を聞き、機械操作を行う兵士さん達が調べ上げていく。
そして――
「――動画ファイルを発見しました! これはライブ映像データで、既に送られていた後の形跡があります!!」
「やはりか……」
(先手を打たれていたかあやつに……)
「……これは横の繋がりがあるな、レグルスめ!」
「……」
「……」
「……」
このアンドロメダ王女の御言葉を聞いていたのは、シンギン副隊長、兵士、そしてLだった。
「こちらからハッキングして、動画ファイルを再生します!」
「うむ!」
【――モニター画面に映るのは、磔にされたアユミちゃんとクコンちゃんの姿……】
【そして、遅れて登場してくるスバルたちの姿だった】
【これは最初から最後まで、レグルスの思い描いていた思想であり】
【まさかの事態が起こり、少年の方に関心の声が傾いていくのだった】
【奇しくもそれは、レグルス隊長が思い描いていた思想以上だった――】
一同は、その動画を認める。


☆彡
【シャワールーム】
美少女2人は揃って、シャワーを浴びていた。隣には浴槽もあり、誰でも入ることは自由だ。
「にしてもあいつムカつくねッ!!」
それはクコンちゃんの怒りだ。
「うんホントにね!!」
アユミちゃんもお怒りだった。
「あんな寒いところに放り出されて、その上、放置プレイだなんて、あいつ、あり得ないわ!!」
「ホントホント!!」
「スバル君もスバル君よ!! まず、助けてから行けって!! ねーっ!!」
「うんっ!! 激しく同感だわ!!」
「合体できるなら、その防寒着置いてから行けって!!」
「う~ん……それはどうかと……」
そこだけはかとなくアユミちゃんも、同感し兼ねる。
――とそこへ。
「――あら? 先客がいるわね」
「2人とも上がってたんだ!」
「「え!?」」
それは美女2人のご登場だった。クリスティさんとシャルロットさんである。
もちろん、4人ともバスタオル姿でのご対面だ。
左手側には少女2人、右手側には大人2人の構図だ。
とそのシャワールームの近くには、番人としてデネボラさんとヒースさんが突っ立っていた。
「……」
「……」
流れる沈黙が重い。
青年はただ待つだけなので、腕組をしながら、指先で二の腕を突いていたのだった。ツンッツンッツンッと。
とデネボラさんが。
「ヒースさん」
「はい……」
「気になっていたんですが、1つ、よろしいでしょうか?」
「……どうぞ」
「ヒースさんも、やはり男だったんですね」
「……」
「……」
「……クッ……」
苦虫を嚙み潰したよう面持ちで、首を斜めに折るヒースさん。バレてたか。
「クスクス」
「……」
「大丈夫ですよ。ヒースさんぐらいの年代の人なら、それは健常ですから。クスクス」
「~~」
これには僕も頭を悩ませる。
「あの人が、反則なんですよ……ッ」
「あぁ、かわ美しですし、なんといっても超乳でしたからね! 何を大食いすればあそこまで育つんだか……」
「やはり、大食らいなんですか?」
「ええ、胸の脂肪に栄養がいっている以上、普通の人よりも食事の量は多いぐらいでしょうね」
「なんかイメージが……」
僕の頭の中に浮かぶのは、大食らいの彼女の姿だった。
「それが摂理です! ……あっ!」
「?」
「忘れてました」
「?」
とシャルロットさんは、ヒースさんの隣を横切り、そのままシャワールームに入っていった。
「………………
………………
………………?」
流れる沈黙。
その奥からデネボラさんが出てきて。
僕が見たものは。
「なっ!?」
ふよふよ浮いている、彼女がさっきまで着ていた着衣だった。それはサイコキネシス(プシキキニシス)で浮かせていた。
これには僕も。
「何をッ!?」
「廃棄処分するんですよ!」
「? ……あっ!」
「放射能汚染が考えられる以上、彼女の着衣もまた危ないです!! こうして手を触れないで浮かせていれば、二次被害も起り得ません」
「……な、なるほど……。ですが、今彼女は……」
「ええっ生まれたままの姿ですよ」
「で、ですよねぇ――……」
そこだけはかとなく、どうかと思う。
「ご安心ください。後でバスローブを持ってきます。彼女なら見事に着こなせますよ!」
「……それ、出るところが出てて、少年にはマズいんじゃ……」
「スバル君ですか? 今日は少なくとも起きませんよ。だから見る事もない。……見たいんですか? 彼女の生裸」
「み、見ませんよ!!!」
顔真っ赤にして反論するヒースさん。
「クスクス。アクアリウス星人の力を使えば、『透視』ぐらいできますからねぇ。あたし、知ってますよ~」
新事実発覚、アクアリウス星人は透視もできる。
今までに、明らかになってる能力は、
人の心を読む力。
テレパシー(チレパーティア)。
人の夢の中に侵入し悪夢を見せる力。
そして、透視の4つ力だ。
シャルロットさんの能力も、大概悪質だが……。
女性の湯あみを覗けるヒースさんの能力も、大概悪質である。むしろ性犯罪の域だ。
とこれにはヒースさん、弁明を図る。
「殺されますよシャルロットに……後で多くの女性達に……。それは宇宙的に、多くのプロトニア達から殺されますって……」
「ですよねぇ~! わかってましたよ最初から! クスクス」
「……」
意気地が悪い人だ。
この人は敵に回しちゃいけない類だった……。
「では、この場は見張りを任せましたよ」
「……」
とデネボラ(彼女)は、この場を僕1人に任せて、ふよふよ、とクリスティさんの着衣を念力で浮かせながら、この後をにしたのだった。
後で彼女が持ってくるのはバスローブだ。
だが。
(……この場に、男1人に任せていいのか……?)
僕はそんな事を思いつつ。
「……」
ちょっとだけ性欲が疼き。
「……」
シャワールームに視線を向けると。
――ピクン
と感応したシャルロットさんが。
「ヒース~~!!!」
と奥から彼女の怒声が聞こえてきた。
「!」
やっぱり即バレた。
「はっはい!!! 済みませんでした!! もうしません!!!」
「あったり前でしょうがぁああああああ!!!」
鬼のような形相で起こる彼女。
これには周りにいた、アユミちゃん、クコンちゃん、クリスティさんも。
「何々どうしたの?」
「ちょっとヒースさんが何かしたの?」
「まさか、覗き?」
と言いあう彼女達。
で、ヒースさんは。
(彼女がいる限り、覗きなんて無理だ――ッ!!)
と心の中で愚痴を零すのだった……。
――とこの場に戻ってきたデネボラさんが。
「……」
その、ふよふよしていたのはサイコキネシス(プシキキニシス)で浮かせたバスローブであった。
「……」
目線を細めるデネボラさん。冷ややかな視線を注ぐ。
これにはヒースさんも。
「……」
目だけで軽い返事を返すのだった。
「「……」」
【――思いが錯綜する両者】
【ヒースさんはいかにして、この誤解と偏見と侮辱を解くのだろうか?】
【答えは、未遂である――】


☆彡
【アンドロメダ星】
【アンドロメダ星の街頭TV】
道行く人々は足を止めて、そのハッキングされた映像データに目を向けていたのだった。
地球の言葉が流れていた。
アンドロメダ星人には、その言語の意味が伝わらない。
それは、エルスVSレグドとの激しい戦いの後の話。
不運な事故でエルスのエナジーア変換が解け、地球の熱圏に突入していくスバルとLの姿。
「……」
口元を塞ぐ女の人がいた。
次に流れたのは、ある商業施設の天井を突き破って、落ちた後の話。
スバルは同じ地球人なのに、その地球人からも罵声を上げられた上に、瓦礫片を投げられて傷ついていく姿だった。
なんとも痛々しい。
「……ッ」
ショックを受ける男の人。
そして、ドケザのシーンは、みんなの心を引き付けたのだった。
「「「「「………………」」」」」
ほとんどの人達は、その足を止めて、その映像をただただ注視する。
【――それは何を言っているのかわからない言葉だった】
【言語も何もわからない、感情も伝わりにくい。だが、こう心に残るものだけは、この日、伝わったのだった……】
【――そして、それを見ていたのは】
【アンドロメダ星人だけではなく、最後のアローペクスの少女クコンも】
「……」
【その目の光は、奴隷としての最低の身分が続きながらも、心のどこかで、きっと自分を助けに来てくれる、星の王子様を待っている少女の瞳の姿だった――】
(……ママ……。……あたしはどうしたら……ッッ)
【――いつの日か、少女はスバルと巡り合う】
【その時、去来するのは、一体何なのだろうか――……】


TO BE CONTINUD……

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