122章 思わぬ方向に話が進む
ミサキの家に、シノブ、マイが遊びにやってきた。プライベートで顔を合わせたのは、社員旅行のときまで遡る。
「シノブちゃん、マイちゃん、いらっしゃい」
シノブ、マイは、靴を脱いだあと、きっちりと向きをそろえていた。客商売をやっているとあって、最低限の礼儀をわきまえている。お客様と接するためには、細かい気配り、心配りを必要とされる。
シノブは家に入ったあと、内装に目を光らせていた。
「ミサキちゃんの家は、豪邸だったんだね」
マイは大きく頷く。
「本当にすごいよ。ここでお店をやったほうがいいくらい」
シノブは親指を立てる。完全に乗り気なのが、はっきりと伝わってきた。
「マイちゃん、ナイスアイデアだね!」
「これだけの収容スペースがあれば、500人規模でお店を営業できる」
「客の数を増やせれば、店の売り上げアップにつなげられるね」
「売り上げを増やしたら、従業員の待遇もアップにつながるよ」
「そうだね。給料をアップできるね」
「シノブちゃん、ここでやりたい」
「私もそれがいい・・・・・・」
本人そっちのけで話に熱中する2人に、ミサキはストップをかける。
「シノブちゃん、マイちゃん。話を勝手に進めないで。私の家は住むところであって、お店を営業するところではないよ」
シノブはNGを出されたことで、しんみりとした表情になった。
「とってもいい案だと思ったのですが・・・・・・」
「他人の家で商売するのは、とんでもない話だよ。私としては、絶対に受け入れられない」
マイは別の角度から話をする
「店は無理だとしても、イベントをするのはどう? たくさんの人を集められると思う」
「家を一度でも開放したら、遊び場になってしまうよ。マイちゃんの案は却下」
「CMデビューを祝うために、従業員のみんなで集まるのはどう」
「CMデビューの祝賀会は、店でやりたい」
「ミサキちゃんの家の見学会はどう?」
「それもNGだよ」
こんな話になるなら、家に呼ばなければよかった。ミサキは二人を招待してしまったことを、大いに悔やんだ。