35章 4時間勤務の壁
勤務を開始する前に、シノブから声をかけられる。
「ミサキさん、4時間勤務をお願いしたいです」
2時間なら我慢できるけど、4時間は絶対に無理だ。強烈な空腹に見舞われて、地面に倒れている姿が目に浮かぶ。
「食料を持参していないので、おなかがもちません」
1時間くらいを想定していたので、食べるものを持ってきていない。
「昼休憩中に、焼きそばを提供します。それさえあれば、なんとかなるのではないでしょうか」
焼きそばを食べるだけでは、エネルギーは完全に不足している。徒歩5分のところにあるスーパーで、食料を調達する必要がある。
「仕事できなさそうなときは、いつでもいってください。こちらとして、無理をさせることはありません」
信じたいとは思いつつも、完全に信じることはできなかった。母親から満足に食事を与えられなかった傷が、はっきりと残っていた。