134章 図太い神経
「みんな、好きなだけ食べていいよ」
ミサキの声に対して、アオイ、ツカサは喜びを爆発させる。
「焼き肉、焼き肉、焼き肉を食べるぞ」
「アオイちゃん、肉を100枚くらい食べようね」
他人の体調に気を配らないだけでなく、お金を大量に食べようとする。アオイ、ツカサの神経の図太さは、超一流といえる。図太さを要求される仕事なら、超一流になれるポテンシャルを秘めている。
シノブはおしながきを手に取った。
「ミサキさん、マイさん、ユタカさん、何を食べますか?」
ご飯を15杯も食べたので、おなかはそれなり満たされている。食べる量を控えめにしようかなと思った。
「豚肉、鶏肉、牛肉、タン、とうもろこし、玉ねぎ、もやし、ピーマンにしようかな」
ご飯を食べていなければ、豚肉、鶏肉、牛肉、タンを10人前は食べられた。肉、肉、肉、肉づくしのメニューになっていた。
ユタカは注文の多さにびっくりする。
「ミサキさんはすごい食欲だね」
「そうかな」
「あれだけの量を食べたら、食べ物を見ることすらできないよ」
ユタカの指摘は図星である。通常の胃袋であったなら、焼き肉の材料を見ようとすらしなかった。
「マイちゃんは何を食べる?」
「お好み焼き、ウインナー、キムチにしようかな」
焼き肉店であるにもかかわらず、お好み焼きを販売する。焼き肉店でお好み焼きは、売れるのだろうか。
「ユタカちゃんは、何を食べる?」
「お好み焼き、豚肉、しいたけ、とうもろこしにする」
ユタカも多くは注文しないようだ。
シノブはメニューを一瞥したあと、注文するものを決定した。
「お好み焼き、鶏肉、牛肉、鶏肉、とうもろこしにする」
シノブは肉中心の注文をする。見た目は細いものの、肉を好むのかなと思った。
ユタカは店員を呼ぼうとする前に、アオイの席のベルが鳴らされた。あちらの席は、先に注文するものを決めたようだ。
女性店員が近づくと、アオイは耳を疑うレベルの注文をした。
「ステーキ、霜降り肉、アワビ、ホタテ、鶏肉、豚肉をください」
ツカサも同じだった。どんよりとしていたとは思えないほど、食欲旺盛なところを見せている。
「ステーキ、アワビ、ホタテ、最高級お肉セットをください」
他人のおごりなら、どんな高いものでも食べられる。耳にすることはよくあるけど、実際にする人がいるとは思わなかった。どんなに親しい間柄であっても、最低限の礼儀をわきまえるよう
にする。
焼き肉店の予算は、ミサキ持ちとなっている。今回のために持ってきたお金は、90パーセント以上は吸い取られる。財布はトホホなことになりそうだ。