56章 猫アレルギー
マイからリクエストがあった。
「ミサキさん、膝枕をしてください」
「いいよ」
マイは柔らかい手つきで、ミサキの太腿を触った。
「ミサキさんの太ももは、かなり細いね」
160センチ、42キロなので、太ももラインはかなり細い。餓死をする前と比べても、遜色のないレベルだ。
「あんなに食べても、体は細いままだね。同じ女性として、とってもうらやましい」
餓死した経験があるため、ふっくらとした体形になりたい。がりがりのままだと、餓死するのではないかと不安になる。
マイの掌が前後左右に動いた。
「マイさん、必要以上に太ももをさすらないでください」
「すみません。あまりに居心地がよかったので・・・・・・」
アオイ、ツカサは膝枕をうらやましそうに見つめていた。
「ミサキさんの膝枕で横になりたい」
「そうだよ。シノブちゃん、マイさんだけなんてずるいよ」
アオイ、ツカサの2人には、膝枕をしたくなかった。遠慮のない二人なので、とんでもないところに手を伸ばしかねない。
ナナ、ホノカに視線を向ける。彼女たちも興味を持っているのが、こちらにもはっきりと伝わってきた。
マイを膝枕していると、おなかがギュルルとなった。おにぎり20個分の貯金を、2時間45分くらいで吐き出してしまった。
「ミサキさん、何かを食べよう」
ミサキはリュックサックの中から、20個のおにぎりを取り出す。
「おにぎりを食べるね」
ミサキは鮭おにぎり、いくらおにぎり、豚おにぎりなどを口に運ぶ。何回も食べた味ということもあって、おいしさを感じることはなかった。
ミサキのところに、猫が近づいてきた。猫アレルギーだったこともあって、警戒心は非常に強かった。
「ミサキさん、猫は苦手ですか?」
「はい・・・・・・」
猫は大好きだけど、猫アレルギーである。むやみに触るわけにはいかない。
猫の毛を感じたものの、咳、くしゃみなどはなかった。現実世界における、猫アレルギーは引き継いでいないようだ。
ミサキの膝で休んでいた、マイが咳、くしゃみをする。彼女の反応からすると、猫アレルギーである確率が高い。
「ミサキさん、猫を早く逃がして」
マイのために、猫を逃がすことにした。
「マイさん、体はどう?」
猫と離れたことで、幾分は持ち直したようだ。
「すぐに逃がしたから、被害は大きくなかった」
「マイさん、猫アレルギーなの?」
「うん。幼少期から、猫アレルギーだよ」
転生社会で猫アレルギーがいるとは思わなかった。こちらの世界は、現実世界を引き継いでいるように感じられた。