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第2章の第28話 勝者エルス


――アンドロメダの宇宙船にて。
そのモニターには睨み合うエルスとレグドが映し出されていた。
その当人のエルスは、エナジーアの気炎とぼんやり光る魔力光を帯び同居させていた。
気になるのは、その戦闘力だ。
ヒースが「1700か……意外に低いな……」と呟きを落としたことを皮切りに。
それに答えてきたのは、デネボラだ。
「当然の仕組みなんですよ。アクアリウス星の皆さんもご存じの事かと思いますけど。
もう一度おさらいすると、戦闘力とはエネルギーの高さまでしか測れません!
……魔力などのエネルギーは、エネルギーと+@。その双方に介在する為、戦闘力数値となって現れます!
エナジーア生命体の戦闘力を測るなら、エナジーアの指標に合わせないと無理なので、そうすると誤差の範疇が大きくなるのです。
その為、戦闘力という基準は、エネルギーという指標に合わせています」
これにはヒースさんも頷く。
デネボラが言うには、戦闘力とは、あくまでエネルギーの高さを測る物差しというわけだ。
エナジーア生命体の力量を図るには、不十分だった。
「う~ん……それなら、デネボラさんから見て、2人のエナジーアはどれぐらいなんですか?」
「う~ん……2人とも防御よりか攻撃よりかでポテンシャルが違うから一概には言い表せませんが……。
基本の戦闘力は、エルスが1万。 レグドが1万8000ぐらい。
さらにエナジーアを込めたときの力が、エルス1万5000。レグドが2万2000ぐらい。
ただしエナジーア放出系のパワー値は、エルスが10なのに対しレグドが8ぐらいしか出てませんね。
これは、連射射撃とパワーによって引き分けてますが、あのまま続ければ、エルスに軍配が上がります。
これは贔屓してません!」
そこだけは強調した。
「もっともレグドも、炎上爪という応用業を利かせてくるため、その点をカバーしています。練度を積めば、今度はレグドに軍配が上がるでしょう」
そう、元々レグドはエナジーア弾よりも炎上爪の方が得意なぐらいだ。ここは忘れてはいけない。
「この事から、肉弾戦ではレグドが勝り、放出系のエナジーアに関してはエルスが勝ります。
また、応用業や数々の発展型の技を見る限りレグドが勝ります。
でも何をしてくるのかわからないエルスには、いまだ未知数の部分が多い……。
次に最高の技を放った時の両者の戦闘力は、約3万前後。
これは、エルスの『九重(エンネアソロス)エナジーア波』とレグドの『炎上爪光熱波』の戦闘力を比較しています。
両者の必殺技のぶつかり合いは、組み合ってはいたけれど、怪我の状態も考慮して、最終的にはエルスが競り勝ったことで、約3万3000ってところですね!
でも、ここで忘れてはならないのが、あのエルスがブチ切れた時の戦闘力! あれは軽く5万はいったでしょう!
仮に、あの状態で必殺技を地表に打てば、地球ぐらいの大きさの惑星であれば、内核を破壊して、木っ端微塵だったと思いますよ!」
「……」
「どうでしょうか!?」
これには言葉を失うシャルロットさん。例えがマニアック過ぎる。軽く引くわ。
「……え、えらく戦闘力のブレが大きいんですね……」
これにはデネボラも頷くばかりだ。
「まさに戦闘兵器だな。その戦闘力で初動から光速戦闘ができるなら……他に比肩する敵がいない。」
「……」
ヒースの説明を聞いて、これには頷くシャルロット。間違っても戦ってはならない種族だった。
とその時。
PPP……PPP……と。
宇宙船に乗員している兵士が、その旨を告げる。
「シンギン副隊長からです」
それを聞いたアンドロメダ王女は。
「ようやく目を覚ましたか。あの場に置いてきたが……何の用だ?」
「はい、今取り次いだところ、例のスバルさんから予め、封書を預かってたらしいです」
「……封書……じゃっと?」
何のことだ。
これには怪訝そうにデネボラ、ヒース、シャルロットもその兵士さんを見た。
「何でもシンギン副隊長が言うには、スバルさんの知り合いの方に予知能力的な力を持つ少女がいて、その少女がアンドロメダ王女様宛に、親書を渡して欲しいとの事なんです」
「ほう、わらわに」
「今、その封書はあちらの宇宙船、シンギン副隊長が預かっています。
これは予言みたいものですが。
失礼を承知で申しますと……この戦いに勝つことはできるが、レグルスとの戦いで受けた傷が致命傷で、再び眠りにつくらしいのです」
「眠りに……?」
「はい。スバル君が寝ている間に、地球人の難民を拾う事になるそうなんですが、その案件のお願いで、その親書を見て欲しいとの事らしいです。
ですが、地球の言葉であるため、アユミちゃん、クコンちゃん、あとは地球人の誰か1人が乗船して、それがわかるらしいとの事です」
「ふむ、目に留めておこう。そう、シンギン副隊長に連絡を回せ」
「はい、畏まりました」
わらわはその兵士から視線をそらし、そのモニターに映る戦いを見た。
「ふざけた地球人もいたものだ」
わらわの認識はその程度であった。どちらにしてもふざけた少女だった。


☆彡
――静止軌道ステーションにて。
エルスとレグドの激しい攻防戦が続いていた。
宙で、ババッ、ババッ、ババババッと現れは消え、現れては消えを繰り返し、拳打と蹴りを織り交ぜながら3か所で衝撃波を発生させて、ドンッと痛烈な衝撃波を起こした。
2人の戦いは、ガラス張りのエスカレーターの上部から下部にかけて、斜め下移動を織り交ぜながら、幾度も拳打と蹴りの衝撃波を発生させて、
レッドカーペットの床に差し掛かった瞬間、ドドンッと衝撃波を通じて、一直線に駆ける。
両者、並列移動で高速戦闘を仕掛け、その目は相手を捉えていた。
そのスピードで向かう先には、いかにも高額な大壺があった。
上部の色は卵色で弦や花をあしらわれて、下部には網の目はあり、大きな円の中に色が違う二匹のコイが描かれていた。
出土は中国の清朝の時代に作られた大壺で、競りの落札価格は4300万ポンド(約57億円相当)だ。が、名はない――
その時、相中にあった貴重で大きい骨董品に最接近したところで。
ズキッとレグドのその腕に痛みが走った。
「グッ!」
「「どうした!?」」
この時、一瞬だけ攻勢が止まり、貴重で大きい骨董品を通り過ぎた。
エルス(僕)はここぞとばかりに急襲を仕掛ける。
先にエナジーア波を撃ち、レグドの出方を伺いつつ、最接戦を試みる。
ザクッザクッされた右腕が痛む、俺はしかめっ面を作り。
致し方なくもう片方の義手(右手)を燃え上がらせて、そのエナジーア波を弾き飛ばした。
その挙動が一瞬の間合いになり、エルスが仕掛けてくる。
おれはそうはさせじと、痛む左手で無理にでも、エナジーア弾で威嚇射撃した。
だが、それすらも遅く、エルスの反射神経が上回ってしまう。
エルス(僕)はその場で飛び、両足跳び蹴り(ドロップキック)が炸裂し、俺は大きく吹っ飛んだ。
「ガハッ!」
エルス(僕)は、追い打ちをかけるならここしかないと思った。
その場から勢いよく駆け出し、エナジーア波より威力が劣るが速射性がいい、エナジーア弾を撃つ、撃つ、撃つ。
それらが被弾、被弾、被弾、合計3発当たったところで、レグド(俺)は炎のオーラを噴き上げて、それ以上の追撃を防いだ。
一瞬考えが過ぎる。
(エナジーア波の方が良かったんじゃない?)
(いや、1条しか当たらないなら3発当たったエナジーア弾の方がいい。当たらない攻撃より、当たる攻撃の方がいい!)
炎のオーラを上げたレグドに迫る。
(特に! 今の僕達は戦闘経験値が少ない! だから、体感的にエナジーア波を撃つ時と撃った後に、タイムラグが生じてしまう! レグド相手にそれは命取りだ!)
スバルは前回の戦闘と、師匠と先生の修行を経て、最適解の結論を叩き出した。
これにはLもぐうの音もでない。頷きを得る。
炎オーラを上げた状態で、レグドは炎上エナジーア波を撃つ、撃つ、撃つ。
「「――ムッ!」」
それはLがやろうとしたことだった。
エルス(僕)は、その場で立ち止まり、右手にエナジーアを込めて強化、襲い来るそれをくらうものかとばかりに、光るその手で弾く、弾く、弾く。
3条の炎上エナジーア波が弾き飛ばされて、どこかへ飛んでいき、ドドドォンと爆発した。
「なに!」
(もう1つの欠点がこれだ!! エナジーア波はエナジーア弾より攻撃力と消費量が大きい割に、強化した手で弾くことができる! 無駄な消耗だ!)
だから、あの一瞬、エルス(僕)はこれを使わなかったのだ。
だが、それは炎上エナジーア波の付与がかかっていた。
「! チッ!」
それは強化した手の上で燃えていたのだ。
だが、エナジーアの気炎と魔力光により直接燃える心配がない。体表の外で燃えていたそれを振り払い、消し去ったのだった。
(……炎上は厄介だな……幾ばくかエナジーアと魔力を食っていきやがった)
(あれにとってはご馳走だからね。正直、やり辛いんだよあの人)
近接戦闘で炎上を用いられれば、相当ヤバそうだ。
その様子をレグドが認めていた。
どうする、左手は義手で思うように動かせない、右手はザクッザクッされて痛みで満足に動かせない。
「……フッ」
そうだ。戦い方を変えればいいだけなんだ。
その時、宙に浮いていたレグドの意思表示からか、炎のオーラが燃え盛る。
周囲を熱く、明るく照らす。
「「チッ」」
さっきまで暗かったので、その眩しさに腕で日差しガードを作るエルス。
宙から降り立つレグド。
ジュウゥゥゥ、ボコボコと大理石の床が溶解して、泡立つ。
周辺の温度がグングンと上昇していく。
((本気になったか……!))
「……」
レグドはスッと手を突き出して、クイックイッと指を曲げて、かかってこいよとばかりに安い挑発をした。
((挑発か……))
僕はチラッとその相手の出方を見た、その手の状態を認めた。
((義手と痛んだ手か、まともに戦えるはずもないか……いいだろう。乗ってやる!))
エルスは燃え盛る炎に歩み進んでいく。
その時、レグドの戦闘スタイル構えが変わった。
「「――!」」
その構えには見覚えがあった。それは――
((――ファイティングポーズ! ボクシングの構えか!?))
地球でいうボクシングの起源は古く、古代ギリシャのオリンピックでも、紀元前688年の第23回大会から採用されていた記録が残っている。
古代のギリシャ人の末裔は、現在のヨーロッパ文明が源流だろう。
これが未来進行形では、さらに国の名前が変わり、ゼプリオン民主主義人民共和国となっている。
これは当時、古代ギリシャが奴隷制度で繁栄を極めたことで、その文化が廃れ、働かない人達が続出したためだ。
良くも悪くも、奴隷の上で成り立っていたわけだ。それは人の倫理観としては間違いで、滅んで当然だろう。
その文化と繁栄が強く根付いたため、紆余曲折をへて、人種の移動と文明の発展、時間の経過等により、
現在進行形のゼプリオン民主主義人民共和国となっている。だから――
((――ゼプリオンボクシングの構えか!))
そんな名前がついたのだった。
ここで、Lがスバルに忠告する。
(その武道に関しては、アンドロメダ星にもあるよ。いくつか競技があるんだけど、有名なのはエルシアン!)
エルシアン。それがアンドロメダ星の格闘競技の有名な型か。
でも、今はレグドがしている型を見て。
(あの型の弱点は、顔の左右に腕を立てているからか、視界が悪いんだ。僕達のスピードではそれは殺される。……なんだってレグドはあんな型を……?)
(……)
そして、エルスは燃え盛っているレグドと対面するのだった。
エルスは戦闘初めに、腰を落とし構えを取った。
「……ほぅ、ずいぶん小さい構えだな」
「「師匠仕込みの怨魔流を見せてやるよ。だけど、これは格闘競技じゃなく、師匠たちが生まれるう~~んと前の超古代戦術らしいけどね」」
武術ではなく戦術。
武術が人間同士の競技なのに対し、こちらの戦術は作戦、戦闘、戦略において負けないために編み出された戦闘スタイルだ。
武道ではなく、戦場で生まれた技だ。
「ほぅ、それは楽しみだ」
レグド、
エルス、
両者の間で沈黙が流れ、無重力化の影響で、壊れた何かの破片が横切った時。
カッ、カッとその目が大きく見開き。戦闘が開始される。
怨っとエルスの体から気炎が上がり、そのまま突っ込む。
それを待ってましたとばかりに、炎上蹴りを放つレグド。
「「!」」
さらに身を小さくさせたエルスは斜め横に小さく飛ぶ際、その足に手をワザと触れた。
隙ができたことで、エルスはレグドに仕掛け、掌をワザと突き出す。
それをレグドは素早いジャブで防ぐ。
蹴りが戻ったところで、また炎上を用いた炎上中段横蹴りを放つ。
それをエルスは両手掌で、ワザと受け止める。
そのついでに流し目で、レグドの空いた腹を見て。
地を蹴って飛んで、肘打ちを当てにいく。
だが、ここがチャンスとばかりに交差法にて肘打ちと膝打ちに、それはサンドイッチさながらエルスの肘打ちを壊しにかかる。
「「グッ!!」」
この時エルスの身は、エナジーアの気炎と魔力光から様変わりして、怨魔の気炎と化していた。
それは普通よりも高度な技術で、術者の受けるダメージを軽減する。
だが、炎上エナジーアにより、その軽減は幾ばくか食われていた。
肘打ちを突き出していた腕を、咄嗟に引き戻した。
ズキッとその腕が痛み、エルスはしかめっ面を作った。
(ハハッ、今のは効いただろ!!?)
レグドは構えを取り直し、エルスに接戦を仕掛ける。
間合いの外から、炎上上段横蹴りを放つ。
エルスの怨魔流はまだ日が浅く、痛みと習慣的な動作で、構えがとけ、立ってしまっていた。
このままではいい蹴りをもらってしまうため、掌を突き出して、振れた。
その際、エルスはしゃがみ込んで、運よく躱す。
その際、掌底が強く突き出していたからか、レグドの姿勢が若干よろける。
「!?」
チッ、無重力化の上に不安定な足技を使ったからか。相手の掌底で身が若干浮いたな。
俺は足を戻す。
その間にエルスが接戦を仕掛ける。突き出すはまたしても掌だった。
(変わった流派だな! 掌底で何を破壊する気だ!?)
この瞬間、レグドは懸念が走った。
後ろにジャンプする際、その掌底の横を、足で蹴り飛ばした。
「「――!」」
((気づかれた!?))
後ろに飛んだレグドは宙に立った。
その時、自身の異常に気づいた。主に足をやられていた。
「グッ……!」
(足をやられたか……エナジーアが感じられない……!?)
バシュン……と燃え盛っていた炎のオーラが消失した……ッ。どーゆうカラクリだ。
「「……フゥ……」」
エルスは使用していた怨魔の気炎を消し、通常のエナジーアの気炎だけになった。魔力光も消え失せていた。
その怨魔流の構えも解いて、心持ち楽な姿勢を取った。
(グッ……何をしたッッ!!?)
俺は心の中で問うた。返事は返ってこない。
「「……」」
「……」
奴はこれを狙っていたのか、宙に浮く俺を睨みつけていた。


アンドロメダの宇宙船にて。
「あれは……!」
アンドロメダ王女の目には、それは身に覚えがあった。
「なぜエルスがあれを使えるのじゃ!?」
「え……?」
「……」
「……」
デネボラにはそれは存じないことで。
アンドロメダ王女、ヒース、シャルロットには身に覚えがあった。
アンドロメダ王女は驚き、ヒースは真剣な面持ちで、シャルロットは驚きながら引いていた。
「何か?」
それがデネボラの呟きだった。
「興魔流じゃ……おそらくな」
アンドロメダ王女の口から出たのは、興魔流という単語だった。
ちなみにスバルが使ったのは、怨魔流。名前からして違う。
これにはヒースも頷く。
「興魔流の発祥はツナガリだ! つまり、プレアデスファミリアの代々の王族達が使う技だ」
「え……!?」
これにはデネボラも驚いた。
「お主が知らぬのも無理はない。わらわも政務で偶然目にしただけだからな」
「……どーゆう技なんですか?」
「……」
アンドロメダ王女は、冷や汗のエナジーア粒子を立ち昇らせていた。
答え辛いと思ったのか、ヒース達に視線を投げかけた。
「……」
「……」
ヒース達も答え辛く、その顔に浮き出ていた。致し方なくこう答えるしかない。
「ガニュメデス王のつまみ食いの時の話なんですが……」
「つまみ食い――っ!?」
これにはデネボラも吹き出してしまう。
「怪物がブレス攻撃ができなくなったと……」
それはヒースの言葉だった。
「ブレス攻撃ができない……?」
「同様に、今、レグドの足技の炎ができなくなった……! あやつ、こんな経験は初めてじゃから、狼狽しておるわ」
「……っ」
「まさしく、天敵……ッ!!」


☆彡
「――っ」
レグドは狼狽え、慌てていた。こんな経験初めてだ。だが、今までの戦闘経験からか、すぐに平静さを取り戻そうとする。さすがだ。
(落ち着け。これは毒じゃない。麻痺が近いが、種類が違うだけだ。違和感というやつだ、エナジーアを感じられなくなっただけだ……っ!)
俺は自分に言い聞かせた。俺は冷静に自分が受けた攻撃を分析していた。
一方、エルスは――
(――何をしたの?)
(封じたんだよ、一定時間ね)
(封じ……?)
(どんな流派であれ、気や魔力、霊撃を用いる以上、その素となっているものを封じれば、突然の事態に動揺して、普段の力を発揮できないものなんだよ!)
(じゃあ、今が攻め時じゃない?)
(と言いたいけど、後10秒待って!)
(?)
(技の反動で、僕の手も封じられているんだ)
それは技の反動だった。
僕も手の感覚がない。今その感覚が戻ってきているところで、ここで無理に動くわけにはいかなかった。
(君バカなの!? なんでそんな中途半端な業持ち出すのさ!?)
9秒。
(ウッ……まだ練習中で、師匠には使うなと注意されてました……)
8秒。
(尚更じゃないか!! 馬鹿みたいにレグドの土俵で戦わず、エナジーア弾を用いる戦い方にすれば、あっちのボロが出たんだよっ!!)
僕は正論で返した。
7秒。
「「……っ」」
エルスはエナジーアを集中してみるが、まるで感じられない。その手が打ち震えていた。
(……マジ……まるで感じられない。……)
(……あと6秒)
精神世界にて、Lはスバルを見て、スバルは怨魔の効力が切れる時間を告げる。
6秒。
「……」
ここでレグドも怪訝に思った。
(まさかあっちもか……!? デメリットつきの業だったか)
5秒。
「――ッ!!」
俺は制限を受ける中、炎上爪を発現させた。
いいぞ、十全の力は発揮できないが、炎は使える、俺はまだ戦える。
他所、アンドロメダの宇宙船にて、その様子を見守る者達は怪訝に思った
「「「「……」」」」
4秒
「未完の業……だったか」
「できなくなったのはエルスは両手、それに対しレグドは両足……」
このできなくなったのが、どう戦いに影響を及ぼすのか。
「「……」」
アンドロメダ王女、デネボラ、ヒースとシャルロットはこの戦いの動向を見守る。
3秒。
「ハァアアアアア、炎上爪乱舞!!」
俺は炎のエナジーアを込めた一撃を放つ。それは一振りで炎上爪を雨を降らせる。
(エナジーアで……ッッ!?)
エナジーアが発現しない。
手だけじゃなく、全身から怨魔の気炎を発していた影響下で反動がきていた。
たまらずエルス(僕)は、その場でガード姿勢を取るしかなかった。
ドドドドドッと炎上爪の雨が襲う。
だが、この時、レグドは思ったほどの力が出ていないことに気づく。
(これでは炎上爪火雨だ……溜めても炎上爪乱舞ほどの力が出ていない……っ!)
俺は、この状態の悪癖を呪った。
2秒。
前進が炎上するエルス。たまらず悲鳴をあげる。
「グァアアアアア」
苦し紛れにその身をジタバタと動かす。
「ああ――っ!!」
(全身のエナジーアを引き出せない……まるで呪いだ……!)
「ッッ」
俺は勝負を急ぐ必要があった。
俺は、眼下にいるエルスに向かって駆ける。今その場は土煙が上がっていた。
(俺の考えが正しければ、術者の命を絶つかその意識を絶てば消える!!)
「「クッ……」」
((体に引火して燃え尽きちゃう))
炎上するエルス。
苦し紛れにジタバタ動き、その炎をどうにかしようともがき苦しむ。
僕は普通に受けるよりも、大きなダメージを負ってしまった。
いつもなら、エナジーアを発してダメージを軽減しているところだ。それすらできない。なんて反動なんだ。
「「ハッ」」
「オオオオオ」
迫るレグド。
1秒。
その渾身の一撃にもう片方の手を添える。全身全霊の炎上爪だ。
「爆華炎上爪!!!」
それは舞い上がっていた土煙を払って現れた。目の前にどうしようもない恐怖が迫る――
「「――クッ」」
どうしようもない現実が迫る。
((南無さん!!))
僕達は負けを悟った。
だが、レグドはわかっていた。それは通常時に放てる爆華炎上爪と比べて劣っていることを。
だから、焼き尽くせない。もがき苦しんだだけだ。
エルスはこの瞬間、負けを悟りつつも、生存本能の表われからなのか、後ろに飛んでダメージを軽減するしかないと、後ろ脚に込めた時――ガクゥときた。
「「!?」」
その大理石の床が炎上爪火雨の攻撃を受けて砕けていたため、飛ぶ力が乗せられず、その身が後ろに大きくよろけてしまう。
迫る凶刃。
その時、レグドもガクッと前のめりに倒れ込んでしまう。何っ。
「?!」
そのまま、エルスの足元に炸裂し、爆華が両者を襲う。
幸か不幸か、炸裂を免れて爆発がエルスを襲い、凄まじい速度でぶっ飛ばされて、あの高額な大壺に当たり、難なく破砕した後、壁にぶち当たる。
「ガッ……!!」
0秒。
エルスは呼気を吐いた。その呼気にはエナジーアの粒子が混ざっていた。
この瞬間、エルスを怨魔の気炎の反動がなくなり、通常時のエナジーアが戻る。
「!」
瞬間的に、生存本能がそうさせた。
その身を焼いていた炎上を、その身から噴き上げるエナジーアの気炎によってすべて弾き飛ばす。
――ドンッ
エナジーアが戻り、壁に叩きつけられた反動もあり、宙に浮く。立ち昇るエナジーアの気炎
「「グッ……ギッ!」」
((戻った!))
僕は全身のエナジーアを感じ取る。
「ハァッ……ハァッ……」
僕は焼き尽くされる恐怖を思い出して、ブルリと身が震える中、呼気を荒くしながら、平静さを取り戻そうとしていた。
((本気で危ないところだった……))
それは、生身のスバルであったならば不可避の死だったかもしれない。
それに対して。
(全身のエナジーアが乱れてる……!)
だからあの一瞬の好機を逃したのか。あれは意図した行動ではない、不慮の出来事(アクシデント)だ。
(だが、状態はどっちも同じだ! いや、状況でいえば、足がまともじゃない俺よりも、手が使えない奴の方が……!)
――ゴゴ……ゴゴゴゴゴ
だが、その期待を裏切るようにエルスの身からエナジーアの気炎が立ち昇っていた。
さあ、反撃開始だ。
「チッ!」
ありかよそんなの。俺はこの状態での不利な戦いを強いられる。
「「……」」
僕は立ち昇るエナジーアの気炎を実感していた。
いける、戦える。恐怖を振り切って、僕は帰るために戦える、さあ、行くぞっ。
ドンッとその場から駆ける。
その途中、バラバラに破砕された高額な大壺の破片を横切る。
先行するエルスは、速射性の優れるエナジーア弾を飛ばす。合計2発。
もう1発放つこともできたが、その分のエナジーアを回し、拳に纏わせる。光刃爪だ。
眼前に立つレグドは爆炎と爆煙が上がる中、ユラリと立ち上がる身構える。
先行していたエナジーア弾が舞う火の粉を一過、二過し、レグドは再び、炎上爪を燃え上がらせて、それらを払い落とす。
動きは最小限で、エルスとの激突に備える。
目前までエルス、それは火の粉と爆煙を裂いて、現れた。
「「オオオオオ」」
「オオオオオ」
光刃爪を振り下ろすエルス。炎上爪を振り上げるレグド。
激突の瞬間、光と炎が燃え膨れ上がり、光熱球となって爆発を起こす。
ドォオオオオオン
吹き荒れる爆風の中、両者は吹っ飛ばされて、エルスは宙を擦過して立ち止まり、レグドはレッドカーペットの上を擦過して、炎が燃え上がる。
両者、宙で、燃え上がるレッドカーペットの上で足に力を込めて、飛ぶ。
光刃爪が炎上爪が、レッドカーペットの上で、宙で、壁際で、ステンドグラスの前でぶつかり合い、衝撃波がぶつかり合う。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッと。
ここでエルスは我が身にサイコキネシス(プシキキニシス)をかけて、宙で高速回転をかけて、満月蹴りを浴びせる。
レグドを斜め下に蹴り落す。
超高速で落ちるレグド。だが、その体にサイコキネシス(プシキキニシス)をかけられる。
ビタッとその身が急停止する。
「!!」
目の前から接戦を仕掛けるエルス。
俺はそんな状態でも、飛来炎上爪を飛ばした。
エルスはその身を半歩捻り、ギリギリの位置で躱しつつ、俺のすぐ横を駆け抜けたと思いきや、
俺の背後の回り込み、エナジーア波を撃ってきた。
俺は背後からそれを被弾してしまい、真上に打ち上げられる。
その真上にあったものはシャンデリアで、それをぶち壊し、そのまま天井まで突き破って、ぶち壊す。
「グアアアア!!」
上の階は、こことは違う景色が広がっていた。
エルスはレグドを追いかけて、その違う景色の部屋に入る。


☆彡
――その違う景色の部屋は、LEDホログラムファンの可視光線で投影された、まるで異次元空間だった。
宙に浮かぶレグドとエルス、2人の立ち位置は上にいるのがレグド、斜め下にいるのがエルスだ。
(下手な流派はやめにしようぜ)
((もちろんだ。この戦いにそれは無粋だよ))
睨み合い。
睥睨するレグドとエルス。両者はその目で会話を飛ばす。
((ここからはハイスピードバトルだ))
心を似通わせる、戦闘の中で認め合う両者。
「「――バトルカード『脇差』!!」」
エルスは恵けい縁のバトルカード脇差を発現させる。
バリア(エンセルト)でそれを覆い、エナジーアを込めるとことで、それを発現させたのだ。
バリア、カード、エナジーアの3要素だった。
「!」
それを始めてみたレグドは身構えた。
(――何だあれは!? エルスの新業か……! 炎獣を通して感じていたが、どうやらエナジーアで生成した武器の類らしいな!)
俺はこのまま炎上爪だけではマズいと思い、全身から炎上エナジーアを発するが、不十分で足からは発していない。
「クッ!」
もどかしい。
ドンッとエルスは接戦を仕掛ける。
(業だ! 技がいる……! ッッ)
斜め上にいるレグドは、ここにきて爆華炎上爪のときの感じを思い出し、その腕に手を添えて、エナジーアを込める。
この劣勢にあって新技を発動させる。
「炎上爪光刃!!!」
ドンッと炎上爪の刃が伸長して、光熱の刃と化した。
これならば、脇差とも渡り合える。
俺達はそのまま組み合った。
――その際、衝撃波が生じて、この幻想的な異次元空間が揺れ動いた。
異次元空間に進むワープホールの中、景色が光の穴の中を突き進む。
両者気炎を発し、エルスが、レグドが、剣を携えて駆けまくり、剣戟をぶつけ合う。
目まぐるしく視界がグルグルと回る。
剣戟がぶつかり合い、輪の衝撃波が生じ、左斜め下、右斜め上、左上部、中央ときて×字の衝撃波の輪が生じる。生じるは光子と火の粉だ。
組み合った剣戟の中、両者単純に力を比べをする。気炎を柱の如く立ち昇らせる。
「「クァアアアアア」」
「ウォオオオオオ」
舞い散る光子、燃え上がる火の粉、バチバチと電流が生じる。そして――
「「「――ハアッ!!!」」」
光りの球が、爆華となりて、組み合ったまま大爆発を生じた。

――バリンッと幻想的な異次元空間が破壊されて、また別の異次元空間が現れた。
さらに異次元空間のワープホールの穴の中を、突き進む速度が上がる。
エルスが斜め上から、まるで稲光の如く、雷速で落ちてくる。
レグドが燃え盛る火炎のドームを発し、天を衝くが如く、フェアリースパーク赤い稲妻と化して立ち昇る。
大激突、+と×の字が合わさったような衝撃波の輪が生じ、光熱球が発生。
――異次元空間のワープホールが、黒白の閃光と光線を発して、大爆発。
――ドォオオオオオン

――バリンッと異次元空間が破壊される。
そのあまりの衝撃波で、この部屋の天井、壁、床が爆ぜた。
そこはガラス質、紫水晶のような鏡、切り立った宝石の柱がそこかしこに生えていた。
凄まじい速度で、石英が、ガラスが、瓦礫と粉塵が、駆け巡る。
エルスが、レグドが、気炎から一転光の球とかして、縦横無尽に駆け巡る。
パンッ、パパパパパーンッと石英が、ガラスが、瓦礫と化した粉塵が小爆発を起こして爆ぜ荒ぶ。
エルスの光の球が、下から上に昇るように上がり、一転して反転宙返り、雷撃の矢と化し、稲光の如く駆ける。
レグドの高熱の光の球も、内側から強大な炎のエナジーアを発し、上下の天地を衝く如く光熱の柱を立ち上げ、その周囲でいくつもの火災旋風を生じさせる。
まるで天変地異、異常気象だ。
「アアッ」
「オオッ」
ドドォンと大激突、+と×の字が合わさったような衝撃波の輪が生じ、光熱球が発生して。また。

――バリンッと幻想的な異次元空間が破壊されて、黒白の閃光と光線が駆け抜ける映像が投影される。さらに速度が増していく。
光熱球がドンドン膨張、膨張、膨張を繰り返し、その光の中から、何条もの閃光レーザーが発射された。
「「ッ!?」」

――それは静止軌道ステーションの下部で起った出来事だった。
いくつもの小窓に光が灯り、何条もの閃光レーザーが外壁を突き破って、宇宙空間に飛び出した。

――その上部の上の階にいる、謎のマーメイド型のロボットや監禁されていたロボットたちが脱出していたところへ、
何条もの閃光レーザーが今逃げたところの室内を刺し貫いた。
それは後一歩遅れていれば、恐怖な凄惨現場が広がっていた事だろう。
ゾクリとその顔が恐怖で歪む。

――さらに上部の上の階にいるスペースバルーンマンや猫やワンちゃん達のいる別の部屋でも大異変が起きた。
スペースランドではない。
初めに襲ったのは大地震、次に閃光レザーが地を突き破り、辺り一帯を刺し貫いた。
その空いた穴から、室内の空気が逃げ出していき、辺りの酸素濃度が減り、急激に温度が低下していく。
ここにもしも人間がいたら、集団パニックものだ。
いないことが幸いした。
「逃げるんだ逃げるんだ!!! この部屋を閉じて、防火シャッターを降ろすしかない!!! クソッ、せっかくあの子が穴を閉じたのになんてこった!!!」
スペースバルーンマンが、猫やワンちゃん達が一目散に逃げていく。スペースバルーンマンはその対応に追われた。


――大光熱球の中。
「ギャルルアア――!!!」
大光熱裂光覇。
レグドのその身は光熱と化していた。その身から何条もの閃光レーザー発射、発射、発射される。
それは意志を持っているかの如く何条もの発射と裂く攻撃を有していた。
「「チッ」」
今まで剣戟に耐えてくれていたバトルカード脇差が壊れ、エナジーア粒子となって昇っていく。
すまない、ありがとう。
エルスはその手を振り払って、その眼前の事象に立ち向かう。
「「――」」
裂く閃光レーザーが逃げ場を塞ぐように迫り、エルスは前進を選んだ。
だが、そのままでは身を引き裂かれてしまう。
ここでエルスは、信頼のおけるこの技を使う。
「エンセルト! プシキキニシス! エナジーア!」
エルスは我が身を護るバリア(エンセルト)を張り、その中からサイコキネシス(プシキキニシス)とエナジーアの強化で回転運動を加える。
絶対防御だ。
何条もの閃光レーザーが逃げ場を阻み、その上から引き裂こうとする。
だが引き裂けず、いくつものエナジーアの粒子と小爆発が生じて、その場から離脱を図る。
そのエンセルトプシキキニシスエナジーアの回転運動の速度と光の加減が落ちていく。
(時間がないよ!! どうすれば!?)
(……)
Lはスバルに何かいい案はないかと頼った。
「ギャルルアア――!!!」
さらに大光熱裂光覇を放ち続けるレグド。
((まさしく切り札だ……! こうなったら一か八か賭けるしかない!!))
エルスは3枚のバトルカードを取り出した。


★彡
それは地球に帰還するアンドロメダ王女の宇宙船から降りた後、偶然にもチアキさんに会い、一緒に並んで帰った時の話だった。
スバルは、ケイちゃんが入った棺桶の押し車を押していた。
「――そんな事があったんや」
「うん」
僕はチアキさんに事情をあらかた説明した。
そして、何度も助けられたケイちゃんのバトルカードが入ったバトルフォルダを、チアキさんに渡した。
チアキさんは、そのバトルカードを見ると。
「……確かに、ケイちゃんのバトルカードや」
あたしはそのカードに見覚えがあり、この事を覚えた。
「ケイちゃんの助けがなかったら、負けていたなぁ……」
「……」
「僕とLだけじゃ勝てなかった……うん、ケイちゃんの助けがあったらから勝てたんだ」
顔を上げるスバル、感謝しかない。
今にして思えば、あの絶命必死だった時、ケイちゃんが自分の命よりも、まだ助かる見込みのある僕の身を案じて治療してくれたことで、生を繋いだのだ。
普通はそーゆう事を実行できる女子がない。
ケイちゃんだからこそ、あの場にいたからこそ、僕は生きているんだ。
「……そうやな。ケイちゃんがいなかったら、今頃、地球は氷の惑星やったかもしれん……一瞬にして死の星や」
「……うん」
僕は頷き、そう思った。
「……フッ、まるで女神様だよ。勝利を呼び込んだ……」
僕は、グッとその手押し車を握る手に力を込めた。
(この勝利の立役者は、ケイちゃん、君かも知れない――)
「……フッ」
「……」
あたしは手に取ったバトルカードたちを見て、バトルフォルダに戻して「うん」と頷いた。
「スバル君は、このゲームの切り札『次世代の組み合わせ(アドバンスマリアージュ)』って知ってる?」
「それはまぁ……好きなゲームだし……少しくらいは……」
「あたし前にケイちゃんから、カード交換を求められたんだ……今君にあげるね」
ケイちゃんは、そのバトルフォルダの中に、バトルカードを忍ばせた。
「うん、大丈夫! きっと君なら、君達なら、どんな劣勢な状況下にあっても、勝利を呼び込むことができる……! ケイちゃんだけやない、あたしも背中を押してあげる」
それがこの劣勢な状況下にあって、勝利の風を呼び込む。


☆彡
(……)
記憶は共有したLは戦慄した。まさに賭けだ。
バトルカードを発現させるためには、カード、エンセルト、エナジーアの三要素がいる。
だが、アドバンスマリアージュには、合計3枚以上のバトルカードがいる、このぶっつけ本番で果たしてそれができるのか。
脳裏に最悪が過ぎる。
この状況下で、この護りを解き、直撃を受けてしまえば絶命必死だ。
伸るか反るか。
(……)
(……)
冷や汗を、エナジーアの粒子が立ち昇る。その時、一瞬の判断の遅れが、この絶望的な状況を招いてしまう。
「「ハッ」」
迫る絶望の閃光レーザー、その逃げ場をなくしていく。

「ギャルルアア――!!!」

そして、絶対防御の護りを失ってしまった。エナジーアの粒子となってそれが壊れた。
「「……ッ」」
一転して危機に陥る。
僕の体は、手は、恐怖で震えあがっていた。
(勝てない……のか……ッ!?)
脳裏にそんな考えが過ぎり、その身が強張ってしまう。
(ダメだ、避けきれない……っ!)
迫る、引き裂く閃光レーザー。
その時、エルスの目が青白く光り、サイコキネシス(プシキキニシス)にて、我が身を包み、緊急回避を取る。
それは、Lの機転だった。
(!)
(なにビビってるのさ)
(L)
(君の相棒はこの僕なんだよ)
僕達は前を見た。
(信じよう、彼女達の力を!)
(……うん、ありがとう)
君に出会えて、ホントに良かった。
僕も信じよう、彼女達の力を。
サイコキネシス(プシキキニシス)で我が身を包み、その薄いベールは、閃光レーザーの上に降り立ち。
誰かの優しい手が、その背中を押してくれた。そんな気がしたんだ。
「「――行こう!!」」
一直線に駆けるエルス。
ありがとう、ケイちゃん、僕達とともに――

((――一緒に!!))
その時、誰かが笑みを浮かべた気がした。


☆彡
他所、天を仰ぐチアキ。
「行けっ」
他所、アースポートにて、信じて待つアユミ。
「お願い」
アンドロメダ王女の宇宙船、アンドロメダ王女。
「……これで決まるな」


その時、一陣の風が吹いた。
「「『アドバンスマリアージュ』!!! 小太刀! 脇差! 大太刀!」」
そのバトルカードにバリア(エンセルト)、エナジーア、そしてすべての願いを込めて、サイコキネシス(プシキキニシス)も込める。
4要素だ。
僕達はそれを天に掲げ、すべてを1つに集約する。巨大な光を放つ、巨太刀が発現した。
「「『大光滅巨大刀』!!!」」
これが勝負を決める、僕達の切り札だ。
エルスは、閃光レーザーの上をサイコキネシス(プシキキニシス)のベールで保護し、一過して駆け抜ける。
だが、相手もバカではない。
その光熱と化したその身から、何条もの閃光レーザーを発射し、または切り裂こうと攻めてきた。が。
ニッとエルスは、いやLが笑みを浮かべた。
(何か忘れてない?)
それが当たる間際、シュンとその場からエルスが消えた。
「!?」
次の瞬間現れたのは、技を放っているレグドの目線の上だった。
そう、それは、エルスの得意技テレポート(チルエメテフォート)だ。
「オオオッ!!!」
エルスが大光滅巨大刀を振り下ろしたとき、辺り一帯に目が眩むほどの大閃光が発せられた。
――その部屋にあった大光熱球の中から、大光滅巨大刀と同種の光が走り抜けて、大爆発が生じる。
それはドドドドドッと大爆発のドームが大回転運動を起こしながら、大光熱が急激に膨張しながら爆ぜた。
大爆風が周辺一帯を吹き荒び、
その幻想的な異次元空間が創り出していたLEDホログラムファン等の設備を破壊したのだった。
そして、先の閃光レーザーによって空いた静止軌道ステーション屋外の穴から、設備、機材等もろもろ宇宙空間に排出されたのだった。
それらは全て、宇宙デブリとなった。
爆煙がその階と上下左右の階域に及び、爆煙と粉塵と充満していた。
そして、それは上の階から煙の尾を引いて落ちてきたのだった。落ちてきた場所は正面玄関前だった。
充満した爆煙と粉塵の中、その光の球は、「ハァッ、ハァッ」と呼吸をついていた。その者がいるのはあの幻想的な異次元空間があった場所だった。
「ハァッ、ハァッ」
そこは視界が最悪だった。
爆煙と粉塵が充満して、先が見通しづらい……何も見えない。
だが、エルスには、『危機感知能力』クライシスサーチング(クリシィエクスベルシーフォラス)が備わっていた。
((あいつは……!))
「「ハァ」」
((……まだ終わっていない!!))
エルス(僕)は、大光滅巨大刀を携えて、その場からシュンと消える。
爆煙と粉塵が充満する中、正面玄関にてうつ伏せで倒れていたレグドは、その重い身に鞭を打って立ち上がる。
その身が震えていた。ただのエナジーアを発して宙に浮く。
(……)
その爆煙と粉塵が充満する中、顔を上げた。顔は確認できないがこのとき確かに、悟り、満足していた。

【――その者はやり切った感があった】

「……」
ここまでやったんだ、恨まれ役としては充分だ。
【その顔は、悟りを得たように満足していた】
(Lよ、後は任せた)
【レグドは、いやレグルスはここに来る前にある準備をしていた。そう、これは落とし前だ】
(王女やデネボラなら信じられる。アンドロメダ王もきっとわかってくれる。だから……いや、まだだ)
【その者は討たれる覚悟で、この戦いに臨んでいる……!! だが、道半ばだ、それは男の誇りであり、後の者に残すことができる手向けだ】
(俺の役割は全うしていない。最後に、あいつとの死闘を経て、俺の人生は完遂する!!!)
あいつとは誰か、エルスか、Lか、それともスバルか。
【その者は死に場所を求め、なおかつ、自身を倒すことで、その成長を促そうとしていた】
(だから、その時まで……耐えてくれよ、シシド!!)
【それは彼なりの声援(エール)だった。この戦いでの悪はあくまで自分だ。シシドはその被害者で、スバルとLはその英雄でなくてはならない】
【だが、後々、地球人が望む形はエルスの勝利ではなく、スバルの勝利でないといけない】
【だから、今ここで倒れるわけにはいかないのだ】
(目的を忘れてはならない。私情は捨てろレグルス)
俺は自分自身に問うた。
(その時まで耐えてくれよ、俺の体!!!)
「ウォオオオオオ!!!」
俺は苦し紛れの炎上エナジーアを高め、その気炎が立ち昇らせる。


――その時、シュンと奴が現れた。そう、待ち望んでいたエルスだ。
「――レグド!! 何をする気だ!!」
「……フッ」
その立ち昇る気炎が丸くなり、まるでドーム状のものが回転する。その周りに火の粉が、いや火雨が飛んでいく。
「決まってる……」
俺は顔を上げて。
「すべての始まりである、この静止軌道ステーションを跡形もなく消し飛ばす!!」
消し飛ばす。
俺は正面にいる煙に隠れて見えないが、エルスにそう告げた。
奴がどんな顔をしているのか俺にはわからない。
だが、告げはした。奴が引こうが立ち向かってこようが、もうどうにもならないエナジーアが溜まっている。
さっきの比ではない。
俺は力が入りやすい姿勢を取り、全身全霊の炎上エナジーアを高める。
【――そう、この場所がすべての始まりだ。ここを跡形もなく消すことで、レグドやエルスたちの死後、地球人たちの歴史からその遺産を奪う】
【後々、アンドロメダ星の風当たりを予期して、その憂いを無くすためだ】
【一例としては、第二次世界大戦で、長崎と広島に原爆が落とされたことが挙げられる。その街に住んでいた被爆者たちは、写真なりその遺産を残すことで、後世に伝えていたのだ】
【その原爆を投下した国やその開発に携わった高名な科学者たちや指導等は、特に風当たりが厳しく、後々問題とされていたのだ】
【戦争の落とし前が必要だった】
【だから、公開処刑を経て、その風当たりを緩和したのが狙いだ】
【それと同じことが、アンドロメダ星で起こるのだ。だからそれ故に、レグルス1人の自己犠牲によって、その幕を下ろそうとしていたのだった――】


アンドロメダ王女は、その光景を認めていた。
(レグルス、先の憂いを絶つか。やはりお前はそのために、こんな大仕掛けで……!)
(レグルス隊長……)
わらわは、私は、その覚悟を汲み取った。


だが、その事を何も知らないエルスは――
「「――させない!!」」
そう、言い切り身構えた。
その時、ゴォオオオオオと大爆風が吹き荒れた。
僕は「「グッ」」と堪える。
その時、異変がエナジーア体に生じた。
「!? なっ……あっ……!?」
エルス(僕)の体から、キラキラとエナジーア体の粒子が立ち昇っていたんだ。
これはまさか、構成されているエナジーア体の組成が分解されているのか。
「「……ッ」」
こんなものを放ったら最後、術者も無事では済まない。
最大パワー放ちつつ、自らも生き残るなんて神業、相当強靭なエナジーア体とエナジーア圧と膨大な戦闘経験と数多の視線を潜り抜けてなければ、生き残れない。
「ここはおとなしく引けエルス。地上にて、いいものをくれてやる! ハァアアアアア」
そのいいものとは、俺の命であり、地球人側の勝利だ。
ズ――ンとレグドは体勢を弓なりに反らして、局地的大光滅エナジーアによって、この静止軌道ステーションを跡形もなく消し飛ばす気でいた。
ズン、ズン、ズン、ズゥオオオオオと膨張、膨張、膨張、膨張が拡大していき、破滅のときが訪れる。
今、引かなければ、エナジーア体の組成が分解されていくエルスとて危ない。
エルスのエナジーア体を組成しているキラキラの粒子が素早く天に還っていく。
迫る破滅の光――
その時、エルスの脳裏にある光景が過ぎった。
それはスバルが、お偉いがたさんの前で説明する姿だった。それはこの静止軌道ステーションだった。
少なくともスバルは、この時、そんな人たちも場所も身に覚えがない。
だが、僕は、その未来を信じた。

【――それは、チアキと同じ予知能力に近いものだった。それは多くの人達が持つ、希望であり夢、もしかしたらの原動力だった】

僕は、その未来を掴むため、その足が一歩前に出た。
(僕もついていくよ)
(……)
微笑むL、微笑み返すスバル。
そして、ケイとチアキの願いが籠ったこの大光滅巨大刀を握りしめた。
「「僕達は!!! この未来を信じる!!!」」
これで最後だ。この柄に、この大光滅巨大刀に全身全霊のエナジーアを込める。
そして、構成しているこのエナジーア体の組成分解を防ぐため、超高密度のエナジーアを全身から噴き上げて気炎と化した。
それはまさに激しく針のように尖り、気炎と化していた。
「「クァアアアアアオオオオオ!!!」」
全身全霊、全力全開。もう出し惜しみはしない。

【この予知は奇跡か偶然か必然となりうるか、この時、まだ誰もわからない……!! だが、あの時バトルカードを忍ばせていたチアキが何らかの力を込めていたなら――】
【多くの人が願うのは、今を生きている人達の幸せだ】

その時、優しい誰かの手が、エルスの握る柄に添えられた気がした。

【親が子にケイと名付けたのは、土に田んぼと書いて心と読む『性』と同じ『名』だった!】
【『恵』】
【その徳のある名前は親から子へ、そしてある少年達へ引き継げられる――】

ズォオオオオオオと大回転しながら破滅のドームが目前まで迫る。
触れてもいないのに、周辺に浮かんでいたものが、キラキラと粒子を放ちながら、次々と消し飛んでいく。
それが目前まで迫った時――
(――この一瞬だけでいい。僕達の中に眠るエナジーアよ、応えてくれ!!!)
「クルルォオオオオオ!!!」
カッ
その願いに応えるように、クジャクのような羽と9つの尾が幻想的に発現した。
「――フッ」
――すべての想いを乗せて、エルスが、光の矢となって穿つ。
中はとてつもない圧だ。一瞬でも気を抜いたら、たちまち消し飛んでしまう。
エルスは大光滅巨大刀を構え、切り進めながら、先へ先へと突き進む。
大回転の圧が横から襲いかかり、僕達を外へ押し流そうとしてくる。でも――
((――負けるものか――!!!))
噴き出すエナジーアの気炎。パワー勝負だ。
ウォオオオオオ
そのエナジーアの圧が高まり、唸り声を上げる。
(引かぬなら、宇宙の果てまで吹き飛ばすだけだ!!!)
さらにエナジーアの圧を高めるレグド。パワー勝負に応じる。
仮にエルスを宇宙の果てまで吹き飛ばしても、奴なら宇宙空間でも生きられる。地球にでも戻ってこられる。
だが、その間に確実にこの静止軌道ステーションを跡形もなく、消し飛んでいる。
俺の読みがちだ。
ウォオオオオオ
そのエナジーアの圧が高まり、唸り声を上げる。
突き進む光の矢と化したエルス。
バババババッと驚異的な摩擦が生じ、エナジーア光子と劫火が舞荒ぶ。
それでもエルス(僕)は、前へ、前へ、突き進む。
その剣が、まるでエルスの想いに応え、護るかのように。
その道を切り開いていく。
その距離はジワリジワリと縮んでいく。ここにきて、レグドもまさかという思いで焦る。
(おっ、オイ……!!)
それは業を放っているものだからこそ、感じ取れるものだった。
奴が、このすべてを消し飛ばす光の中、負けじと突き進んでくるのだ。
ウォオオオオオ
エナジーアの圧が高まり、唸り声を上げる。
バババババッ
それは摩擦抵抗が生じ、エナジーアの光子と劫火が舞い荒び、荒ぶる音だ。
バシン、バシン、バシンとその確実に突き進む一矢が、この破滅の光の中、確かに聞こえた。
駆ける迅雷(スパーク)、舞い荒ぶ劫火、熱気とエナジーアの粒子が激しく衝き上がる。
キラキラと光る組成の分解が激しさを増していく。
負けない、負けるもんか。
「二ギギギ」
その光の矢は確実に迫ってくる。この中心部に侵入してくる。
迫ってくる音は、恐怖か畏怖か。
そして、俺達は邂逅した。
「お……ウォオオオオオ」
俺は恐怖に負けまいと掌を突き出した。
それに応じるように、この大回転中のエナジーアの軌道が、その一点に押し寄せる。凄まじい大爆圧だ。
こんなの喰らってしまえば、何もできず、静止軌道ステーションの外壁を突き破り、宇宙空間に飛ばされてしまうだろう。
もうパワーは全身全霊、全力全開、限界を超えている。もう絞り出せるものはない。
エナジーアではダメだ。
魔力を練る時間もない。
バリア(エンセルト)、サイコキネシス(プシキキニシス)、テレポート(チルエメテフォート)もダメだ。
頼みの綱も、この僅かな一瞬ではそも間に合わない。そもそもそんな奇跡を起こせるバトルカードなんて持ち合わせていない。
だが、この大瀑布に立ち向かわなければ、何もできず負けてしまう。
嫌だ、ここまできて――
僕は、その大瀑布をどうにかしよう大光滅巨大刀を構えていた。
巨大刀の戦い方は、その重量を活かした振り下ろす、薙ぎ払いぐらいだ。間違っても振り上げるという動作は難しい。
だが、それは、まさに偶然の産物。
スバルの師匠の技や先生の魔法の教えの中にも、この状況を打開できる術はない。
それはLも同じだ。生まれてからいろいろなものを見て通してきたが、打開策はなく、アンドロメダ王女の隠れた修行の中にも打開策はない。
だが、その一瞬、確かにエルス(僕達)はその身をブルリと震わせた。

【スバルとL、それは物心ついてから今日まで、見て感じてきた経験等を通して、この状況を打開できる策は、すべて詰んでいた。だが――】

それは二重螺旋のDNA構造だった。
誰の者かはわからない。
だが、それは確かに、この危機迫る状況下にあって、自ら激しい光を解き放ち、エナジーアの粒子を解き放ちながら、それを告げる。

【血と魂に眠る記憶は、それを想起させた】

それは一瞬にも満たない出来事、一瞬の中の刹那。
降ろし構えていた。
振りぬかれた万物を消し飛ばす大瀑布、その軌道を反射的に感じ取る。
それは舞だ。
斜め下から斜め上に振り上げるように、相手の力の流れに逆らわず、むしろ乗る。
その振り上げられた大光滅巨大刀の刃先にエナジーアとは別の力を介在させて、そのまま一閃。
消し飛ばす大瀑布を刃先を通して、切っ先の一点に閉じ込めた。
それはまさしく刹那の出来事。
大瀑布の流れに沿いながら、大回転する大光滅のドームの流れに沿いながら、舞うように1回転しつつ。
その閉じ込めたエナジーアを解放する為、真上に解き放つ。
キラキラした粒子が、エナジーアの粒子が、光子が、炎上エナジーアが、劫火が、激しい勢いで立ち昇る。
その時、レグドの目には何が映ったのかわからない。
こんな現象、生まれて初めての体験だったからだ。
もう間もなく刹那が終わり、一瞬、すべてを消し飛ばす大光滅のドームの中心点から天を衝かんばかりの柱が撃ちあがった。
「ウアアアアア!!!」
激しい激流だった。
その流れに逆らうことはできず、天を衝かんが如く撃ちあげられていく。。
悲鳴を上げるレグドの体から、おびただしいエナジーアの粒子が噴出していく。キラキラの粒子も。
静止軌道ステーション、その断面図では病院エリア、遊戯施設、ホテルを瞬く間に通り過ぎて、天蓋を突き破り、ドォンと宇宙空間へ躍り出るのだった。
「あああ……」
そして、閃光がドォンと爆ぜたのだった――……


♪この胸に宿る、あなたへの、想い
♪夢を追って、飛んでいく、あなた
♪今だけは、傍にいて欲しいの
♪伝えたい言葉探して、見つからないまま
♪あなたの背中を、追う日々は、意味もなく過ぎてく
♪あたしには、少し先の未来が、見えるだけ
♪あたしの贈り物は、あなたの役に立ちましたか
♪いくつもの、光の風が、あなたを後押ししてしてくれる
♪塞ぎ込むあなた、さあその涙を振り払って、前を向いて飛んで行って
♪あなたの後ろに、夢と希望が続いていく
♪あたしは、今だけは、あなたの止まり木になりましょう。
♪あなたに触れた、てのひらに残る、あなたの温もり。
♪この柔肌、胸に揺れる思いは、なに
♪あたしも、あなたに見合う、女になるように、
♪未来で交差する場所で待ちましょう
♪だから今しばし、許して
主題歌:止まり木にて休む、傷ついた白い鳥
作詞・作曲:チアキ
チアキはその優しい瞳で、天を仰いでいた。
吹き付けるは、今は、冷たい風と雪だった――


正面玄関に立つ人影、その者は大光滅巨大刀を突き上げていた姿勢だった。
限界を超えて発現されたその力、クジャクの羽と9つの尾が消える。
そして、その剣が光の粒子となって、天に還っていき。
その者はその姿勢から楽な姿勢を取って、「「フゥ……」」と一息をついたのだった。
その者の名は、エルス。スバルとLがエナジーア変換した姿だった。
流れる静寂、確かな実感、この時エルス(僕達)は、ホントの意味で、勝利を実感したのだった。
喜びを噛み締める――
「「――っ」」
第1章
エルスVSレグド
1回戦 敗北
エルスVS災禍の巨獣
1回戦 敗走(デネボラの登場のため)
2回戦 敗北(海上にて敗北し、海の底を流れたため)
3回戦 勝利(小さな勇気を振り絞って挑み、絶命間際にて辛くも勝利)
これをひとまとめにして、レグルスは1勝1敗としている。その時の自覚がないだけで。そして今回。
第2章
エルスVSレグド
1回戦 無効試合(静止軌道ステーション入所の際、うやむやで無効試合、続く炎獣も同様。相中にスペースバルーンマンが入るためやはり無効試合)
2回戦 勝利(トラブルが起きつつも、辛くも勝利)
戦績、2勝1敗、エルスの勝利で幕を下ろすのだった――


TO BE CONTINUD……

しおり