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172. 何もないけど

 172. 何もないけど



 オレたちは散歩から戻り、明日の予定を立てることにする。このお泊まり旅行は2泊3日の予定だ。

「ねぇ先輩!私バーベキューしたいです!BBQ!近くにキャンプ場があるって聞きましたよ!」

「あぁ……確かに山にキャンプ場あったよな。いいんじゃないか?」

「明日の天気は晴れだから。ちょうど良いかもしれないわね」

「うん。私も賛成」

 和やかな雰囲気で、明日の予定が決まる。うん。旅行って感じで楽しいな。

「じゃあ今から食材を買いに行かないとですね!先輩!」

「張り切りすぎだぞお前……」

 テンションの高い夏帆を落ち着かせて、オレたちは駅の近くまで歩きスーパーへ向かう。買い物を終えて旅館にもどる。そして夕食を食べて、今オレは旅館のロビーにいる。

 みんなは部屋の露天風呂に入りたいと言っていたから、オレは大浴場に入ることにした。だから今はロビーで終わるのを待っている。万が一戻って、変なことになったら大変だからな……。

 しばらくするとロビーに浴衣姿になった黒崎がやってくる。まだ濡れている黒髪が妙に色っぽい。こいつ美人だよな……。

「お待たせ。神原君」

「じゃあ部屋に戻るか」

「まだダメよ。夏帆ちゃんと雛山さんが入っているわ。私は先に出ただけ」

「そうなのか?じゃあ待つか」

 オレはそのまま椅子に座ると、服を引っ張られる感覚があった。振り向くとそこには頬を赤くした黒崎の姿がある。

「ねぇ神原君。少し外を散歩しない?」

 上目遣いで見つめてくる黒崎に、オレは思わずドキッとする。いかんいかん……。平常心平常心……。

「まぁ別に構わないけど……。何のために?」

「せっかく旅行に来たんだもの。夜景でも見てみない?」

「夜景って……山とか田んぼしかないぞ?」

「いいじゃない。大親友に付き合ってほしいわ」

 そこまで言うなら仕方がない。それに夜の空気を感じながら歩くというのも悪くないだろう。

「わかったよ。どうせ時間あるし行こうぜ」

「えぇ。行きましょう」

 こうしてオレと黒崎は夜の散歩に出かけるのだった。

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