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92章 散歩?ジョギング?サイン会?

 ミサキはテレビを見ていると、アヤメは家に戻ってきた。1~2時間にわたる、散歩は終了したようだ。

「ミサキちゃん、ただいま」

 一人暮らしをしているので、「ただいま」には、不思議な感覚があった。「お邪魔します」、
「失礼します」に変えるとしっくりとくる。

「アヤメちゃん、おかえりなさい」

「おかえりなさい」というのも、違和感ありあり。こちらについても、しっくりとくることはなかった。 

 アヤメの服を見ると、散歩だったとは思えないほど、大量の汗をかいている。歩いていたのではなく、ジョギングをしていたのかなと思った。

「初めての場所を散歩するのは、とってもいいね」

 同じ場所を散歩すると、マンネリ化しやすい。異なる場所を散歩することによって、気分上昇につなげられる。

「アヤメちゃん、サインを求められたりはしなかったの?」

「100人くらいの男女から、サインを求められた。ファンの一人一人に対して、きっちりとサインしたよ」

 1~2時間の散歩で、100人くらいにサインをする。散歩をするためではなく、サインをするために外出したように感じられた。

 アヤメは自分の服を触った。

「汗をかいたからか、体がべとべとしている。ミサキちゃん、シャワーを借りてもいい?」

「アヤメちゃん、使っていいよ」 

 ミサキの家のシャワーは、塩素を除去するタイプ。髪、肌を守ることができるので、女性の必
須アイテムになりうる。

「ミサキちゃん、ありがとう」

 アヤメは軽く背伸びをしたあと、浴室に向かっていった。 

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