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34. もらってないけど

 34. もらってないけど



 私たちは『妖精の隠れ家』としてロデンブルグの魔物討伐に参加するために向かっていたけど、途中で馬車の馬が逃げ出すと言う、あり得ない展開に巻き込まれている。仕方がないので、とりあえず歩いて向かうことに決めた。

 今は途中の小屋で一晩あかすことになった。外は猛吹雪だし、寒いし、お腹も空いたからね。

「う~ん!美味しい!さすがはレミーナ姉さん!こんなの秒でなくなるわ!」

 キルマリアはスープを一口飲んで、思わず声を出した。確かにこの寒さで冷えた身体に染み渡るわ。

「良かったです」

 レミーナさんはいつものように無表情だけど、すぐにお鍋を持ってきてキルマリアの皿にスープを注いだ。本当に良い人だなぁ。

「ねぇねぇ。そう言えばレミーナちゃん。そのコート可愛いね?猫耳のフード付きなんて珍しいし!」

 リーゼが目を輝かせて言うと、レミーナさんは頬を少しだけ赤く染めた。あー。レミーナさんは猫が好きだからな。確かに似合っているかも。

「マスターが……皆さんのダンジョン攻略祝いに買ってくれたので……。」

「そうなんだぁ!私も買ってもらったよ!この髪を縛るオーガのゴム!可愛いでしょ?」

 リーゼはいつもツインテールにしている髪を結んでいるリボンを見せた。うん。まぁ可愛くはあるかな。かなりデフォルメされたオーガのシルエットが描かれていて、どこか憎めない感じだ。

「え?あたしはもらってないけど?」

「そう言えばロザリーさんも新しい調理器をもらってました。ルシルさんはシュシュ、ミルフィさんはハンカチをもらってましたよ」

「ゲイルちゃんは?」

「ああ?大したものもらってねぇよ。靴をもらっただけだ」

「あれーあたしもらってないよ?」

「エステルちゃんは?」

「え?あー。」

 アリシアさんはみんなにプレゼントを買っていたのか。という私ももらったけどさ……恥ずかしくて言えないけど……。

 ◇◇◇
 -数日前-

「エステルちゃん。ちょうど良かったわ!これ。初ダンジョン攻略のお祝いよ?」

「え?いいんですか!?」

「もちろんよ!ほらっ。開けてみて?」

「はぁ!?なんですかこれ!?」

 私が包みを開けるとそこには真っ赤な下着が入っていた。

「いや、あのね。エステルちゃん。ダサい下着つけてるじゃない?ダメよもう大人なんだから、そんなんじゃ男も寄ってこないわ。」

「いやでも……」

「安心して、この前お風呂に入っている時にサイズは確認したからピッタリだと思うわ!これで男もイチコロよね?」

「ちょ!勝手に見たんですか!!」

「細かいことは気にしないの!それじゃあ今度感想聞かせてね!」

 ◇◇◇

 という訳のわからない理由で真っ赤な下着をもらった。ダサい下着って……私は気に入ってたんだけどなぁ……。

「まぁ……ちょっとしたものよ」

「ねぇってば!あたしもらってないって!ぴえん!」

 そんなこんなで私たちの晩ご飯が終わった。それからしばらくすると吹雪も止んで、私たちは朝早く出発した。寒いのは変わらないけど、吹雪が止んでいるだけマシだ。

「とりあえずロデンブルグに行くためには山越えが必要です。近くの村で準備しましょう」

「その前にちょっといいエステル姉さん?」

「キルマリア?」

 キルマリアはいつもとは違うとても真剣な顔で私たちに言った。どうしたのかしら?キルマリアらしくない。もしかしてなんかあったのかも。

「昨日からずっとずっと、寝ずに今までのことを振り返って考えてみたんだけどさ。マスターってあたしのこと嫌いなのかな?」

 ……どうでもいいことだった。アリシアさんの気持ちなんか知らないしっていうか考えすぎよ。

「だってあたしにだけプレゼントくれないんだよ!おこだよおこ!」

「忘れているだけでは?」

「そうだよキルマリアちゃん!」

「でっでもさ!最近マスターが冷たい気がするんだ!前はもっとこう……優しかったのに最近は冷たく感じるんだ!きっと嫌われてるよぉ……ぴえん!」

 そのキルマリアの発言を聞いたゲイルさんが言った。

「考えすぎだろキルマリア。オレは違うと思うぞ?アリシアはそんな子供みたいに仲間外れにするようなやつじゃねぇだろ?仮にもマスターだぞ?信用してやれよ。」

「ゲイルのおじさん……」

 さすが元パーティーを組んでいるだけあってアリシアさんのことちゃんと理解してるんだ。なんかこう言う関係は憧れる。

「だってお前生きてるだろ?」

「は?」

「本当に嫌いなら、キルマリアのこと殺してるって」

 草。憧れた私の気持ちを返してほしいんだけど……というか普通そう思うよね……。この人たちおかしいんだった。

「あー!確かに!」

「それは納得です」

「えぇ……。」

 いや納得しないで、リーゼとレミーナさん。

「なるほどね!確かにそうだ!ありがと!元気出たよ!」

 うん。まぁ良かったかな?キルマリアはいつもの調子に戻ったようだし。こうして私たちはとりあえず気を取り直して、近くの村を目指して歩き始めるのだった。

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