76章 1回戦
10人分はあろうかという、巨大おにぎりが姿を現す。一般の人にとっては、きついメニューといえる。
「1回戦は巨大なおにぎりを食べていただきます。30分の制限時間内に食べきることができれば、2回戦進出です。食べられなかった方については、失格とさせていただきます」
30分間をフル活用して、おにぎりを完食すればいい。ミサキにとっては、簡単な作業といえる。
10人分の巨大おにぎりを見て、30人くらいが席を立った。
「私はリタイアします」
「私もリタイアしたいです」
「リタイアします」
おにぎりを食べることなく、リタイアをする参加者。彼らは何をするために、大食い大会に参加したのだろうか。自信がないのであれば、最初から参加する必要はない。
ゴリラのような生き物が、おにぎりを食べ進めていく。おにぎりを食べているところを見て、人間であることを察した。
ミサキはマイペースで、巨大おにぎりを食べ進めていく。誰かと競うわけではないので、これでいいと思った。
「ゴリゴリラさん、最初に完食しました」
顔だけでなく、名前もゴリラに関するものとは。この男性は、ゴリラの生まれ変わりなのではなかろうか。
「タケシさん、完食しました」
タケシが食べ終えると、女性から歓声が上がった。タケシという男性は、女性に大人気のようだ。
「ユタカさん、完食しました」
「ココアさん、完食しました」
一人が食べ終えるごとに、大きな拍手が送られていた。
「ウララさん、完食しました」
「ヒロシさん、完食しました」
「ミサトさん、完食しました」
「アキラさん、完食しました」
続々と完食者が現れても、自分のペースを変えなかった。30分以内に完食することだけを考えながら、おにぎりを食べ進める。
ミサキは余裕をもって、10人前のおにぎりを食べ終える。
「ミサキさん、完食しました」
ミサキはゆっくりと席を立った。