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二度目

「お話があります」

「はい?」

(なんか昨日と同じ雰囲気のような気が……)

「わたくし、ひまちゃんさんと仲良くしすぎないでくださいって言いましたよね?」

「は、はい……」

「ひまちゃんさんが彩花さんのことを好きになったらどうするんですか?」

「え? いやひまちゃんはただの友達だし、そんなことはないと思いますけど……」

「そんなの、わからないじゃないですか」

(いや、本当にないと思いますけど……)

陽菜さんは少し不機嫌そうだった。

「陽菜さん、なんか怒ってます……?」

「……少し」

(やっぱり!?)

「り、理由をお聞きしても……?」

「はあ…… わかりませんか?」

「は、はい、すいません……」

「…………嫉妬です」

「え?」

「だから、嫉妬です!」

(え、し、嫉妬? わたしに?)

「ひまちゃんさんと仲良くしてるのが気に入らないんです!」

「え、でもひまちゃんはただの友達ですよ?」

「そうは見えないから言ってるんです!」

(え? そうは見えない?)

わたしがきょとんとしていると、陽菜さんが続けて話し始めた。

「ひまちゃんさんは彩花さんのことすごく好きだと思うんです。ひまちゃんさんを見てたらすごくわかりやすいですし……」

(そうなの? それはそれでうれしいけど)

「今はまだ友達の好きかもしれませんけど、それがいつ恋愛の好きになるかわからないじゃないですか!」

(いや、そんなことありえないと思うけど…… でも陽菜さん…… わたしのせいで、不安だったんだ。陽菜さんはわたしのこと好きだって言ってくれてるのにわたしはそれを無視して…… そもそもわたしが陽菜さんの結婚にOKしちゃったのが始まりだもんな……)

「陽菜さん…… ひまちゃんは本当にただの友達だから大丈夫だと思いますよ」

わたしは陽菜さんをなだめるように、優しく言う。

「…………」

陽菜さんは黙ったままだった。

「陽菜さん…… どうしたら許してくれますか?」

「……じゃあ彩花さんからキスしてください」

(え!?)

「本気ですか!?」

「はい」

(わたしから!? キスさえもこの前が初めてだったのに!? わたしからするなんて、恥ずかしい…… でも今回はわたしが悪いし……)

「わ、わかりました……」

わたしは心を決める。

「じゃあ…… いきますよ?」

そう言って、わたしは陽菜さんの肩に手をかける。

「はい」と言って、陽菜さんが目を閉じる。

顔が熱い。

心臓も、びっくりするほどバクバクと波打っていた。

それでも、わたしは心を決めてゆっくりと顔を近づけ、陽菜さんの唇に触れる。

「ちゅ……」

(は、恥ずかしい~!!! ん? あれ?)

わたしがキスをすると陽菜さんが急にわたしの後頭部に手をまわしてきた。

(え、なに!?)

すると、温かくて柔らかなものがわたしの中に入ってくる。

「ん… くちゅ……」

そんな音が部屋に響く。

頭がくらくらしてきた。

(し、し、舌入ってる!?)

しばらく混乱していると、陽菜さんの顔がわたしから離れ、透明の糸がプツンッと切れる。

「ひ、ひ、陽菜さん!?」

(これがいわゆる大人のキスってやつ!? わたし、大人の階段上っちゃったの!?)

「今回はこれくらいで許してあげます」

「あ、ありがとうございます!?」

「次からは気を付けてくださいね?」

「あ、はい……」

わたしはキスの余韻がまだ残っていた。

(陽菜さん…… 恐ろしいな……)


(陽菜さんのこと、もうちょっと真剣に考えよう)

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