バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

ばったり

ーー放課後


わたしは全ての授業が終わり、ひまちゃんと門まで歩いていた。


陽菜さんは門の前で待っているようだ。


「今日も授業疲れたねー」


「そうだねー あっ、陽菜さんいた!」


わたしは陽菜さんに手を振り、こっちとっちと合図をした。


「彩花さん! ……と、ひまちゃんさん……」


陽菜さんの笑顔は曇り、少し暗い顔になっていた。


「あ、どうも! 陽菜ちゃんだったよね?」


ひまちゃんが陽菜さんに話しかけた。


「はい」


「彩花さん…… あなたって人は……」


(え、なになに? あ、そういえば、なんかひまちゃんとはあんまり仲良くするなとか言ってた気が……)


「えっと、彩花ちゃんのお友達だよね?」


「……違います」


「え?」


「わたくしは彩花さんの婚約者です」


「……え? な、なに、婚約者?? え、彩花ちゃん?」


「な、なに言ってるの、陽菜さん!?」


「事実ですから」


「そ、そりゃ事実と言われれば事実だけど……」


(ひまちゃんの前で言わなくてもいいじゃん!)


「さ、彩花ちゃん……? どういうこと?」


「え、えっと、いろいろあってね、まあ…… そういうことになってるの…… でもまだ仮だから、仮! 結婚してないから!」


「え、じゃあ彩花ちゃんと陽菜ちゃんはこれから結婚するの?」


「はい」


(いやいやいや、しないから!)


「ど、どうだろうね~ あはは」


わたしは必死に笑ってごまかそうとした。


「あ、いっけなーい。もうこんな時間! 早く帰らないと! ね! 陽菜さん! じゃあひまちゃん、また明日ね! ばいばーい!」


「あ、彩花ちゃん……! また明日……」


そう言うとわたしは陽菜さんをつれて、足早にその場を去った。


___


「ちょっと、陽菜さん、なんであんなこと言ったの!?」


と問い詰めたかったが、なんだか陽菜さんの機嫌があまりよくなさそうだったので、ぐっとこらえて、言うのをやめた。


(なんか気まずい……)


わたしたちはほとんど話さずに、陽菜さんの家まで歩いて行った。


___


「おじゃましまーす」


わたしたちは陽菜さんの家に到着した。


「うわっ、すごい広い!」


陽菜さんの部屋はわたしの部屋の二倍くらいあった。


「じゃあここのソファに座っててください。わたくしは紅茶いれてきますから。あ、紅茶飲めますか?」


「あ、はい! ありがとうございます!」


そう言うと陽菜さんは部屋を出て、台所へと向かった。


(それにしても、すごい大きいソファだな、これ)


「あ、めっちゃふわふわ~ 気持ちいい~」


(これに比べたらうちの座椅子は石だな、石)


少しのんびりしていると陽菜さんが紅茶を持ってきた。


「どうぞ」


「ありがとうございます! いただきます!」


(……!! お、美味しい!! なにこれすっごい美味しい!!)


「彩花さん」


「はい?」


「お話があります」

しおり