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03. 鬼

小さな時の記憶は不確かで
その感覚は今でも忘れられないほど正確。

いつものドライブ。
行くのは大抵、山だった。
山菜取りにどんぐり拾いに様々な目的で。
お正月の初詣も山の中の神社へ行く。
そこで私はいつも鬼を見る。
木々の間に間に
風の間に
髪が揺らぎ
布が舞う
ちらりと見えては消えてゆく。
それは恐怖の対象で。
それでいて何処か神秘の扉のようで。

今はもう見えない。
あれは恐怖の見せた幻。
あれは好奇の見せた夢。

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