184. この瞬間に感謝
184. この瞬間に感謝
そして翌日。オレは夏帆と共に焼き肉を食べに行くことにする。近所に安くて食べ放題の店があるとかで、そこに向かうことにしたのだ。
「ここですよ先輩!」
「おお……確かに安いな」
「ですよね!混んでいないみたいですし、早速中に入りましょう!」
夏帆が指さした先には、焼肉屋があった。2時間食べ放題飲み放題で値段もリーズナブルだ。店内に入ると、大学生くらいの若い女性店員さんが迎えてくれた。
「いらっしゃいませー2名様ですか?」
「はいそうです」
「ではこちらへどうぞー」
案内されたのは個室だった。掘りごたつ式になっていて、ゆったりと座れる感じになっている。
「わぁー良い雰囲気ですねっ」
「そうだな。こういうお店で食べるのも良いよな」
「私、焼き肉ってあまり食べたことないんですよね。なので楽しみです」
「そっか。じゃあとりあえず好きなだけ頼もうぜ」
「はいっ!」
注文を済ませるとすぐに飲み物が来た。オレは烏龍茶を頼み、夏帆にはオレンジジュースを頼む。こいつ本当にどこでもオレンジジュースだよな。
「乾杯しますか?何に乾杯します?」
「え?何にってなんだよ?」
「もう!先輩はそういうところ全然わかってないですね!いいですか?こういう時は、この瞬間に感謝するんです!」
うぜぇ。なんで上から目線なんだよこいつは。まあでも、せっかくだから感謝しておくか。
「わかったよ。それじゃあ……この時間に出会えたことに……」
「夏帆ちゃんと一緒に。が抜けてます」
「……この時間に夏帆と一緒に出会えたことに……」
「いやーん。恥ずかしいですよ先輩!たかが乾杯くらいで!もっと普通にしてください!」
「お前が言えって言ったんだろ!」
こうして食べ放題飲み放題の貴重な10分をくだらないことに使うのだった。